法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」
美しく生まれ変わった「Xperia Z SO-02E」
(2013/2/14 12:50)
今年1月、米ラスベガスで催された「2013 INTERNATIONAL CES」で発表されたソニーモバイルのフラッグシップモデル「Xperia Z」がNTTドコモの2013年春モデル「Xperia Z SO-02E」として、2月9日に発売された。この春、もっとも注目度の高いモデルと言われる「Xperia Z」のレポートをお送りしよう。
国内のスマートフォン市場を切り開いたXperia
2月9日~11日までの3連休、ドコモショップや家電量販店のNTTドコモのコーナーは、たいへんな盛況だったという。その盛況を生み出したのは言うまでもなく、2月9日に発売されたNTTドコモのソニーモバイル製スマートフォン「Xperia Z SO-02E」を買い求めるユーザーが数多く来店したからだ。昨年あたりからNTTドコモのスマートフォンでは、人気機種の発売日は盛況だと言われてきたが、販売店によれば、今回の「Xperia Z SO-02E」はこれまでの人気機種を大きく上回る反響だったという。
Xperiaと言えば、2010年4月発売の「Xperia SO-01B」で、国内のスマートフォン市場を本格的に切り開き、その後も美しいアークラインをデザインした「Xperia arc SO-01C」(2011年3月発売)、Xperiaシリーズで初めて日本仕様に対応した「Xperia acro SO-02C」(2011年7月発売)、防水対応でベストセラーを記録した「Xperia acro HD SO-03D」をリリースし、ユーザーの高い支持を得てきた。しかし、その一方で、NTTドコモのラインアップでは「GALAXY」シリーズや「Optimus」シリーズなどの海外勢が攻勢を強め、また国内市場全体では「iPhone」が販売ランキングでトップを走る。市場を切り開き、リードしてきたXperiaシリーズと言えども、絶対的な存在感を得る状況にはいたっていない。
そんな中、Xperiaシリーズを手掛けてきたソニー・エリクソンは、2012年にソニーの完全子会社となり、社名もソニーモバイルに改められ、新しい体制でスタートすることになった。ソニーの関連会社のひとつであった「ソニー・エリクソン」から、ソニーグループの中心的な事業のひとつである『モバイル』を手掛ける「ソニーモバイル」という位置付けになったわけだ。昨年の「2012 INTERNATIONAL CES」や「Mobile World Congress 2012」「IFA 2012」、そして先月の「2013 INTERNATIONAL CES」と、海外の展示会で開催されてきたソニーのプレスカンファレンスを順に見ていると、イベントを重ねるごとに、ソニーグループにおけるソニーモバイルとXperiaシリーズの存在感が増してきた印象だ。
今回、NTTドコモから発売された「Xperia Z SO-02E」は、そんなソニーモバイルとXperiaシリーズのソニーグループにおける位置付けを表わしたスマートフォンと言えそうだ。ソニーモバイルとしては、すでに昨年「Xperia GX SO-04D」や「Xperia AX SO-01E」などをNTTドコモに供給してきたが、これらのモデルはソニー・エリクソン時代から準備されてきたものという印象が強いのに対し、今回の「Xperia Z SO-02E」は現時点で考えられる最高スペックを搭載するだけでなく、デザインも従来のXperiaシリーズから一新され、ソニーモバイル時代の新しいXperiaシリーズに生まれ変わったという印象を与える。平井一夫ソニー社長兼CEOが掲げる「One Sony」を象徴する新しい時代を見据えたXperiaシリーズと言えそうだ。
約5インチフルHD液晶を搭載
今年1月の米国での発表、そして、1月22日のドコモ春モデル発表会直後から、非常に高い関心が寄せられている「Xperia Z SO-02E」。デザインなどを見ながら、実機の印象について説明しよう。
「Xperia Z SO-02E」のボディを見て、まず最初に感じるのが、デザインが従来のXperiaシリーズと大きく変わっていることだ。これまでのXperiaシリーズは、「Xperia SO-01B」や「Xperia arc SO-01C」に代表されるように、どちらかと言えば、曲線を活かしたボディデザインを特徴としてきた。これに対し、今回の「Xperia Z SO-02E」はアークデザインのような曲線がなくなり、直線的でフラットなスレート状のボディになっている。ただ、すべてにおいて、ボディがスクウェアというわけではなく、手のひらが触れることが多い四つの角はいずれも球面に仕上げられており、手に持ったときの“痛さ”はない。この形状について、ソニーモバイルでは「Omni Balance Design(オムニバランスデザイン)」と呼んでいるが、実際、ユーザーが手に持ったとき、縦に持っても横に持っても表を見せても裏を見せても同じように美しく見えるようにデザインされているという印象だ。
ボディデザインでアクセントとなっているのは、側面の電源キー、背面のガラス仕上げだろう。従来のXperiaシリーズも含め、Androidスマートフォンは電源キーの位置がわかりにくいと言われることが多いが、これだけ電源キーが目立つようにデザインされていると、位置を覚えるのも早く、すぐ馴染む。背面のガラス仕上げはこれまでの一般的な塗装による仕上げよりも高級感があり、3色のボディカラーとも相まって、非常に美しく、パープルなどはボディカラーもよく映える。ちなみに、市販の「Xperia Z」用液晶保護シートの中には、前面のディスプレイ用に加え、背面ガラス用を同梱される製品も販売されている。
ボディデザインが非常に美しく仕上げられている一方、実際に実機を手に取ると、ちょっと戸惑うのがその大きさだ。約5インチのフルHDディスプレイを搭載していることもあり、ボディ幅は約71mmと大きく、筆者のような手の大きなユーザーでも使いはじめは少し戸惑うという印象だ。今回発表されたNTTドコモの春モデルには、約5インチのディスプレイを搭載したモデルが4機種あるが、その中でももっとも幅広で、実際に持った印象もかなりワイドだ。ただ、ボディそのものが約7.9mmと薄いうえ、前述のようにいろいろな向きで持っても違和感がないデザインになっているため、使っているうちに慣れてくる印象もある。とは言え、片手操作については、自分の手の大きさなども考慮し、十分に注意して使う必要があるだろう。
約5インチのフルHD液晶ディスプレイは、1920×1080ドットで、ディスプレイの密度は443ppiになる。改めて説明するまでもないが、一般的に人間の眼で判別できるのは300ppi程度と言われており、網膜を意味する「Retina」を謳うiPhone 5が326ppiであることを考えると、その約1.35倍の密度で表示できる。実際の画面表示の印象については、「Xperia AX SO-01E」などに搭載されているHD液晶ディスプレイ比べると、やはり、一段とクッキリ表示されており、視認性も非常に良好だ。
問題はこのフルHDを活かすコンテンツがどれくらいあるかという話になるが、今のところ、春モデル発表会の記事でも触れられていたレコーダーに録画された番組の視聴などがもっともフルHDを活かせる状況で、マップなどの一般的なスマートフォンのアプリについては美しく表示されるものの、かつてのケータイ時代にQVGAからVGAへ移行したときのような明確な差が感じられるほどでもない。ただ、今後のスマートフォンの進化を予想すると、手のひらサイズでフルHD対応のコンテンツを楽しめる環境をいち早く体験できるのは、大きなアドバンテージと言えそうだ。
また、写真や映像コンテンツの表示については、モバイルブラビアエンジン2が効果を発揮する。こうした画像処理エンジンは、端末に搭載された状態で使うため、ユーザーとしてはなかなか効果がわかりにくいところだが、今回は複数の端末でモバイルブラビアエンジン2の有効/無効を比較したところ、写真なども全体的に色鮮やかに表示され、かなり効果的という印象を得た。「Xperia Z SO-02E」ではGoogle Playの映画に加え、NTTドコモが提供する「dビデオ」(旧VIDEOストア)、ソニーの「Video Unlimited」など、多彩な映像コンテンツが楽しめるということを考えると、実用面でも大きなアドバンテージになると言えそうだ。
「Exmor RS for mobile」1310万画素を初搭載
世界初搭載となる裏面照射型CMOSセンサー「Exmor RS for mobile」による1310万画素カメラを搭載する。「Exmor RS」は、昨年8月、ソニーから発表された世界初の積層型構造を採用したCMOSセンサー。従来の裏面照射型に比べ、小型化や高感度化が図られている。なかでも特徴的なのがHDR(High Dynamic Range)による撮影で、明暗差があるシーンでも自然な写真や動画(ビデオ)を撮ることができる。HDRによるビデオはこれまでのスマートフォンでも対応例がほとんどなく、「Xperia Z SO-02E」ならではの機能となっている。出荷時設定はOFFになっているので、撮影時は設定を切り替える必要がある。
カメラのユーザーインターフェイスは、基本的に「Xperia AX SO-01E」のものを継承しているが、今回からカメラとビデオの切り替えがなくなり、1つの画面でどちらでも撮影できるモードレスUIを採用する。最初はちょっと戸惑うが、カメラのアイコンをタップすれば写真、赤い●をタップすれば、動画の撮影スタートということになる。撮影時の画質についてもソニーのαシリーズやCyber-shotで使われている輝度/色ノイズ低減技術を活かした高画質な撮影が可能だ。
設定画面はディスプレイのフルHD化に伴い、アイコンが増え、新たに自動アップロードが追加されている。自動アップロードはソニーが提供する「Play Memories Online」に対応し、Wi-Fi接続時のみにアップロードするといった設定も可能だ。撮影モードはすべてをおまかせで撮影できる「プレミアムおまかせオート」などが用意されており、新たに連写モードにも対応する。撮影する解像度にもよるが、最大毎秒10枚の撮影が可能で、うまく使えば、いつもと雰囲気の違う写真を撮ることができる。
撮影した写真は独自のアルバムアプリで表示することができ、サムネイル表示時のピンチ操作による拡大や縮小にも対応する。画像編集は「Xperia AX SO-01E」などと共通で、トリミングや赤目補正、美顔、傾き補正、反転などの機能も利用できる。ただ、iモード端末に送信するときなどに便利なリサイズといった機能は、サポートされていない。
カメラ機能そのものは非常に高機能であり、撮影した写真も十分に美しいのだが、使い方によって、ちょっと起動が遅く感じられたのは、少し気になる点だ。ロック画面からカメラアイコンを左にスライドしたり、アプリケーション一覧画面でカメラアイコンをタップして起動するときは、すぐに起動するが、ホーム画面左下のフォルダ内のカメラアイコン(ホームアプリにXperia設定時)をタップしたときなどは、起動に少しタイムラグがある印象だ。
エンターテインメントも充実
これまでのXperiaシリーズでは「コミュニケーション・エンターテインメント」というテーマが掲げられ、Xperiaならではのホームアプリなどで具現化されてきたが、今回の「Xperia Z SO-02E」はこれまでのXperiaと違い、ソニーとしてのXperiaに仕上げられていることもあり、エンターテインメント機能が一段と充実している。
まず基本的なところとして、最近のXperiaシリーズで採用されてきた「Walkmanアプリ」はそのまま継承されており、かつてのXperiaシリーズで採用されてきたインフィニットボタンによるインターネットとの連携なども継承されている。従来モデルから搭載されているが、Walkmanアプリで利用できる「Clear Audio+モード」は手軽に高音質が楽しめるので、おすすめだ。これに加え、今回はNFCを利用したBluetoothスピーカーやBluetoothヘッドフォンとのペアリングなども実現し、一段と音楽を楽しみやすくしている。ちなみに、筆者も小型のBluetoothアクティブスピーカーを購入し、ペアリングなども試してみたが、NFCを有効にしたり、簡易設定アプリのインストールが必要などの手間があるものの、Bluetoothを手軽に使える環境が整っているのは有効だと感じられた。
オーディオ関連でひとつ残念なのは、本体上面に備えられた3.5mm径のステレオイヤホン端子にキャップが付いているという点だ。防水防塵対応の仕様を満たし、デザイン的にもきれいに仕上げることが考慮されたためだが、現在、防水防塵をサポートする多くのスマートフォンでは3.5mm径のステレオイヤホン端子もキャップレスで実現されている。そうしたケースと比較すると少し気になるところだ。もっともBluetoothヘッドホンを使えば、そんな違いも気にならなくなるので、積極的にBluetoothを使えという意味なのかもしれないが、それならば、付属のステレオイヤホンもBluetoothにしてしまうくらいの取り組みがあっても良かったのかもしれない。
映像コンテンツについては、前述の通り、Google Playの「映画」に加え、NTTドコモが提供する「dビデオ」(旧VIDEOストア)、ソニーの「Video Unlimited」などが楽しめるうえ、Blu-rayディスクレコーダーやテレビで録画した番組の映像を転送して楽しむことができる。特に、今回はムービーアプリを起動すると、すぐにVideo Unlimitedへアクセスできるようになるなど、ソニーのサービスとの連携も使いやすくなっている。ただ、それぞれのサービスごとにアプリが違うため、プレーヤーの使い勝手はサービスに依存してしまう印象だ。
こうしたエンターテインメントを楽しむうえで、気になるのは電池の持ちだが、本体には2330mAhの大容量バッテリーが搭載されている。着脱できない固定式のため、これでも足りないユーザーは外付け電源などを持ち歩くしかないが、今回試用した範囲では他機種に比べ、電池の持ちは比較的良好な部類に入るという印象だ。グローバル向けモデルに搭載されていた「Stamina Mode」がXperia Z SO-02Eには搭載されていないが、Wi-FiやGPS、BluetoothなどをまとめてOFFにできる「省電力モード」、バッテリー残量に応じて、各機能をOFFにする「低バッテリーモード」、時間帯で省電力を制御する「タイマーモード」が用意されている。
グローバル向けモデルのStamina Modeは、画面表示をOFFにしたとき、起動中のアプリや通信をすべて停止し、必要なものはユーザーが個別に有効にするため、実用的にはちょっと極端とも言えるアプローチの機能だった。一方、国内向けモデルはNTTドコモのサービスをはじめ、常時動作のアプリが多いこともあって、Stamina Modeを採用せず、省電力モードなどを採用したのではないだろうか。
また、グローバル向けモデルとの違いで言えば、グローバル向けモデルのメモリーカードはmicroSDHCメモリーカード対応だが、日本向けモデルはmicroSDXCメモリーカード対応となっており、よりハイスペックな仕様を求める日本市場のニーズをくみ取った形となっている。microSDXCメモリーカードも安いものでは64GBで5000円台の値をつけるものが販売されており、前述のWalkmanアプリで利用する音楽データ、各社の映像サービスで利用する映像コンテンツ、カメラで撮影する写真なども余裕を持って、数多く保存することが可能だ。
そして、ユーザーインターフェイスについては、ホームアプリとして、NTTドコモの「docomo Palette UI」、ソニーモバイルの「Xperia」(以下、Xperiaホーム)がインストールされている。Xperiaホームについては、基本的に従来の「Xperia AX SO-01E」などと同じ仕様で、Android標準のホームアプリの使い勝手をベースにしながら、ホーム画面とアプリケーション画面を構成し、ウィジェットなども画面を確認しながら設定できるため、初心者にも慣れてきたユーザーにも使いやすい。さすがに、画面サイズが大きいため、アプリケーション画面を片手で操作するのは難しいが、従来モデル同様、アプリのアイコンをアルファベット順やよく使うアプリ順、最近インストールした順、カスタム並べ替えで変更することができる。独自の使い勝手としては、最近使ったアプリ一覧キーをタップしたとき、画面下段に「スモールアプリ」の一覧が表示され、電卓やノート、タイマー、レコーダーなど、ちょっとした便利なアプリを起動できる。たとえば、ブラウザでWebページを閲覧中、ノートを起動して、ちょっとメモを取るといった使い方ができる。ちなみに、スモールアプリについては、Playストアから追加することも可能で、アプリによってはウィンドウ表示のように、起動中のアプリに重ねて表示することも可能だ。
また、これまでのXperiaシリーズと少し異なるのは、設定画面の「アカウント」に、「docomo」「Google」のほかに、PlayStationなどでも使われる「Sony Entertainment Network」が追加できるようになり、Xperia用としても「Xperia用Facebook」に加え、「Xperia用Play Memories」が選べるようにしていることだ。つまり、単純にWalkmanやVideo Unlimitedなどのアプリを搭載しているのではなく、きちんとアカウントを登録して、ソニーのサービスと連動させていこうとしているわけだ。
Xperiaシリーズ史上最強モデルか
さて、最後にXperia Z SO-02Eの「買い」について、考えてみよう。Xperiaシリーズと言えば、グローバル向けはもちろん、国内のスマートフォン市場でも常に高い人気を得てきたラインアップだ。ワンセグ、おサイフケータイ、赤外線通信に加え、防水などを含めた日本仕様についてもグローバルモデルをベースにしながら、積極的に取り組んできた。そのXperiaシリーズを手掛けてきたソニー・エリクソンがソニーの完全子会社になり、ソニーモバイルとして、本格的に取り組んだモデルが「Xperia Z」であり、その日本向けモデルが「Xperia Z SO-02E」だ。これまでのXperiaシリーズとは大きく変わった美しいデザインをはじめ、高精細かつ高品質の約5インチフルHD液晶ディスプレイ、初搭載となる「Exmor RS for mobile」による約1310万画素カメラ、1.5GHzクアッドコアCPU、16GBのストレージ、2GBのメモリ、2330mAh大容量バッテリーなど、現時点で最高峰となるハイスペックを実現し、なおかつ日本のユーザーが求める日本仕様、ボディカラーと同じ卓上ホルダを同梱するなど、ユーザーのニーズをきちんとくみ取った非常にレベルの高い商品に仕上がっている。
ただ、その一方で、約71mmというボディ幅、146gという重量は、少し負担に感じてしまうユーザーもいるだろう。本稿でも説明したように、約7.9mmという薄さとボディデザインがあまり大きさを意識させなくしている部分もあるが、使っていくほどに慣れる人、慣れない人が出てくる可能性もある端末だ。
また、「コミュニケーション・エンターテインメント」を謳ってきたXperiaシリーズなのに、今回のモデルは少しエンターテインメントとデザインに振ってしまった印象も残った。製品としての完成度は、間違いなく、Xperiaシリーズ史上最強と言えるが、Xperiaとしてのアイデンティティーをソニーのデジタル製品としての方向性に融合させようとした苦労や迷いも垣間見えるモデルという見方もできる。今後、Xperiaシリーズが進化を続けていく中で、ひとつの大きなターニングポイントになるモデルに位置付けられるかもしれない。