法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

携帯電話ネットワークのつながりやすさは何で決まる?

 ここ数年、携帯電話のつながりやすさが話題になることが増えている。SNSでも「○○がつながりにくい」といった投稿をよく見かけるが、各社の携帯電話ネットワークのつながりやすさは、何で決まるのだろうか。今回は携帯電話ネットワークのつながりやすさについて、今一度、考えてみよう。

NTTドコモ「通信品質改善の進捗と今後の取り組み」(2026年5月18日)資料より

携帯電話サービスの根幹は「つながりやすさ」

 携帯電話サービスを選ぶとき、何を基準にするだろうか。料金プランで選ぶ人も居れば、ポイント経済圏を重視する人、端末ラインアップに注目する人、家族でまとめたときの割引を期待する人など、いろいろな基準が挙げられる。

 しかし、携帯電話サービスにおいて、もっとも重要なのは、やはり、「つながりやすさ」をおいて他にない。電波を使って、通話やデータ通信をするわけなので、とにかく携帯電話ネットワークにつながらなければ、話がはじまらない。同時に、携帯電話ネットワークにつながっても通信が安定せず、通話が途切れたり、データ通信のレスポンスが極端に遅ければ、携帯電話サービスとしての利便性が大きく損なわれてしまう。

 では、携帯電話サービスの「つながりやすさ」は、何で決まるか。ここ数年、各携帯電話会社の「つながりやすさ」が注目されることが増えてきた。auは英Opensignalの調査で世界トップレベルの評価を獲得し、ソフトバンクもこれに次ぐ評価を得ている。

 対して、NTTドコモは5Gサービス開始以降、ネットワークの強化に遅れをとり、ここ数年は多くのユーザーから「つながりにくい」といった厳しい評価が聞かれることが増えている。なかには長年、NTTドコモを愛用していながら、通信品質の低下で、他社に移行してしまったユーザーも少なくないという。

 そんななか、NTTドコモは巻き返しを図るべく、2024年6月に代表取締役社長に就任した前田義晃氏の陣頭指揮の下、積極的な設備投資を実施し、ネットワーク品質や通信品質の改善を図りつつある。

 今年3月末の3G停波に伴い、今後の道筋がある程度見えてきたことを踏まえ、5月には本誌を含む専門メディアの取材に応じ、本誌には5月21日に「ドコモの通信品質はどう変わる? ネットワーク本部長に聞く改善の現在地と『設備容量』強化のシナリオ」と題したインタビューが掲載された。

 筆者も本誌編集長と共に取材に同席したが、そこで語られた内容を踏まえ、今一度、携帯電話サービスのつながりやすさについて、考えることにした。

 本誌を長くご愛読いただいている読者のみなさんからすれば、「そんなことはもう知ってるよ」「わかってるよ」と思われるかもしれないが、昨今のSNSなどの反応を見て、「もしかして、こういうことが誤解されているのでは?」と思えることが増えてきたので、おさらいの意味も含めて、まとめてみることにした。

つながりやすさは「基地局の数」で決まる?

 携帯電話のつながりやすさを語るとき、まず最初に挙げられるのは、やはり「基地局の数」だろう。各携帯電話会社は全国各地に基地局を設置し、そこから電波を発する(送受信する)ことで、ユーザーが携帯電話サービスを利用できる環境を構築している。当然のことながら、基地局が多ければ、より広いエリアをカバーできるため、基地局の数が多ければ、つながりやすくなるはずだ。

NTTドコモ「通信品質改善の進捗と今後の取り組み」(2026年5月18日)資料より

 とは言うものの、基地局の数を増やすため、むやみに基地局を設置すればいいのかというと、そういう話でもない。隣り合う基地局などと電波干渉をしない場所を選び、必要に応じて、基地局の出力やアンテナの方向、傾きなどを調整しながら、効率良く設置していく必要がある。

 確かに、かつての2G(PDC)や3G(W-CDMA/CDMA2000 1x)のエリア展開では、基地局の数が物を言った。なかでも古くから携帯電話サービスを提供していたNTTドコモは、全国各地に数多くの基地局や鉄塔を建設したことで、広いエリアをカバーすることができた。

 その結果、山間部などではNTTドコモしかつながらないところがあり、登山道の入口に「ここから先は○○はつながりません」と、NTTドコモ以外の携帯電話会社がつながらないことを示す看板も立てられていた。

 ただ、携帯電話のつながりやすさは、必ずしも基地局の数だけで決まるものではない。

NTTドコモ「通信品質改善の進捗と今後の取り組み」(2026年5月18日)資料より

 たとえば、前述のNTTドコモのインタビューでも触れられているが、現在、全国各地に建てられている基地局は、備え付けられたアンテナにいろいろなタイプがある。もっともシンプルなアンテナは「オムニ方式」とも呼ばれ、アンテナから360度方向に電波を発する。ちょうど噴水のように、円形に電波が拡がっていく様子をイメージしてもらうとわかりやすい。

 これに対し、現在の多くの基地局で採用されているのが「セクター方式」だ。基地局の周囲の360度を120度ずつの3方向に分割し、それぞれの方向を異なるアンテナでカバーする仕組みだ。

 これにより、オムニ方式よりも多くのトラフィックを捌くことができる。都市部では角度をさらに細分化した6分割のセクター方式も採用されている。たとえば、A社とB社がそれぞれに同じ数の基地局を設置してもアンテナによっては、つながりやすさやパフォーマンスに大きく差が出てしまうわけだ。

 また、各携帯電話会社が設置する基地局の数は、各社に割り当てられた周波数帯域によっても大きく違ってくる。ソフトバンクの代表取締役社長執行役員 兼 CEOの宮川潤一氏は、決算会見の質疑応答で楽天モバイルについて質問されたとき、「かつて『ソフトバンクはつながらない』と言われ、当時、CTOだった自分は全国各地に基地局を建てまくった。楽天モバイルの苦労はわかるが、頑張ってほしい」といった趣旨のコメントをしていた。

 楽天モバイルに対し、ローミングに頼るのではなく、自らの力で基地局を建て、エリアを展開してほしいとエールを送った形だが、宮川氏が言うところの「建てまくった」という表現の裏には、当時のソフトバンクに割り当てられていた周波数帯域が大きく関係している。

 ソフトバンクは2006年にボーダフォンを買収したとき、利用できる周波数帯域が2Gで利用中の1.5GHz帯、3G向けに割り当てられた2GHz帯(2.1GHz帯)しかなかった。これに対し、早くからサービスを提供していたNTTドコモやKDDI(au)は、広いエリアをカバーできる800MHz帯が割り当てられており、ソフトバンクはエリア展開で大きなハンデを負っていた。

 改めて説明するまでもないが、携帯電話で利用する電波は、高い周波数帯域の方が直進性が強く、ビルや山などの多いところでは電波が反射してしまい、電波が届きにくくなってしまう。

 これに対し、700~900MHz帯などの周波数帯域は「プラチナバンド」と呼ばれ、建物の内部にも浸透しやすく、ビルの陰や山間部にも電波が回り込むため、広いエリアをカバーできる。

 たとえば、NTTドコモやKDDIが800MHz帯を使い、1つの基地局で山間部をカバーできたのに対し、1.5GHz帯や2GHz帯しか利用できないソフトバンクは、同じエリアをカバーするために、いくつもの基地局を設置しなければならなかったわけだ。

 ちなみに、このときに建てられた数多くの基地局はその後、ソフトバンクが買収や新規割り当てなどで得た周波数帯域にも利用され、現在のソフトバンクの広いエリアを支えている。

 先般のNTTドコモのインタビューでは、基地局の数とセクター数に加え、後述する周波数帯域の幅を掛け合わせ、「設備容量」と評価しており、設備容量が大きければ、混雑した環境でも安定した通信が提供できるとしている。

NTTドコモ「通信品質改善の進捗と今後の取り組み」(2026年5月18日)資料より
NTTドコモ「通信品質改善の進捗と今後の取り組み」(2026年5月18日)資料より

つながりやすさは「周波数帯域」で決まる?

 携帯電話サービスのつながりやすさを考えるうえで、もうひとつ大切なのが電波の「周波数帯域」だ。国民の共有財産である電波は、それぞれの周波数帯域ごとに利用者が決められ、各携帯電話会社は与えられた周波数帯域を使い、携帯電話サービスを提供している。

 携帯電話サービスで利用する周波数帯域は、かつての2G(PDC)時代、800MHz帯と1.5GHz帯しかなかったが、その後、3Gサービス開始に伴い、全世界共通の2GHz帯が割り当てられた。

 その後、イー・モバイル(イー・アクセス株式会社)に割り当てられた1.7GHz帯(ソフトバンクが買収で継承)、プラチナバンドを強く求めたソフトバンクに追加で割り当てられた900MHz帯、UQ WiMAXや旧ウィルコムを継承したWCP(Wireless City Planning)に割り当てられたBWAサービス向けの2.5GHz帯などが追加されたが、これらの周波数帯域は4G LTEサービス開始に伴い、3G向けから4G向けへ移行する流れとなった。

 こうして割り当てられた多くの周波数帯域は、ひとつの周波数帯域だけでデータ通信をするわけではなく、複数の周波数帯域を束ねて伝送する「キャリアアグリゲーション」という技術によって、高速通信に活かされている。どの周波数帯域を束ねるかは、各携帯電話会社がそれぞれ仕様を決めているが、後述するように端末側も束ねる周波数帯域をサポートしていなければならず、端末が対応する周波数帯域によって、キャリアアグリゲーションで通信をするときのパフォーマンスに差が出ることもある。

国内の4Gバンド・周波数帯一覧

 5GについてはSub6の3.5GHz帯や3.7/4.5GHz帯、ミリ波の28GHz帯が提供され、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの4社に割り当てられている。

国内の5Gバンド・周波数帯一覧
NTTドコモ「通信品質改善の進捗と今後の取り組み」(2026年5月18日)資料より

 これに加え、KDDIとソフトバンクは5Gサービスの開始直後から4G LTE向けに割り当てられた周波数帯域の一部を5G向けに転用し、5Gサービスをいち早く展開できる環境を整えようとした。

 転用5Gは5G本来の周波数帯域ではないうえ、パフォーマンスも十分ではなかったこともあり、当初は「なんちゃって5G」と揶揄されたが、いち早く転用5Gに取り組んだKDDIとソフトバンクは5Gでのエリア拡大とパフォーマンス向上を実現できた。一方で、当初は転用5Gに慎重だったNTTドコモは、5Gのエリア拡大に出遅れ、ここ数年の「ドコモはつながりにくい」という指摘を受ける要因になってしまった。

 この転用5Gでひとつ重要なのが「アンカーバンド」の存在が挙げられる。2023年9月にソフトバンクが行なった説明会などで触れられ、本誌記事も注目を集めた。当初の5Gサービスは、4Gのコアネットワークを利用する「NSA」(ノンスタンドアローン)で構成されており、5Gネットワークに接続しながら、無線通信を制御するために4Gネットワークにも接続している。この周波数帯域を「アンカーバンド」と呼んでいる。

 詳しくは当時の本誌記事「ケータイ用語の基礎知識 第948回:アンカーバンドとは」を参照していただきたいが、簡単に言ってしまうと、アンカーバンドは4Gネットワークと5Gネットワークの橋渡し的な役を担っており、4Gと5Gのスムーズかつシームレスな切り替えを実現する。

 ただし、4G LTE向けのバンドは既存の4G LTEユーザーも利用するため、すべての4G LTEのバンドをアンカーバンドに設定してしまうと、局所的に5Gユーザーが増えすぎたり、4Gネットワークでも品質低下が起きたりしてしまう。そのため、携帯電話会社としてはユーザーの利用動向を踏まえたチューニングが重要になってくる。

 ここ数年の状況を振り返ると、KDDIとソフトバンクはアンカーバンドのチューニングに成功したことで、ユーザーがストレスなく利用できるネットワークを提供できた。対して、転用5Gに出遅れたNTTドコモはアンカーバンドの整備にも苦労したという。

 2025年度には広いエリアをカバーできる700MHz帯を5Gに転用し、4Gと5Gの切り替え回数を減らすことができ、移動時にも5Gで継続して、つながりやすい環境を整えたとする。

NTTドコモ「通信品質改善の進捗と今後の取り組み」(2026年5月18日)資料より

 また、今年3月末にNTTドコモの3Gサービス「FOMA」を終了したことに伴い、最後まで3Gサービスで利用していた800MHz帯と2GHz帯を4G LTEや5Gなどに活用できることになった。

 たとえば、800MHz帯は割り当てられた30MHz幅のうち、すでに20MHz幅を4G LTE、残りの10MHz幅を3Gで利用していたが、3G停波に伴い、30MHz幅をフルに4G LTEに利用できるようになった。

 800MHz帯の通信容量は、単純計算で1.5倍に拡大したことになる。ただ、3G停波に伴う800MHz帯のフルLTE化は、瞬時に切り替わるわけではなく、当然のことながら、工事や調整などが必要なため、首都圏などの都市部を手始めに、順次、切り替えていくとしている。

NTTドコモ「通信品質改善の進捗と今後の取り組み」(2026年5月18日)資料より
NTTドコモ「通信品質改善の進捗と今後の取り組み」(2026年5月18日)資料より

つながりやすさは端末の「対応周波数」で決まる?

 ここまでは携帯電話ネットワークの条件について、説明したが、携帯電話サービスとしてのつながりやすさは、ネットワーク側だけでなく、端末の仕様も関係する。

 かつてのケータイ時代は、各携帯電話会社がメーカーと共に企画した端末を販売していたため、端末は基本的に各携帯電話会社のネットワークに合わせた仕様で開発されていた。これに対し、現在のスマートフォンは各メーカーが開発した端末を各携帯電話会社が採用しており、ネットワークの対応は端末によって異なる。

 スマートフォンが普及しはじめたばかりのころは、ケータイ時代の流れを受け、国内メーカーを中心として、携帯電話会社ごとにネットワークの仕様を最適化した端末を開発していた。

 しかし、SIMロック解除の動きなどに合わせ、各携帯電話会社向けの端末仕様はほぼ統一され、オープン市場向けのSIMフリー端末も含め、共通仕様の製品が販売されるようになりつつある。一部ではオープン市場向けの端末のみミリ波などに対応しないケースもあったが、今後はこうした部分も統一されていく見込みだ。

 統一されつつあるとはいえ、すべての端末は国内で割り当てられている各携帯電話会社の周波数帯域(バンド)をサポートしているかというと、そうでもない。たとえば、筆者が本誌レビュー記事やImpress Watch Videoの「法林岳之のケータイしようぜ!!」で指摘してきた5Gの「n79」(4.5GHz帯)というバンドの対応状況もそのひとつだ。

国内の5Gバンド・周波数帯一覧

 国内ではNTTドコモに5Gの「n79」が割り当てられているが、グローバルでは採用例が少なく、海外メーカー製の端末ではサポートされていないことが多い。たとえば、シャオミやOPPOなどの端末は、ほとんどが「n79」をサポートしていない。

 例外としては、今年3月に国内向けに発売された「Xiaomi 17 Ultra」や「Leica Leitzphone powered by Xiaomi」は「n79」をサポートしているが、それ以外はほとんどの端末が「n79」非対応となっている。

 NTTドコモの5G向け周波数帯域は、3.5GHz帯の「n78」もあるため、「n79」非対応の端末でも5Gに接続できるが、基地局の設置状況によってはつながりやすさに差が出てしまう。

 この点について、今回のNTTドコモのインタビューで確認したところ、「3.5GHz帯は衛星との干渉があるため、基地局を設置できる場所が制限されるが、4.5GHz帯は干渉がなく、設置しやすい」という回答が得られた。

 この質問をしたのは、ここ1~2年、筆者がいろいろな場所に出向いたとき、接続中のモバイルネットワークのバンドを表示するアプリで確認したところ、意外なほど「n79」に接続されている場所が多かったからだ。

 本格的なネットワーク調査のように、常に確認してログを取っているわけではないので、スポット的な確認に限られるが、東海道新幹線の新大阪駅のホームのような混雑する場所で「n79」に接続されることが多かった。ちなみに、2024年12月にソフトバンクに割り当てられた4.9GHz帯は「n79」に含まれており、2030年には運用が開始される予定のため、端末がサポートする必要性は増すことになる。

 「n79」と同様、4Gネットワークでも海外メーカー製端末を中心に、国内の周波数帯域をサポートしていないケースがある。たとえば、NTTドコモが利用している1.5GHz帯の「Band21」が挙げられる。

 1.5GHz帯は日本独自の周波数帯域なので、海外メーカー製端末などがサポートしていないのは仕方がない部分もあるが、「Band21」は全国各地の都市部において、トラフィックを分散させるための補助的な役割を担い、他の周波数帯域とキャリアアグリゲーションで束ねる周波数帯域としても利用されている。

 そのため、対応端末ではキャリアアグリゲーションで高速な通信が可能だが、非対応端末では今ひとつ速度が伸びなかったり、レスポンスが良くないといったことが起こり得る。

 具体的にどんな端末が対応していないかというと、やはり、シャオミやOPPOなど、オープン市場向けの端末の多くが対応していない。しかし、少し事情が異なるのがモトローラだ。

 オープン市場向けの「motorola edge」シリーズなどは非対応だが、NTTドコモに納入している「motorola razr 60d M-51F」は、「Band 21」だけでなく前述の5Gの「n79」もサポートしている。これはNTTドコモが「Band 21」や「n79」のサポートを納入(採用)の条件に挙げているためと推察される。

 NTTドコモでの「Band 21」の対応は例外もあるようで、NTTドコモで販売するFCNTの「らくらくホン F-41F」や「らくらくスマートフォン F-53E」、シャープの「AQUOS wish5 SH-52F」はいずれも「Band 21」をサポートしていない。

 これは「Band 21」が主にキャリアアグリゲーションの「束ねる周波数帯域」として利用されているため、パフォーマンスが求められない普及価格帯やエントリー向けのモデルでは、非対応でも構わないと判断しているのかもしれない。

 アップルのiPhoneについては、2016年発売の「iPhone 7」シリーズ以降、ほぼすべての機種が対応しているが、最廉価モデルの「iPhone 17e」と「iPhone 16e」の2機種は「Band 21」に対応していない。「iPhone 17e」と「iPhone 16e」は「らくらくスマートフォン」や「AQUOS wish5」などに比べ、少し価格帯が高い端末であることを鑑みると、やや残念な印象は否めない。

 Googleの「Pixel」シリーズについては、NTTドコモでの取り扱いが再開した「Pixel 7a」以降、すべての機種で「Band 21」や5Gの「n79」に対応している。注意したいのは「Pixel 7a」よりも半年前に発売された「Pixel 7」や「Pixel 7 Pro」は非対応となっている点だ。

 ここでは5Gの「n79」と4Gの「Band 21」について、対応/非対応を説明したが、各携帯電話会社が基地局を設置し、広いエリアをカバーしていても端末側が各社の周波数帯域をサポートしていなければ、携帯電話ネットワーク本来のパフォーマンスを必ずしも得られるわけではない。

 実際には、複数の周波数帯域によってエリアが構築されているため、圏外になるほどの差はないが、つながりやすさに差が出てしまう可能性があることは覚えておきたい。

つながりやすさとパフォーマンスに影響する「5G SA」

 国内で5Gサービスが開始して、すでに6年。前述のように、当初は4Gのコアネットワークを利用する「NSA」(ノンスタンドアローン)で提供されてきたが、5Gサービスのパフォーマンス向上で欠かせないのが「5G SA」だ。

NTTドコモ「通信品質改善の進捗と今後の取り組み」(2026年5月18日)資料より

 5G SAはこれまでのNSAと違い、5Gのコアネットワークのみで構成されるため、5Gが持つ本来のパフォーマンスや機能を利用できる。たとえば、特定の時間帯や場所で5Gネットワークを切り売りできる「ネットワークスライシング」などのサービスが期待されている。普段の利用でも、複数の5Gの周波数帯域をキャリアアグリゲーションで束ねるとき、高い周波数帯域のエリアが拡大できる可能性があるとされている。

 5Gサービスの本命と言われる「5G SA」だが、これもここまで説明してきた機能やサービスと同じように、利用するにはいくつかの条件を満たす必要がある。

 まず、各携帯電話会社が「5G SA」のサービスを提供している必要があり、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクがすでにサービスを提供している。これに対し、楽天モバイルは今年中にネットワークの運用を開始し、2027年に正式サービスを提供するとしている。

 また、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクで5G SAを利用するには、いずれも申し込みが必要で、各社の「My○○」やショップなどで手続きができる。NTTドコモは当初、月額550円の有料プランとして提供しながら、無料キャンペーンにより、実質無料としていたが、5月27日に正式に無料で提供することがアナウンスされている。

 次に、利用する端末が5G SAに対応している必要があるが、最近の機種であればほとんど対応しており、契約などが完了していれば設定などを変更することなく、5G SAに接続可能だ。

 SIMカードについては、すでに5Gサービスを利用しているのであれば、概ね利用可能とのことだが、一部の古いSIMカードなどは交換が必要なケースもある。ちなみに、eSIMについては交換の必要はない。

 もうひとつ重要なのが各携帯電話会社のネットワーク側の設備で、基地局側も5G SAに対応していなければ、ユーザーが対応端末を持っていても5G SAでは接続できない。各携帯電話会社は5Gや4Gのエリアマップを公開しているが、5G SAのエリアマップはまだ限定的で、詳細な情報はわからない。

 今回のインタビューでは、NTTドコモが公開している5G SAのエリアマップを参照し、都内の少し広めの一部エリア(世田谷区や目黒区などの一部)が5G SAに未対応である理由を確認したところ、比較的早い時期に5Gサービスに対応したエリアであるため、基地局の設備などが初期のもので、5G SAにはまだ対応できていないとのことだった。

 5G SAはすでに利用中のユーザーも多いだろうが、今後5Gサービスを存分に利用するためにも、端末やSIMカードの対応状況を確認し、各携帯電話会社の5G SAオプションを申し込み、いつでも5G SAが利用できる環境を整えておきたい。

つながりやすさは「誤解」されている?

 ここまでは携帯電話のつながりやすさの基本となる基地局、アンテナ、周波数帯域、端末、5G SAなどについて説明してきたが、最近、SNSやネット上の投稿などを見ていて、携帯電話ネットワークのつながりやすさが誤解されているのではないかと感じることが増えてきた。

 まず、大前提として認識しておきたいのは、携帯電話サービスは割り当てられた周波数帯域の電波を複数のユーザーで共用するため、品質やパフォーマンスにはどうしても不確実な部分があるという点だ。

 ごくシンプルに言えば、人が少ないところであれば、安定した高速通信が期待できるが、混雑しているところでは当然、速度もパフォーマンスも低下する。しかも時間や場所に応じて、こうした状況は刻々と変化する。

NTTドコモ「通信品質改善の進捗と今後の取り組み」(2026年5月18日)資料より

 たとえば、地下鉄の駅のホームで動画を視聴しているとき、ホームに満員電車が入ってくれば、車両内の人たちが利用する携帯電話がハンドオーバーしたり、駅構内の基地局に再接続するため、動画の再生が途切れたり、止まってしまう可能性がある。都市部のオフィスビルも出退勤時やランチタイムはトラフィックが急激に増え、通信や通話が途切れてしまうことが起こり得る。

 もちろん、各携帯電話会社はこうした利用状況に合わせ、基地局を増強したり、Wi-Fiサービスを提供するといった対策をしているが、設備増強には一定の時間がかかる。

 都市部では周囲の環境の変化によって、つながりやすさが変わることもある。たとえば、新たにビルが建てられたり、基地局が設置されていたビルが建て替えで基地局が違う場所に移動したことで、つながりにくくなるケースもある。特に、現在の携帯電話サービスは高い周波数帯域の利用が多いため、周囲の建物や工事などの影響を受けやすい傾向にある。

 そして、ユーザーが誤解しているケースも少なくない。たとえば、本稿で触れた周波数帯域や端末の仕様などは、つながりやすさに大きな影響を与える。自分のスマートフォンは通信のパフォーマンスが今ひとつなのに対し、いっしょにいる友だちのスマートフォンは何百Mbpsも出るほど、快適に利用できているとする。実は、そのエリアでは「n79」の電波が強いものの、自分の端末は非対応なので、通信速度が出ていなかった……なんていうことも起こり得るわけだ。

 もっとも、ダウンロード速度の数Mbps、数十Mbps、何百Mbpsの差は、スマートフォンの一般的な利用において、それほど大きな差がないという見方もある。たとえば動画を再生する程度なら、数Mbps程度でも十分快適な視聴が可能だ。

 何GBものデータをダウンロードしない限り、何百Mbpsもの通信速度の効果は実感できないだろう。スピードテストアプリで繰り返し速度を測り、一喜一憂するのはあまり現実的ではない(それでも測りたくなるんだけど……)。

 また、SNS上でもこうした誤解に基づく話題が数回、起きている。ちょうど4月の連休前、SNS上で「ahamoに切り替えたら遅くなった」「ahamoはドコモMAXより制限されている」といった投稿が増え、話題になった。

 しかし、ahamoは元々オンライン専用料金プランとしてスタートしており、サービス開始当初からNTTドコモの通常契約と同じエリア、同じネットワーク品質で利用できることが明らかにされている。

 つまり、ahamo契約だからといって、特別な制限をかけていないわけだ。ちなみに、auに対してのUQモバイルとpovo、ソフトバンクに対してのワイモバイルとLINEMOも同様で、各携帯電話会社の別ブランド(サブブランド及びオンライン専用プラン)は、いずれも本ブランドと同じネットワーク品質で運用されている。

 この件について、5月8日の決算会見の質疑応答で、「SNS上でahamoのネットワークだけが遅いんじゃないかという指摘があるが、そんなことってないですよね?」という質問があり、NTTドコモ前田社長はそれに対し、「ご理解の通り、それはないですね」と明確に否定している。

 この質疑のやり取りについて、SNS上ではNTTドコモに対し、「どっちも遅いということか」といった辛辣なコメントが飛び交っていたが、質疑応答で確認されたのは、ドコモMAXなどの契約とahamo契約でネットワーク品質の区別はしていないということであり、現状のNTTドコモのネットワーク品質が快適か否かという話ではない。

 SNS上での反応がやや過敏な印象が否めないが、裏を返せば、ユーザーがそれだけ疑心暗鬼になってしまうほど、NTTドコモのネットワークの品質に不満を持つユーザーが多いわけだ。

 同じように、ユーザーの誤解が見え隠れしたのは、5月19日にSNS上でNTTドコモの通信障害が疑われた件だ。5月19日朝、SNS上で「NTTドコモの回線が利用できない」という指摘があり、それに対し、NTTドコモが同日午前11時30分に、SNS上の投稿を認識し、確認中である旨のお知らせを掲載した。

 同日午後1時15分に「ドコモ設備の正常な運用を確認しました」とのお知らせを発すると共に、「一部MVNOさまの設備不具合によるMVNOサービスをご利用のお客さまへ影響が出ていた」との情報を掲載した。

 その後、ドリーム・トレイン・インターネット(DTI)がMVNOサービスの「トーンモバイル」と「DTI SIM」でネットワーク設備に障害が起きていたことを明らかにして、一件落着となった。

 改めて説明するまでもないが、MVNO各社は各携帯電話会社からネットワークを借り受け、音声通話やデータ通信などのサービスを提供している。そのため、NTTドコモ側のネットワークが正常に運用されていてもMVNO側の設備に障害が発生すると、接続できなかったり、利用できなくなるケースがある。

 この場合の責任はMVNOにあり、NTTドコモが負う責任はない。とはいえ、ユーザーの端末にはアンテナピクトなどに「docomo」と表示されるため、「NTTドコモで障害が起きたのでは?」と誤解してしまったわけだ。

 こうしたユーザーの誤解によって、NTTドコモの障害が疑われ、それがSNS上で拡散してしまったのは残念な限りだが、これもahamoの件と同じように、そういった風評が出てしまうほど、NTTドコモに対する不満や不安が積み重なっていることも少なからず関係する。

確かな「つながりやすさ」を求めて

 携帯電話サービスは通信方式の世代を重ねるごとに進化を続け、端末もケータイからスマートフォンへの移行が進み、さまざまなサービスが利用できるようになってきたが、携帯電話サービスの根幹は、やはり「つながること」にあるはずだ。

 ここ数年、各携帯電話会社は改めて「つながる」「つなぐ」ことに注力し、積極的なアピールが続いているが、その一方で、NTTドコモは他社の後塵を拝してしまった感は否めない。

 NTTドコモは、ネットワーク品質で他社に遅れをとった理由として、コロナ禍でリモートワークや在宅勤務が増え、住宅街でのトラフィックが急速に伸びたことには対応した。しかし、コロナ禍の終息で外出自粛が解かれ、人流が都市部に戻ってきたとき、急激なトラフィック増に対応しきれなかったことを挙げている。

 同時に、ネットワーク品質強化への設備投資が遅れ、5Gサービスの展開についても前述の通り、転用5Gなどへの対応が不十分だったことも関係している。こうした設備投資を含めたネットワークの強化の遅れは、過去に起きたことがあるが、最大手のNTTドコモとはいえ、一朝一夕に挽回することは難しいだろう。

 本稿では「つながりやすさは基地局の数だけで決まらない」と書いたが、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社が運用する基地局数に大きな開きがあるわけではない。しかし、2025年度の契約者数はNTTドコモが約9200万、KDDIが約7100万、ソフトバンクが約5600万となっており、本来であれば、NTTドコモはもっと多くの基地局を設置し、ネットワークを強化しなければ、多くのユーザーのトラフィックを捌けない。

 かつてのケータイ時代に比べ、携帯電話サービスは高度化し、ネットワークも複雑になっているため、NTTドコモにとってネットワーク品質の挽回はまだまだ始まったばかり、というのが本当のところだろう。

 今後、多くのユーザーが「つながるね」と言い合えるように、各携帯電話会社にはネットワーク品質の強化を継続的に図っていくことを期待すると同時に、我々ユーザーもしっかりとした知識をもって、各社のネットワーク品質を見極めながら、携帯電話ネットワークの「つながりやすさ」に注目していきたい。