法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

端末やモバイルバッテリー、モバイル製品のリサイクルはこれでいいの?

 国内のモバイル市場は毎年、約3000万台以上の端末が出荷されている。スマートフォンの完成度が高くなったこともあり、ここ数年は買い換えサイクルが延びる傾向にあり、出荷台数はやや減っているが、それでも毎月のように、新製品が発表され、数多くの製品が購入されている。今回はそんなスマートフォンや携帯電話をはじめとする端末をはじめ、関連するモバイル製品のリサイクルについて、考えてみよう。

ケータイ時代から続くリサイクル

 改めて説明するまでもないが、携帯電話やスマートフォン、タブレットといったデジタルデバイスは、さまざまな部品によって、構成されている。これらの部品は樹脂(プラスチック)やガラス、アルミニウムやステンレスなどの金属をはじめ、金、銀、銅、パラジウムなどの希少金属も含まれる。これらを回収し、再資源化する取り組みは、日本が資源に乏しいという事情もあり、かつてのケータイ時代から長く取り組まれてきた。

 こうしたリサイクルの取り組みの中心的な役割を担っているのが 一般社団法人電気通信事業者協会が運営する「モバイル・リサイクル・ネットワーク」だ。Webページなどを通じて、周知や啓発活動を行なう一方、回収実績なども掲示されている。

各携帯電話会社が端末や充電器、アクセサリーなどを回収している『モバイル・リサイクル・ネットワーク』のロゴマーク

【モバイル・リサイクル・ネットワーク】

 モバイル・リサイクル・ネットワークの取り組みでは、ユーザーが使い終わったり、不要になった端末を各携帯電話会社のショップで、販売した携帯電話会社やメーカーに関わらず、回収を受け付けている。端末だけでなく、端末に装着する電池パックや充電器、ケーブルなども回収の対象としている。

 回収された端末に保存されているデータは、単に初期化するだけでなく、ケータイの場合、「ケータイパンチ」という専用機器で端末本体に穴を開け、基板上からもデータを読み出せない処理をしている。スマートフォンについては内蔵バッテリーが固定式の機種が多く、穴を開けるといった破壊ができないため、端末を初期化のうえ、回収する各携帯電話会社に処理を一任する形を取っている。

ケータイ時代には広く利用されていた『ケータイパンチ』は、空間部分に端末を挟み、レバーを倒して、強制的に端末に穴を開け、破壊していた

 回収された端末や関連製品は、一部が端末の予備部品などに使われるケースがあるものの、ほとんどの回収品はリサイクル事業者(再資源化事業者)に引き渡され、分解や粉砕、選別などの工程を経て、精製、再資源化され、再び、さまざまな製品の製造に再利用されている。ここ数年のスマートフォンでは「再生アルミニウムを使用」を謳う製品が増えているが、多くの製品はこうしたリサイクルによって精製された素材がくり返し使われている。

二十年以上を経て、様変わりしたモバイル業界

 日本は諸外国に比べ、比較的、リサイクルの取り組みに熱心だと言われる。モバイル業界も「モバイル・リサイクル・ネットワーク」の取り組みによって、一定の成果を出しているという見方もできるが、ここ十数年の業界の変化にしっかり対応できていないようにも見受けられる。

 たとえば、冒頭でも触れたように、国内では毎年、約3000万台以上の端末が出荷されている。市場環境によって、年ごとの差異はあるが、まだまだ出荷台数は多い方と言えるだろう。ところが、前述のモバイル・リサイクル・ネットワークの回収実績を見ると、端末は平成12年(2000年度)の1361万台だったのに対し、令和4年度(2022年度)は348万台と、1/4近くまで減っている。電池や充電器なども同じように、回収実績は減少している。電池に関して言えば、ケータイ時代は着脱式が主流で、スマートフォンは内蔵固定式なので、回収量が減ることは理解できる。充電器もケータイ時代は専用端子を採用したものが主流だったが、現在は端末に充電器が同梱されなくなったうえ、充電器そのものもある程度、汎用性が高い端子が採用されているため、多くのユーザーは継続利用しており、これも回収量が減る要因になっている。

 端末についても2010年代半ばに、ケータイからスマートフォンへの移行があり、大規模な買い換え需要が発生したが、思ったほど、古い端末の回収が増えていないようだ。こうした事象が起きる背景にあるのは、やはり、端末内にメールやメッセージ、写真などのデータが保存されているため、ユーザーとしては使い終わっても手放しにくいという思いがあるためだ。スマートフォンであれば、Googleフォトなどにバックアップできるが、かつてのケータイはメールや写真が端末内に保存されたままで、ユーザーが機種変更時に外部メモリーカードなどに保存しなければ、読み出せなくなってしまう。しかも利用を中止してから数年間、放置しておくと、バッテリーが完全放電してしまい、端末の電源も入らなくなり、「いつかどうにかしたいけど……」と、机の引き出しにしまわれたままになることが多いようだ。

 また、市場の変化も関係している。かつてのケータイは基本的に各携帯電話会社が販売していたが、現在はオープン市場向けのSIMフリー端末の販売が増えているうえ、販売方法もコロナ禍の影響もあり、店頭からオンラインショップへの移行が拡大している。そのため、ケータイリサイクルの取り組みが十分に周知されておらず、SIMフリー端末などもリサイクルとして受け付けてもらえるかどうかも明示されていない。いわゆる『格安スマホ』という流れがはじまってから、約10年ほどになるが、ケータイにしろ、スマートフォンにしろ、モバイル業界のリサイクルは思ったほど、変わっていないのが実状だ。

「おもいでケータイ再起動」などは開催されているが……

 こうした状況に対し、各携帯電話会社も手をこまねいているわけではない。本誌でも何度か記事として取り上げたことがあるが、auは「おもいでケータイ再起動」というイベントを各地で開催している。

【おもいでケータイ再起動(au)】

 「おもいでケータイ再起動」はユーザーが持ち込んだケータイ(フィーチャーフォン)の電池パック(バッテリー)を専用機器で復活させつつ、専用ソフトウェアで端末内の写真などを読み出したり、懐かしい「思い出」の写真をプリントしてくれるイベントだ。状況によっては、読み出した写真をメモリーカードに保存してもらえることもある。すべての端末に対応できるわけではないが、携帯電話会社やメーカーを問わずに持ち込むことができる。筆者もイベントを取材したことがあり、亡くなった家族の写真やメッセージを見ることができたり、今は大きくなった娘や息子が小さい頃の写真が出てきたりと、涙と笑顔と感動にあふれるイベントという印象だ。かつては不定期開催だったが、現在は東京・銀座の「GINZA 456 Created by KDDI」で毎月開催されるようになり、他の地域でも頻繁に開催されている。同様のイベントはNTTドコモも「復活!あの頃ケータイ」として、2019年に全国のドコモショップで開催したが、コロナ禍もあり、現在の開催状況はWebページなどで告知されていない。

 話をリサイクルに戻すと、「おもいでケータイ再起動」に参加し、持ち込んだ端末から写真などを読み出すことができれば、本来なら、端末は不要になり、ケータイリサイクルに出せるはずだが、再び端末を持ち帰ってしまう人も少なくないという。元々、回収を条件に掲げたイベントではないため、しかたない面もあるが、こうした活動の方向性や内容を含め、自宅などに保管されている使い終わった端末をどのように回収し、どうやってリサイクルし、再資源化していくかは、これからもモバイル業界各社の課題になりそうだ。

古い端末をどう回収するのか

 では、具体的にどのように回収していくか。ひとつは各携帯電話会社や端末メーカーが今まで以上に積極的に回収やリサイクルに取り組み、しっかりとユーザーに周知していくことが挙げられる。同時にユーザーに判断してもらいやすくするため、回収する目安や回収しないときのリスクなども伝えていく必要がある。

 たとえば、iPhoneで考えてみると、最新のiOS 17が利用できるのは2018年発売の「iPhone XS/XR」シリーズ以降で、それ以前の「iPhone 8」などは対象外となる。もちろん、「iPhone 7」シリーズや「iPhone 8」シリーズなどはまだまだ十分に使い物になるかもしれないが、この先のことを考えれば、アップルがいつまで古い機種のセキュリティをサポートし続けるのかはわからないため、時期が来れば、ある程度のタイミングで見切りを付け、処分する必要はあるだろう。

 Androidプラットフォームも同様だが、国内で販売されるAndroidスマートフォンはほとんどが各携帯電話会社で販売されているため、アップデートは各携帯電話会社の方針に依存する部分が多く、概ね2~3年程度でセキュリティパッチの配布が終了されてしまう。

 また、iPhoneでもAndroidスマートフォンでも長く使っていると、バッテリーが膨張し、端末の側面が開いてしまい、使い物にならなくなることがある。筆者もいくつかの機種で経験があり、修理を依頼したこともあるが、バッテリーの膨張に気づかず、端末に充電器をつなぎっぱなしにしていると、何らかのきっかけで爆発したり、発火してしまうリスクが考えられる。
 また、少し特異なケースになるかもしれないが、使わなくなった端末が空き巣などで盗難に遭い、ログアウトしていないアカウントなどが乗っ取られたり、保存していた情報が盗み出される可能性もある。

長く利用していると、内蔵バッテリーが膨張してしまい、端末の側面が開いてしまうことがある

 これらのことを鑑みれば、使わなくなった端末は、どこかのタイミングで端末を初期化して、買取ショップで売却したり、各携帯電話以外社のリサイクルに出すことを検討した方が安全かつ賢明と言えそうだ。特に、スマートフォンに関しては、ここ数年で中古市場がかなり拡大しており、端末データの初期化などの対応を謳う買取ショップも増えているため、以前に比べれば、手放しやすくなっている。

 もちろん、懐かしい端末をコレクションしておきたいという気持ちは十分に理解できるし、筆者自身も3G時代以前の端末も多く保管しているが、当然、これらもいつかは処分しなければならないと考えている。

 一方、最近では各携帯電話会社やメーカーが「下取り」という形で、古い端末を引き取る事例が増えている。これは一見、リサイクル的な取り組みと言えそうだが、実際には新しい端末の「購入」を前提にした販売施策の一環でしかなく、本質的な「再資源化」や「リサイクル」の取り組みとは言い難い。一部に高額で下取りされるケースもあるが、実状は買取ショップよりも下取り価格が安いケースが多いように見受けられる。

 各携帯電話会社や端末メーカーなど、モバイル業界の各社が本当に環境のことを考えているのであれば、これまでの取り組みから、もう一歩、踏み込んだ施策をそろそろ打ち出す必要があるのではないだろうか。たとえば、かなり古い端末でも各携帯電話会社のショップなどにでリサイクルで持ち込めば、各社経済圏のポイントを10ポイントでも100ポイントでも付与するくらいの取り組みがあってもいいだろう。もちろん、盗品などを持ち込まれることも考えられるため、一定の対策は必要だろうが、古くなった端末をユーザーが回収に出しやすくするための工夫が欲しいところだ。

モバイルバッテリーはリサイクルの問題児?

 ところで、古い端末の処分について、今年3月14日にはNTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの4社が共同で「携帯電話・スマートフォンなどのご使用に関する安心・安全の啓発の取り組みについて」というお知らせを発表している。お知らせでは使わなくなった携帯電話やスマートフォンを通常ゴミとして処分することが危険である旨を伝えているが、なかでも問題なのは端末内蔵のリチウムイオン電池が回収時に破損し、ゴミ収集車で火災が発生したり、ゴミの焼却場で爆発が起きることが説明されている。

【携帯電話・スマートフォンなどのご使用に関する安心・安全の啓発の取り組みについて~携帯電話・スマートフォンを処分するにあたっての注意点~(KDDI)】

 実は、このお知らせの最後でも触れられているが、今、モバイル業界内において、端末や充電器など以上に問題となっているのが「モバイルバッテリー」の扱いだ。ここ数年、カバンに入れていたモバイルバッテリーが爆発したり、発火してしまい、電車などの公共交通機関が一時、運行を休止するといったニュースが伝えられており、モバイルバッテリーそのものの信頼性に加え、使わなくなったモバイルバッテリーをどのように処分するのかが課題となっている。

 モバイルバッテリーはかつてのケータイ時代も簡易的なものがあったが、スマートフォンが登場してからは、端末本体のバッテリー駆動時間の短さから、モバイルバッテリーを組み合わせて利用するユーザーが急速に増え、モバイルバッテリーの商品そのものもかなり種類が増えた。モバイルバッテリーはスマートフォンや携帯電話などのモバイル製品向けのものが多いが、ノートパソコンと組み合わせて利用したり、クルマのジャンプスタート用にも同様の製品が販売されており、容量やサイズ、端子などの違いから、かなりバリエーションは多い。

 こうしたモバイルバッテリーもくり返し利用することで、内蔵されているリチウムイオン電池の性能が低下し、容量が充電できなくなったり、他の機器に十分に給電できないといったことが起きる。なかにはあまり品質の良くない製品も流通しており、それらの製品が充電時や給電時に発火してしまうようなことが起きているわけだ。

 性能が低下したり、使わなくなったバッテリーをどうするか。ケータイやスマートフォンと同じように「各携帯電話会社のショップに……」と考えてしまいそうだが、実状は意外にそう簡単な話でもない。今回の記事にあたり、各携帯電話会社にモバイルバッテリーの処分について、問い合わせたところ、基本的にそれぞれの携帯電話会社、つまり自社で販売したものについては、回収を受け付けるとしている。唯一、楽天モバイルのみが「どのメーカーの製品でも回収を受け付ける」と回答をしたが、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)」に基づくと、おそらく、こうした対応は法令違反になるようだ。

 というのもモバイルバッテリーの廃棄については、産業廃棄物として、政府の認可が必要とされているという。そのため、基本的に自社製品、もしくは自社で販売した製品については回収できるものの、他社製品については回収する『権利』がないという。しかもこれらの回収に係わる規制は、自治体単位で決められている。そのため、本来であれば、他の地方で廃棄されたモバイルバッテリーを東京で回収するといったことができない。ただし、それでは使い勝手が悪いため、現在は特例制度が認められ、広域認定制度として、全国で回収できるようにしている。

不要になったモバイルバッテリーはどう処分すればいいのか

 では、各携帯電話会社のショップ以外で購入したモバイルバッテリーは、どのように処分するのか。

 まず、不要になったモバイルバッテリーをはじめ、家電製品の電池パック(掃除機用やコードレスホン用など)については、自治体やモバイルバッテリーを製造したメーカーが回収する。ただ、自治体が自らモバイルバッテリーの回収を受け付けているところは少なく、ほとんどの自治体が「一般社団法人JBRC」のリサイクル協力店(電器店やホームセンターなど)に持ち込むようにアナウンスしている。たとえば、東京都環境局のWebページで、その旨がアナウンスされている。

【一般社団法人JBRC】

【小型充電式電池の適正排出とリサイクル(東京都環境局)】

 ところが、JBRCのリサイクル協力店での回収は、会員企業が製造した製品のみを対象としている。会員企業には国内外の電機メーカーやモバイル関連の企業が数多く登録されているが、街中やオンラインショップなどで販売されている製品には、海外メーカーやノーブランドの製品などもあり、当然のことながら、これらのモバイルバッテリーを回収に出しても受け付けてもらえない。JBRCは単三や単四などのニッケル水素充電池(小型充電式電池)も回収しているが、先般、筆者がある家電量販店に性能が劣化した充電池を十数本、回収に持ち込んだところ、きっちりとメーカー名をチェックされ、対象外の製品は回収しない旨を念押しされたこともあった。

 また、多くの自治体は回収の窓口として、JBRCのリサイクル協力店を指定しているため、対象外の製品の回収は受け付けていないが、大阪市は家庭ゴミへのリチウムイオン電池の混入によって、収集車両や中間処理施設で火災事故が起きていることを受け、昨年7月から市内10か所の環境事業センターで、モバイルバッテリーや小型充電式電池、加熱式たばこ、電子たばこなどの不要品の回収を受け付けている。家庭から排出されるものに限られるが、膨張したものや変形したものも回収するとしている。本来であれば、いずれの自治体でもこれくらいの取り組みをして欲しいところであり、業界各社もこうした取り組みを積極的にサポートするべきではないだろうか。

【リチウムイオン電池等の拠点回収を環境事業センターで開始します(大阪市)】

 一方、メーカーの回収については、JBRC会員企業のものであれば、家電量販店など、同団体のリサイクル協力店で受け付けてもらえるが、本誌記事などでもおなじみのANKER(アンカー)は「Anker モバイルバッテリー/ポータブル電源回収サービス」というWebページを掲示し、同社の回収窓口でも受け付ける旨がアナウンスされている。送料は発払いとなるため、無料の回収にはならないが、リサイクル協力店が近くにない人にとっては有用だろう。ちなみに、ANKERはこれまでも古くなった他社製品を含むモバイルバッテリーを店頭に持ち込み、割安に買い換えられるキャンペーンを実施するなど、環境に配慮した施策に積極的に取り組んでいる。

スマートフォン時代に入り、利用が拡大したモバイルバッテリー。奥側のANKER製はJBRCのリサイクル協力店で回収できるが、手前側のAUKEY製は会員企業ではないため、自治体に問い合わせるしかない

 ところで、各携帯電話会社は前述のように、モバイルバッテリーについて、「自社で販売した製品は回収する」としている。しかし、ドコモショップやauショップといったキャリアショップ以外でも各社の看板を掲げ、端末を販売したり、契約を受け付けているショップも多く、そういったショップが「契約してくれれば、モバイルバッテリーをひとつ差し上げますよ」といったキャンペーンが提供することもあり得る。こうした販売店独自の施策で提供されたモバイルバッテリーは、「自社で販売」の範疇に入るのか、それとも「対象外の企業だから回収されない」とするのか。「自社で回収できないようなメーカーのモバイルバッテリーをノベルティに採用するショップが悪い」と切り捨ててしまうこともできるが、多くの消費者がそういった杓子定規的な対応で納得してくれるかどうかは疑問が残る。

法整備も含め、モバイル業界全体でリサイクルの見直しを

 長らく拡大と成長を続けてきたモバイル業界。エリアは拡大し、ネットワークは進化し、端末も次々と新しいものが世に送り出されてきた。おそらく、これからも次の世代へ向けて、進化を続けていくだろうが、多くの人の手元には端末や周辺機器、スマートフォン時代になってから急速に増えたモバイルバッテリーなど、さまざまなハードウェアが残されている。これらのハードウェアのうち、どれが不要なのか、不要になったものをどうするのか、どのように処分し、再資源化していくのかはモバイル業界としても重要な課題のひとつだ。

 ケータイ時代から続く「モバイル・リサイクル・ネットワーク」は、モバイル業界の優れた取り組みのひとつだが、オープン市場向けにも数多くの端末が展開されるなど、モバイル業界が置かれる環境は、変わりつつある。モバイルバッテリーのように、新しいハードウェアも広く利用されるようになり、これらの機器が使い終わったとき、どのように回収、再資源化していくのか、ユーザーにどのように周知していくのかも考える時期に来ている。

 今回の取材では法律によって、モバイルバッテリーの回収方法などに制限があることもわかったが、もし、その法律が実状に合わなくなっているのであれば、業界として、時代に合わせた法整備を政府に働きかける必要があるだろう。

 また、多くの自治体がモバイルバッテリーの回収先としている一般社団法人「JBRC」は、同法人の会員企業の製品のみを回収の対象としている。「資源有効利用促進法」や「廃棄物処理法 広域認定制度」など、法律に基づく取り組みであることは理解できるが、単三や単四のニッケル水素充電池といった身近なものについても会員企業か否かをきっちりと区別しており、リサイクル協力店の対応も含め、やや排他的な印象を受ける。もう少し一般消費者に対して、寛容な対応とわかりやすい方針を示して欲しいところだ。

 モバイルは日々の生活やビジネスに欠かせないものだ。だからこそ、消費者が安心して利用できるように、なおかつ限られた資源を有効活用できるように、モバイル業界各社には今後もしっかりと『モバイルリサイクル』に取り組んでいただきたい。もちろん、私たち消費者もその取り組みを理解し、しっかりとサポートするように心がけたい。