本日の一品

もうすぐなくなるかもしれない「SIMピン」の話をしよう

財布の中でSIMピンを探して指先を怪我したのがきっかけでSIMピン好きになった

 大昔、携帯電話が“ガラケー”などと呼ばれていたころ、ユーザーの多くにとって無縁だったモノに「SIMピン」がある。

 スマートフォンが増えた昨今では、SIMピンというチョット奇妙な名前を聞いても「ああ、あれか!」とわかる人も増えただろう。

 SIMとは、「Subscriber Identity Module」(加入者識別モジュール)のこと。この業界では、やたらめったと多い3文字略称のひとつだ。スマートフォンには必ず最低1枚は必要な小さなSIMが、いつのころか、スマートフォンに収納する時にはトレーに載せて滑り込ませる仕組みとなった。

 ご存じのようにSIMピンとは、このSIMトレーを押し出すため、SIMトレイのすぐ横にある小さな穴に押し込んで、スムースにSIMトレーを取り出すための普通なら最低一生に1回は必要になる小さな道具なのだ。そんな作業をするのは一生に一回だけという人もいるだろうが、誰に望まれることもなく、自らその面倒な作業を好んで一生に何十回もやる人達もいる。お仕事で国境を超えることの多い人もSIMピンを使う機会は多いだろうが、頻繁にスマホを買い替えてばかりいる人もそれほど変わらない。

 これらの面倒な作業を減らそうと、スマホメーカーでは、SIMが二枚入るスマホや、物理的なSIMが無くてもSIMの役目を内部の回路でやってしまうeSIMという素晴らしいモノを備えた機種を作ってくれている。とはいえ、残念ながら筆者は、以前使っていた「Motorola razr」で全くeSIMの設定が上手く行かなかった不安から、今もeSIMが苦手で、物理SIMカード派だ。

 そろそろeSIMと言う声が聞こえても世界にはまだまだSIMカード派のユーザは多く、ただSIMトレーを取り出してSIMを交換するだけで実現できる便利な世界は、楽しいことも多い。そして、今では以前のように何の変哲もないSIMピンではなく、SIMピンのデザインにも凝ったスマホメーカーも多くなってきた。

昨今はオシャレなスマホにはオシャレで一風変わったSIMピンが付いてくる

 長い間SIMピン愛用者である筆者は、いつでもどこでもSIMピンを使えるように、家の中では何カ所かにSIMピンを常備している。あるとき戸外でSIMピンの持ち合わせがなく苦労したことがあるので、それ以降は財布の中にも忍ばせている。

財布の小銭入れ部分を指先でかき回してSIMピンを探した時に指先に刺さってしまった。SIMピン剥き出しは危険なので安全対策が必要だ

 一度、SIMピンを出すのに焦り、小銭入れを指先でかき回して探している時、うっかり指先の爪との間をSIMピンの先で突き刺してしまって、ずいぶんと痛い思いをしたことがあった。それ以降、SIMピンの先はCherry社のMXキースイッチの消音装置のシリコンリングをはめて、もしもの場合にも安全第一で備えている。

 しばらくして今年の春先、どんなものでも超豊富な種類がラインアップされている、中国のAliExpressを眺めていたら、SIMピンの種類がめちゃくちゃあるのに初めて気が付いた。

 ”脊髄反射型衝動買い”と”迷ったら両方買え”は筆者の座右の銘なので、速攻でもうすぐ必要なくなるかもしれないSIMピンを数種類ほど買ってみた。その多くは超安価で3円、高くても100円以下のモノだった。

なんとAliExpressのWebサイトには様々なユニークなSIMピンがいっぱいある

 今年の春に入手してすぐ、SNSなどでどんどん拡散したので、昨今は国内でも日本人好みのデザインの多くが入手可能なのかもしれない。

 もはやTIPSなんて範疇ではないが、SIMピンを代用できるレガシーなステーショナリーは複数の書類を留めたりするゼムクリップだ。かたくなに閉じたゼムクリップの先端部分を引いて広げるだけでSIMピンの代用にはなる。合理性が第一の人にとってはベストなソリューションかもしれないが、それでは面白くなさすぎる。おバカでミーハーな筆者としては些細なことに余計な無駄なことをしたくなってしまう。SIMピンは”無駄を楽しむ”アイテムとしてはなかなか楽しいのだ。

SIMピンの代替はゼムクリップで出来ることは周知の事実だがそれでもSIMピンはあとからあとからいっぱい登場してきている

 この春先に筆者が手に入れたのは、変わりようのないSIMピンの先を除き、持ち手部分の奇抜さやケースなどSIMピン全体の収納に対する工夫やチャレンジが楽しいアイテムだ。

 シンプルに持ち手の面積を拡大したモノ、プラスティックで持ち手を太くしたり丸くしたりしたモノ、nanoSIMなら一緒に入りそうなシリコンケースを付けたものなど、さまざまだ。

筆者が脊髄反射衝動的に購入したSIMピンのいろいろ。日本人好みでは無いがイヤリングの様なドラゴンのSIMピンにはピクピク……

 筆者は今年の春以降、シリコンケース付きの少し大きなSIMピンとシリコンケースのモノを常時財布に複数入れて持ち歩いている。既に出先や秋葉原で会ったり一緒にランチしたりした友人知人に、SIMピンをどんどん配ってしまったので、今では手持ちは極めて少なくなってしまった。

nanoSIMなら一緒にシリコンケースに入ってしまう。筆者は常時このSIMピンを複数個財布に忍ばせてドヤ顔で人にあげている

 挨拶代わりに会う人ごとに配っていたSIMピンだがそろそろ新しいデザインのモノが欲しくなってきたのでまたネット買い出しに出かけようと考えている。eSIMの普及でひょっとしたらもうすぐなくなるかもしれないSIMピンへの興味はまだまだつきることはない。

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SIMピン3円~100円AliExpress