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第1000回:生活ゴミと一緒に捨てるのは厳禁! 正しいモバイルバッテリーの捨て方とは

 すっかり身近な存在になった「モバイルバッテリー」。買うのはかんたんですが「正しい捨て方」を明確に知っている人は少ないのではないでしょうか? 便利な半面、一歩誤ると火災に発展する可能性もあるモバイルバッテリー。今回は、その処分方法を誤るとなぜ危険なのか、どうやって捨てたら良いのかをご紹介します。

大惨事を招きかねない、モバイルバッテリーの処分

 4月、埼玉県さいたま市の桜環境センター内のごみ処理施設で火災が発生し、鎮火までに5時間近くかかる事態が発生しました。本来、火の出ない「不燃ごみの選別機」などが焼けたということでしたが、焼け跡からは「リチウムイオン電池」と「スプレー缶」の残骸が発見され、これらが火災の原因とされたようです。

購入後10年以上経過した……と思われるモバイルバッテリー。さすがにもう使用できないがどうやって捨てたらいいのだろう?

 この施設では、2度のゴミを砕く工程を経て、選別機で可燃ごみと鉄やアルミとに分類していたようですが、スマートフォンなどでよく使われるリチウムイオン電池をつぶすのは決してやってはいけない、危険な行為なのです。

リチウムイオンバッテリーはなぜ燃える?

 リチウムイオン電池は、正極(プラス側の電極)と負極(マイナス側の電極)の間をリチウムイオンが移動することで繰り返し充電・放電する仕組みです。電池そのものが潰されたり砕かれたりすると、内部の正極と負極がショートして発火する可能性があります。

 ショートすると、電池内部のリチウムやコバルト酸リチウムなどが分解し、発熱が発熱を呼ぶ悪循環になるのです。この時点で発火する可能性があります。また、水などをかけると、水とリチウム金属の間で化学反応が起こり、水素が発生してさらに危険になります。火の勢いは爆発的になるかもしれません。

 リチウムイオン電池は現在、小型で大容量の電力を必要とする製品に広く使われています。モバイルバッテリーやスマートフォン、ノートパソコンなどが代表的な例でしょう。また、ハイブリッド車(HEV)などの自動車にもリチウムイオン電池が搭載されています。

 しかし、スマートフォンやハイブリッド車は回収ルートがハッキリしているので良いとして、モバイルバッテリーは、寿命が来たらどうやって処分したらよいのでしょうか? 意外とハッキリとは答えられない方が多いのではないでしょうか。

自治体の回収状況も実はバラバラ

 モバイルバッテリーは一体どうやって捨てれば良いのでしょうか? 現在の状況は、自治体によって回収状況もバラバラというのが現実です。

 まず、一番に考えてしまうのは「不燃ゴミ」もしくは「有害ゴミ」としてゴミ回収に出す方法ですが、これは多くの自治体でNGです。前述の例のように処理施設の火災・事故、あるいは天候によっては雨により、回収場所でショートということにもなりかねません。

 もっとも確実なのは、お住まいの自治体のWebサイトで確認することです。情報が掲載されていなければ電話で「モバイルバッテリー」もしくは「リチウムイオン充電池搭載家電」の回収方法を確認すると良いでしょう。

 一例として首都圏の県庁所在地を見ると、まず、千葉県千葉市の場合は「小型充電式電池(モバイルバッテリーなど)」の回収場所として、JBRCの回収協力店のほか、環境事業所・リサイクルセンター(粗大ゴミ等を持ち込みできる施設)4カ所が指定され、それらに持ち込むことで処分可能となっています。

 一方で、埼玉県さいたま市は各区の図書館・公民館・コミュニティホールに設置してある「電池回収箱」にて回収が可能、神奈川県横浜市については収集をしておらず、「販売店に回収のご相談をしていただくか、一般社団法人JBRCが設置している黄色い回収缶(小型充電式電池リサイクルボックス)に入れてください」とアナウンスしているのみとなっています。

JBRCの回収協力店とは

 先ほど、千葉市・横浜市のWebサイトでも言及されているJBRCは、希少金属が含まれる「使用済み小型充電式電池」のリサイクルを行なっている団体です。

 JBRCの協力店が黄色い回収缶(小型充電式電池リサイクルボックス)を、家電量販店などに提供しており設置されているはず……なのですが、あまり見かけることはありませんね。

 JBRCの検索ページから設置店舗を検索して、そこにあればあるはずなのですが、回収缶はバックヤードにしまわれており、モバイルバッテリーを店員に手渡しすることで回収することにしている店舗もあり、回収缶があることを店員に周知していない店舗もあるようです。

 なお、JBRCの運営やリサイクルBOXの提供コストは、加盟各社が負担し設置していますので、加盟していないメーカーの製品は回収の対象外になります。モバイルバッテリーを購入する際にJBRCの「会員企業一覧」で、加入している企業かどうか確認しておくことも必要になりそうです。

 ちなみに、アンカー・ジャパンやティ・アール・エイ(cheero)、エレコムといったモバイルバッテリーの有名どころは加盟しているようです。

JBRCのWebサイトより。購入前に、JBRC会員一覧で加入社であることを確認しよう。多少値段の差があっても、回収費用がそこに含まれていると考えることもできそうだ

自社で引き取りサービスをしているメーカーも

 なお、メーカーによっては、JBRCルートとは別に、引き取りサービスを用意している場合があります。

 たとえばアンカー・ジャパンの場合、同社のモバイルバッテリーは、郵送や宅配便(元払い)で回収窓口に送付することで、回収してもらうことができます。

AnkerのWebサイトより。Anker モバイルバッテリー_ポータブル電源回収サービス。Ankerのモバイルバッテリーならば、直接同社の回収窓口送付で回収可能
大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)