スタパ齋藤の「スタパトロニクスMobile」

ワイヤレス軟骨伝導ヘッドホンATH-CC500BTが想像を遥かに超えていた!!!

いい音で音楽を聴きながら、外の音がそのまま聞こえる

 えっ「軟骨伝導ヘッドホン」って? ナンコツ伝導ってナニ? 骨伝導じゃなくて? と俺の頭上に「?」マークが多々浮かんだのは↓このニュースを読んだから。

 耳に音が伝わる経路としては、「気導経路」と「骨導経路」の2経路があったが、2004年に第3の経路「軟骨伝導経路」が見つかったそうな。詳細は上記ニュースにあるが、軟骨伝導は、耳の軟骨→外耳道の「壁の軟骨」へと伝わり、その中で空気が振動して音が発生し、それが「鼓膜」を揺らして「蝸牛」に届いて音が聞こえるという仕組みらしい。

 で、この軟骨伝導を利用したワイヤレスヘッドホンが発売された。オーディオテクニカの「ATH-CC500BT」である。メーカー曰く「耳がスピーカーになるようなイメージ」で音楽を聴けるワイヤレス軟骨伝導ヘッドホンだそうだ。

オーディオテクニカ「ATH-CC500BT」は耳に音が伝わる第3の経路「軟骨伝導経路」を利用したワイヤレスヘッドホン。ベージュとブラックがあり、メーカー直販価格は1万7600円。

 んでんで、上記ニュースの端々に「高音質な音楽再生」的なフレーズが登場する。メーカーの製品サイトも同様で、どうやら「音楽再生時の音の良さ」を備えつつ外の音がつねに聞こえるヘッドホンらしい。

 骨伝導ヘッドホンは外の音がつねに聞こえて音楽も聴けたが、音楽の音質はあ〜んまりよくなかった。ほかにも外の音が聞こえつつ音楽も聞こえるというヘッドホン製品はあったが、音質をウリにしている製品はあまりなく、実際に使ってみても「まあ音質はちょっと我慢かな」と思ったりした。

 オーディオテクニカ「ATH-CC500BT」は軟骨伝導により高音質を実現したっぽい。外の音が丸聞こえで高音質。非常にかなり超スゲく興味津々。

 というわけで、予約購入して10日ほど使ってきた。以下、「ATH-CC500BT」のレビューをお届けするが、ココで俺的結論を書いちゃうと……「ATH-CC500BT」はマジで音がイイ。俺内部では音楽を聴くヘッドホンとして骨伝導ヘッドホンは終わった。耳の穴塞がない系のほかのヘッドホンもわりと終わった。そして「ナンか聴きながら外の音もちゃんと聞く」という用途において「ATH-CC500BT」が超絶ウルトラ始まりまくりであって現時点で最高に最強で非常(以下略)。

「ATH-CC500BT」はどんなヘッドホンか?

 ワイヤレス軟骨伝導ヘッドホン「ATH-CC500BT」は、ネックバンドタイプのBluetoothステレオヘッドホン。後頭部を通るバンド部が2つのヘッドホンを接続するタイプですな。Bluetooth 5.1対応で、オーディオコーデックはSBC、AAC、aptX、aptX HDに対応している。実勢価格は1万7600円前後。

「ATH-CC500BT」は、ネックバンドタイプのワイヤレスヘッドホン。こんなふうに装着する。
正しい装着方法はこちら。オンラインマニュアルより抜粋。
右側振動ドライバー部に電源ボタンがある。ペアリングのためのボタンでもある。
左側振動ドライバー部に再生/一時停止ボタンがある。Siri/Google Assistant呼び出しボタンでもある。
左側振動ドライバー部の下側には、音量調節ボタン(曲の送り戻しボタン)や充電用のUSB-Cポートがある。連続音楽再生時間は最大約20時間で充電時間は約2時間。約10分の充電で約2時間使用可能な急速充電にも対応している。

 てな感じのシンプルなワイヤレスヘッドホンだ。マイクも内蔵し、通話やオンライン会議で使うこともできる。また独自の「AIノイズリダクション(AIVC)」を搭載し、話した声のみを抽出してその音のみクリアに相手に伝えられるそうだ。

うっそ〜ん!? いきなりイイ音で驚いた

 この「ATH-CC500BT」については、使い始めた瞬間から驚いた。
 パッケージを開き、まずはMacとペアリングして使い始めた。MacからはいつもBGMを流していて、その音はディスプレイ下のスピーカーから出している。スピーカーはボーズ「Companion 20 multimedia speaker system」

ディスプレイの下にPC用スピーカー「Companion 20 multimedia speaker system」を置き、ここからBGMを流している。音楽を聴きながら仕事、みたいな。
ompanion 20 multimedia speaker systemはバランスよく音楽を鳴らすタイプのスピーカーだと思うが、高音はやや抑えめという印象。ながら聴きをするには疲れなくてナイスな音質である。

 MacのミュージックアプリでBGMを流した状態で、「ATH-CC500BT」をMacとペアリング。MacにBluetoothヘッドホンがつながると、ミュージックアプリからの音は自動的にスピーカーからヘッドホンに切り替わる。「ATH-CC500BT」を接続したこのときも、音はスピーカーから「ATH-CC500BT」に切り替わったのだが……。

 一瞬何が起きたかよくわからなかった。流れていたBGMはそのまま流れ続けている。

 「あれ? 『ATH-CC500BT』が接続されてない? 『ATH-CC500BT』が認識されなかった?」と思ってシステム環境設定のサウンド項目をチェックしつつ気づいた。「あっ『ATH-CC500BT』から音出てるんだ!」と。

 文章だと「なに言ってんの?」って感じだと思うが、Companion 20 multimedia speaker systemから出ていたBGMが、「ATH-CC500BT」から出るように切り替わったのに、数秒間俺は気づかなかった。俺の耳には、BGMはほぼ同じ音質で聞こえていて、外音も入ってきていた。

 つまり、音が聞こえる気導経路(スピーカー)が軟骨伝導経路(ATH-CC500BT)に切り替わったことに気づかなかった。そのくらい「ATH-CC500BT」からの音は自然であり、さらに高音質に感じられた。
 うっそ〜ん!? んもぉ〜声が出ちゃった♪ 「マジでこんな音イイのかーッ!!!」って。

 この音質は骨伝導ヘッドホンと比べちゃダメなレベル。比べるとあまりにも骨伝導ヘッドホンが不利である、と思うほど高音質。また、俺がこれまで使った「外音がそのまま聞こえつつ音楽も聴ける」という(外音導入ノイズキャンセリングヘッドホンを除く)製品と比べても、「ATH-CC500BT」のほーがだいぶ高音質だと感じられる。

 音質については、全体的にはバランスがよく「ながら聴きを高音質で楽しむ」によく向くと思う。ただ、パンチのある厚い低音はあまり出てくれない(アプリでBassBoostをオンにすればある程度は改善できる)。全体的にパワフルさにやや欠ける音質だが、ヴォーカル域が意外なほど美しく響くのは想像外であった。

 ともあれ「高音質でながら聴き」をするための製品と考えれば十分満足できる音質だと思う。「この音質なら“ながら”じゃなくて“集中”して聴けるョ!」という人も少なくないと思う。

 より音楽をじっくり聴き込むと? ほかの高音質系ヘッドホン類と比べれば、「ATH-CC500BT」はまだまだ力不足と言えよう。ただ、外音がそのまま聞こえることが「ATH-CC500BT」の大きな実利であり、その上で高音質なのが「ATH-CC500BT」の美点だ。まあ外音が聞こえるヘッドホンで「音楽をじっくり聞き込む」のはけっこう矛盾していると思うので、真剣な音楽鑑賞は「ATH-CC500BT」の用途範囲外だと思う。

 それと、最大音量はわりと控えめ。最大にしてもウルサイというレベルまで届かない感じで、街中の騒音に音楽を邪魔されない程度までの音量くらいにしか上がらない。まあでも抑えめの最大音量が実用性を下げているわけではないので、大きな問題だとは感じられない。というか、軟骨伝導というのはあんまり音量が上がらないとかそういうものなのかもしれない。

 一方で音の漏れは少ない。最大音量にした場合、1mくらいの距離にいる人には「なんかシャカシャカ音が聞こえるかも」感じることがある。だがソレは高音が強め多めの曲の場合で、やや穏やかなアコースティック系の曲だと最大音量にしても音漏れはほぼ聞こえない。

 いや〜でもまあホネ伝いに聞こえるヘッドホンで、ここまでイイ音が実現されるなんて想像していなかったっス。ほんとビックリ。いや正直に言って「想像を遥かに超える音質」だと感じている。

 ちなみに、「ATH-CC500BT」は電源オン時にギターの音、電源オフ時にバイオリンのピチカート音がする。「この音の良さを聴け〜」みたいなドヤ音とも言えるが、メーカーとして音質に自信があることがよくわかる。そしてホントに高音質なのでぜひ試聴してみてほしい。

装着感は非常に軽快、耳の付近を押される感じも希薄

 「ATH-CC500BT」の重さは35gで、(俺のデカ頭でも余裕で装着できることから)ネックバンドタイプとしては余裕のあるサイズ感だと思う。装着は耳に掛ける感じだが、重みはあまり感じられず、左右振動ドライバー部が耳付近を挟んで押すような感触も希薄。

 同タイプのヘッドホンと比べると、「ATH-CC500BT」は「とりわけ装着が容易」だと感じられる。広げて両耳に掛ける程度の動作で、耳にしっかり掛かり、左右振動ドライバー部がピタリと耳前方の軟骨部にフィットする。一発でキマる感が高く、非常に気分良く使い始められる。

 骨伝導ヘッドホン類をけっこうアレコレ使った俺としては、「ATH-CC500BT」は同様の装着スタイルのヘッドホンとしては最も軽快な装着感だと思う。装着して数分すればその存在感は非常に希薄となり消えていくような感覚。

 誤解を恐れずに言えば、メガネをかける程度の感覚で常時装着していられるのが快適だ。メガネ+「ATH-CC500BT」でも、少し慣れるとかなり希薄な装着感で使い続けられる。そのわりに顔を上下左右に振ってみたりしても外れたりズレたりは、まずしない。

 防塵防水等級はIPX4で、防塵ではないが、防水は「あらゆる方向からの飛まつによる有害な影響がない防まつ形」。防滴形や防雨型よりも高い防水性なので、スポーツなどのアウトドアシーンや水回りの家事での使用にもフツーに対応してくれそうだ。

 この軽く自然な装着感で、十分いい音で音楽を楽しみつつ、外音もそのまま聞こえる。人によっては「使い始めたら結局寝るとき以外ずっと着けている」みたいなことにもなりそうな気がしたりする。

操作性にややクセがあるが、すぐ慣れられるレベル

 「ATH-CC500BT」を使い始めて数度「この操作感はどうなの?」とか思ったのが、ボタンとその機能だ。たとえば左右振動ドライバー部にあるボタン。左側が音楽再生/一時停止やSiri/Google Assistantの呼び出しや受話/終話で、右側が電源オンオフやペアリングのためのボタンとなる。

 覚えちゃえばいいだけの話ではある。が、左右ともボタン形状が同じで位置も同じなので、「ATH-CC500BT」使い始めは「あれ? どっちが何だっけ?」と混乱した。

 再生ボタン2度押し3度押しで曲の送り戻しに慣れている俺の場合、「ATH-CC500BT」の曲送り戻しには戸惑った。「ATH-CC500BT」の曲送り戻しは音量アップダウンボタンの長押しなのであった。

 でもまあ、そのあたりは好みの問題。そして慣れの問題。……でも、せっかくアプリがあるんだし、アプリ上とかでボタン機能の割り振りができたらサイコーなのに、と思ったりした。

「ATH-CC500BT」は「Connect」アプリに対応している。アプリでバッテリー残量や使用中オーディオコーデックを確認したり、説明書を読んだりイコライザーの調節をしたりガイダンス言語を変更できたりするが、ボタン類の機能変更などは不可なのであった。残念。

 でもヒッジョーにナイスな「ATH-CC500BT」。「外の音が丸ごと聞こえ」て「音楽再生時の音質もかなり良い」ヘッドホンなのである。刺さる人にはブッスゥゥゥ〜と深く刺さると思うし、さらには刺さった場合「コレで1万7600円って安いかも!」と喜べる可能性が高いので、興味のある方はぜひ試聴してみてほしいッ!!!

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スタパ齋藤

1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。