本日の一品

関の刃物屋さんが作った「エレキギター型ハサミ」を思わず買ってしまった

エレキギター型ハサミの一番安かったレッドカラーを買ってみた

 ギターハサミがクラウドファンディングされていたことは知っていたが、出資してから手元に届くまでけっこうな時間のかかる商品はせっかちな筆者向きではなく忘れていた。

 ところが、人気ゆえ一般商品として発売されたとのニュースを見たので7月に速攻で注文して手に入れた。筆者の個人的な感覚だが、クラウドファンディングの段階ではそこそこ人気の商品もその後、一般販売までこぎつける商品は少ない。刹那的な人気がクラウドファンディングの特徴だ。

 ハサミは令和の現代でも明確に置き換わるツールがなく、どこの家庭にもデスクまわりやキッチンなど、多くの場所に複数個所有している人が多い、紀元前から存在する日常使いの道具だ。活躍の場はオフィスや家庭、時にはモバイル環境にまで広がっているツールの代表だ。筆者の周囲だけをざっと見渡してみたところすぐに数本のハサミが見つかった。

ハサミはどこの家庭でも数本以上はある人類の歴史と共に歩んできた道具だ

 今回、筆者宅に届いたパッケージはハサミというより、エレキギターケースを意識した様な装丁だ。パッケージ内部は真っ赤。中には主役のエレキギター型ハサミ本体と付属のギタースタンドの組み立て説明書とパーツが同梱されている。生産地は“折れず・曲がらず・よく切れる”と昔から評判の日本刀の産地である岐阜県の関だ。

関の刃物屋さんが創ったSeki Soundハサミの格好良いパッケージ
本体と付属のギタースタンドの組み立て手順紙片だけのシンプルさ

 早速、筆者の購入した赤いエレキギター型ハサミを取り出してみた。典型的なダブルカッタウェイ型ボディのエレキギターだが、刃先の保護に取り付けられた“Seki Sound”とニックネームの描き込まれたヘッドストック型キャップが少し分厚い印象だ。その点以外は不自然さはなく、本体のシボ付きでマットな仕上げもなかなかグッドだ。

ダブルカッタウェイの典型的で安定のデザインのエレキギタースタイル

 ニックネームの入ったヘッドストックを取り外すと、シャープな刃先が登場する。刃先に近い両方の峰には小さな半円形のカットがあり、どうもヘッドストック型の刃先キャップを簡単に固定する溝のようだ。

ヘッドストック(キャップ)を取り外すとシャープな刃先が現れる

 エレキギター型ハサミのもっとも素晴らしいところは、片側の刃面(指板:フィンガーボードにあたる)にだけ記されたフレットと6本の弦、ポジションマークの繊細さだ。もちろん、本物のエレキギターにはないが10フレットと11フレットのちょうど真ん中にシルバーのネジ(要)がありこれが全体を引き締めて見せている。

指板上のフレットやポジションマーク、6弦の描き込みが見事だ。弦は刃先のカーブに沿って曲がっているように見える。中央のネジがハサミとしてのまとまりを見せる

 そして、エレキギターで言えば指板の裏面のネック側の付け根部分には、製造元であるニッケン刃物のカンパニーアイコンがエンボスされている。

背面のちょうどネジ(要)の反対側にはNIKKENのブランドアイコンが配置されている

 刃面は対象物を切るためにある刃(刃線)側に向かって、斜めに切り込んで斜面のような形状になるのが一般的。今回のハサミはその斜めのわずかなスペースの斜面にもフレットと弦が描き込まれている。正面から見た時に真っすぐになるように1弦(E)と2弦(B)の2本が極めて精密に描き込まれている。

側面や斜め横から見ると斜面上に描かれて曲がっているように見えていた弦だが正面から見ると完璧な直線に見える

 そのため、筆者のように右利きの人がハサミを使う時には、ダブルカッタウェイの角(ツノ)の長い側を下にして使うと、指板が見えてエレキギター型ハサミを使ってる感を満喫することができる。エレキギター型ハサミは両方の指穴サイズが全く同じなので幸い使用時に上下の向きはない。

右利きの筆者はダブルカッタウェイのボディを上下反対に持つことで自分の目の側に指板を向けて切ることが可能だ

 ハサミを使う時には、上の指穴に親指、下の指穴に人差し指と中指を入れて使うのが一般的だ。エレキギター型ハサミは多くのステーショナリー系ハサミと同じ指穴が同サイズのデザインなので、使う人の手の大きさや指の太さによっては、下側の指穴が少し窮屈な人がいるかもしれない。

 エレキギター型ハサミのこだわりはその形状やフレット、弦だけには留まらず専用のギタースタンドまでオマケに付いていることだ。ギタースタンドは、左右1ペアのシリコンゴム系(エラストマー)で作られた左右のパーツを組み合わせて、付属の金属ピンでつなぐだけで完成だ。

金属ピン1本だけで簡単に組み上がるギタースタンドは無くてはならない小物だ

 ギタースタンドは一般的なギタースタンドと同様、エンドピンを中心にしたボディ部分を下から支え、12フレットあたりをギタースタンドの上部で挟む方式でエレキギター型ハサミを安定した状態でホールドできる。

 実際にエレキギター型ハサミで何度か紙を1枚だけ、または重ねて切ってみた。さすがに切れ味はシャープだ。ステンレス刃物鋼でABSハンドルを採用しているため、総重量も実測67gと軽量で取り扱いは楽だ。フッ素化コート処理により、ガムテープなどの粘着性が低く錆にも強くマットでサラッとしたテクスチャーは心地よい。

紙を切ってみたが黒い刃先は明るい系の紙とのコントラストも明快で位置決めもやさしい

 実用的ではあるが、エレキギター型ハサミはどうしてもほかのエレキギターフィギュアのようにインテリアとしてのポジション性が強く、キャップ取り外しの面倒さも加わり最近は出番が極端に少なくなった。最近では筆者のデスクトップオーディオの上にギタースタンドと共に鎮座していることも多い。

 登場機会を増やすべく、ヘッドストックキャップ部分を壁面にネジなどで固定してエレキギター型ハサミを下に引き抜くようにしようかと考え中だ。

実力のあるハサミなのにどうしてもインテリアステーショナリーとしての位置が前に出てしまう

 スペック比較では、確実にほかの歴史的実用的なハサミの仲間になったエレキギター型ハサミだが、どうしても出番の少ないのが残念でありかわいそうだ。そんな時にある人に“ハサミじゃなくてニッパーだったらもっと出番が多いのに!”と言われた。

エレキギター型の関の刃物もたくさんある筆者の周囲のハサミの仲間入りをした

 エレキギターの弦を張り替えた時に、余分に余った長い弦をカットするのが目的らしい。昭和な“けいおん脳”の筆者は、エレキギターの巻き線(3弦~6弦)はうっかり切るとチューニングが狂うことがあると、先輩から教えてもらったから全く想像がつかなかった。しかし切っても品質の安定している、昨今のギター弦ならたしかにハサミではなくニッパーが最適だったかもしれない。

製品名発売元実売価格
ギター型ハサミ(赤)ニッケン刃物2230円