レビュー
au 5Gがいよいよスタート、新宿では600Mbpsを確認
2020年3月26日 21:29
3月26日、いよいよKDDIのau 5Gサービスが幕開けとなった。第5世代移動通信システム(5G)は、大容量・高速通信や多接続などを実現し、携帯電話のみならずさまざまな機器がネットワークに接続されるなど、暮らしやテクノロジーにさまざまな変革をもたらすことが期待されている。
とはいえ、いちユーザーとして気になるのはまずは、スマートフォンでの通信速度だろう。今回、弊誌では「Galaxy S20 5G SCG01」を用いて、5Gのスピードテストを行った。
4Gの10倍以上のスピードを確認
今回計測を行ったのは、新宿駅近辺のau 5Gエリア。ここは、KDDIのオペレーションセンターなどがあるKDDI 新宿ビルのお膝元だ。地図上でいうと、真中付近のピンク色の丸付近にあたる。
5Gのアンテナは写真のように、KDDI 新宿ビルの壁面に設置されていた。左の少し大きいものがSub-6のアンテナで、右側がミリ波アンテナのものだという。個人向けミリ波対応端末は5月下旬以降の発売を待たねばならないため、今回はSub-6のみの検証となる。
アンテナからは100mほど離れた距離で数度に渡り測定を試みたところ、安定して600Mbps前後のダウンリンク速度を得られた。au公式サイトによると、Galaxy S20 5Gのダウンリンク最大速度は2.8Gbpsということで、まだまだスピードが向上する期待は十分持てる。
ちなみに、同じ場所で4G LTEスマートフォンの「Galaxy A20」でもスピードテストを実施した。結果は40Mbps程度と、5Gとはかなりの開きがあることが確認できた。
遮蔽物の影では?
周波数が高く、直進性が高いという5G。遮蔽物に隠れたらどこまで速度は低下するのだろうか。5Gアンテナが視界から消える、完全にビルの影に入ったところで三度、スピードテストを実施した。
結果は、おおむね300Mbps台だったが200Mbps台に落ちるほどではなかった。およそ速度は半減するもののそれでも4G並の速度に低下するという場面は、少なくとも今回においては見られなかった。
少々余談めくが、KDDIによれば現在の5Gは4Gの設備を共用する「NSA(Non-Stand Alone)」という形式で提供されている。この場合、5G端末は4Gと5Gの周波数を両方用いて通信している。そのため、一般的には4G端末のユーザーが多く通信速度が落ちているような場合、そちらにも4Gの帯域が割かれていく関係上、つられる形で5Gの通信速度も落ち込むのだという。
屋内ではさらに高速
場所をKDDI直営店である「au SHINJUKU」に移し、屋内でのスピードテストも行った。1フロアにつき、2カ所のアンテナが天井に埋め込まれる形で設置されていた。スピードテストを実施したところ、1Gbps超の通信速度を記録した。
屋内では、安定して1Gbps超えの通信が可能で、少々意地悪してアンテナから限りなく遠く、しかも少々壁で遮られるような場所に移動してみたが、わずかに1Gbpsを割る程度の数値で、いずれにしても高い通信速度を体感できた。
今回は特別に、開店前の店内に入れてもらいほかに誰もいない状況でテストできたことも影響したのかもしれない。
なお、au SHINJUKUに設置されたアンテナは、単なるエリア拡充にとどまらず、5Gを体感できるイベントのために用いることもあるという。残念ながら、現在は新型コロナウイルスの影響もあり、人が集まるイベントの開催は難しいが、状況が改善したらなんらかのイベントが開催されるかもしれない。
なお、KDDIでは「渋谷 5G エンターテイメントプロジェクト」を通じて、人気アニメシリーズ「攻殻機動隊」とコラボした体験イベントなどを用意している。
エリア展開は東名阪中心に……とは限らない
今回の5Gスピードテストはあくまで、サービスイン初日における一例である。今後は設備もどんどん増強されていく。先日のKDDIの5Gサービス発表会によると、2021年3月末時点で1万局、2022年3月末時点で2万局超の基地局を整備する計画としている。
今はまだ、スポット的な利用しかできないエリアも徐々に広がっていくだろう。KDDIでは、公式サイトにおいてエリアマップを公開している。
現状、ドコモでは住所のリストが公開されているのみだが、KDDIとソフトバンクではリスト+マップという形で違いが見られる。
5Gのエリア展開というと、なんとなく東名阪を中心とした都市部から……と思われがちだが、このマップを見る分にはどうもそうではなさそうだということが分かる。
東名阪では、鉄道沿線や都心部を中心にスポット的な展開を予定していることが分かる。これに対して、福岡県は中心地である天神を中心に、4月末を目処にかなり広範囲な地域で5Gが利用できるようになる。多くの場合、新たな技術などが展開される当初は東名阪に集中しがちだが、au 5Gでは意外な展開を見せている。
さらに今夏以降、秋田県、富山県、石川県などの地方でも面展開される予定であり、もしかすると地方でも比較的に早く多くの人が5Gを手軽に体験できるかもしれない。
※画像出典:au サービスエリアマップ。画像の情報は3月26日時点。最新情報はau サービスエリアマップを参照。
地方創生において果たす役割でも5Gは大きな期待が持たれる。KDDIでも、数多くの地方自治体と手を結び、さまざまな取組みを行っている。このようなエリア展開はスマートフォンのみでの利用を念頭においたものではなく、なんらかの用途のために意図的にこういった展開を予定しているということもあるかもしれない。
法人用途においても、工場など産業からの眼差しも熱い5G。これまでのモバイルネットワークの枠を超えた大きな展開が期待できそうだ。