スタパ齋藤の「スタパトロニクスMobile」

ひと味違う無線イヤホン「Xperia Ear Duo」

外の音が直接聞こえる左右分離Bluetoothヘッドセット

 今回はソニーモバイルの「Xperia Ear Duo」(公式ページ)について。2018年4月21日に発売された製品で、左右独立タイプの完全無線のステレオヘッドセットです。スマートフォンや音源との接続はBluetooth。実勢価格は2万9000円前後。

ソニーモバイル「Xperia Ear Duo(XEA20)」。Bluetooth接続の左右分離タイプ・ステレオヘッドセットで、音楽聴取や通話などに利用できます。耳穴に当たる部分には外音が直接聞こえる穴があいていて、音楽などと外音がミックスされて聞こえます。音楽などと周囲の環境音を同時に聞くことができるというわけです。カラーはブラックとゴールドがあります。バッテリー内蔵充電器になるケース付き。
左写真のように、耳の下側に掛けて使います。重量が分散されるため、自然な装着感があり、やや激しく動いても耳から落ちにくいフィット性があります。通常使用に加え、「音声による情報を受けるヘッドセット」として常時装着ができるほか、IPX2の防滴仕様なのでスポーツやアウトドアアクティビティにも向きます。

 筆者の場合、このXperia Ear Duoで、最近のソニー製左右分離タイプ・ステレオヘッドセットは3機種目の購入となります。1機種目はノイズキャンセリング機能搭載の「WF-1000X」(レビュー記事)。2機種目は防滴でスポーツ向けでノイズキャンセリング機能搭載の「WF-SP700N」(レビュー記事)。どちらも音質・使い心地ともに良好で、外の音を敢えて取り込めるアンビエントサウンド(外音取り込み)モードを搭載しているなど、その機能性についてもかなり気に入っております。

 で、今回レビューするXperia Ear Duoですが、上記2機種とはちょっと毛色が違う製品。でも上記2製品と同様に左右分離タイプの完全ワイヤレスですし、機構は異なるものの外の音が聞こえる点でも似ているということで、興味津々で購入した次第です。ともあれ以降、このXperia Ear Duoの機能や使用感について見ていきましょう。

 なお、Xperia Ear Duoはその製品名からもわかるとおり、どちらかと言えばXperiaなどのAndroid端末向けのヘッドセット。Android端末と組み合わせて使った場合、声で音楽再生やウェブ検索などを操作したり、Xperia Ear Duoを最大5人でトランシーバー的に使えたり、LINEのAI「Clova」と連携させてメッセージ作成・送信や音楽(LINE MUSIC)の再生を行うことができます。でもiOS端末と組み合わせて使った場合、これらの付加機能を使うことはできません。これは専用アプリ「Xperia Ear Duo」のAndroid版/iOS版の機能の違いからです。

 本稿はXperia Ear DuoをiOS端末と組み合わせて使ってのレビューです。上記のような付加機能はiOS端末では利用できないので、本レビューはXperia Ear Duoをわりと純粋にヘッドセットとして使用したときの使用感レポ、てな感じです。Android端末との組み合わせについてはほとんど触れていませんので、あしからずご了承ください。

どんなヘッドセットか? ほか2つのソニー製品との違いは?

 まずはXperia Ear Duoの概要から。前述のとおり、左右分離タイプの完全ワイヤレスヘッドセットで、音楽聴取や通話に使えるほか、SiriやGoogleアプリなど音声AIアシスタントの音声利用のためにも使えます。無線方式はBluetoothで、Bluetooth 4.2 Low Energyに対応。対応BluetoothコーデックはSBCとAAC。ペアリングは8台までのマルチデバイス接続が可能です。イヤホン(片側)のサイズは約17.5×59.6×10.2mmで、質量は約10.6g。

 充電式で、音楽再生時間は約4時間、連続通話時間は約 2.5 時間。充電はバッテリー内蔵の付属専用ケース(サイズ約89×25mm/質量約76g)で行い、ケースがフル電の状態ならイヤホンを3回フル充電にすることができます。また、7分の充電で約1時間再生が可能になる急速充電にも対応。ケースへはUSB Type-Cケーブルで充電します。なお、Xperia Ear Duoの電源オンオフは、ケースへセットするとオフ、ケースから出すとオンになり、使用中にスリープ状態になった場合の復帰はイヤホン横のタッチバッド長押し(約1秒)です。

購入したXperia Ear Duoのカラーはゴールド。金というよりシャンパンゴールドという感じです。SONYロゴがある長い楕円の部分がタッチパッドで、ここをタップなどして操作できます。音を発生させる部分はタッチバッドがある側に内蔵され、導管を通して耳穴の近くに音を出すしくみ。
付属のケースは充電器を兼ねています。ケースをフル充電にすると、イヤホンを3回フル充電にできます。ケース自体はUSB充電(コネクタはUSB Type-C)。イヤホンはケースにマグネットで吸着されるかたちで収まります。フタはバネ式で、不意には開きにくい開閉感です。

 左右独立タイプということで、ソニー製の左右独立タイプヘッドセットの「WF-1000X」(公式ページ)や「WF-SP700N」(公式ページ)と比較してみましょう。それぞれ製品の指向性が異なります。以下は、3機種の主だった機能・性能の比較表です。

左から、WF-1000X、WF-SP700N、Xperia Ear Duo(XEA20)です。ソニーストア税別価格は、WF-1000Xが2万4880円、WF-SP700Nが2万2880円、Xperia Ear Duoが2万9880円。
WF-1000Xが音質重視でノイズキャンセリング対応、WF-SP700Nは防滴でノイズキャンセリング対応。Xperia Ear Duoはこれら2つとは方向性が大きく異なる製品であることがわかります。※表はメーカーウェブサイトより抜粋。

 WF-1000XとWF-SP700Nでは、ノイズキャンセリングという点でカブりつつ、音質を取るか防滴性能を取るかで、ちょっと選択に悩む2機種という感じ。これからの季節だとやっぱりWF-SP700Nが魅力的ですが、左右分離タイプでのノイズキャンセリングの効きとなるとWF-1000X、みたいな。

 Xperia Ear Duoは、後述しますが、音楽をじっくり楽しむという意味では構造上WF-1000XやWF-SP700Nと比べられません。これら2機種と違い、Xperia Ear Duoは「常に外の音が聞こえてくるヘッドセット」ですし、また最大音量もあまり大きくありませんし、音質も少し落ちます。ですので、常時装着してヘッドセットを使いたい、音声AIアシスタントを積極的に使いたい、XperiaなどAndroid端末と組み合わせて幅広く活用したい、というユーザー向けと言えそうです。

 ただ、Xperia Ear Duoが音楽聴取などにさほど向かないのかと言えばそうでもありません。たとえば「外の音が聞こえて欲しいシーンでBGM的に音楽を聴きたい」には好適。「耳に負担がかからないヘッドセットが欲しい」「ヘッドセットを着けっぱなしにしたい」を重視しつつも、ある程度の音質で音楽を流したいという向きにも、Xperia Ear Duoはけっこうイイかな、と。

装着感や音質はどう?

 独特な形状のXperia Ear Duoですが、装着方法もちょっと独特です。耳の下から、耳を挟み混むように装着します。具体的には、耳たぶを少し引っ張りながら、耳たぶをXperia Ear Duoで挟むように……するんですが、ちょっと慣れが必要。普通のイヤホンより装着が面倒ですが、装着後は意外なほど自然で軽快な装着感です。筆者の場合ですが半日着けっぱなしにしてもOKって感じ。

 また、激しく動いても落ちたりせず、そうしたときの擦れによるノイズも(出ているとは思いますが)ほとんど気になりません。それから、装着状態で比較的に目立ちにくいという点も好印象です。

こんな感じで、両手を使って耳に装着します。最初はちょっと面倒ですが、慣れればわりとスムーズに。少し工夫すれば片手で装着することもできます。※図はXperia Ear Duo説明書より抜粋。
実際に装着した様子。前方から見ると、かなり目立ちにくいイヤホンであることがわかります。耳にかかる質量的な負担が分散されているためか、耳の一部だけにかかるような違和感がなく、長時間着けていても耳が痛くなりにくいと感じられます。

 装着状態、真横や後ろから見ると、ちょっと目立つという印象はあります。ただ、前方からや斜め前方からだと、細い導管と耳に入る丸い部分が少し見える程度。左右分離タイプの完全ワイヤレスヘッドセットとしては、「真横や後ろから見ない限りかなり目立たない」と言えるでしょう。

 また、耳の下側に装着し、耳の上側には何ら影響がないため、メガネやサングラスを装着している状態でも問題なく使えます。ただ、装着時に耳たぶを引っ張る必要があったりするので、ピアスやイヤリングと干渉するかもしれません。

 音質面ですが、音量はあまり大きくはできません。BGM的に音楽を聴くには十分の音量ですが、音楽をじっくり聴き込むには、ちょっと物足りない音量かもしれません。また、耳にそのまま外の音が入ってきますので、外の騒音などが大きな通りや賑やかなショップ内などでは「音量を上げても周囲がウルサくて音楽がよく聞こえない」という状態にも。このイヤホンの構造上、外の騒音には対処できません。

 音質ですが、わりとイイ音。ジックリと聴き込む聴き入るには平凡な音質ですし、音量も抑えめという印象ですので、「BGMとして聴いた場合」という条件付きですが、良好なバランスの音が出ていると感じられました。

 そんな音が鳴りつつ、外からの音が遮られずに耳に入ってきます。周囲の音は、BGM的に音楽を流している状態でもごく小さな音で無い限りほぼ全て聞こえる感じ。環境音的な開放感がありつつ、まずまずイイ音でBGMを聴くこともできるあたり、Xperia Ear Duo独自の良さ楽しさです。

 なお、Xperia Ear Duoは耳への装着感も自然で耳が痛くなりにくいことに加え、防水性能はIPX2。「垂直より左右15°以内からの降雨によって有害な影響を受けない」というレベルの防滴形ですので、汗をかく運動においても使用できると思います。

全体的な使用感と難点

 全体的な使用感ですが、総じて「慣れればけっこう快適」という印象です。たとえば前述の「耳への装着」ですが、筆者の場合は最初は手こずって「いちいち耳引っ張るとかどうなの?」的な違和感がありました。でも、間もなく慣れて「まあコレはこういうものだし、一度着けちゃえば落ちにくいし痛くないし快適」という考えに変わりました。

 操作面もそういう感じ。曲の送り戻しや音量調節はタッチ操作ですが、最初はコツが掴めずに操作ミス連発。「こんなんならスマートフォンを直接操作したほうが早い!」とイライラしていました。ただ、耳とタッチパッドの位置関係に慣れ始めつつ、落ち着いてゆっくりタッチすると誤操作しにくいことがわかってくると、フツーに便利に操作できるようになりました。

 ただ、現在でも曲の戻し操作(3回タッチ)にはイマイチ慣れていません。ですが、ジェスチャー機能(頭を左に振ると曲戻し/右に振ると曲送り)を使うと、けっこう巧く曲戻しができるので、そうするようになりました。

 あ、でもその前に、ジェスチャー機能にも慣れが必要。首をブンブン振ると反応しなかったり、動きが速すぎてもよろしくないようで、「(右や左へ)ゆっくり首を動かして、また戻す」的なコツを掴んだら的確に使えるようになりました。ただ、連続しての曲送りや曲戻しをする場合、首を同じテンポで同じ方向に何度も振る動作が必要なので、人前ではちょっと……というジェスチャー機能かもしれません。

 慣れではどうにもならない難点もありました。たとえば、たま~になんですが、タッチ操作などが効かなくなることがあります。スマートフォン側を操作するしかなくなる状態(音は聞こえる)ですが、イヤホンの電源をオンオフ(ケースに入れてまた出す)すれば直ったりします。たま~になんですが、こういう不安定さが現れて「?」という気分に。

 あと、左側イヤホンから音が出なくなることが、ボチボチとあります。すぐ復帰することが多いですが、途切れと復帰を連続して繰り返すこともあります。人の行き来が多い場所で、スマートフォンをバッグやポケットに入れていると起きがちな現象ですが、自宅だとほとんど起きないので、電波関連の環境からくる症状なんでしょうね。

 ただ、前述のWF-1000XやWF-SP700Nは、同じ左右分離タイプの完全ワイヤレスヘッドセットですが、Xperia Ear Duoほど途切れや不安定さなどのトラブルは出ません。似たような環境で使っているんですけどね~。なので、筆者的には「Xperia Ear Duoはちょっと不安定で途切れがちなヘッドセット」という印象になりました。

 あと、動画再生時、演者の口とセリフが合っていないという「音声の遅延」は、Xperia Ear Duoにもありました。セリフが多めで口も映っている動画を観ていると、フラストレーションがかなりたまるレベル。やはり左右分離タイプの完全ワイヤレスヘッドセットだと、動画で音声遅延ナシというのは難しいのでしょうか?

 などと、いくつか難点があるXperia Ear Duo。なんですが、使用感はわりとナイスです。やはり装着した状態でもわりと軽快で違和感少な目で、外の音が常に聞こえてくるのは開放感と安心感があってイイ感じ。音質もそこそこ良いので、BGM用途には好適だと思います。

 常時装着タイプのヘッドセットとして考えれば、軽快な装着感で、音楽もそこそこ高音質で楽しめて、そーんなには目立たないというコトでも好印象。試してみたらSiriに「ラジコをかけて」と言うとradikoアプリが起動し、本体タップでストリーミング放送が始まったりもするので、作業中にもラジオを聴くラジオヘビーリスナーの人にも向くかもしれません。ともあれ、外の音がいつも聞こえるというのは、場合によっては大きなメリットであり実用性につながりますので、興味のある方はぜひXperia Ear Duoをチェックしてみてください。

スタパ齋藤

1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。