本日の一品

デジタルのミニマルデザイン腕時計を手に入れた!

 令和になってまた“ミニマルウォッチ”なんていう、よく訳の分からない腕時計がなぜかメーカーサイトやクラファンでもSNSでも人気だ。シンプルなデザインの腕時計が発表発売される時にはよく“ミニマル”(minimal)という形容詞がタグラインとして使われている。

 分かるようで分からない英語の“ミニマル”とは直訳すると“最小限”とか“必要最小限”という意味だと思われる。別のシーンでよく言われる“ミニマム”とは似てるようでも少し違う。

 ミニマムは“ミニマムな装備”とか“ミニマムな食糧”とか絶対量の表現だ。一方、ミニマルは“ミニマルな生活”といったようなそこに“質”の要素が含まれている。昨今は時代を反映してSDGsとの関係性からより多様な雰囲気を押し出す複雑なイメージになりつつある。

 ミニマルウォッチの思想的なルーツは1920年~30年ごろのバウハウスにその起源があるらしい。有名なタグラインとして“形態は機能に従う(Form follows function)”というのがある。簡単に言えば“余計な装飾は省き合理的かつ美しいデザインを追求する”という感じだろう。

 代表的な腕時計にはドイツのユンハンス(Junghans)が手がけたマックス・ビルデザインの腕時計がある。筆者も一時期ハマってブラウンの腕時計やユンハンスのミニマルモデルから余計なクロノグラフ機能のついたクロノスコープモデルなどいろいろ収集してしまったことがある。

 モンディーンのスイス鉄道駅にある柱時計をベースにしたStop2Go腕時計などもミニマル腕時計の例として登場するモデルだ。

 誰が言った訳ではないが、ミニマル腕時計の対極にあるのは奇異なメカを使ったデボン腕時計やついこの間まで行列を作って転売屋なども並んで買ってたバイオセラミックを採用したスウォッチとオメガの共作であるムーンスウォッチなどがその系だろう。基本的にアナログ腕時計のミニマルは分かりやすい。

 ミニマルウォッチの定義はまず“視認性と機能性”。余計な装飾はなしにして現在時刻を読み取りやすいデザインが必須だ。そのためにシンプルなインデックスや針を採用。そしてケースやベゼル、ラグなども目立たない控えめなデザインを採用する。

 全体デザインの統一感やそれらが醸し出すミニマムでもシンプルでもない必要最小限で創り出す“ライフスタイルにマッチする合理的なデザイン美学”が重要なのだ。要はけっこう面倒くさいシロモノなのだ。

 そんな面倒くさい令和な時代に、ダボハゼ的にガツガツとガジェットを買い漁っている筆者のようなアンチ・ミニマリストな人間には最も縁遠い言葉だが、今回はあえて大脳や脊髄の欲求に従って衝動的にモノを買い、好きなモノに囲まれて生活するのが夢のマキシマリストが選ぶデジタルミニマル腕時計を選んでみた。

 バウハウスのミニマル発想から100年以上も経ってしまったデジタル世界の現代でも通じるミニマル思想はまだまだあるのかもしれない。しかし世界中どこに居ても常時正確な時刻を表示できるスマホの出現やそれを前提としたデータの同期が普通の現代にブラウンの電卓や時計、その後のデジタル腕時計のコンセプトは生きているのだろうか?

 ミニマルと言う観点で見た時のアナログ腕時計のイエローカード腕時計と同じように、デジタル腕時計にも同様のアイテムはありそうだ。感覚的には腕時計と電卓機能などがハイブリッドした便利なデジタル腕時計は、値段が高くても安くてもブランドでも非ブランドでもレッドカードの雰囲気だ。

 一方、好きか嫌いかは別にして、使わない時は真っ黒で腕を傾けて時刻を見る動作をすれば現在時刻がお気に入りの設定で見やすく表示されるスマートウォッチは、アナデジ・ミニマル腕時計の筆頭候補なのかもしれない。同じように、文字盤がなくてもボタン一発でいつでも現在時刻を読み上げてくれる音声腕時計もミニマル発想と言えるモノだ。

 今回筆者がtemuで約1000円で買った自称ミニマルデジタル腕時計「ミニマリスト・デジタル腕時計」は一見すると流行りのスマートウオッチの外観に似たミニマル腕時計の仲間だ。

 液晶文字盤のカラー(黒字に白文字・白地に黒文字)とベゼルとケース、ベルトのカラー違いで全部で20モデル近くが提供されているがいずれも統一感がありノイズの少ないデザインだ。

 文字盤カラー(白・黒)はお好みだが、筆者の感覚では白文字盤に黒の時刻表示が見やすいと感じた。実測1.65インチのペーパーホワイト(モノクロ)液晶画面の視認性はなかなか抜群だ。

 コントロール系は右側面にカレンダー・時刻合わせの長押し用RESET、12時間と24時間切り替えのSTART、左側面に夜間照明ボタン、アラームやストップウォッチなどのモード切替ボタンとシンプルだ。

 ゴム製のガスケットが周囲に張り付いた、超簡易防水裏蓋だが手を洗面所で洗う程度なら全く問題はなかった。ステンレス製の裏蓋を固定している4個のネジを普通のプラスドライバーで開けると、CR2025バッテリーが見える。安価な電池で個人での交換も5分でできて極めて簡単だ。

 通常の画面表示は、最上段は日付・曜日の表示。中央段が現在時刻(HHMMSS)、最下段がカレンダー(月日)の表示と、これも極めてミニマルだ。文字盤背景と表示文字のコントラスト差が大きく、直射日光を真正面から受けても視認性は全く影響を受けない。

 筆者が手に入れたモデルのストラップはケース、ベゼルと同色のシリコン製ストラップだ。今のところ別カラーや素材違いのストラップは、発売されていないがスライド式で容易に取り外し可能な設計となっている。

 極めてフレキシブルなストラップ裏面は、小さな正方形ブロック模様がスリップを防ぎ腕にしっかりと固定する。レガシーなピンと穴で腕に装着後、ブレスの端っこは、シリコン製の遊革(バンドホルダー)にしっかりと固定するタイプで着脱の容易さも同時に実現している。

 デジタルミニマル腕時計の重さをはかってみたところ、たったの40gだった。これは理由はよく分からないが、なぜかデジタルミニマル腕時計と評されている某有名メーカーの超軽量モデルの約2倍だ。

 日本のごく普通の腕時計のオマージュモデルからスタートした大陸製の腕時計だが、今やミニマルデザイン腕時計の世界でも日本を追い越せの勢いだ。

 100年の歴史のあるミニマル発想だが……時代と共にその概念やイメージは変化してゆくべきなのだろう。レガシーな固定観念にとらわれること無く自由な発想で自分にとって必要最低限の機能を好きなカタチで実現することのできる腕時計が令和の“ミニマルデザイン腕時計”で良いはずだ。

商品発売元販売価格
ミニマリスト・デジタル腕時計-約1000円