法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

超高速&フルHDで先を目指すドコモ2013春モデル

 1月22日、NTTドコモは2013年春商戦へ向けた新機種発表会を開催した。

 豊富なラインアップを揃え、安定したネットワークで市場をリードしてきたNTTドコモだが、昨年は一時的に純減を記録するなど、苦戦も伝えられている。

 今回の2013年春モデルでは、今年のトレンドになることが確実視されているフルHD液晶を搭載したスマートフォン4機種、国内最速の受信時最大112.5Mbps対応モデル、ホームユースを狙った端末など、新生活シーズンを狙った多彩なラインアップが発表された。発表会の詳細については、本誌のレポート記事を参考にしていただきたいが、ここでは今回の発表内容の捉え方や各製品の印象などについて、解説しよう。

「スマートフォンのその先へ」を目指す

 国内市場において、本格的なスマートフォンの普及が始まって、約2年。当初はプラットフォームとしても急速な発展途上にあるという印象が強かったAndroidも昨年の「Android 4.0」から安定度を増し、アプリの環境も整ってきた。ハードウェアとしてのAndroidスマートフォンも高速処理が可能なデュアルコア以上のプロセッサ、高精細な大画面ディスプレイ、十分なメモリ(RAM)、快適に操作が可能なタッチパネルのチューニング、長時間利用を実現する省電力技術と大容量バッテリーなどにより、かなり完成度が高まってきた印象だ。昨秋に発表された各社の2012年冬モデルをひと通り触ってみると、いずれのモデルもストレスなく使えるようになり、どのモデルを購入しても一定の満足度が得られるレベルに達しつつある。

2012年冬モデルの中でも人気の「AQUOS PHONE ZETA SH-02E」

 こうした状況下において、国内最大のシェアを持つNTTドコモは、各商戦期ごとに豊富なラインアップを展開し、既存の3Gネットワークに加え、LTEによるXiのネットワークを拡充することで、他社をリードしてきたはずなのだが、昨年はMNPの転出超過が続き、一時的に純減を記録するなど、苦戦を強いられている。そんな中、昨年12月にはシャープ製の「AQUOS PHONE ZETA SH-02E」が好調な売れ行きを記録し、販売ランキングでもトップ争いをくり広げるなど、徐々に国内メーカーのスマートフォンが存在感を示しつつある。

 今年、NTTドコモが安定したスマートフォンの市場をどのように展開していくのかが注目されたが、今回の発表では「超高速フルHDスマートフォン」と銘打たれたハイエンドモデルをはじめ、国内最速の受信時最大112.5Mbps対応モデル、こだわりの機能を搭載した個性的なモデル、ジュニア向けスマートフォン、ホームユースを狙った新機軸の端末など、スマートフォンを軸にした新しい展開を提案してきた。昨年、山田隆持氏から社長の座を引き継いだ加藤薰代表取締役社長は、発表会のプレゼンテーションの最後に「スマートフォンのその先へ」というコピーを掲げていたが、NTTドコモとしてはこれまでのようにハイスペックのスマートフォンを中心に、豊富なラインアップを展開するだけでなく、スマートフォンのある環境をどう使うか、ユーザーがどう楽しんでいくかを積極的に考えた発表内容となっている。

 まず、端末については、約5インチのフルHDディスプレイを搭載したモデルが主力に据えられる。フルHDディスプレイを搭載したモデルは、昨年、auが「HTC J Butterfly HTL21」を発売したが、2013 International CESのレポートでも触れたとおり、液晶パネルを製造する各社の製品が出揃ったこともあって、フルHDディスプレイは今年のスマートフォンのトレンドになることが確実視されており、NTTドコモはハイスペック指向の強い日本市場において、いち早く4機種もラインアップを揃えてきた。

 フルHDディスプレイが搭載されたことで、従来のHDディスプレイ搭載モデルから約2倍の情報量を表示できることになるが、実際の利用シーンで考えると、マップが見やすくなったり、写真を美しく表示したりできるものの、メリットはまだ限定的という見方も多い。

ひかりTVとの連携が可能に

 そこで、NTTドコモではフルHDディスプレイを活かすために、テレビやBDレコーダーで録画したテレビ番組をはじめ、NTTぷららが提供する映像配信サービス「ひかりTV」の番組をWi-Fiルーター経由でストリーミングで再生できるなど、新しい活用例を提案している。欲を言えば、今回の発表内容でもかなり力が入っていた「dビデオ」などのコンテンツも一定の割合でフルHD化するなどの展開も期待したいところだが、フルHDディスプレイ搭載モデルのラインアップが揃っていくことで、今後、コンテンツを積極的に展開したいNTTドコモとしても環境を整えていくことになりそうだ。

 ソニーモバイル製「Xperia Z SO-02E」は2013 International CESで発表されたモデルの日本向けモデルであり、今回のタッチ&トライでもダントツの人気ぶりだったが、発表会の前日に発表された同じくソニーモバイル製「Xperia Tablet Z SO-03E」も来場者の注目を集めていた。ここ数年のNTTドコモのラインアップでは、サムスン電子のGALAXYシリーズが筆頭に扱われてきたが、今回は加藤社長がプレゼンテーションで「この春、イチ押しのモデル」と紹介するなど、かなり強力にプッシュしていたのが印象的だった。昨年末の「AQUOS PHONE ZETA SO-02E」のヒットをはじめ、今年は国内メーカーの巻き返しが目立つ一年になるかもしれない。

MEDIAS Wを手にするドコモ加藤社長

 また、今回発表されたラインアップの中で、タッチ&トライのコーナーでもXperiaの2モデルに負けず劣らずの注目を集めていたのがNECカシオ製の二画面スマートフォン「MEDIAS W N-05E」だ。昨年の「MWC 2012」に参考出品され、国内でもNECカシオのメーカー発表会でも開発中モデルとしてお披露目されたことはあったが、ついに製品化され、市場に登場することになった。前述のように、昨年後半あたりから各社のスマートフォンは、ユーザーのニーズが絞り込まれ、プラットフォームもこなれてきたことで、スペックやデザインが似通ったモデルが多く、ディスプレイやカメラなどのデバイスなどで差別化を図る方向が増えているが、ユニークなボディ形状を採用した「MEDIAS W N-05E」は、他製品にはない強烈な個性を持ち、ガジェット好きのユーザーの血が騒ぐ、面白そうなモデルが登場したという印象だ。

docomo Smart Home

 これらの端末ラインアップとは別に、今回の発表でもうひとつ力が入れられていたのが「docomo Smart Home」への取り組みだ。

 改めて説明するまでもないが、NTTドコモが販売するスマートフォンやタブレット、ケータイは、いずれもモバイルネットワークを利用するための通信機能が搭載されており、回線契約を必要とする。しかし、日本の人口から考慮しても契約数は飽和状態に近づいており、NTTドコモは今後、携帯電話サービスを提供するだけでなく、コンテンツや他の販売サービスなども含めた総合サービス企業への成長することが掲げられている。その一環として、今回は家庭内でのスマートフォンの利用について、新しい取り組みを発表した。

 まず、スマートフォンで楽しんでいるコンテンツを家庭内でも楽しめる方法として、新たに「dtab」と呼ばれるタブレットを発売する。これまでNTTドコモがラインアップを展開してきたタブレットは、いずれも3G/LTEモジュールを内蔵したモデルだったが、今回はWi-Fi専用モデルとして提供される。通信モジュールが内蔵されないため、ユーザーとしては購入しやすくなる一方、NTTドコモとしてはどこで利益を生み出すのかという話になるが、「dtab」にスマートフォンで契約している回線のdocomo IDを設定することで、dマーケットで提供される「dビデオ」や「dミュージック」、「dショッピング」といったコンテンツを利用してもらい、利益を生み出す、とされている。

 こうした手法は過去にauがWi-Fi専用モデルの「Motorola Xoom」や「REGZA Tablet」を販売し、au IDによるコンテンツの利用を促進しようとして導入しているものだが、今回の「dtab」はdビデオを6カ月間、契約するという条件を満たせば、「9975円」という破格の値段で購入することができる。昨年来、「Nexus 7」やAmazonの「Kindle Fire HD」といった低価格のタブレットが注目を集めているが、dtabは月額525円(個別課金0円)のdビデオの利用料金を6カ月分、加算しても割安な印象だ。スマートフォンでもタブレットでもひとつのdocomo IDでコンテンツを利用できるため、スマートフォンを利用中で、タブレットを追加したいユーザー層にとっても魅力的な存在だ。

 同様の手法で、NTTドコモがdマーケットで提供する「dビデオ」「dアニメストア」「dヒッツ」といったコンテンツを家庭用テレビで利用できるようにする「SmartTV dstick」も発売される。「dstick」は家庭用テレビのHDMIポートに接続し、USBで給電することにより、家庭内の無線LAN及びブロードバンド回線経由で、dビデオなどのコンテンツを閲覧できるようにする。このdstickは「dビデオ」「dアニメストア」「dヒッツ」のいずれかを契約中のユーザーを対象に、抽選で7万名にプレゼントされるキャンペーンも2月1日から実施される。ちなみに、無線LANルーター(無線LANアクセスポイント)を持っていないユーザーのために、月額0円で無線LANルーターがレンタルで提供される。フラット型パケット定額サービスへの加入が条件だが、自宅に無線LAN環境がないユーザーにとっては便利だ。

 これらの一連の製品やサービス、キャンペーンは、言うまでもなく、auのスマートバリュー、ビデオパスなどを強く意識したものであり、「dtab」の価格設定やdstickの7万名プレゼントというキャンペーンは、今までのNTTドコモから考えると、かなりアグレッシブな取り組みだが、やはり、それだけdマーケットで提供するコンテンツをしっかりと売っていきたいという姿勢の表われだろう。dビデオについては、端末購入時のインセンティブ(契約すれば、○○円引き)として、契約するケースが増えているが、実際の利用はまだまだ拡大しておらず、これをしっかりと定着させたいというサービス提供部門の思いが今回の積極的な取り組みに反映されたようだ。加藤社長がプレゼンテーションで掲げた「スマートフォンのその先へ」というキーワードは、まさにこうしたコンテンツを積極的にセールスしていくという姿勢を示唆したものというわけだ。

5インチフルHDスマートフォンを中心に12機種を展開

 NTTドコモは昨年10月に2012年冬モデル16機種を発売したばかりだが、冒頭でも説明した通り、今回発表された2013年春モデルでは5インチフルHDスマートフォン4機種をはじめ、全12機種がラインアップに追加されることになる。春モデルは早いものが1月末、遅いものは4月に入ってからの発売となる予定だ。2012年冬モデルと2013年春モデルの合計28機種が一斉に並ぶわけではないが、多少の入れ替わりがあったとしても常時15機種以上が店頭に並ぶことになりそうだ。

 2013年春モデルの構成は、withシリーズ2機種、NEXTシリーズ6機種、タブレット2機種、モバイルWi-Fiルーター1機種、その他のスマートフォン1機種となっている。スマートフォンについては、withシリーズとNEXTシリーズという区分で展開してきたが、今回のwithシリーズ2機種はCPUやメモリ、ディスプレイ、カメラなどのスペックがNEXTシリーズとほとんど変わらないレベルになっており、そろそろこの区分も見直す時期に来ているという印象だ。

 タブレットとその他のスマートフォンを含めた全体で見てもCPUはほとんどがクアッドコアを搭載し、デュアルコアを搭載するのはわずか2機種のみ。CPUについては定番のクアルコム製クアッドコア「Snapdragon S4 Pro APQ8064」、同じくデュアルコア「Snapdragon S4 MSM8960」が大半を占め、「ARROWS X F-02E」が従来モデルに引き続き、NVIDIA製クアッドコア「Tegra3」を搭載する。新しいところではファーウェイ製の「Ascend D2 HW-03E」と「dtab」がHiSilicon製クアッドコア「K3V2」および「K3V2T」を搭載する。HiSiliconはあまり国内で知られていないが、ファーウェイの半導体部門が独立してできた企業で、「Ascend D2 HW-03E」が他製品に先駆けてサポートする、Xiの下り最大112.5Mbps(LTEのカテゴリー4)対応は、「K3V2」が同仕様をサポートしているために実現している。

 ストレージ(ROM)とメモリ(RAM)についても、6機種が32GBのストレージ、2GBのメモリというハイスペックで、実用レベルではまったく遜色がなく、将来的にも安心できる仕様を実現している。

 バッテリー容量は、ボディサイズに影響されるものの、スマートフォンは「スマートフォン for ジュニア SH-05E」を除き、全機種が2000mAh前後のバッテリーを搭載し、ロングライフを可能にした。ただ、実使用でのバッテリーの持ちは、液晶ディスプレイなどのハードウェアをはじめ、製品ごとに省電力制御のソフトウェアなども異なるため、製品ごとに差があると考えた方がいいだろう。

 プラットフォームについては、「スマートフォン for ジュニア SH-05E」を除き、タブレット2機種も含めた全機種がAndroid 4.1を搭載する。Androidプラットフォームは、次期バージョンのAndroid(開発コード『Key Lime Pie』)が今年上半期に発表されると噂されているが、Android 2.x時代のように、バージョンごとで動作の軽快さが大きく変わるようなことはないと予想されるため、一般的なユーザーは現時点であまりバージョンアップのことを神経質に考える必要はないだろう。

 今回のタッチ&トライだけでは確認できなかったものとして、ひとつ注意が必要なのは無線LANの対応だろう。NTTドコモが公表したスペック表には掲載されていないが、一部のモデルは5GHz帯を利用するIEEE802.11a/nに対応していないと推察されるため、家庭などでIEEE802.11a/nによる高速通信を利用したいユーザーは、今後、明らかにされるスペックを確認することをおすすめしたい。

充実のスマートフォンのラインアップ

 さて、最後に発表会後に行われたタッチ&トライコーナーで試用した実機の印象や各モデルの気になるポイントなどを紹介しよう。タッチ&トライコーナーでの試用はレビューのような十分な時間を取っておらず、それぞれのモデルも開発中であるため、発売される最終製品とは差異があるかもしれない点をご理解いただきたい。また、各機種の詳しい仕様などについては、本誌のレポート記事を参照して欲しい。

【docomo withシリーズ】

  • AQUOS PHONE EX SH-04E(シャープ)

 女性ユーザーをはじめ、ハイスペックと持ちやすさ、使いやすさ、デザインをバランスさせたモデル。約4.5インチのS-CG Silicon液晶を搭載しながら、ボディ幅を約64mmに抑えることで、あまり手の大きくない人でも持ちやすい形状を実現している。スペック的には冬モデルの「AQUOS PHONE ZETA SH-02E」に一歩譲るものの、クアッドコアCPUや1310万画素カメラ、2000mAhの大容量バッテリーなど、NEXTシリーズのモデルと並べても遜色のないレベル。プリインストールされる「ビジンメークナビ」など、新生活をはじめるユーザーにもうれしい機能を揃えたバランスのいいモデルと言えそうだ。

  • MEDIAS N-04E(NECカシオ)

 高輝度で鮮やかな約4.7インチのHD対応有機ELディスプレイを搭載したモデル。仕様としては昨年12月発売の「Disney mobile on docomo N-03E」をベースにしており、クアッドコアCPUや2GB RAMなど、こちらもNEXTシリーズのハイエンドモデルに匹敵するスペックを搭載する。パソコンのディスプレイなどでも話題になることが多い、高輝度の青い光を30%カットする「ブルーライトカットモード」は、若干、色みが変わるものの、長時間利用するユーザーにはうれしい仕様と言えそうだ。電源が入った状態でも一切の通信などをしないスタンバイモードは待機時の電力消費を大幅にカットできるため、一定時間、使わないようなシチュエーションが多いユーザーには適している。おくだけ充電はプレート状のワイヤレスチャージャーとスタンドが同梱されており、横置きスタイルの卓上ホルダのように使え、なかなか便利そうだ。

【docomo NEXTシリーズ】

  • ELUGA X P-02E(パナソニック)

 約5インチのフルHD液晶ディスプレイを搭載しながら、ボディ周囲に金属フレームを採用することで、狭額縁を実現し、68mm幅という保ちやすいサイズに仕上げられている。おサイフケータイなどの三種の神器をはじめ、防水・防塵、おくだけ充電、2320mAh大容量バッテリー、1.5GHzクアッドコアCPU、32GBのストレージ、2GBのメモリなど、今回の春モデルの中でもトップクラスのハイスペックの上に、現時点で必要とされるほぼすべての機能を搭載した全部入りモデル。従来モデルと違い、ディスプレイ下にハードキーも備える。大画面ながら片手で操作ができるように、アイコンを画面下半分で回転スクロールさせるようにレイアウトしたホームアプリ「フィットホーム」、ケータイと同じメニュー構成を再現した「ケータイモード」など、ソフトウェアもしっかりと作り込まれ、使いやすさが追求されている。クセのないデザインなど、やや優等生過ぎる印象もなくはないが、パナソニックの技術を凝縮させた期待の一台と言えそうだ。

  • Xperia Z SO-02E(ソニーモバイル)

 2013 International CESで発表された「Xperia Z」の日本向けモデル。グローバル向けのモデルをベースに、おサイフケータイや赤外線通信などの日本仕様を追加している。グローバル向けモデルとの違いは、背面のCEマークの表記など、細かい部分に限られるが、メモリーカードがmicroSDXCに対応している(グローバル向けモデルはmicroSDHC対応)。Omni Balance Designと呼ばれるデザインコンセプトに基づき、美しく仕上げられたボディは、これまでのXperiaシリーズにはないテイストを持つ。約5.0インチのフルHD液晶ディスプレイも美しいが、実用面では積層型イメージセンサー「Exmor RS for mobile」による1310万画素カメラで実現されたHDRビデオ撮影なども今までにない動画撮影を可能にする。発表会のプレゼンテーションでも「イチ押し」とされていたが、その期待に十分応えられるだけのポテンシャルを持っており、春商戦でもっとも注目を集める一台になりそうだ。

  • ARROWS X F-02E(富士通)

 2011年冬モデルの「ARROWS X LTE F-05D」、2012年夏モデルの「ARROWS X F-10D」に続く、ARROWS X三代目モデル。従来同様、NVIDIA製クアッドコア「Tegra 3」を搭載するが、クロック周波数は「F-05D」の1.2GHz、「F-10D」の1.5GHzから、今回は1.7GHzへと高クロック化されている。「ARROWS X」は「Tegra 3」のハイパフォーマンスが期待できる半面、発熱などに対する不満が多く聞かれてきたが、今回は熱対策なども含め、安定した動作を目指して開発されているという。ディスプレイは約5インチのフルHD液晶パネルを採用するが、ボディ幅は69mmに抑えられ、ラウンドした背面パネルの形状と相まって、手にホールドしやすい印象だ。らくらくホンなどで培われた「スーパーはっきりボイス4」をはじめ、背面に装備した指紋センサー、ディスプレイの色みを年齢に合わせて変更する「あわせるビュー」、手に持ったときにバックライトを消さない「持ってる間ON」など、富士通らしい機能で使いやすさを追求している。従来モデルでやや評価を落としてしまった感は否めないが、十分に巻き返せるだけの可能性を持つ意欲的なモデルと言えそうだ。

  • Ascend D2 HW-03E(Huawei)

 昨年、発売された「Ascend HW-01E」に続く、ファーウェイ製スマートフォン第2弾。「2013 International CES」で発表されたグローバル向けの「Ascend D2」が約5インチのフルHDディスプレイを搭載していたのに対し、こちらは約4.7インチのHDディスプレイを搭載する。説明員によれば、ファーウェイ内にも複数のAscend D2があり、NTTドコモ向けにはこの仕様のモデルが供給されることになったそうだ。ディスプレイサイズや解像度は異なるが、ボディの基本的なデザインは同じテイストで仕上げられている。ただ、電池パックの容量なども異なるため、基本的には別モデルと考えた方が良さそうだ。注目すべきは水滴クリアタッチパネルで、ディスプレイに撥水撥油性コーティングを施すことにより、水に濡れた状態でのタッチ操作を可能にしており、風呂やキッチンなどの水回りでもストレスなく使うことができる。モバイルWi-Fiルーターなどではおなじみのファーウェイだが、スマートフォンでのブランドをどれだけ浸透できるかによって、売れ行きが大きく変わりそうなモデルだ。

  • Optimus G pro L-04E(LGエレクトロニクス)

 昨年の冬モデルで発売された「Optimus G L-01E」の後継、もしくは上位に位置付けられる約5インチのフルHD液晶ディスプレイを搭載したモデル。従来モデルと違い、防水対応ではないが、ガラス面とタッチセンサーを一体化する新技術により、ガラス面と液晶面のギャップが一段と少なくなり、視認性が向上している。ディスプレイ部の薄型化はバッテリーの大型化にも寄与し、一般的な形状のスマートフォンとしてはおそらくトップクラスの3000mAhの大容量バッテリーを搭載する。ボディデザインも従来モデルのスクエアな形状に対し、今回は背面や周囲が丸みを帯びたデザインで、持ちやすさを考えた形状となっている。防水に対応していないことは残念だが、ガラス面とのギャップの少なさによるディスプレイの美しさは、今回のラインアップでもトップクラスと言って差し支えないだろう。

  • MEDIAS W N-05E(NECカシオ)

 約4.3インチのQHD表示が可能な液晶ディスプレイを搭載し、閉じた状態でスリムなスマートフォン、開いた状態で約5.6インチの大画面を利用できる、新しいスタイルのスマートフォン。開いた二画面の状態では、両方を連結した状態で利用できるだけでなく、片方の画面でSNSを表示しながら、もう片方の画面でブラウザを表示するといった使い方ができる。折りたたみボディの開閉や画面の切り替えはスムーズで、開発中のモデルながらも快適に使うことができた。おサイフケータイなどの機能がなく、Androidプラットフォームとしての制約もいくつかあるが、今までのスマートフォンにはない新しいスタイルとユニークな個性を持ち、今回のタッチ&トライコーナーでも最初から最後まで、人が絶えることなく、試していたという人気ぶりだった。今までのスタンダードなスマートフォンに飽き足らず、もっと新しい可能性を体験してみたいユーザーにイチ押しのモデルだ。

【ドコモ タブレット】

  • Xperia Tablet Z SO-03E(ソニーモバイル)

 同時発表のスマートフォン「Xperia Z SO-02E」のデザインコンセプトをそのまま継承した10.1インチのWUXGA液晶ディスプレイ搭載のタブレット。ボディの薄さがわずか6.9mmと非常にスリムで、このクラスのタブレットとしてはもっとも軽い約495gに仕上げられている。このサイズなら、常にカバンに入れて持ち歩いてもそれほどストレスを感じないはずだ。CPUやメモリなどのスペックも「Xperia Z SO-02E」をそのままタブレットサイズにスケールアップした印象で、約6000mAhのバッテリーを搭載し、スマートフォンに対して給電することもできる。デザイン的にも非常に美しく、これまでのタブレットとは明らかに一線を画した存在感を持つ。NFCによる他の機器との連携も楽しめ、防水防じんにも対応するなど、機能的にもかなり充実している。本格的にタブレットを活用したいユーザーにおすすめしたいモデルだ。

  • dtab(Huawei)

 約10.1インチのWXGA表示が可能な液晶ディスプレイを搭載したWi-Fi専用タブレット。ボディ周囲と背面に少し丸みを持たせ、持ちやすさを考えたデザインに仕上げている。dマーケットを便利に使うための独自のホーム画面を搭載しているが、内容はAndroid 4.1搭載のタブレットとなっているため、特に意識することなく、スタンダードなAndroidタブレットとして利用できる。dビデオを6カ月間利用するという条件を満たせば、9975円という破格のプライスで購入できるため、これまでタブレットに興味を持ちながら、初期費用やランニングコストなどで二の足を踏んでいたユーザーにも手を出しやすいモデルと言えるだろう。

【その他】

  • スマートフォン for ジュニア SH-05E

 小学校高学年~中学生を主な対象として開発されたジュニア向けスマートフォン。プラットフォームにAndroid 4.0を採用するが、保護者が安心して、子どもたちに持たせられるように、アプリは標準でインストールされているもののみが利用でき、Googleアカウントなどは追加できない。フィルタリングも標準で設定されているが、子供の成長や各家庭の方針に合わせ、カスタマイズすることもできる。機能制限も電話やメール、ブラウザ、アプリ、利用・通話時間制限などが設定でき、イマドコサーチで保護者が居場所を検索したり、防犯ブザーで現在地を知らせる機能も備える。ボディサイズは子供でも持てるコンパクトサイズだが、約4.1インチのディスプレイに1210万画素カメラを搭載するなど、十分なスペックを備える。新生活シーズンに持たせるスマートフォンとして、まず最初にチェックしたいモデルと言えそうだ。

  • HW-02E(Huawei)

 国内最速となるLTEカテゴリー4による、受信時最大112.5Mbpsの超高速通信に対応した3G/LTE対応のモバイルWi-Fiルーター。docomo Wi-Fiなどの公衆無線LANサービスに接続する機能も備える。これまでの多くのモバイルWi-Fiルーターが起動に10秒程度の時間を要していたのに対し、電源ボタンを押して、約5秒で起動できるため、使いたいときにすぐに使うことができる。ボディサイズは非常にコンパクトで、ディスプレイには接続時間や転送容量などが表示できるほか、側面のキーを押すことで、SSIDやパスワード、IPアドレスなどを表示することも可能。Wi-Fiの簡易接続設定はWPSに対応し、ブラウザによる管理画面でさまざまな機能を細かく設定できるが、スマートフォン向けの管理画面が用意されているのも非常に便利な点だろう。

スマートフォンを「使う」工夫に取り組むNTTドコモ

 これまでNTTドコモはiモードやFOMAなど、さまざまな形で国内のモバイル市場を牽引してきた。スマートフォンについては、他社に先を越された部分もあったが、一昨年あたりから国内外のメーカーが開発したモデルを豊富に揃えたラインアップを展開してきた。国内市場では夏モデル、冬春モデルという2回の製品ラインアップの発表が行われるが、他社と比較すると、圧倒的に機種数が多く、その内容も充実していた。

 しかし、昨年の夏モデルの発表会の記事でも触れたように、端末ラインアップが豊富である半面、機種数が多すぎるうえ、似通った機種が多いため、ユーザー側としては選びにくい状況にあった。選べる機種が多いことはうれしいが、はじめてスマートフォンを購入するユーザーにしてみれば、どれを選べばいいのかがわからない状況にあった。特に、昨年は、競合他社であるauの「auスマートパス」や「auスマートバリュー」が好調で、ユーザーに支持されていた状況と対照的だという印象もあった。

 しかし、今回発表された2013年春モデルは、春商戦向けという特性はあるものの、端末ラインアップを拡充するだけでなく、NTTドコモが今後、成長戦略を描いていくうえで欠かせないとされるコンテンツの販売を伸ばすため、「dtab」や「dstick」といった新しいハードウェアを用意し、しかも破格のプライスで提供する戦略に出てきたことは、非常に驚かされた。これまでのように、「回線を売る」「端末を売る」のではなく、「コンテンツを売る」「サービスを売る」という方向にも拡大し、スマートフォンを使うための工夫に取り組んできたことは、高く評価できる点だろう。

 一方、端末についても約5インチのフルHDディスプレイ搭載モデルを軸に、女性を中心としたデザイン性に優れたモデル、他製品にないユニークなメカを持つモデル、ジュニア向けモデル、美しいデザインのハイスペックなタブレットなど、それぞれのユーザー層に響くモデルをしっかりと揃えてきた。特に、フルHDディスプレイ搭載モデルのラインアップは、他社の動向を見る限り、しばらくはNTTドコモが圧倒的にモデル数が多い状況が続くことになりそうだ。

 惜しむらくは、料金施策がスマートフォン for ジュニア SH-05E向けの「Xiパケ・ホーダイ for ジュニア」のみで、他社が提供するような、“他事業者及び固定網向けの通話料割引サービスなど”が提供されなかったことくらいだろう。店頭での反応を聞いてみると、Xi対応スマートフォンには興味があるものの、通話料が割高になるため、FOMA対応スマートフォン及びケータイから移行することを躊躇する人が多いと言われており、この部分もそろそろ何らかの提案をして欲しいところだ。

 今回発表されたモデルは、すでに一部のモデルの予約も開始されており、全国6カ所のNTTドコモのスマートフォンプラザでは実機の展示も始まっている。本誌でも今後、各機種のレビューや開発者インタビューなどを掲載する予定にしており、これらを参考にしながら、新生活を楽しくするためのベストな1台をぜひ見つけて欲しい。

法林岳之

1963年神奈川県出身。携帯電話をはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。「できるWindows 8.1」「できるポケット docomo AQUOS PHONE ZETA SH-06E スマートに使いこなす基本&活用ワザ 150」「できるポケット+ GALAXY Note 3 SC-01F」「できるポケット docomo iPhone 5s/5c 基本&活用ワザ 完全ガイド」「できるポケット au iPhone 5s/5c 基本&活用ワザ 完全ガイド」「できるポケット+ G2 L-01F」(インプレスジャパン)など、著書も多数。ホームページはこちらImpress Watch Videoで「法林岳之のケータイしようぜ!!」も配信中。