法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

「OPPO Pad Air」、3万円台で買えるお手頃Androidタブレットの実力は

 2018年から国内向けに「OPPO Reno A」シリーズなどのスマートフォンをはじめ、完全ワイヤレスイヤホンやスマートウォッチなどを相次いで投入してきたOPPO。そんな同社からAndroidタブレット「OPPO Pad Air」が発売された。OPPOブランドを国内に展開するオウガ・ジャパンとしては、初のAndroidタブレットになる。実機を試すことができたので、レポートをお送りしよう。

オウガ・ジャパン 「OPPO Pad Air」、約245.1mm(縦/長辺)×約154.8mm(横/短辺)×約6.9mm(厚さ)、約440g(重さ)、ナイトグレー(写真)をラインアップ

再び活気を取り戻しそうなAndroidタブレット

 多くのユーザーにとって、もっとも重要かつ身近なデバイスがスマートフォンであることは間違いないが、同じようにビジネスや家庭でのデジタルツールとして、パソコンも広く利用されている。このスマートフォンとパソコンの中間的な位置付けのデバイスとして、各社が展開してきたのがタブレットだ。スマートフォンよりも大きなディスプレイを備えながら、タッチパネルで操作ができ、パソコンよりも軽量でポータビリティに優れたモデルがラインアップされている。

パッケージには本体と取扱説明書を同梱。ケースやカバー類は付属しない

 ただ、この十数年を振り返ってみると、タブレット市場はスマートフォンに比べ、プラットフォームによって、明暗が分かれたり、販売にも大きな浮き沈みが観られた。アップルの「iPad」シリーズはiPhoneと同様のユーザーインターフェイスが支持され、現在でも半数近いシェアを持つとされ、マイクロソフトの「Surface」シリーズをはじめ、Windowsを搭載したタブレットは法人用なども含め、手堅いビジネスを展開し、2in1パソコンという新しい市場を創出することに成功した。

 これらに対し、全体的に浮き沈みが見えたのがAndroidタブレットだろう。スマートフォンが普及しはじめた当時、同じGoogleアカウントが使えるセカンドデバイスとして、各携帯電話会社やメーカーからAndroidタブレットが発売された。ラインアップとしてはディスプレイサイズの違いにより、8インチ前後と10インチ以上のモデルが販売され、当初はポータビリティに優れた8インチ前後のモデルが好調だったが、iPadの標準モデルがそうであったように、10インチ以上のディスプレイを搭載したモデルが支持され、防水モデルなども登場し、人気を得た。

 しかし、その後、Androidタブレットは市場に定着できず、撤退するメーカーなどもあり、徐々に各社のラインアップから消えていった。ユーザーから「あれば、便利だけど……」といった声が聞かれるものの、なかなか「必ず持ちたい」といった選ばれ方をしていなかったように見える。その一方で、同じAndroidプラットフォームをベースにしたAmazonのFireタブレットは、7/8/10インチなど、複数の画面サイズのモデルを展開し、動画や電子書籍、音楽、ゲームなどを楽しむデバイスとして、現在でも一定の支持を得ている。

 そんな中、2020年からはコロナ禍によるリモートワークやテレワークの普及に加え、GIGAスクール構想の影響で、家庭内でのパソコンやタブレットの必要性が再認識され、iPadやChromebook、Androidタブレットなど、セカンドデバイスとしてのタブレットが注目を集めている。当初はLenovoやASUSなどのChromebookが高い注目を集めていたが、AndroidタブレットでもLenovoやNECなどの製品に加え、Xiaomiが国内向けに「Xiaomi Pad 5」を投入したことで、徐々に復活の兆しを見せつつある。

 今回、オウガ・ジャパンから発売された「OPPO Pad Air」は、こうした流れに乗るべく登場したAndroidタブレットと言えそうだ。OPPOブランドの製品を展開する同社は、「OPPO Reno A」シリーズなどのスマートフォンのほか、完全ワイヤレスイヤホンの「OPPO Enco」シリーズ、「OPPO Watch Free」や「OPPO Band Style」などのウェアラブル製品を販売するなど、IoT製品も徐々に拡充させている。今回の「OPPO Pad Air」もこうしたラインアップ拡充の一環になる。

 LTEなどのモバイル通信を搭載せず、Wi-Fi対応という割り切った仕様にすることで、3万7800円というリーズナブルな価格を実現している。販路もヨドバシカメラやビックカメラなどの家電量販店をはじめ、AmazonやひかりTVショッピングなどのECサイト、OPPO公式オンラインストア、Yahoo!ショッピングや楽天市場の公式ストア、IIJmioなど、さまざまルートで購入できる。家電量販店などには実機も展示されているため、手に取って、デザインや質感などを確認することが可能だ。

6.9mmのスリムボディに10.3インチ2Kディスプレイを搭載

 まず、外観からチェックしてみよう。前述のように、Androidタブレットには8インチクラスと10インチ以上という2つのクラスが存在するが、「OPPO Pad Air」はiPadの標準モデルと同じく10インチ以上のクラスに位置付けられる。

 本体はB5用紙などよりもひと回り小さいサイズで、iPad(第9世代)などよりも横幅(短辺)が2cm程度、小さい。薄さは6.9mmと薄く、重量も440gと軽い。iPadはWi-Fiモデルで480g前後のため、1割近く軽い計算になる。

本体上部(長辺側)には音量キー、ピンで取り出すタイプのmicroSDメモリーカードスロットを備える
本体左側面(短辺側)には電源キーを備える。縦方向に持ったときは、こちら側が上部になる
右側面(短辺側)にはUSB Type-C外部接続端子を備える。隣の穴はクアッドステレオスピーカーのもの

 特徴的なのは背面の仕上げで、アルミ合金の背面パネルに、「OPPO Reno7 A」や「OPPO A77」で採用された「OPPO Glow」(オッポグロウ)と呼ばれる仕上げを採用し、指紋や手の跡を付きにくくしているこれに加え、カメラ部から長辺方向には砂丘をイメージしたという立体的なテクスチャーを施すことで、デザインと触り心地の両方において、アクセントを付けている。タブレットはスマートフォンに比べ、背面の面積が広いことから、手の跡や汚れが目立ちやすいため、こうした背面仕上げはうれしいところだ。

背面は「OPPO Glow」による仕上げで、指紋や手の跡が残りにくい。本体上部側は砂丘をイメージしたというテクスチャー処理が追加されている

 ディスプレイは10.3インチの2K(2000×1200ドット)表示が可能なIPS液晶ディスプレイを搭載する。ディスプレイ周囲の額縁は約8mmと狭額縁で、ディスプレイは本体前面の83.5%を占める。スマートフォンではすっかり有機ELが主流であるのに対し、タブレットは対角サイズが大きいこともあり、液晶ディスプレイが採用されるが、仕様としては最大10億表示が可能で、輝度は最大360nit、リフレッシュレートは最大60Hz、タッチサンプリングレートは最大120Hzと、実用面で十分なスペックを持つ。動画やSNSなどを長時間、見ることを考慮し、ブルーライトカットなどで目の負担を軽減するアイケア機能も搭載する。

[設定]アプリ内の[特殊機能]には大画面を活かした便利な機能が並ぶ

大容量バッテリーで最大12時間連続の動画視聴

 バッテリーは7100mAhの大容量バッテリーを搭載する。OPPOによれば、最大約12時間連続の動画視聴をはじめ、最大約83時間の連続音楽再生、最大約587時間の連続待機が可能としている。今回の試用でも動画視聴などをくり返してみたが、バッテリー残量の減り方は緩やかで、1~2日使って、少し減ってから充電するくらいのペースで利用可能だった。

 充電については本体下部のUSB Type-C外部接続端子にACアダプターを接続して、最大18Wの急速充電に対応する。パッケージにはACアダプターが付属しないが、市販品で20Wクラスの充電器が数多く販売されているので、必要に応じて、それらを購入すればいいだろう。USB Type-C外部接続端子にUSBケーブルを接続すれば、他の機器に給電するリバース充電にも対応する。スマートフォンやワイヤレスイヤホン、IoT機器などを充電したいときに便利だ。

一般的なスマートフォンのSIMカードトレイと同じように、ピンで取り出すタイプのmicroSDメモリーカードトレイ

 本体にはDolby Atmos対応クアッドステレオスピーカーを内蔵しており、動画再生時などに迫力あるサウンドを楽しめる。ちなみに、本体には3.5mmイヤホン端子がないため、ビデオ会議などの音声コミュニケーションをするときは、Bluetooth接続のワイヤレスイヤホンやヘッドセットを利用する。有線のイヤホンマイクを使いたいときは,USB Type-C外部接続端子に接続するが、本体にはDACが内蔵されていないため、Googleの「Pixel USB-C イヤフォン」のようなDAC内蔵のイヤホンやDAC内蔵変換アダプタを接続する必要がある。

ビデオ会議にも使いやすい位置のインカメラ

 チップセットは米Qualcomm製Snapdragon 690を採用し、4GB RAMと64GB ROMを搭載する。最大512GBのmicroSDメモリーカードを内蔵する。Webページ閲覧やSNS、音楽再生、動画視聴など、一般的な用途であれば、このスペックでも十分だろう。端末内に多くの動画コンテンツなどをダウンロードしておくような使い方をするのであれば、少し容量の大きいメモリーカードを装着しておきたい。

スマートフォンを持っていれば、タブレットの背面カメラを使うことは少なそうだが、QRコードを読み取ったり、ビデオ会議中の周囲の状態を映すときに使える

 カメラは背面側に800万画素/F2.0のアウトカメラ、本体前面には500万画素/F2.2のインカメラを搭載する。いずれのカメラも写真、動画、ポートレート、タイムラプス、テキストスキャナーなどの撮影機能をサポートする。インカメラは本体を横向きにしたときの上部側(長辺側)に内蔵されているため、ビデオ会議などで利用するときに、自然な目線で使うことができる。ちなみに、iPadは「iPad(第9世代)」まで短辺側に備えられていたが、今年10月に発売された「iPad(第10世代)」では「OPPO Pad Air」などと同じように、横向きに構えたときの長辺側の中央にインカメラが備えられている。

 「OPPO Pad Air」は指紋センサーによる指紋認証などがない代わりに、インカメラを利用した顔認証に対応している。本体を横向きに持ったときはすぐに認識するが、本体を縦向きに持ったときは少し位置がずれるため、本体の向きや位置を調整することがある。

生体認証は顔認証のみだが、「目を開く必要あり」という項目もあり、睡眠中に勝手にロックが解除されないようにしている

 通信機能については、冒頭でも触れたように、IEEE 802.11a/b/g/n/ac準拠のWi-Fiのみに対応し、4G LTEなどのモバイルデータ通信はサポートされない。オウガ・ジャパンによれば、グローバルで展開されている「OPPO Pad Air」も元々、モバイルデータ通信をサポートしていないとのことだ。タブレットのモバイルデータ通信については、ユーザーや使い方によって、必要性が違ってくるが、家庭で利用する場合は光回線などの高速インターネット回線でWi-Fiが設置されているため、そちらに接続して利用するだろう。

スマートフォンでWi-Fiテザリングを有効にして、「OPPO Pad Air」のカメラでQRコードを読み取れば、すぐにWi-Fiに接続が可能。ColorOS搭載スマートフォンの場合は、[接続と共有]-[パーソナルホットスポット]-[QRコード]の順にタップすれば、表示される

 「OPPO Pad Air」を外出時など、モバイル環境で利用したいのであれば、公衆無線LANサービスやスマートフォンのテザリングで接続することになるが、かつてに比べれば、各携帯電話会社の料金プランもデータ通信量が値下がりし、テザリングの追加料金もかからないケースが多いため、Wi-Fiモデルでもそれほど困ることはないだろう。スマートフォンと合わせて、複数の回線を契約する煩わしさを好まないユーザーも居て、そういった人たちからは「むしろWi-Fiモデルの方が安心」という声もあるくらいだ。

Android 12ベースのColorOS 12

 プラットフォームはOPPOのスマートフォンと同じように、Android 12ベースのColorOS 12を搭載する。一部の海外メーカーはスマートフォンにおいて、Androidプラットフォームをベースにしながら、ユーザーインターフェイスを中心に独自のカスタマイズを加えており、OPPOも「OPPO Reno7 A」などでColorOSを採用する。今回の「OPPO Pad Air」には、そのタブレット版が搭載されている形だ。基本的な操作はAndroidプラットフォームに準拠しているが、大画面の特徴を活かした便利機能も搭載している。

ホーム画面はインストールしたアプリがホーム画面に並ぶ「標準モード」、[アプリ一覧]ボタンから表示する「ドロワーモード」が選べる
ホーム画面の横表示。インストールされたアプリや検索ボックスのほか、Googleアプリのフォルダー、ツールアプリのフォルダーが並ぶ
自動回転を有効にしていれば、ホーム画面を縦表示にもできる

 操作の基本となる[ホーム][戻る][最近使用したアプリ]のナビゲーションボタンは、画面最下部に表示されるが、縦向きでも横向きでも左右どちらかに寄せた形で表示される。同じ最下部に表示される[<]や[>]をタップすることで、反対側に表示したり、[設定]アプリの[システム設定]-[システムナビゲーション]で、中央に表示するようにも設定できる。

「ホーム」「戻る」「起動中アプリ一覧」を表示するシステムナビゲーションは、ボタンとジェスチャーのいずれかを選べる
ナビゲーションキーの位置は左右を切り替えるか、センターに配置することができる

 画面上部から下方向にスワイプしたときに表示される「クイック設定パネル」は、基本的にスマートフォンと同様で、Wi-FiなどをON/OFFしたり、機内モードに切り替えたり、ニアバイシェアやOPPO Shareなどもワンタッチで有効にできる。

上からスワイプして表示されるクイック設定パネルは、画面下部のナビゲーションキーの位置に連動する
アプリを起動中、画面を縦方向にスワイプすると、右側にホーム画面が表示され、そこでアプリのアイコンをタップすれば、画面を分割して、複数のアプリを同時に利用できる
たとえば、動画を見ながら、Webページを閲覧したり、Gmailを確認しながら、カレンダーにアポイントを登録するといった使い方も簡単にできる

 便利機能としては、2本指で縦方向にスワイプすることで画面を分割し、複数のアプリが同時に表示できる「2本指画面分割」、3本指で縦方向にスワイプして操作できる「3本指スクリーンショット」、アプリの画面を4本指でピンチインして、ウィンドウ表示に切り替える「4本指フリーティングウィンドウ」などが利用できる。

4本指でピンチインをすると、アプリがフローティングウィンドウで表示される。バックグラウンドで動画を再生するときなどに便利だ
日本語入力はAndroidプラットフォーム標準の「Gboard」を搭載。標準ではフローティングウィンドウで表示されるが、文字パレット内のアイコンをタップすると、固定表示も可能

 また、こうしたタブレットを家庭内で子どもにも利用することを考慮し、Googleの「キッズスペース」を標準で搭載している。Googleキッズスペースは子ども用のGoogleアカウントを設定し、おすすめのアプリや書籍、動画などを楽しめるというもので、子どもの興味や関心に合わせて、カスタマイズできる機能になる。Googleが提供する「ファミリーリンク」を組み合わせることで、保護者が子どもの利用状況を確認したり、制限することができる。たとえば、子どもがインターネット上の不適切なコンテンツにアクセスできないようにしたり、1日の利用時間や連続利用時間を制限することができる。

Googleキッズスペースを標準で搭載。子ども用アカウントを追加し、Googleの「ファミリーリンク」を使い、子どもが安全に利用できる環境を構築できる。
子ども用のGoogleアカウントはファミリーリンクで保護者が管理することで作成できる

 ちなみに、こうした子どものタブレット及びスマートフォンの利用を管理するツールとしては、アップルもiPhoneやiPad向けに「ファミリー共有」に提供しているが、「ファミリー共有」は保護者側の環境もiOSやiPadOSに限定されているため、保護者もiPhoneやiPadを持たなければならない。これに対し、Googleの「ファミリーリンク」は、AndroidとiOSの両プラットフォームにアプリが提供されているため、保護者はどちらのスマートフォンを使っていても子どもの利用を管理できる。『オープンなGoogle』と『クローズドなApple』の方針の違いが見える一面と言えそうだ。

いろいろ使える、4万円を切るお手頃価格のAndroidタブレット

 冒頭でも触れたように、コロナ禍以降、スマートフォンに次ぐセカンドデバイスとして、タブレットが再び注目を集めている。

 たとえば、テレワークやリモートワークなどの環境では、パソコンで作業をしながら、資料の表示やビデオ会議はタブレットに任せるといったスタイルで利用できるうえ、オフの時間はタブレットで電子書籍やコミックなどを楽しんだり、旅行などに持って行く使い方もできる。家庭内での利用では、子どもたちに保護者のスマートフォンを渡し、課金などのトラブルに遭うケースも耳にするが、Googleのファミリーリンクで子ども専用のアカウントを作成し、利用できるアプリや時間を制限したタブレットを渡すようにすれば、安心して使わせることができる。

 昨今の値上げラッシュを鑑みると、リモートワークのため、子どものためなどに、新たに1台のデバイスを購入することは、やや躊躇してしまいそうだが、「OPPO Pad Air」は4万円を切るお手頃価格で販売されており、内容的にも充実した構成となっている。Androidタブレットが久しぶりの人、はじめての人に、試してもらいたい一台と言えそうだ。