スタパ齋藤の「スタパトロニクスMobile」

最新電子ペーパー・デバイスを鋭意試用ッ!!! そして思わず買(以下略)

PDFを閲覧できて、紙のように書くこともできる、QUADERNO Gen.2

富士通クライアントコンピューティング「QUADERNO(クアデルノ)Gen.2」

 ここ数年、な〜んか電子ペーパーデバイスが気になる俺。一昔前は「同じものを表示し続けるならツカエル」という印象だったが、日進月歩でデバイスの性能が上がり、最近では「個人で汎用するにも実用的かも」という雰囲気になってきた。紙の代替品として書いたりするのに使えつつ、デジタルなドキュメントを表示するのにもツカエルかな、と。

 そこで最新の電子ペーパーこと富士通「QUADERNO(クアデルノ) Gen.2」を試用してみた。2021年7月8日発売の第2世代QUADERNOですな。

 結果、価格は考えようではあるが、使ってみると予想を超えて便利で、ワクワクする使い勝手さえ備えていた。というわけで、今回はQUADERNO Gen.2(以下、QUADERNO)の使用感をレビューしてゆきたいッ!!!

QUADERNOは、PDFの表示や書き込み、専用ペンによる手書きを行える電子ペーパーだ。左がA4サイズ (FMVDP41)で右がA5サイズ(FMVDP51)。富士通WEB MARTでの直販価格は、A4サイズが6万9800円、A5サイズが4万9800円

 なお、QUADERNOを選んだ理由は、「これならヤリたいことがデキそう」と思ったから。やりたいのは、製品説明書PDFの表示、ちょっとした書類(PDF)の保存と表示、それから日常的なメモ書きといったあたり。

 QUADERNOで扱えるファイルはPDFのみだが、専用ペンで書いたり描いたりしたものをPDFファイルとして保存することもできる。しかも、けっこう気持ちよく、なかなか楽しくデキるのであった♪

クッキリ&ハッキリのPDFビューワ、表示速度もそこそこ速い

 QUADERNOの概要〜詳細については、公式ページが非常に詳しいのでソチラにお任せ。ここでは触れて使ってみた実感をアレコレと書いてゆきたいッ!!!

 まず実機に触れて軽く驚いたのが、薄さと軽さ。A4サイズ(ほぼA4大)は幅約222.8×高さ約301.1×厚さ約5.7mmで、質量約368g。A5サイズ(A5より一回り大き)は幅約173.2×高さ約242.5×厚さ約5.9mmで、質量約261g。薄くて軽〜い♪ A4サイズの方でも立ったまま片手で持ってラクに使えるという印象だ。

軽くて薄いQUADERNO。とくに薄さが際立ち、A4サイズもA5サイズも厚さは6mm未満なのであった。ただ、軽い一方で、堅牢性はさほど感じられない。無理な力をかけると軋みそう

 両サイズとも、内蔵メモリー容量は32GB(使用可能領域は約22GB以上)。1ファイルあたり約2.2MB のPDFファイルが約1万ファイル入る容量だとしている。俺が入れたい説明書などのPDFは20MB以上あるものが多いので、約1000ファイルくらいなら入りそう。もっと大きいPDFファイルでザックリ考えても、まあ数百のファイルが入りそうなので、十分かもしれない……というか、数百冊の説明書や多数のドキュメントをこの薄さ軽さで持ち歩けて利用できつつ、手書きメモや描画といった用途に使えるとなると、使用前からなんだかワクワクするのであった。

 さておき、早速QUADERNOにPDFをコピーして表示させてみると……おっ♪ クッキリ&ハッキリとした表示でいきなり好印象。これなら長時間見続けても目への負担が少なそう。

 また、表示の切り替わりは液晶ディスプレイなどと比べると若干時間がかかるが、遅いという感じではない。ページ送りなどは1秒未満で切り替わっていると思うが、白黒が明滅する瞬間があるので「表示を切り替えているんだな」と意識しがちで、表示速度が気になりがちというのはある。しかし試用を通しての全体的な表示速度はそこそこ速く、実用レベルだと感じられた。

 さておき、実際の画面表示を写真とともにいくつかお見せしたい。なお、写真は断り書きがない限りA5モデルの画面だ。

QUADERNOを使う俺的目的のひとつが「新たに買った製品の説明書PDFの保管と閲覧」だ。写真は家電製品の説明書PDFをQUADERNOで表示したものだが、十分クリアな表示で問題なく読める。また、ピンチイン・アウト操作で拡大縮小ができ、最大2000%まで拡大できるので細かな文字もしっかり読める。なお、複数ページのPDFはサムネイル表示から目的のページを選ぶことができる
PDFは単一ページ表示、見開き表示ができ、ページ方向の指定にも対応。別のPDFを左右に並べて(もしくは同じPDFの別ページを左右に並べて)表示することもできる。ここでは敢えて別製品のPDFを並べたが、実際には同じ製品のクイックガイドと詳細マニュアルを並べて閲覧するようなことができるわけですな
メニューは画面上に表示される。PDF操作などのメニューは、本体上部のボタンを押すと表示される。表示中のPDFに対する操作は、画面右上の「…」アイコンをタップして開く。画面左上の「三」アイコンから最近使ったPDFを呼び出すこともできる。メニューが複数あって使い始めは少し戸惑うが、数度操作して慣れると「なるほどね」と納得できるメニューの切り分けがしてある
試しに写真を埋め込んだPDFを表示してみると……一応はグレースケール表示(16階調)がなされて「まあまあ見られる」という印象
A4サイズQUADERNOで、サンプルのプレゼンPDFを表示してみた様子。写真を表示すると16階調グレースだと物足りないが、こういったプレゼン用ドキュメントなら特に違和感はない。A4サイズQUADERNOなら、表示サイズにおいて少人数相手のスライド提示などにも好適だと感じられる
楽譜はどうかな? これもクッキリとキレイに表示されるが、A5サイズQUADERNO(左)だとちょっと手狭な印象になる。右はA4サイズとA5サイズを並べたもの。楽譜表示はA4サイズの方がやはりイイ感じですな

 ほか、昔に自分でPDF化した(つまり自炊した)紙の書籍(200ページ弱/約130MBくらいが多い)をQUADERNOにいくつか入れて読んでみた。多くのケースで最初の読み込み時に数秒程度待たされるものの、以降はスムーズにページめくりなどして読んでいけた。

 ただし、各ページをサムネイル一覧表示させると、ページ数が多い本ほどサムネイル表示までに時間がかかるという印象になった。まあ時間がかかると言っても数秒から十数秒って感じスけどね。でも、ページ数の多い自炊書籍を中心にQUADERNOで扱おうと考えるなら、たぶんタブレット端末の方が処理速度において快適だと思う。マンガ本をテンポよくページめくりしてブラウズしていくような用途において、QUADERNOだとややストレスが溜まると思う。

PDFは、QUADERNOにどう入れる?

 QUADERNOでPDFファイルを扱うには、まずどうすればいいのか? PDFファイルをQUADERNO上に入れる必要がある。やり方としては、PC用アプリ(Windows/macOS)やスマートフォンアプリ(Android/iOS)を使う方法、スキャナー(ScanSnap)から読み込む方法、専用デジタルペンで書いたり描いたりしてPDFを生成する方法がある。これもまた、非常に詳しい方法が公式ページで紹介されている。

PC用の連携アプリ「QUADERNO PC App」。QUADERNO内のPDFファイルを効率よく扱えるアプリで、PC上のPDFをドラッグ&ドロップすればQUADERNO上にコピーできる。逆も同様、QUADERNO上のPDFをPC上のフォルダなどにドラッグ&ドロップすれば、QUADERNOからPCへとPDFを取り出せる。QUADERNOとPCの接続はUSB/Wi-Fi/Bluetooth。QUADERNOとPCを接続し、ほぼリアルタイムでQUADERNO上の表示をPC上にミラーリングでき、その画像をキャプチャーすることもできる。このアプリを使えば、PC上の各種ファイルを印刷する過程でPDFへと変換しつつ、QUADERNOへPDFとして転送することができる
スマートフォン用の連携アプリ「QUADERNO Mobile App」。QUADERNO←→スマートフォン間でのPDFコピーが行える。NFCによりタッチする程度でPDFコピー(Wi-Fi経由)が行えたりしてなかなか快適
テキトーな落書きでスマンのだが、専用ペンを使いQUADERNOになにかを書いたり描いたりすれば、それがPDFファイルとして自動保存される。テンプレートも多数用意されている

 専用ペンで描くと、それがPDFとしてQUADERNO上に自動保存されるので、じゃあそれをPCやスマートフォンに転送すれば、どんなスマートデバイスでも手書き対応って感じで使えるかも♪ と期待したわけだが、QUADERNOからPCやスマートフォンへのPDF転送が意外にスムーズなので、そういった用途にも活用できそうだ。

 つまりQUADERNOで図や絵や手書きメッセージを描いて、それを(PDFのままかPDFスクリーンショットで)添付などして使えるョ!!! みたいな。電子ペーパーデバイスとして、ビューワ+αの活用幅がありそうですな♪

 また、スマートフォンとの連携が比較的にスムーズなので、クラウドに置いたPDFをスマートフォン経由でQUADERNOにコピーするのも現実的な使い方だと感じられた。こういうことができるので、QUADERNOの容量不足やクラウド接続非対応といった点はあまり問題にならないように思う。

 なお、PCやスマートフォンとの連携時、QUADERNO側でWi-Fiなどの通信手段をオンにし続けていると、けっこう速くバッテリーを消耗するようだ。必要な時だけQUADERNO側の通信をオンにするという使い方が無難かもしれない。

書き心地がイイ!!! QUADERNO欲しい!!! つーか買ったッ!!!

 第2世代QUADERNOには定評のある「ワコムデジタイザ」が搭載された。また最新E Inkディスプレイも世界初採用だそうだ。で、専用デジタルペンによる実際の書き(描き)心地はどうなのか?

 俺的結論から言えば、手書きでメモを取ったり、簡単なイラストを描いたり、あるいは自由気ままに落書きしたりするにおいて、全然問題ナシの書き心地だと思う。意識して速く書くと、線が現れるのにごく僅かな遅延が見られるものの、通常使用では気にならないレベル。ペンに対する描線の追従性は十分高い。試用中、線が途切れたりヘンな方向に描かれたりといった違和感も全然なかった。

再度テキトーな落書きでスマンスって感じだが、紙と鉛筆の感覚でラフにどんどん描いて行っても、線の端までしっかり追従して奇跡として残してくれる。右の拡大表示を見ると、ペンに対する描線の追従性が高いことがよくわかる。かなり高精度・高感度なデジタイザと言えよう。素晴らしい

 また、ペン先と画面の抵抗感が絶妙で、柔らかめの芯の鉛筆やシャープペンシルで紙に書いているような感触がある。こういう「書いたり描いたりできるデジタルペンと画面」で、いきなりこの書き心地は大したモンだと言えよう。恐らくだが、多くのユーザーが「第2世代QUADERNOなら追加画面フィルムやペン操作練習は不要」と感じるのではないだろうか。とても良いデキだと思う。

ペン先と画面が擦れる感じは紙と鉛筆にかなり近い感じがする。ペンを走らせたときの音もそうだ。前述のデジタイザとしての高精度・高感度と併せ、スムーズかつ心地よく書ける電子ペーパーだと思う

 ……ヤバい、この電子ペーパー気持ちいい。何となく毎日、日々の事柄を手帳に記録しつつ、その横に落書きしたりしている俺だが、「んんんん〜、それをQUADERNOでやったらいいのかもなぁ〜」とか考え始めてしまった。やべえQUADERNO欲しい。

 でも、そういうことは手持ちのiPad Proでデキるんでは? と俺の逆ゴーストが囁くのであった。確かにね〜、PDFはクラウドに入れてiPad Proで閲覧したりすればいいし、iPad Proで写真を撮ってそれをPDF化する方法もあるし、そもそもiPad ProならApple Pencilで快適に書いたり描いたりできるし!!!

 でも、iPad Proでいいじゃんとは言えない理由が「軽〜い」「薄〜い」「長時間使える」という自由さに加えて、紙と鉛筆のような「書き心地の良さ」なのでは? QUADERNOとiPad Proは別物として適材適所があるのでは? コツコツでツルツルのApple Pencilより紙と鉛筆のQUADERNOが気持ちよいのでは!? ではッ? と俺の裏逆ゴーストつまり本来のゴーストが囁くから、その囁きを素直に採用ッ!!!

 ということで、この原稿を書き終える前に、「QUADERNO A5 (Gen.2) FMVDP51」をポチッと購入した俺なのであった。4万3550円だったゼ!!! やべぇ自分で借りて試用して原稿書きつつ自分を煽りつつ、自分を購入に追い込んだのは久々だゼ〜っ!!! ……ん!? 久々……だっけ?

 ちなみに、購入したのはA5モデル。A4の方が広々していて活用幅も広そうで良さそうだったのだが、気軽という点ではちょっとサイズが大きいかな、と。携帯もしにくそうだし。というわけで、とりあえずA5のほうを。

 QUADERNOは、PDFを入れて表示したり、PDFに書き込んでそのPDFを取り出したり、書いたり描いたりしてPDFを作ったりする“PDF専用で機能を絞ったハードウェア”。こういうハードは息が長そうな気がする。ので、A5サイズの方をじっくり使って感極まったりしたら、「大きく見るために」ということでA4サイズも買っちゃうかも〜と思っている俺なのであった。

 ともあれ、そんな感じの第2世代QUADERNO。刺さる人には深く刺さると思われるので、ぜひ、感染対策をしっかりしつつ、どこかで実機に触れてみて欲しい。

スタパ齋藤

1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。