本日の一品

チャレンジャブルな“箱開けモード”付きハサミ

普段は見過ごしがちなハサミの世界だが、そこにもさまざまな工夫や人の自由な発想があってきわめて面白くもためになる世界だ

 趣味の1つにしているという方や、コレクションしているという人もおられるとは思うが、「ハサミ」というものは、基本的には誰もが使う実用ステーショナリーだ。

 家庭やオフィスだけではなく、アウトドアのモバイル環境でも、出張先のホテルでも、どこでもハサミを使いたいという需要は古くからあるので、ペンサイズに収納できるハサミや、限りなく薄く作られたハサミでフォルダやペンケースの底にも入るものなど、古くからたくさん発売されている。

もう10年~20年くらい愛用しているハサミ3兄弟。左から、キングジムのテプラ用角丸ハサミ、ALLEXの事務ハサミ、サンスターのロングハサミ

 筆者が自宅の納戸(書斎)で普段からよく使っているハサミはいつも3本。1本はALLEX(林刃物)の典型的な“事務バサミ”。何の変哲もないデザインのハサミだが、もうかれこれ20年近く、ほとんどのモノをこのハサミで切っている。一番出番の多いハサミだ。

 続いて、比較的よく利用しているのが全長35cmを超える超長いハサミ。これは新聞や雑誌、プリントアウトしたA4用紙などの長い距離を安定して一気に真っ直ぐに切ることができる、素晴らしいハサミだ。

 そして3本目の“角丸”ハサミは、出番は少ないが、いつも確実にニッチな目的を達成してくれる。

 そんな筆者の“ハサミファミリー”に久しぶりに4番目のハサミになろうというのが、市場へ登場して間もない「ハコアケモード付ハサミ」だ。直感的に分かるネーミングの通り、開梱作業が簡単になるという2Wayハサミで、通常のミディアムサイズのハサミというカッター1台2役を果たせる。

「ハコアケモード付きハサミ」は、相変わらず“ネーミングの勝利”なコクヨ製だ
グリップを開くと普通のハサミに見えるが、左の刃先の欠けているのが面白い

 ハサミの一方の刃先に、子供などが扱うには少々危険なカッター機能が仕込まれているが、ハサミとしての使用中はカッター刃が露出しない安全構造を採用している。

 安全への配慮はハサミの刃先をカバーする標準付属の鞘(カバー)にも現れている。

 「ハコアケモード付ハサミ」をカッターとして開梱作業に使うには、一方の刃のグリップ部分に配置されている“ハコアケモードスイッチ”を前方にスライドさせて、バネで反発するハサミの両方のグリップを隙間のないようにしっかりと握る。すると、刃先の欠けた部分からカッター刃が最大で1mmだけ露出する。

 握る手をうっかり緩めてしまい、リップがバネの力で押し戻されると、カッター刃はすぐに後退して姿を隠してしまう。グリップを緩めた時と、ハコアケモードスイッチを前に押し出しグリップをしっかりと握った時の刃先を見てみると一目瞭然だ。

緑丸の中のハコアケモードスイッチを前にスライドさせると……
緑丸の中のハコアケモードスイッチを前に押し出し、ハサミのグリップをしっかりと握ると、赤丸の先端位置にハサミのもう一方の刃先が露出してカッターになる仕組み

 カッター刃を出した状態でグリップをしっかり握って、宅急便のテープ接合面に刃先をあてがいカッターのように引くことで開梱が可能となる。通常のカッターのように刃先が長く露出することはなく、梱包のテープだけでを上手く切り開き、間違ってうっかり内容物まで切ってしまう危険性も皆無だ。

 ハコアケモード付ハサミは、安全を重視しながら、ハサミにカッターの機能も併せ持たせた現代にピッタリの複合機能ハサミだ。しかし、目指す理想とは違って、安全性と利便性は必ずしも両立するものではない。筆者は、ハコアケモード付ハサミも同様の問題を抱えていると感じた。

キャップは安全確保の目玉だが、取り外すにはコツかチカラが必要だ

 ハサミの刃をカバーするキャップは外すのに少しコツが要る。小さな子供にはパワー不足で取り外せない心配があるとともに、不用意に力いっぱい引っ張ると逆に別の危険性もありそうだ。

 ハコアケモードスイッチを利き腕の親指で前にスライドさせながら、ハサミのグリップを握ることも最初は少し難しい。また、一般的なカッターのように棒状ではないので、ハサミのグリップ部分が手のひらの一番柔らかい部分に当たって痛く感じるときがある。

 多機能ハサミも時代のトレンドではあるが、ハコアケモード付きハサミが筆者の4番目の日常使いハサミに成り上がるには、もう少し使い込みが必要な感じだ。あくまで超主観的な意見なので、読者諸兄は各自で自分の手と相談してみることをおすすめする。

製品名販売元購入価格
2Wayハサミ ハコアケコクヨ1000円