法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

今、そこにある5G

出そろったドコモ、au、ソフトバンクの5G、その内容は

 今年3月、NTTドコモ、au、ソフトバンクは相次いで5Gサービスの詳細を発表し、サービスを開始した。次なる世代の携帯電話技術として、注目を集めてきた5Gサービスがいよいよ国内でもスタートしたことになる。今回は各社の5Gサービスの内容などをチェックしながら、今後の展開などについて、考えてみよう。

静かに発表された各社の5Gサービス

 携帯電話の世界はおよそ10年程度の単位で、新しい世代の技術が登場してきた。携帯電話サービスの基礎となった第一世代の「アナログ」に始まり、国内では主にPDC方式、欧州ではGSM方式が採用された第二世代の「デジタル」、世界共通の携帯電話技術を目指した第三世代の「3G」、現在、広く利用されているLTEを採用した第四世代の「4G」と進化を遂げてきた。

 この4Gの後を受け継ぐ形で開発が進められてきたのが5Gだ。5Gについては、すでに本誌でも数多くの記事を掲載し、本コラムでも2月末の段階で、「5G商用サービス開始前夜、何がどうなる? どれを買う?」で予想を含めた内容を解説した。

 そして、いよいよ3月に入り、NTTドコモ、au、ソフトバンクは、相次いで5G商用サービスの詳細を発表し、3月25日にNTTドコモ、26日にau、27日にソフトバンクがサービスの提供を開始した。

 新しい世代の携帯電話の技術であり、「5Gは電気になる」と言われるほど、将来的に社会インフラとして、さまざまな産業にも活用されていくことが期待されている。しかし、今回の5Gサービスの発表とサービス開始は、ここ数年間の『世界が変わる』と言われるほどの風呂敷の拡げっぷりからは、想像できないほど、物静かなものになってしまった。

 その最大の要因は言うまでもなく、今、世界中を悩ませている新型コロナウイルスの影響で、各社が発表イベントを異例の形で開催せざるを得ず、さまざまなメディアへの露出も限定的なものになってしまったためだ。

 もうひとつの理由として挙げられるのは、各社の5Gサービスのエリアがかなり狭く、「5Gサービスならでは」の体験ができる環境が限られていることが挙げられる。とは言え、2月の記事でも予想したように、各社ともデータ通信については使い放題、もしくはそれに準じる環境を実現しており、その点においては従来の4Gサービスから乗り換えるメリットを生み出している。しかもネットワークは当面、4Gと併用するため、各社の5G向け料金プランは、4Gネットワークに接続しても使い放題が適用される。昨今、テレワークやリモートワークの利用が拡大し、通信環境を見直すユーザーが増えているとされるが、5Gサービスや5G向け料金プランによって作り出される「使い放題」の環境は、こうしたニーズにも応えられるものと言えそうだ。

 また、今回の各社の発表はいずれもリモートで発表イベントを視聴し、メディア関係者は別の手段で質疑応答に参加するというしくみだった。発表イベントを視聴するという方法は海外メーカーなどが発表するイベントを視聴することが多く、それほど違和感を覚えなかったが、質疑応答については電話会議システムを利用したため、取材側があまり慣れておらず、普段のような質疑応答ができなかった印象も残る。

 通常の発表会ではプレゼンテーション後、展示された実機を手に取って試すことができる「タッチ&トライ」の時間が設けられているが、今回は3社とも発表会後に一定時間単位で人数を区切り、実機を展示コーナーで試すという取り組みを行なった。ちなみに、NTTドコモについてはタッチ&トライの後、各担当者が別途、質疑応答で対応するセッションが設けられていた。

 発表についてはいずれもかなり異例の形になり、取材する側としては今ひとつ盛り上がりに欠けた感は否めなかった。とは言うものの、各社の発表内容については、それぞれのこだわりや思惑が見え隠れする部分もあった。

「5G LAB」の展開で5Gらしさを演出するソフトバンク

 主要3社の中で、5Gサービスの内容をもっとも早く発表したのはソフトバンクだ。発表は3月5日だったが、実は直前まで、いつ開催されるのか、ライブ中継とリアル開催のどちらを選ぶのかがなかなか決まらず、取材陣をやきもきさせた。結局、発表日の2日前の3月3日にライブ中継で開催する旨が伝えられた。

 発表内容については既報の通りで、3月27日にサービスを開始し、「5G LAB」と呼ばれる新サービスが提供されることが発表された。5G LABはARやVR、多視点映像、クラウドゲームによって構成されるエンターテインメントサービスで、AKB48のステージをVRで視聴したり、野球などのスポーツを多視点で視聴できる例などが挙げられている。いずれもソフトバンクがこれまで5Gのデモで訴求してきた内容であり、ある意味、これも予想通りという内容だった。

 料金については2月25日に発表されていた新料金プラン「メリハリプラン」と「ミニフィットプラン」を対象とし、5Gサービスを利用するために月額1000円の「5G基本料」を追加することが発表された。5G基本料については、2年間、無料で提供される。メリハリプランは従来の料金プランで提供されていた「動画SNS放題」を継承するほか、データ通信量が2GB以下の場合は自動的に1500円を割り引かれる。ただし、この2GBには動画SNS放題で利用したデータ通信量も含まれるため、条件はやや厳しい。

 ソフトバンクとしては従来プランの動画SNS放題を活かしながら、1500円割引という新しい工夫を盛り込んだ5Gサービス対応の料金プランだが、SNSなどでの反応がたいへん厳しい。ライブ中継のコメントには「なんだよ、使い放題じゃないのか」といった厳しいメッセージが数多く寄せられていたが、これはちょっとタイミングが悪かった感は否めない。というのもソフトバンクが5Gサービスを発表する2日前、楽天モバイル(MNO)が携帯電話サービスの詳細を発表し、「Rakuten-UNLIMIT」という使い放題(自社エリア内のみ)の料金プランを発表していたためだ。実際の利用ではエリアが大きく違うため、とても同じレベルで比較できないが、なかには「4Gの楽天モバイルが使い放題なのに、ソフトバンクはなぜ使い放題にならない?」と考える人も多かったようだ。

 端末については主要3社の中でもっとも少ない4機種を発表した。5Gサービスでは唯一、主要3社に端末を供給するシャープの「AQUOS R5G」、プレサービスのデモでも好評を得て、4Gモデルも発売されていたLGエレクトロニクス「LG ThinQ V60 5G」、スマートフォンとしては久しぶりのZTEの「ZTE Axon 10 Pro 5G」、ソフトバンク向け及び主要3社向けでは初採用となったOPPOの「OPPO Reno3 5G」がラインアップされた。後述するNTTドコモやauと違い、人気の高いソニーのXperiaシリーズやサムスンのGalaxyシリーズがなく、ややバリエーションに欠ける印象も残る。限定的なエリアを考慮してか、当初、予想されていたCPE端末(据置型5G対応Wi-Fiルーター)やモバイルWi-Fiルーターなどがラインアップになかった。ただ、OPPO Reno3 5Gのように、5G端末ながら、普及価格帯を狙うモデルもラインアップされており、一応、幅広いユーザー層への展開も考慮しているように見える。

 エリアについては他社同様、かなり限定的で、東京で言えば、ソフトバンクが5Gの実証実験やデモに利用していた銀座近辺をはじめ、有楽町、神田、同社お膝元の汐留などが該当する。これらのエリア情報は3月末現在のものが住所によるリスト、4月末時点のものがマップで掲載されているが、住所リストも表記が一部のため、実際には5G対応端末を持って、住所を頼りに付近を歩き回らなければ、5Gエリアが見つからないようなレベルだ。

 ソフトバンクとしては2021年中に人口カバー率90%を目指すとしているが、同社は5Gの電波割り当て申請の段階から、既存の4Gの周波数帯域をいずれ5Gに転用することを考慮していたようで、5G割り当て時に総務省に提出した計画でも5G基盤展開率は64%と、90%超のNTTドコモやauよりも低く設定されている。おそらく、ソフトバンクはユーザーの4Gから5Gへの移行を見ながら、4Gの周波数帯域に5Gの電波を混在させる「DSS(Dynamic Spectrum Sharing)」を導入し、エリアを拡げて行くことが考えているのだろう。

 一方、ユーザーが4Gサービスから5Gサービスへ移行する手続きについては、端末の購入と申し込みが必要とされているが、ユーザーが自前で端末を用意したような場合の対応については、基本的には店頭での申し込み手続きが必要となっており、今ひとつ移行しにくい。特に、ショップなどが営業時間を短縮している現状を鑑みると、My SoftBankのみの手続きで5Gサービス(5G契約)に移行できるようにして欲しいところだ。

豊富なラインアップと使い放題で攻めるNTTドコモ

 NTTドコモは5Gサービスを3月18日に発表し、3月25日からサービスを開始した。同社も新型コロナウイルスへの対応で、発表イベントはライブ中継で開催し、電話会議システムによる質疑応答を実施後、人数を限り、時間帯を区切る形でタッチ&トライを開催した。ちなみに、タッチ&トライの会場は、通常の発表会と同程度のスペースで、内容もかなり充実していた印象だった。取材時間が限られていたことが悔やまれる。

 NTTドコモの5Gサービスの内容については、本誌の記事をご参照いただきたいが、5G向けということで、今年2月から予告されていた「新体感ライブ CONNECT」、マルチアングルやリプレイなどを組み合わせた「5G LIVE SPORTS SUPPORTER+」など、エンターテインメントコンテンツが数多く提供される。スポーツでは提携するサッカーのJリーグのマルチアングル視聴やスタッツ参照、来シーズンからトップパートナーになる卓球のTリーグの公式サービス共同企画などが拡充される。

 料金については、昨年4月に発表された「ギガホ」「ギガライト」の5Gサービス向けとなる「5Gギガホ」「5Gギガホライト」が発表された。「5Gギガホ」については月額7650円で最大100GBまでデータ通信が利用でき、100GBを超えると、送受信ともに3Mbpsに制限されるが、5Gサービス開始と「データ量無制限キャンペーン」(終了時期未定)が提供されるため、実質的にデータ通信は使い放題になる。NTTドコモが「5Gギガホ」という料金プランの仕様として、データ量無制限にするのではなく、キャンペーンで対応したのは、やはり、ユーザーがどれくらい利用するのかが今ひとつ見えないためだ。もし、ユーザーの利用が大幅に増え、ネットワークに影響が出るようなことがあれば、いつでも制限ができるように、キャンペーンという形で提供したわけだ。auや楽天モバイル(MNO)でもデータ通信量無制限の料金プランを提供しているが、NTTドコモの場合、契約数が多いこともあり、慎重にならざるを得なかったのかもしれない。

 また、NTTドコモの5Gサービス向け料金プランで悩ましいのは、既存の料金プランから乗り換えなければ、5Gサービスを契約できないという点だ。たとえば、従来の「カケホーダイ&パケあえる」を契約し、家族などでシェアパックグループを組んでいる場合、このグループから離脱しなければ、「5Gギガホ」「5Gギガホライト」を契約できないわけだ。

 さらに、NTTドコモの場合、昨年6月から端末販売と回線契約を分離した「ギガホ」「ギガライト」をスタートさせているため、それ以前に端末を購入したユーザーは月々サポート割が残っているケースがあり、5Gサービスへ移行すると、この割引も諦めなければならない。ちなみに、筆者も3月25日に5Gサービスに契約を切り替えたが、その回線で適用を受けていた月々サポート割の4カ月分(約9000円分)を放棄することになってしまった。

 同様の損失はauやソフトバンクの契約ユーザーにも起こり得るが、両社の場合、早くから「ピタットプラン」や「ギガモンスター」などの分離プランを提供していたため、すでに月額割引が適用されていないユーザーも存在する。これに対し、NTTドコモは分離プラン導入が約1年前であり、2018年4月頃以降に機種変更したユーザーは何らかの形で損失を被る可能性がある。総務省の方針に振り回された部分もあるだろうが、料金プランの変更が今後、ユーザーの5Gサービス移行を足踏みさせる要因になるかもしれない。

 端末については、5G対応スマートフォン7機種、5G対応ルーター1機種が発表され、同時に4G対応スマートフォン4機種、4G対応タブレット1機種が発表された。ラインアップとしては春夏モデルという位置付けになるため、例年5月の連休明けに発表される夏モデルは今回の発表にほぼ含まれるということになる。

 具体的な5G対応端末としては、唯一、主要3社に供給するシャープの「AQUOS R5G SH-51A」をはじめ、今年2月にグローバル向けモデルが発表されたサムスンの「Galaxy S20 5G SC-51A」、同時発表でミリ波対応の「Galaxy S20+ 5G SC-52A」、同じく2月にグローバル向けに発表されたソニーの「Xperia 1 II SO-51A」、プレサービスでも採用されていたLGエレクトロニクスの二画面端末「LG V60 ThinQ L-51A」、久しぶりにハイエンドモデルを投入する富士通の「arrows 5G F-51A」、チームユースなどにも対応したシャープの5G対応ルーター「Wi-Fi STATION SH-52A」がラインアップされる。

 これに加え、東京オリンピックの記念モデルとして、「Galaxy S20+ Olympic Games Edition」もラインアップされているが、開催が延期になったため、今後、どのように扱われるのかはわからない。ラインアップとしては豊富で、各社の人気シリーズの5Gモデルを集めたという印象だが、基本的にはいずれもハイエンドのモデルとなっており、いずれもほぼ10万円以上の価格が設定されている。他社のような普及価格帯のモデルがラインアップされていないのは少し気になるところだ。

 エリアについては3月末のサービス開始時点で全国150カ所としているが、エリアというより、スポットという表現の方がしっくり来る内容だ。ただ、東京オリンピックを視野にサービスの準備が進められていたこともあり、オリンピック関連のスポーツ施設などはエリア化されているほか、一部のドコモショップなども対応エリアとなっている。対応エリアの一覧も施設名などで表記されているため、5G対応端末を購入したユーザーが試しに行きやすいと言えそうだ。ただし、ドコモショップなどはショップ内に向けて電波が出ているようで、店の前や近くでは5Gの電波が受けられないケースが見受けられた。5Gで利用する周波数帯域は高いため、直進性が強く、あまり遠くに飛ばないため、こうした状況になってしまうようだ。

使い放題の料金プラン「データMAX」を拡大するau

 主要3社の5Gサービスの発表で、最後発となったのが3月23日に「UNLIMITED WORLD au 5G」と題した発表会を開催したauだ。auの5Gサービスは25日のNTTドコモに続き、26日からスタートしている。auも他社同様、ライブ中継という形で発表会を開催し、電話会議システムで質疑応答に対応した。その後、人数を限り、時間帯を区切る形でタッチ&トライを開催した。

 auの5Gサービスの発表内容も本誌記事を参照していただきたいが、他の2社に比べ、エンターテインメント色が強く、auが掲げる「おもしろいほうの未来へ」というスローガンが活かされた内容だった。「au」というブランドネームに引っかけ、「AUGMENTED~」をキーワードに5G向けのサービスをラインアップしてきた格好で、人気アニメの「攻殻機動隊 SAC_2045」とコラボレーションし、渋谷の街で5G対応スマートフォンをかざすと、攻殻機動隊の世界をARでスマートフォンに構成するアトラクションを提供したり、人気バンド「SEKAI NO OWARI」のライブをau 5Gで演出したり、遠隔地から参加するしくみなどにも取り組む。

 料金プランについては従来の4Gサービス向けにも提供されてきたデータ通信使い放題の「データMAX」を継承した「データMAX 5G」を軸に展開してきた。他社が使い放題と段階制の2つのプランに集約してきたのに対し、auは使い放題の「データMAX 5G」と段階制の「ピタットプラン 5G」のほかに、Netflixをバンドルした「データMAX Netflixパック」、Netflix、Apple Music、YouTube Premium、TELASA(ビデオパス後継サービス)もバンドルした「データMAX ALLSTARパック」をラインアップしてきた。いずれもスマートフォンでのデータ通信は無制限だが、テザリングと海外利用時のデータ通信量はそれぞれの料金プランごとに段階的に制限されている。

 こうした使い放題の料金プランに、コンテンツサービスを組み合わせてきた手法は、かつての3Gケータイのとき、ムービーケータイやGPSケータイなどを相次いで投入し、サービスを先行して、ユーザーの利用シーンを拡大してきたauらしいアプローチと言えそうだ。こうした既存のコンテンツサービスとの組み合わせは、NTTドコモもAmazonプライムやDisney Deluxeを1年間無料で提供しており、今後、5Gサービスの普及を後押しするための取り組みとして、各社が積極的に採用することになるかもしれない。

 端末については7機種の5G対応スマートフォンを発表した。主要3社に5G端末を揃って供給するシャープの「AQUOS R5G SHG01」、NTTドコモと同様のサムスン「Galaxy S20 5G SCG01」と「Galaxy S20+ 5G SCG02」、今年2月にグローバル向けに発表された「Xperia 1 II SOG01」までは予想の範囲だったが、国内ではau向けのみに供給されるZTEの「ZTE a1 ZTG01」、3月にグローバル向けに発表されたばかりのOPPOの「OPPO Find X2 Pro OPG01」、国内主要3社向けでは初採用となるシャオミの「Mi 10 Lite 5G XIG01」の3機種は、今回の主要3社の端末ラインアップでもっとも驚かされた。

 auは昨年、サムスンの「Galaxy Fold」、今年2月には「Galaxy Z Flip」と、グローバル向けの端末をいち早くラインアップに加えているが、今回のラインアップを見ると、AQUOS、Galaxy、Xperiaという日本仕様を満たした人気シリーズで幅広いユーザーのニーズに応えつつ、グローバル市場でも注目度の高いモデルをいち早く投入することで、先進性に期待するユーザーにも応えていこうという姿勢のようだ。

 エリアについては、全国15都道府県の一部エリアから提供開始としているものの、他社同様、当面はかなりスポット的な印象で、リストに掲載された住所を頼りに、5Gネットワークに接続できる場所を探すしかない。しかし、基地局の開設計画は積極的な印象で、2021年度中に1万局を全国に展開するとしている。ただ、ソフトバンクほどではないものの、auも既存の4Gネットワークで利用している周波数帯域をDSSによって、5Gの電波を混在させ、エリアを拡大していきたいという意図を持っているようだ。ちなみに、KDDIとソフトバンクは「5G JAPAN」を設立し、両社が保有する基地局資産を相互に効率良く利用する計画を持っている。

5Gのキーワードは「使い放題」から

 3月末に国内でも正式に商用サービスがスタートした5G。今回、説明したように、3社ともかなりコンパクトなスタートで、「5Gだから、○○ができる」と言えるほど、強力なサービスも今ひとつ見えてこなかった。ソフトバンクやNTTドコモのスタジアム向けソリューション、auの渋谷で展開する人気アニメとの連携など、体験型の5Gサービスは今後、各地で楽しめることになりそうだが、ユーザーが端末で楽しむという範囲においては、決定だと言えるサービスは見当たらない印象だ。

 ただ、そういったサービスとは別に、ユーザーにとって、5Gでもっとも恩恵を受けられそうなのは、やはり、使い放題を実現した料金プランが挙げられるだろう。主要3社によって、多少、「使い放題」の内容が異なるが、これまで以上にデータ通信を制限なく使えるようになる。しかも使い放題は5Gネットワークへの接続が必須ではなく、既存の4Gネットワークに接続した場合も適用される。筆者も5Gで契約した回線については、外出先などで、「Wi-Fiに接続しないように」心がけており、今のところはストレスなく、使えている。もちろん、モバイルネットワークが遅く、Wi-Fiが高速な環境ではWi-Fiに切り替えることもある。

 各社の5G向け料金プランは、既存の4G向け料金プランに比べ、月額500円~1000円程度、高めに設定されている。しかし、現在、スマートフォンとは別に、モバイルWi-Fiルーターなどを契約しているユーザーは、スマートフォンを5Gサービスに移行し、契約をまとめることで、月々の支払いを節約できるケースもありそうだ。同様に、主要3社の契約のほかに、割安なデータ通信を求め、MVNO各社のサービスを契約しているユーザーも統合を再検討した方がいいかもしれない。今回の5Gサービスで提供される「使い放題」の環境は、それくらいのインパクトがある印象だ。

 逆に、毎月数GB程度しか使わないユーザーにとっては、まだ5Gサービスに移行するメリットが少ないかもしれない。とは言え、各社のコンテンツサービスなどに魅力を感じるのであれば、端末購入の負担などを考えながら、移行を検討してみるのもいいだろう。

 ただ、主要3社の5Gサービスの提供について、少し気になる点もある。今回、各社の5Gサービスは、基本的に5G対応端末の購入と同時に申し込むことができるとしている。

 5Gサービスを利用するには、5G対応端末が必要になるため、当たり前と言えば、当たり前だが、昨年、電気通信事業法が改正され、端末の販売と回線の契約が完全に分離したとされているのであれば、回線契約だけを5Gサービスに移行する手段があってもいいはずだ。携帯電話会社によってはキャリアショップに持ち込むことで、5Gサービスに移行できるとしているが、なぜ、その手続きがオンラインでできないのだろうか。昨年まで、あれだけ各携帯電話会社の契約や販売に事細かに口を挟んできた総務省も今回の5Gサービス契約と端末購入が事実上、紐付いていることについて、何も発言しておらず、いささか不可解な印象が残る。

 いよいよ国内でもスタートした5Gサービス。エリアやサービス内容など、まだまだ課題は多いが、各社の発表や動向を見極めながら、移行するタイミングを図っていきたい。