石野純也の「スマホとお金」
UQの新料金プラン「コミコミ/トクトク/ミニミニ」をどう評価する? 新旧プラン比較で徹底解説
2023年5月25日 00:00
「Rakuten最強プラン」に料金プランを刷新した楽天モバイルに続き、KDDIのUQ mobileも、6月1日に新料金プランを導入します。「コミコミプラン」「トクトクプラン」「ミニミニプラン」の3つがそれです。
UQ mobileは、現行の料金プランとして「くりこしプラン +5G」を展開しており、このプランにはデータ容量に応じてS/M/Lの3つがあります。コミコミ、トクトク、ミニミニはそれぞれをリニューアルしたものです。
一方で、くりこしプラン +5Gに比べると、コミコミ、トクトク、ミニミニはそれぞれにデータ容量だけでない特徴を出しているため、少々分かりづらくなっているのも事実。
また、割引も、これまではauでんきなどの電気サービスやauひかりなどの固定回線とセットにできる「自宅セット割」のみでしたが、新たに家族2回線以上を対象にした「家族セット割」も加わっています。ここでは、その仕組みを解説するとともに、新旧プランを比較してみました。
まずは現行プランをおさらい、シンプルで安かった「くりこしプラン +5G」
まずは、現行プランのおさらいから。UQ mobileの「くりこしプラン +5G」は、データ容量が3GBのプランS、同15GBのプランM、同25GBのプランLの3つに分かれています。SとMの差が大きいような印象もありますが、自分の使うデータ容量に応じてプランを選ぶだけという、オーソドックスな料金体系と言えるでしょう。競合となるワイモバイルも、これに近い料金プランを採用しています。
金額は、それぞれ1628円、2728円、3828円です。1つプランが大きくなると、1100円ずつ高くなっていく非常に分かりやすい料金です。キャンペーンなどを除いた割引は1つだけ。それが、自宅セット割です。これを適用すると、それぞれの料金プランに対し、638円か858円の割引を受けられます。プランSなら990円、プランMなら2090円、プランLなら2970円になります。
3GBのプランSが990円という価格設定は、少し前のMVNOとほぼ同じ。大手キャリアが直接運営するサブブランドとしては、異例の安さと言えるでしょう。しかも、自宅セット割は固定回線だけでなく、電気サービスも対象になっているため、比較的、簡単に適用されます。一人暮らしだと引いていないこともある固定回線とは違い、電気は誰もが必要とするからです。
燃料調整費差額撤廃や、ポイント付与の見直しによって、「auでんき」に変えると電気代が上がってしまうケースも出てきたため、一概には言えないところですが、割引適用の条件としては比較的緩いと言えると思います。実際、KDDIのパーソナル事業本部 パーソナル企画統括本部 副統括本部長 長谷川渡氏によると、 @UQ mobileのユーザーの約7割が自宅セット割の対象 になっているといいます。
10分の音声通話定額をセットにし、ahamoやRakuten最強プランに対抗するコミコミプラン
新料金プランも、3つから選択できるという点は同じ。データ容量がもっとも少ない ミニミニプランは「くりこしプラン +5G」のプランS相当、トクトクプランはプランM相当、コミコミプランはプランL相当 と言えば理解しやすいでしょう。データ容量はそれぞれ4GB、15GB、20GBに変更されています。新旧比較をすると、ミニミニプランは1GBの増量、コミコミプランは5GBの減量になっています。
各種割引適用前の金額は、ミニミニプランが2365円、トクトクプランが3465円、コミコミプランが3278円です。不思議なことに、プランM相当だったトクトクプランより、プランL相当だったコミコミプランの方が料金が安くなるという逆転現象が起こっています。新割引適用前の料金を新旧で比較すると、コミコミプランが値下げになっているのに対し、ミニミニプランとトクトクプランは値上げされています。
また、コミコミプランはコミコミという名のとおり、10分以内の国内通話が無料になります。自宅セット割や新設された家族セット割のような割引もありません。1回線だけ契約しても、すべてこの料金。 オプションも込み、割引も込みの込み込みプラン というわけです。その他のプランで同等のオプションである「通話放題ライト」をつけると、月額料金が880円かかります。こうした点を踏まえると、UQ mobileがコミコミプランを主力と考えていることが分かります。
もともとの料金プランでは、プランLの比率が非常に低かったこともあり、ここをテコ入れしたという見方もできます。同社が強く意識しているのが、NTTドコモのahamoや楽天モバイルのRakuten最強プラン。どちらも、ワンプランで音声通話定額が込みという点で、UQ mobileのコミコミプランに近い位置づけです。金額的にもahamoは2970円、Rakuten最強プランは3278円と、コミコミプランに近い設定です。
ahamoと比較すると、音声通話定額の時間が長いことやUQ mobileの店舗網を利用できることがコミコミプランの利点です。Rakuten最強プランと比べた際の長所は、KDDIのエリアや店舗網にあると言えるでしょう。一方で、ahamoより料金そのものが高く、国際ローミングは有料。対楽天モバイルで言えば、データ容量が無制限ではない点がデメリットと言えます。このような一長一短はありますが、ahamoやRakuten最強プランと“同じ土俵”に乗ったのがコミコミプランと言えそうです。
UQ mobileのユーザーにとっては、現行プランのプランMやプランLから移る価値もありそうです。今現在プランLを契約している場合、使えるデータ容量は5GB下がってしまいますが、割引適用前なら料金も安くなり、10分の音声定額がつきます。自宅セット割の対象になっているユーザーでも、通話放題ライトを契約している場合、料金値下げの恩恵を受けられます。逆の見方をすると、 プランLからコミコミプランに変えれば、わずか308円で通話放題ライトがつけられる とも言えるでしょう。
ミニミニ、トクトクは値上げになるケースも、割引前提で複雑に
データ容量は20GBに下がったものの、 お得度が増した印象のコミコミプランに対し、なかなか評価が難しいのがミニミニプランとトクトクプラン です。まず、ミニミニプランですが、プランSと比べるとデータ容量が1GB増えているのに対し、割引適用前の価格は 1628円から2365円に上がっています 。“定価”同士の比較だと、実に737円もの値上げになっています。
ただし、自宅セット割の割引額が638円から1100円に増額されています。また、新料金プランには「au PAYカードお支払い割」が新たに設定されており、料金の支払いをau PAYカードにすれば、187円の割引を受けられます。この2つを適用した場合の金額は1078円。 プランSの990円より88円ほど高くなりますが、そのぶんデータ容量は増えています 。
先に述べたとおり、7割のユーザーが自宅セット割の対象になっていることを踏まえると、多くのユーザーにとってはわずかな値上げでデータ容量が増える計算になります。また、どうしても自宅セット割が適用できない場合、新たに加わった家族セット割を適用する手もあります。この家族セット割は、自宅セット割と排他の関係にあり、どちらか一方だけが適用されます。割引額は550円。ここにau PAYカードお支払い割を加えると、ミニミニプランの料金は1628円になります。この金額は、現行プランのプランSの割引適用前と同額です。
1人で何の割引もなく契約すると大きな値上げになってしまうのに対し、家族セット割をつければ同額をキープできると言えるでしょう。また、自宅セット割が適用されている7割のユーザーにとっては、わずかな値上げでデータ容量が増えることになります。料金を下げる手段が残っているため、人によって評価は分かれそうですが、少なくともその条件は増え、複雑になったとは言えそうです。“縛り”が多くなったと言い換えることもできるでしょう。
同様に、 トクトクプランも割引適用前の金額を比較すると2728円から3465円への値上げ になっています。ただし、こちらも自宅セット割とau PAYカードお支払い割で2178円まで下がるため、2090円だったプランMとの差はわずかになります。また、家族セット割とau PAYカードお支払い割が適用されれば、料金は2728円になり、現行のプランMと同額になります。
ただ、ミニミニプランは現行プランから1GB増量になるメリットがありましたが、トクトクにはそのようなデータ容量の差はなく、15GBのままです。このままだと単純な値上げになってしまいますが、 トクトクプランならではの特徴に、1GB以下の場合の割引 があります。auの「使い放題MAX」で、3GB以下の場合に割引がつくのと同じで、トクトクプランのみ、1GB以下のときには1188円の割引がつきます。使う月とそうでない月の差が激しい人には、お得になる仕掛けが用意されていると言えるでしょう。
このように、UQ mobileの新料金プランは、コミコミプランが大きく強化されたのに対し、ミニミニプランやトクトクプランは割引適用状況次第で、得か損かが大きく変わります。
割引に当てはまらない人には値上げになる一方で、料金がほぼ据え置きでデータ容量が増えたり、使わない月に割引がされたりといったところに魅力を感じる人もいるでしょう。とは言え、総じて 料金体系が複雑になってしまったのは事実 です。シンプルな料金体系が売りだったUQ mobileなだけに、ここがどう評価されるかは未知数と言えそうです。