法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」
「Libero Flip」、6万円でデビューできるフォルダブルスマートフォン
2024年3月26日 00:00
ここ数年、新しいスマートフォンのデザインとして、折りたたみデザインのフォルダブルスマートフォンが注目を集めているのが、複雑な構造が影響してか、まだ端末価格が高く、手を出せないという声が多い。そんな中、ワイモバイルからZTE製スマートフォン「Libero Flip」が発売された。筆者も実機を購入したので、レポートをお送りしよう。
フォルダブルがもっと身近に?
次なるスマートフォンのデザインとして、ここ数年、注目を集めてきたフォルダブルスマートフォン。国内では当初、サムスンの「Galaxy Z Flip」シリーズや「Galaxy Z Fold」シリーズなど、一部のモデルが販売されているのみだったが、2023年にはGoogleの「Pixel Fold」、モトローラの「motorola razr 40」シリーズなどが販売され、徐々にラインアップが増えてきている。
なかでもモトローラの「motorola razr 40」は10万円台前半という価格が設定されたうえ、ソフトバンクが販売する「motorola razr 40s」は端末購入サポートプログラムの「新トクするサポート(スタンダード)」を利用することで、2年後の端末返却を条件に、実質負担額を2万2008円に抑え、たいへんな注目を集めた。
これまでフォルダブルスマートフォンは“複雑な構造=高価格”という印象が強かったが、少しずつ身近なモデルになりそうな気配がうかがえる。
フォルダブルスマートフォンは折り曲げられるという有機ELの特性を活かし、閉じた状態ではコンパクト、開いた状態では大画面という特徴を持つ。端末をL字型に開いた状態で動画コンテンツを視聴したり、カメラ撮影が利用できるなど、フォルダブルならではの利用スタイルも注目されている。
フォルダブルスマートフォンには大きく分けて、2つのスタイルがある。ひとつは端末を文庫本のように横方向に開くデザインで、「Galaxy Z Fold」シリーズや「Pixel Fold」などが代表例に挙げられる。
もうひとつがかつての折りたたみケータイのように、端末を縦方向に開くタイプで、今回の「Libero Flip」をはじめ、「Galaxy Z Flip」シリーズや「motorola razr 40」シリーズなどが挙げられる。
特に、後者はフォルダブルスマートフォンの利便性だけでなく、かつてのケータイを知らない若い世代を中心に、新鮮なデザインとして、関心を持たれているという。
今回、ワイモバイルから発売された「Libero Flip」は、ZTE製のフォルダブルスマートフォンになる。2月29日にワイモバイルから発売された後、3月14日にはZTEジャパンが新製品発表会を開催し、ほぼ同型の「nubia Flip 5G」をオープン市場向けに3月下旬から発売することが発表された。
両製品はメモリー容量などに違いがあるものの、基本的にはほぼ同じ仕様のモデルになる。今回は筆者がワイモバイルで購入した「Libero Flip」で説明するが、「nubia Flip 5G」もほぼ同じ内容だと理解していただいて、差し支えない。
ところで、今回、ワイモバイルに「Libero Flip」を供給するZTEだが、国内では2008年に日本法人のZTEジャパンが設立され、携帯電話やモバイルWi-Fiルーター、スマートフォンなどを各携帯電話会社に供給してきた実績を持つ。
2016年に米商務省から禁輸措置製品の輸出に伴う制裁措置を受けたが、2018年には罰金の支払いや経営陣の刷新に伴い、制裁措置が解除され、それ以降は国内でもソフトバンクに「Libero」シリーズや「キッズフォン」、楽天モバイルに「Rakuten BIG」を供給する一方、au/UQ向けに5Gホームルーターなどを供給するなど、着実に各携帯電話会社とのビジネスを拡げている。
今回、ワイモバイルで販売される「Libero Flip」は、オンラインストアでの価格が「6万3000円」に設定されている。一部のバナー広告では「3万9800円」と表記されているが、これは新規契約か、MNPで他社から乗り換え、料金プランを「シンプル2 M(20GB)」(月額4015円)、「シンプル2 L(30GB)」(月額5115円)を契約した場合に限られるので、注意したい。
また、ワイモバイルのオンラインストアで購入する場合、機種変更でも新規契約でも基本的には端末代金を一括払いで支払う必要がある。ソフトバンクで購入するときのような端末購入サポートプログラムはなく、分割払いも提供されていないので、その点は気をつけたい。
コンパクトでスムーズに開閉できるボディ
まず、ボディからチェックしてみよう。「Libero Flip」は冒頭でも説明したように、縦方向に開くフォルダブルデザインを採用する。折りたたんだ状態では幅が約76mm、長さが約88mmで、女性が持ち歩く化粧品のコンパクトのようなサイズ感にまとめられている。
折りたたんだ状態での厚みは約15.5mmだが、同じフォルダブルデザインを採用する端末と比べ、少し薄い。端末を開いた状態は厚みが約7.3mm、長さが約170mmで、ボディはフラットに開くため、一般的なスレート状(板状)のスマートフォンと変わらないサイズ感に仕上げられている。
重量は約214gで、一般的なスマートフォンよりも少し重めだが、あまり重さを感じさせない。ボディのカラーバリエーションはゴールド、ホワイト、ブルーの3色展開で、ブラックのみが用意される「nubia Flip 5G」に比べると、外側の丸型ディスプレイとも相まって、ポップなデザインという印象だ。
上下筐体の背面部分はOPPO Reno9 Aなどに採用されている「OPPO Glow」と同じように、表面に細かい模様のような凹凸が付けられており、指紋や手の跡が残りにくい仕上げとなっている。
ボディ側面はフラットな形状で、右側面の上筐体に電源ボタンと音量キーを備える。端末を閉じたときぴったりと上下筐体が合わさっており、隙間もほとんどない。
ボディの開閉は非常にスムーズで、「Galaxy Z Flip5」や「motorola razr 40 ultra」などと比べてもまったく遜色はない。フォルダブルスマートフォンは一般的な折りたたみケータイと違い、メインディスプレイを湾曲させながら、折りたたむため、ヒンジ部分の構造が重要とされ、フォルダブルスマートフォンで先行してきたサムスンの「Galaxy Z Flip」シリーズも苦労したと伝えられている。
ただ、昨年の「motorola razr 40」や今回の「Libero Flip」を試用した印象としては、もしかすると、部品メーカーなどでフォルダブル向けのヒンジが開発されていたり、ある程度、技術的な目処が立っているのかもしれない。今後、これらのモデルを機に、フォルダブルスマートフォンがさらに増えてくることにつながる可能性も十分に考えられる。
耐環境性能はIPX2防水、IP4X防塵に対応する。IPX2防水は「水滴がかかった場合でも電話機としての機能を有する」という意味合いのため、防水というより、防滴に近い。雨の中でも利用できそうだが、ずぶ濡れになるような雨の中での利用は避けたい。水没への対応も難しいため、濡れた手で触れる程度の性能だと思った方が良さそうだ。
IP4Xの防塵も「直径1mm以上のワイヤーや固形物体が内部に侵入しない」とされているため、土ぼこりが多いところや砂場などでの利用は避けた方が賢明だ。特に、フォルダブルスマートフォンはヒンジ部分に砂などが入ると、開閉しにくくなるなどのリスクがあるため、慎重に扱うようにしたい。
ちなみに、ワイモバイルでは端末購入時のみに加入できる「故障安心パックプラス」を月額759円で提供している。他のフォルダブルスマートフォンでは補償サービスとして、1000円を超える月額料金を課しているものもあるが、それに比べると、入りやすいと言えそうだ。
生体認証は電源ボタンに内蔵された指紋センサーによる指紋認証、カメラを利用した顔認証に対応する。他機種ではフォルダブルという構造上、端末を閉じた状態と開いた状態では電源ボタンの位置が微妙にズレてしまい、使いはじめたときは戸惑うが、「Libero Flip」の指紋センサー内蔵電源ボタンは少し凹んだ構造のため、指先でも判別しやすい。
顔認証については指紋認証ほど、セキュアではないものの、端末を持ち、画面を見れば、すぐにロック解除ができる。今回試用した限りでは、マスク装着時の顔認証にも対応しているようだ。
顔認証はインカメラだけでなく、メインカメラでも利用できるため、端末を閉じた状態でサブディスプレイを見れば、画面ロックが解除され、サブディスプレイ内の機能(ウィジェット)を操作できる。
バッテリーは4310mAhを内蔵し、本体下部のUSB Type-C外部接続端子から充電する。USB Type-C PD-PPS対応のACアダプターを使うことで、約73分でフル充電ができる。ワイヤレス充電には対応していない。
閉じて丸型ディスプレイ、開くと6.9インチの大画面
端末を開いたときのメインディスプレイは、フルHD+対応6.9インチ有機ELディスプレイを採用する。ヒンジ中央部分の折り目もあまり目立たない印象で、タッチパネルの感度なども他のスマートフォンと比べて、変わらない。
端末を閉じたときに使う外側のサブディスプレイは、1.43インチの丸型有機ELディスプレイを採用する。解像度は466×466ドット表示で、スペック的には一般的な丸型ディスプレイを搭載したスマートウォッチなどと同じものということになる。
ディスプレイのリフレッシュレートは最大120Hz、最大90Hz、60Hz固定から選んで設定できるが、メインディスプレイとサブディスプレイの設定は同期されるため、それぞれのディスプレイで個別に設定することはできない。設定が同期するという仕様は、画面のタイムアウトやダブルタップでのON/OFFなど、他の設定項目でも共通となっている。
メインディスプレイの表示内容は、一般的なAndroidスマートフォンと変わらないが、サブディスプレイ側は決められた機能や壁紙、時計などが表示できる。壁紙は静止画壁紙や動きのあるライブ壁紙、かわいいペット壁紙などが設定できるほか、自分で撮影した写真を設定することもできる。
端末がロックされているときは画面オフ用の表示になり、通常は日時やバッテリー残量と共に、デジタル時計が表示される。
ちょっと変わっているのは「署名」という項目で、自分の好きな言葉や単語を表示するように設定できる。出荷時は「可愛い」「頑張る」「すごい」などの文字列が設定されていて、ちょっとシュールというか、不思議な雰囲気の表示になる。フォントサイズや太さもカスタマイズできるが、フォントの種類も変更できるようにすると、もっと独創的な雰囲気が演出できるかもしれない。
サブディスプレイで実用的なのは「外部ディスプレイ機能」で、「カメラ」「天気」をはじめ、再生などのコントロールができる「音楽」、歩数計などと連動した「スポーツと健康」、日常生活で役立つ「タイマー」、いつでも録音ができる「レコーダー」が用意されている。端末を閉じた状態で、指紋センサーや顔認証で画面ロックを解除し、左右にスワイプすると、それぞれの機能を起動できる。
また、端末を閉じた状態でも音声通話が利用可能で、着信時にはサブディスプレイに電話番号や連絡先が表示され、端末を閉じたまま、上方向にスワイプすれば、応答できる。端末を開いて応答したり、端末を閉じて終話することも可能だ。
米クアルコム製Snapdragon 7 Gen 1を搭載
チップセットは米クアルコム(Qualcomm)製Snapdragon 7 Gen 1を採用し、6GB RAMと128GB ROMを搭載する。外部メモリーカードには対応しない。
Snapdragon 7 Gen 1は2022年のミッドハイ向けのチップセットに位置付けられるが、十分なパフォーマンスが得られている。オープン市場向けの同型製品「nubia Flip 5G」も同じチップセットを採用するが、メモリーとストレージは8GB RAMと256GB ROMを搭載しており、「Libero Flip」と差別化が図られている。
ネットワークはワイモバイル(ソフトバンク)が提供する5G/4G LTE/AXGPのネットワークに対応する。5GはSub6のみの対応だが、ソフトバンクが周波数転用で利用する「n3」と「n28」にも対応する。オープン市場向けの「nubia Flip 5G」も基本的に「Libero Flip」と同じ周波数帯域に対応するが、海外で利用する周波数帯域の対応に少し違いがある。
SIMカードはnanoSIMとeSIMのデュアルSIMに対応する。
Wi-FiはIEEE802.11a/b/g/n/ac/axに対応し、2.4/5/6GHzで利用が可能だ。Bluetooth 5.2にも対応する。FeliCa搭載により、おサイフケータイに対応しており、モバイルSuicaなどの各対応サービスを利用することができる。
位置情報を測位する衛星対応は、ワイモバイルの製品情報ページで「GPS」とだけ表記されているが、衛星測位アプリを起動したところ、米GPS、露GLONASS、中国BeiDou、欧州Galileoに加え、日本のみちびき(QZSS)の信号も受信できている。
ワイモバイルと連携するYahoo!では「Yahoo!カーナビ」や「Yahoo!マップ」など、位置情報を利用したサービスも提供されているので、このあたりの表記はもう少し明確にして欲しいところだ。
プラットフォームはAndroid 13を搭載する。ZTEではAndroidベースの「MyOS」という表記を使っているが、国内向けでは混乱を避けるためか、画面内で確認できるのみだ。基本的なユーザーインターフェイスはAndroid標準に準じており、ホーム画面から上方向にスワイプすれば、アプリ一覧が表示される。
はじめてのユーザーなどに適した「シンプルなホーム画面」も用意されており、アプリなどがタイル状に表示したり、よく使う3つの連絡先をアイコンに登録しておくことができる。
「シンプルなホーム画面」に設定した場合でも[設定]アプリの[ホーム画面の設定]-[ホーム画面モード]から[ホーム画面と全てのアプリの表示]や[ホーム画面のみ表示]を選べば、すぐに設定を戻すことができる。
また、独自の便利な機能については、[設定]アプリの[便利な機能&操作]から設定できる。[システムナビゲーション]で[ナビゲーションスタイル]のカスタマイズができたり、[片手モード]で表示を一時的に画面の下半分に切り替えて表示できる機能などが用意される。
[ジェスチャー&モーション]では[3本指で下にスワイプでスクリーンショットを撮る][3本指で上にスワイプで画面を分割する][シェイクでライトをオンオフする]など、実用的な機能も用意されている。
5000万画素イメージセンサーによるメインカメラを搭載
背面カメラはサブディスプレイを内蔵した黒いパーツ内に、5000万画素イメージセンサーにF1.8のレンズを組み合わせたメインカメラを搭載する。
同じパーツ内には200万画素深度センサーも内蔵されており、被写界深度を測ることで、ボケ味の利いたポートレートなども簡単に撮影できる。
インカメラはメインディスプレイの上部のパンチホール内に1600万画素イメージセンサーとF2.5のレンズを組み合わせたインカメラ(28mm相当)を搭載する。
メインカメラは動画、静止画ともに、手ぶれ補正に対応し、撮影モードが[フォト]や[ビデオ]のときは焦点距離を「28mm」と「50mm」で切り替えることができる。通常時はピクセルビニングにより、4つの画素を1つの画素として撮影するため、4080ドット×3072ドットで撮影される。
撮影モードはこれらのほかに「夜景」「ポートレート」「プロショット」が選べるほか、「カメラモード」のメニューから「スローモーション」「タイムラプス」「単色」などのモードを選ぶこともできる。
撮影した写真はGoogleの[フォト]アプリで閲覧したり、編集ができる。独自のアプリは用意されていない。シャオミやOPPOなどが独自の[ギャラリー]アプリを提供しているのとは少し異なる面だ。
フォルダブルの「Libero Flip」に搭載されたカメラは、こうした機能面よりも撮影スタイルがひとつのアドバンテージだろう。
たとえば、端末を閉じた状態で手に持ち、サブディスプレイからカメラを起動すれば、サブディスプレイがファインダーになり、手のひらや二本指(ピースサイン)を見せれば、メインカメラで簡単に自撮りができる。サブディスプレイの画面を上下方向にスワイプすれば、撮影モードを[ビデオ][フォト][ポートレート]で切り替えることができる。
また、端末を90度前後まで開き、机の上に置いた状態でカメラを起動し、メインディスプレイのファインダー左上に表示されたアイコンをタップすれば、外部ディスプレイ(サブディスプレイ)がオンになり、同じように手のひらを見せたり、タイマーを使うことで、メインカメラで簡単に撮影ができる。人が集まったときのグループショットなどにも便利だ。
リーズナブルな価格でフォルダブルにデビューできる一台
しばらくデザイン的にあまり変わりばえがしなかったスマートフォンだが、ようやくここに来て、フォルダブルという新しい形、新しいスタイルが注目されるようになってきた。
ユーザーとしては「次はフォルダブルも面白いかな?」と考えているかもしれないが、「Galaxy Z Flip」シリーズや「Galaxy Z Fold」シリーズ、Googleの「Pixel Fold」などは、いずれも十数万円以上の価格で販売されており、端末購入サポートプログラムの分割払いで購入しても経済的な負担は大きい。
今回、ワイモバイルから発売された「Libero Flip」は、まさにそんな壁を打ち破る6万円台という価格を実現した。多少、スペックに違いがあるが、ほぼ同型の「nubia Flip 5G」もオープン市場向けに7万9800円で販売される。機能的にも充実しており、フォルダブルならではの利便性もしっかりとサポートした端末に仕上げられているという印象だ。
この春、フォルダブルにデビューしたい人なら、ぜひチェックしておきたい一台と言えるだろう。