法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

「Leitz Phone 2」はスマートフォン時代の”Leicaあこがれ層”を生み出せるか

 ドイツの老舗光学機器メーカーとして知られるLeica(ライカ)が手がけるスマートフォンの最新モデル「Leitz Phone 2」がソフトバンクから発売された。昨年の「Leitz Phone 1」に続き、シャープが製造を担当し、ソフトバンク独占販売となる。筆者も実機を購入したので、レポートをお送りしよう。

時代とともに変わるカメラのファースト体験

 「カメラ」という言葉を聞いたとき、何を思い浮かべるだろうか。写真や動画を撮るために利用されるカメラだが、この数十年で、その在り方や利用スタイルが少しずつ変化してきた。元々は人物や風景、モノなどを被写体として、撮影するための機器だったが、デジタル化によって、情報を入力したり、取得するためのデバイスとしての存在も加わり、現在では人物の顔認証に利用したり、QRコードやバーコードの読み取りなどにもカメラが使われる。

 ところで、読者のみなさんがカメラをはじめて体験したのは、いつ頃だろうか。また、それはどんなデバイスだっただろうか。筆者くらいの世代だと、親の世代がフィルムカメラを使っていて、それを受け継ぐような形で、自らも35mmフィルムのコンパクトカメラなどを購入したという人が多い。なかには1986年に富士フィルムが発売したレンズ付きフィルム「写ルンです」がファーストカメラという人もいるかもしれない。

 これが2000年頃以降に成人になった世代では、デジタルカメラが最初のカメラという人が急速に増えてくる。筆者も僚誌「PC Watch」の創刊当時、記事を寄稿するため、比較的早くからデジタルカメラを使うようになったが、2000年代は一般的に急速にデジタルカメラが拡大した時期だったとも言える。

 また、同時に2000年代にデジタルツールを手にした世代にとっては、携帯電話のカメラが最初のカメラ体験だった人も少なくないだろう。当時の携帯電話に搭載されたカメラは、それほど高性能だったわけではないが、「写メール」という言葉が定着したことからもわかるように、ケータイで写真を撮り、メールでやり取りするという文化が生まれ、今日のSNSなどで展開されるビジュアルなコミュニエーションへつながっている。

 そして、現在の20~30代以下を中心とした若い世代のファーストカメラと言えば、当然のことながら、スマートフォンということになるだろう。携帯電話に比べ、大きなディスプレイを搭載し、撮った写真をSNSなどでシェアできる楽しさが加わったことで、スマートフォンでもっとも重要かつ注目される機能として、進化を続けている。その影響もあって、デジタルカメラの市場は縮小することになったが、ソニーのXperiaのように、デジタルカメラのαシリーズなどで培われた技術を取り込んだり、ソニーの「Xperia Pro-I」やシャープの「AQUOS R6」のように、コンパクトデジタルカメラと同じ1インチ(1.0型)イメージセンサーを搭載するなど、デジタルカメラの資産を継承する動きも活発化している。

 今回、発売された「Leitz Phone 2」は、ドイツの老舗光学機器メーカーであり、世界で初めて35mmフィルムカメラの量産を実現したことでも知られる「Leica(ライカ)」によるスマートフォンになる。ライカは昨年7月、ソフトバンク、シャープと共に「Leitz Phone 1」を世に送り出し、たいへん注目を集めたが、その一方で、発表直後にまだデモ機での撮影ができない状態でありながら、YouTubeなどで海外ユーザーによる偽物レビューが横行するなど、世界的にも注目を集めたことが記憶に新しい。

 今回の「Leitz Phone 2」はその名の通り、「Leitz Phone 1」の後継モデルに位置付けられる。初代モデル同様、シャープが製造を担当していることから、今年7月にNTTドコモとソフトバンクで発売された「AQUOS R7」をベースにしたモデルになる。そのため、ディスプレイやカメラ、チップセットなどの基本仕様は共通となっており、違いはボディデザインやカメラの撮影モードなどになる。

 ライカがこうしたスマートフォンを手がけた背景には、時代と共にカメラのファースト体験が変わりつつあることが挙げられる。ライカはカメラをはじめとした光学機器に対し、100年以上に及ぶ蓄積された技術やブランド価値を持つが、スマートフォンではじめてカメラを体験する世代は、ライカというブランドに触れる機会が少ないため、なかなかそのブランド価値が認識されにくい状況にある。往年のライカファンからは「スマートフォンのカメラでライカなんて……」といった声も聞こえてきそうだが、ライカとしてはスマートフォンという製品を通じて、ライカの価値を伝えると同時に、スマートフォンにおけるカメラの可能性を追求していきたいという考えがあるという。ライカの言葉を借りるなら、「Leicaあこがれ層」のためのモデルだという。

 また、取り扱いについては、「Leitz Phone 1」に続き、ソフトバンク独占になる。先日、発表されたシャオミの「Xiaomi 12T Pro」は『携帯電話会社として独占』という位置付けで、シャオミ自身によるオープンマーケット版が併売される形になっているが、「Leitz Phone 2」は今のところ、オープンマーケット版が提供される予定がなく、ソフトバンクのみで販売される。ちなみに、デモ機については、ソフトバンクショップと家電量販店の約850店舗のみに展示されるため、全国に約2000店舗以上あるソフトバンクショップの内、半数近くではデモ機が試せない状況にある。それだけ『プレミアムな機種』という位置付けなのだろう。

ソフトバンク/ライカ「Leitz Phone 2」。161mm(高さ)×77mm(幅)9.3mm(厚さ)、211g(重さ)、ライカホワイト(写真のもの)をラインアップ

 プレミアムなのは位置付けだけでなく、価格もワンランク上で、従来の「Leitz Phone 1」の18万7920円を大きく超え、「Leitz Phone 2」は22万5360円で販売される。ソフトバンクが提供する「新トクするサポート」を利用すれば、月額4695円の48回払いで購入でき、24回支払い後に端末を返却すれば、実質負担額は11万円程度に抑えることができる。

ローレット加工のフレームとホワイトボディ

 まず、外観からチェックしてみよう。「Leitz Phone 2」は前述の通り、NTTドコモとソフトバンクで発売された「AQUOS R7」をベースにしたモデルだが、本体は昨年の「Leitz Phone 1」の流れを継承し、独特の存在感を持つデザインに仕上げられている。アルミフレームの側面にはローレット加工が施され、上部と下部はスパッと切り落としたような形状になっている。ボディのデザインはライカによるもので、全体的に質実剛健な印象を持つ。

「Leitz Phone 2」(左)、ベースモデルになった「AQUOS R7」(右)。カメラ位置などはほぼ同じだが、まったく別物としての仕上がり
「Leitz Phone 2」(左)の下部はスパッと切り落としたような形状。ベースモデルの「AQUOS R7」(右)は各部の角が面取りされた仕上がり

 昨年の「Leitz Phone 1」は背面が濃いグレーだったのに対し、今回はホワイトのガラス仕上げを採用する。背面のホワイトは、ライカの代表的なカメラである「Leica M8」の限定モデル「M8 ホワイト」で採用されているものをモチーフにしているという。最近、こうした光沢感のあるホワイトを採用する機種が少ないため、少し新鮮と言えるかもしれない。

 パッケージには本体に装着するシリコン製保護カバー、レンズ部に装着するレンズキャップも同梱される。保護カバーは従来同様、グレーのシリコン製で、レンズキャップには「Leitz」のロゴが刻印されている。ちなみに、従来モデルではシリコンケースとレンズキャップのカラーバリエーションがライカ公式ストアで販売されたが、今回は同梱品と同じレンズキャップのみが販売される。今後、オプションを販売するかどうかは検討中だという。

同梱のシリコン製カバー、レンズキャップを装着した状態。Leitzのロゴが刻印されたレンズキャップは写真の状態か、横向きの90度の状態で、マグネットで固定される

 ボディはディスプレイサイズが大きいこともあって、幅77mm、重さ211gで、付属のカバーとレンズを付けた状態では、幅80.6mm、重さ265gになる。スマートフォンとしてはやや大きい部類に入るが、本体のみで比較すれば、「iPhone 14 Pro Max」よりもコンパクトで軽い。

 筆者は従来の「Leitz Phone 1」を約1年近く利用したが、複数の端末を持ち歩いているうえ、端末そのものが高価だという不安さも加わって、デジタルカメラなど同じように、ケースに入れて持ち歩くスタイルに落ち着いた。どういう持ち方をするのかは人それぞれだが、付属のカバーやレンズキャップを装着したときのサイズ感は、少し考慮しておいた方が良さそうだ。

 また、防水防塵については「AQUOS R7」と同様で、IPX5/IPX8準拠の防水、IP6X準拠の防塵に対応する。一般的なデジタルカメラでは防水防塵に対応した製品が少ないが、「Leitz Phone 2」はある程度、環境や天候にされず、使うことができる。

左側面はアンテナを内蔵した継ぎ目の樹脂パーツ以外は何もないデザイン。カメラ部の突起も大きくない
右側面には電源ボタン、シーソー式の音量キーを備える

ライカが高評価のPro IGZO OLEDを搭載

 ディスプレイは「AQUOS R7」と同じWUXGA+(2730×1260ドット表示)対応6.6インチのPro IGZO OLEDを搭載する。ディスプレイは10億色表示が可能で、ピーク時の輝度が2000nit、コントラスト比が2000万対1となっており、現在、販売されているスマートフォンのディスプレイとして、最高スペックに位置付けられる。AQUOS R7にも搭載される「なめらかハイスピード表示」やアイドリングストップによる高い省電力性能もサポートされる。

 少し余談になるが、ライカの担当者に取材をした際、「ライカ自身でスマートフォンを製造しないのはなぜか?」とたずねたところ、ライカとしてはイメージセンサーやレンズなど、カメラを構成する部品には知見があるが、チップセットやディスプレイなど、スマートフォンならではの部品はわからないことも多く、「たとえば、シャープのPro IGZO OLEDのような優れたディスプレイを探し出し、搭載することは容易ではない」といった主旨の回答をしており、ライカとして、Pro IGZO OLEDを高く評価していることをうかがわせた。

 ディスプレイには「AQUOS R7」同様、超音波式指紋センサーが内蔵され、指紋認証を利用できるほか、顔認証にも対応する。超音波式指紋センサーは一般的な指紋センサーに比べ、サイズが大きいため、対象エリアに約1秒ほど、指先を一度当てれば、簡単に指紋が登録できるうえ、ロック解除も非常に速い。

 ただし、ディスプレイに保護ガラスを貼ると、正しく動作できないことが多いため、保護フィルムを貼ることをおすすめしたい。このあたりの説明は、筆者が本誌の「みんなのケータイ」で書いた「『AQUOS R7』で指紋が登録できないなら、保護ガラスよりも保護フィルム?」を参照していただきたい。

 バッテリーは5000mAhで、USB Type-C外部接続端子からの充電のほか、Qi規格準拠のワイヤレス充電にも対応する。ただし、スタンドタイプのワイヤレス充電器は、「Leitz Phone 2」にレンズキャップを装着していると、充電器にフィットしないこともあるので、充電器の形状によってはレンズキャップを外したり、位置を調整するなどの工夫が必要だ。充電についてはバッテリーへの負荷を抑えるため、端末温度や周囲の温度に合わせ、最適な充電方法を自動的に選択する「インテリジェントチャージ」も搭載される。充電時の最大容量を90%に抑え、電池容量が90%以上のときはダイレクト給電で動作させることで、バッテリーの寿命を延ばすことができる。

本体下部にはUSB Type-C外部接続端子を備える
本体上部には3.5mmイヤホンマイク端子、ピンで取り出すタイプのSIMカードスロットを備える
本体側面にはローレット加工が施されており、手に持ったときもすべりにくい。左側の黒い「AQUOS R7」に比べると、側面部分の厚みがある印象
「Leitz Phone 1」(上)に保護カバー(赤、純正品)を装着したときは本体前面の角も覆っていたのに対し、「Leitz Phone 2」(下)に保護カバー(グレー)を装着すると、本体前面の角の部分が露出してしまう。少し残念なところ
「Leitz Phone 2」(左)と「Leitz Phone 1」(右)の前面。サイズはほぼ同じだが、ディスプレイの角の仕上がりなどが異なる
「Leitz Phone 2」(左)はホワイトの光沢ガラス仕上げ。「Leitz Phone 1」(右)は濃いグレーのマット仕上げ。カメラ部のサイズもひと回り違うため、レンズキャップは「Leitz Phone 2」用のものを利用する

 チップセットは米Qualcomm製Snapdragon 8 Gen1を採用し、12GB RAMと512GB ROMを搭載する。最大1TBのmicroSDメモリーカードを装着することも可能だ。「Leitz Phone 2」は「AQUOS R7」と基本的に共通仕様だが、ハードウェアで違うのがストレージで、「AQUOS R7」の256GBよりも大容量となっている。これはカメラ撮影時、RAW形式での保存を考慮しての違いだろう。

 ネットワークは5G/4G LTE/3G W-CDMA/GSMに対応し、5Gについてはソフトバンクが転用を開始した1.7GHz帯の「n3」、700MHz帯の「n28」にも対応する。5G対応で話題になることが多いNTTドコモ向けの「n79」にも対応しているが、このあたりは「AQUOS R7」がNTTドコモでも扱われているため、共通仕様となっているためだろう。SIMカードについてはnanoSIMとeSIMのデュアルSIMに対応する。おサイフケータイも利用可能だ。

本体上部のSIMカードスロットにはnanoSIMカードを1枚、装着可能。microSDメモリーカードは本体に直接、挿す
SIMカードスロットは本体側にmicroSDメモリーカードを装着するため、少しスロットのサイズが大きめ
パッケージには本体のほかに、カバー(右)、レンズキャップ(中央上側)、クイックスイッチアダプターなどが同梱される

Payトリガーやテザリングオートなどの便利機能を搭載

 プラットフォームはAndroid 12がインストールされており、原稿執筆時点では2022年9月1日版のAndroidセキュリティアップデートが適用されている。プラットフォームのアップデートやセキュリティパッチの配布などについては、特にアナウンスされていないが、基本的に「AQUOS R7」と同じ仕様で開発されているため、ライカ独自のカメラ機能などに制限がなければ、おそらく「AQUOS R7」同様、発売から2年間で、最大2回のOSアップデートが期待できそうだ。ただし、これらの点は正式にアナウンスされていないため、ライカとソフトバンクからの説明が欲しいところだ。

 また、共通仕様の「AQUOS R7」に搭載されている「AQUOSトリック」と呼ばれる独自機能が継承されており、「Leitz Phone 2」では同じく[設定]アプリ内の「便利機能」に同じ項目で選ぶことができる。それぞれに便利な機能だが、実用的なものとしては「Payトリガー」や「テザリングオート」が挙げられる。

 Payトリガーはロック解除時に指紋センサーを長押しすると、特定のアプリや複数のアプリを登録したフォルダーが表示できるもので、出荷時はPayPayが起動アプリとして、設定されている。テザリングオートは端末の位置情報を基に、特定の場所に移動したときに自動的にテザリングをON/OFFできるというもので、リモートワークで利用するカフェやコワーキングスペースに着いたら、自動的にテザリングをONにして、パソコンを利用したり、自宅を離れたら、自動的にテザリングをONにして、Wi-Fiタブレットなどから接続するといった使い方ができる。

ホーム画面には出荷時に「LFI Widget」が設定されている。LFIは「Leica Fotografie International」というライカの専門誌
クイック設定パネル(通知パネル)は大きいボタンのデザイン。左下のペンのアイコンからカスタマイズが可能
ホーム画面を上方向にスワイプすると、アプリ一覧が表示される。フォルダーにまとめられるため、アプリが増えても見つけやすい。最上段から検索も可能

ライカMレンズのシミュレートした「Leitz Looks」

 『ライカのスマートフォン』として、もっとも注目される点と言えば、やはり、カメラということになるだろう。昨年の「Leitz Phone 1」では、同時期に発売された「AQUOS R6」で初採用された1インチ(1.0型)のイメージセンサーによるカメラを搭載し、両機種ともにたいへん注目を集めた。

 ただ、「Leitz Phone 1」と「AQUOS R6」に採用されたイメージセンサーは、元々、デジタルカメラ用ということもあり、イメージセンサー周りのソフトウェアなどもスマートフォン用に開発しなければならず、かなり扱いにくかったとされる。同時に、被写体へのすばやいピント合わせ、近い距離の被写体への合焦など、スマートフォンならではの使い方に合わせた作り込みも難しく、発売当初はユーザーから不満の声もいくつか聞かれた。これらは「Leitz Phone 1」と「AQUOS R6」に共通した課題で、約1年間のバージョンアップで改善されたものの、1インチセンサー搭載カメラの難しさをうかがわせた。その一方で、「Leitz Phone 1」には独自の「Leitz Looks」と呼ばれる撮影モードが用意され、ライカのカメラで撮影したような雰囲気のある写真を撮影できるようにしていた。

 今回の「Leitz Phone 2」は前述の通り、「AQUOS R7」をベースにしているため、カメラも基本的には共通仕様となっている。背面中央に搭載されたメインカメラには、4720万画素の1インチイメージセンサーにF1.9のレンズを組み合わせ、焦点距離は19mm(35mm換算)で、メインカメラのすぐ隣には190万画素の測距用センサーも搭載される。今回の「Leitz Phone 2」に採用された1インチイメージセンサーは、スマートフォン向けに開発されたもので、すべての画素を使い、高速かつ高精度にフォーカスを合わせるOctaPDAF方式を採用することで、動きの早い被写体にもすぐにピントを合わせることができる。たとえば、フレーム内の人物が振り返ったとき、すぐに顔を認識し、ピントを合わせ、シャッターを切ることが可能だ。このあたりの使い勝手の良さは、「AQUOS R7」でも体験済みだが、従来モデルとは明らかに違うほど、快適に使える印象だ。

4720万画素イメージセンサーを採用したメインカメラ。左側のレンズは測距センサー

 インカメラは前面中央上部のパンチホール内に、1260万画素のイメージセンサーにF2.3のレンズを組み合わせたものを搭載する。焦点距離は27mm(35mm換算)なので、自分撮りのときも背景を含めて、ワイドに撮影ができる。

 [カメラ]アプリを起動すると、「ビデオ」「写真」「Leitz Looks」「マニュアル写真」「ポートレート」「ナイト」「その他」の撮影モードを選ぶことができ、「その他」では「ハイレゾ」「8Kビデオ」「タイムラプス」などのモードも用意されている。これらの内、「Leitz Looks」以外は基本的に「AQUOS R7」と同様で、撮影される写真やビデオもライカ監修のものとなっている。ただし、ユーザーインターフェイスには少し違いがあり、「写真」モードを選んだとき、「AQUOS R7」では右横に「AI」ボタンが表示され、ON/OFFができるのに対し、「Leitz Phone 2」では同じ位置に表示される三本線のメニューボタンをタップすると、タイマー、ライトのON/OFFを切り替えるパネルが表示され、その下に「Setting」「Grids」「HDR」「Histogram」のアイコンが並ぶ。「Setting」は通常の「写真」や「ビデオ」を選んだときの「設定」と同じで、写真サイズやオートHDRなどの項目を設定できる。

 撮影モードを「Leitz Looks」に切り替えると、ライカならではの世界を体験できる撮影ができる。「Leitz Looks」は従来モデルにも搭載されていたが、「ライカらしい雰囲気のある写真が撮れる」という印象だったが、「Leitz Phone 2」の「Leitz Looks」はライカMレンズのボケ味や色調などをシミュレーションした撮影を可能にしている。

「Leitz Looks」を起動したとき、三本線の設定アイコンをタップすると、この画面が表示される
ファインダーの設定画面から[Setting]を選ぶと、カメラの設定画面が表示される
「Leitz Looks」を起動したとき、左側の丸いアイコンをタップすると、フィルダーが選べる
「Leitz Looks」ではライカMレンズをシミュレートした撮影モードを選べる。画面中央の[SUMMILUX 28]と表示された部分と隣の点をタップして、切り替える

 まず、レンズのシミュレーションについては、ライカの「SUMMILUX 28mm」「SUMMILUX 35mm」「NOCTILUX 50mm」の3種類が用意されている。「SUMMILUX 28mm」は風景や建物をなどの撮影に適した広角モードで、「SUMMILUX 35mm」は幅広いシーンでのスナップ撮影などに適したモードになる。「NOCTILUX 50mm」はポートレートに適したモードで、美しいボケ味を再現できるとしている。色調セレクト(フィルター)については、「MONOCHROME」「CINEMA CLASSIC」「CINEMA CONTEMPORARY」という3つの効果を選んで、撮影することができる。

 実際に「Leitz Looks」を使い、人物や風景を撮影してみると、これまでのスマートフォンのカメラとは少し違った独特の雰囲気の写真を撮ることができる。従来モデルの「Leitz Looks」に比べ、シミュレーションするレンズやフィルターを選べるようになったことで、設定を変えて撮影し、仕上がりの違いを楽しめるように進化してきた印象だ。個人的にも従来モデル以上に、人物や風景などを撮ってみる楽しさが増えることになりそうだ。ただ、撮影した写真を表示するGoogleフォトでは、[詳細]などの項目をチェックしてもどの写真がどのモードで撮ったのかがわからないため、とりあえず、その場の状況を見ながら撮ってみて、仕上がった写真を楽しむというスタイルに限られる。

クリスマスツリーをバックにポートレートで撮影。背景もしっかりぼけて、被写体が際立っている
モデル:葵木ひな(Twitter:@hina1006ta_aokihttp://bonbon-famin.com/ボンボンファミン・プロダクション)
背景を少しぼかしたポートレート
日陰だったがツリーの飾りや衣装の色合いも自然に再現できている
少し陽が落ちた状態で撮影。背景がしっかりとボケて、衣装の赤色もきれいに再現できている
薄暗いバーで撮影。ややピントが甘くなってしまった。夜景は強いが、室内の暗いところはもう少しクッキリ感が欲しいところ
建物を撮影。建物も歪みなく、撮影できているが、青空は少し濃いめの印象
インカメラで撮影

 また、実用面で気になるのは、写真撮影時の保存にかかる時間だ。撮影するモードやシーンにもよるが、撮影して、シャッター音がしてから、次の撮影ができるまで、数秒程度、待たされることがある。これは日常的に写真を撮るスマートフォンとしては、使いにくいと言わざるを得ない。ライカと製造元のシャープも問題は認識しており、今後、バージョンアップなどで改善されていくのだろうが、出荷段階でもっと保存までのタイムラグを減らすように仕上げて欲しかったところだ。

Googleフォトの一覧画面。「Leitz Looks」で撮影した写真にアイコンなどを追加して欲しいところ

スマートフォンのカメラのゆくえを占う一台

 今やスマートフォンにとって、カメラはもっとも重要なデバイスのひとつであり、ユーザーが購入するうえで、もっとも気になる要素のひとつだろう。イメージセンサーの高画素化やマルチカメラ化(マルチレンズ化)などのトレンドを経て、デジタルカメラの市場を奪うほどの進化を遂げ、撮影できる写真や動画も十分すぎるレベルに仕上がってきた。もちろん、実際にはそれぞれの製品ごとに特徴があり、色合いや仕上がりなどに差はあるものの、概ね一定のレベルに達してきたというのが率直な印象だ。

 そんな中、ここ1~2年の各社の動向を見ていると、スマートフォンのカメラとして、もう一歩、先の世界へ踏み出そうとしている。たとえば、ソニーの「Xperia 1」のように、デジタルカメラ的な進化を追求するモデルもあれば、Googleの「Pixel」シリーズのように、TensorチップによるAIによって、消しゴムマジックなどのユーザーにわかりやすい進化を提案する機種もある。サムスンの「Galaxy」シリーズは自社グループ内で開発する1億画素や2億画素といったイメージセンサーを採用し、高度な画像処理と高倍率光学ズームの組み合わせで、スマートフォンのカメラとしての性能を追求している。シャープも1インチなどの大型イメージセンサーを搭載することで、ハイエンドからミッドレンジまで、高品質かつ実用性の高いカメラ機能を追求している。

 これらに対し、カメラをはじめ、多くの光学機器を手がけてきた老舗ブランドであるライカがスマートフォンのカメラをどう表現し、どう進化させていくのかが注目されるところだが、今回の「Leitz Phone 2」では「Leitz Looks」のライカMレンズのシミュレーションやエフェクトなどで、単にカメラ性能を追求するのではなく、カメラで『撮る楽しみ』をユーザーに体験してもらうことで、ライカの世界へ誘おうとしているように見える。実際に撮影してみると、他製品とは違った写真を撮ることができるが、、正直なところを書いてしまうと、まだ説明に物足りなさが残る。ライカがインタビューや取材で述べていた「Leicaあこがれ層」と評するユーザーをどう位置付けるのかにもよるが、スマートフォンのカメラしか体験していないユーザー層を対象にしているとするなら、撮影した写真のプレビューやユーザーインターフェイスも含め、もっとわかりやすく表現する必要があるだろう。ライカとしてもカタログやWebページ、冊子などで、「Leitz Phone 2」の撮影モードやエフェクトなどを説明しているが、『あこがれ』を生み出すレベルまで、認識してもらえないかもしれない。

 また、最後にもうひとつ付け加えるなら、やはり、価格設定だろう。ほぼ同仕様の「AQUOS R7」のソフトバンクオンラインショップでの販売価格が18万9360円であることを考慮すると、差額は3万6000円となっている。同梱のカバーやレンズキャップ、カメラの「Leitz Looks」などが差分であり、ライカ製デジタルカメラの多くが数十万円以上で販売されていることを考慮すれば、納得できないこともないが、20万円を超える価格設定は敷居が高く感じられてしまう。同時に、スマートフォンはデジタルカメラほど、製品のライフサイクルが長くないため、OSのアップデートなどの情報は発表段階でしっかりと伝え、ユーザーがある程度、長く使える安心感を提案して欲しいところだ。製造元のシャープがベースモデルの「AQUOS R7」でアピールしているのだから、「Leitz Phone 2」にできないわけでもないだろう。

 価格を考えると、なかなか誰にでもおすすめできるモデルとは言えないが、本体のデザインや仕上がり、「Leitz Looks」で楽しめる撮影体験など、他製品にはない魅力を持つモデルであることは確かだ。前述の通り、デモ機を試すことができる場所は限られているが、一度、実機を手に取り、「Leitz Looks」で写真を撮り、ライカが誘うスマートフォンの世界の入口をのぞいてみて欲しい。