法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

「HUAWEI Mate30 Pro 5G」はHuawei Mobile Service搭載で日本の5G市場に挑む

ファーウェイ「HUAWEI Mate30 Pro 5G」、約158.1mm(高さ)×73.1mm(幅)×9.5mm(厚さ)、約198g(重量)、オレンジ(写真)をラインアップ

 3月に入り、いよいよ国内でも各社の5Gサービスがスタートするが、昨年来、グローバル市場向けに相次いで5G対応端末をリリースし、各国の5G市場をリードしている存在がファーウェイだ。

 16日、国内市場向けの5G対応端末第一弾として、SIMフリースマートフォン「HUAWEI Mate30 Pro 5G」の発売を発表した。これまでのファーウェイ製端末に搭載されてきたGMS(Google Mobile Service)に代わり、自社で展開する「HMS(Huawei Mobile Service)」搭載の第一弾端末でもある。

 国内では5Gサービスがまだ開始されていないが、ひと足早く実機を試すことができたので、レポートをお送りしよう。

いよいよ国内でもスタートする5G

 3月5日にソフトバンクが5G商用サービスを発表し、3月27日からのサービス開始を明らかにしたことで、いよいよ国内でも5Gサービスがスタートするが、ユーザーとして、気になるのは、やはり、5G対応端末の存在だ。国内市場向けにはすでにシャープやソニーが端末を発表し、サムスンも5G対応のGalaxy S20シリーズを準備中とされる。ソフトバンクのラインアップにはZTEやOPPOの名前もあり、ユーザーの選択肢は意外に広くなりそうな雰囲気だ。

 そんな中、これまでオープン市場だけでなく、各携帯電話会社向けにも数多くの端末を供給してきたファーウェイが国内向け5G対応端末第一弾として、「HUAWEI Mate30 Pro 5G」を発表した。ファーウェイは昨年来、すでに5Gサービスを開始した中国をはじめ、世界各国向けに8機種の5G対応スマートフォンをリリースしており、2019年中にグローバル市場向けに690万台、今年1月までに1000万台を出荷した実績を持つ。

 今回発表されたHUAWEI Mate30 Pro 5Gは、昨年9月にドイツ・ミュンヘンで開催されたイベントでグローバル市場向けに発表されたモデルで、昨年11月の段階で、国内市場向けには5Gサービス開始時に合わせて投入することが予告されていた。

 ただ、ひとつ予想外だったのは今回発表されたHUAWEI Mate30 Pro 5Gが国内のオープン市場向けのSIMフリー端末であることだろう。ファーウェイはこれまでも国内のオープン市場向けに数多くのSIMフリー端末を投入してきたが、5Gサービスは各携帯電話会社のネットワークに接続する調整が必要とされるため、当初は各携帯電話会社向けのモデルとして、採用されると見られていた。しかし、昨年5月に米中貿易摩擦の影響を受け、米商務省のエンティティリストに掲載されたことで、アメリカに関連する企業との取引が制限され、一時は国内でも販売が見合わされることになった。

 その後、NTTドコモ向けの「HUAWEI P30 Pro」をはじめ、au向けやソフトバンク向けのモデルも相次いで販売が開始されたものの、今度は昨年5月の取引制限以降にグローバル市場向けに発表されたモデルは、Googleの各サービスに対応することが制限されることになってしまった。昨年12月に国内向けに発売された「HUAWEI nova 5T」は、昨年5月以前にグローバル向けに発売されたモデルをベースにしていたため、Googleのサービスが利用できたが、2020年以降はどのような仕様の端末を国内市場に投入するのかが注目を集めていた。

 今回発表されたHUAWEI Mate30 Pro 5Gは、Googleサービスを利用するための「GMS(Google Mobile Service)」に代わり、ファーウェイが中国をはじめ、世界各国で展開をスタートさせた「HMS(Huawei Mobile Service)」を搭載した端末として、リリースされた。詳細は後述するが、プラットフォームとしてはこれまでと同じAndroidプラットフォームを採用しているものの、利用できるアプリやサービスなどが大きく異なる製品となっている。とは言うものの、ディスプレイやカメラ、チップセットをはじめとするハードウェアはかなりのハイスペックであり、ライバル製品と真っ向勝負ができるハイエンドモデルとなっている。

 市場想定価格は12万8800円(税抜)。販売はヨドバシカメラマルチメディアAkiba/梅田/横浜、ビックロ ビックカメラ新宿東口店のファーウェイ・ショップ、ファーウェイ楽天市場店、ファーウェイPayPayモール店で扱われ、発売は4月中旬を予定している。また、100名限定の先行販売も行なわれる。申し込みは3月16日(月)から3月25日(水)までで、3月28日(土)~3月30日(月)にファーウェイカスタマーサービスセンターの東京・銀座店、4月4日(土)から4月6日(月)に同センター大阪・梅田店での受け渡される。

 今回は各社の5Gネットワークがまだサービスインしていないため、通常の4G LTEのネットワークでの試用になった点をご理解いただきたい。

左右両端に画面が回り込むHUAWEIホライゾンディスプレイ

 まず、外観からチェックしてみよう。今回発表されたHUAWEI Mate30 Pro 5Gは、2018年に発表された「HUAWEI Mate20 Pro」の後継モデルに位置付けられるが、その外観はディスプレイの形状などが変更されたことで、大きく印象が変わっている。

背面にはLeicaクアッドカメラを搭載
下部にはUSB Type-C外部接続端子を備える
右側面には電源キーを備える
左側面は前面から回り込んだディスプレイのみで、ボタン類はない

 ボディはHUAWEI P30 Proなどに比べ、上部と下部がフラットで、ややスクエアな印象の形状だが、ディスプレイが左右両端に大きく回り込んでおり、背面も「Halo Ringデザイン」と呼ばれるカメラ部を中央上にレイアウトし、美しいデザインに仕上げている。背面カバーにはレザーを採用し、手触りもよく、手に自然にフィットする。ボディカラーのオレンジとも相まって、かなり存在感のあるデザインと言えるだろう。ちなみに、ボディはIP68準拠の防水防塵対応となっている。

 「HUAWEIホライゾンディスプレイ」と名付けられたディスプレイは、左右両端に回り込むように装着され、側面の曲線も88度という業界トップクラスのカーブで仕上げられている。ディスプレイはフルHD+対応の6.53インチフレックスOLED(有機EL)を採用し、縦横比は18.4:9。DCI-P3 HDR対応のほか、ブルーライトを従来モデルよりも25%軽減し、新開発のカラーレンダリングエンジンを採用することで、映像コンテンツなどを美しく再現することができる。

本体の側面まで回り込んだディスプレイ。角度も88度と、かなり急だ

 これだけの大画面ディスプレイを搭載しながら、ボディ幅は73.1mmに抑えられている。同クラスの6.5インチディスプレイを搭載したiPhone 11 Pro Maxの77.8mmというボディ幅と比較すると、そのスリムさがよくわかる。ちなみに、HUAWEI Mate30 Proの両側面はディスプレイが湾曲しているため、額縁(フレーム)がほぼ0mmだが、iPhone 11 Pro Maxは片側だけでも約4.5mmもあり、本体前面から見たときのディスプレイと没入感には格段の差がある。

上部にはIMEI番号が記されたシールが貼られている。隣の黒い丸はリモコンなどが利用できる赤外線ポート
ディスプレイの上部にはインカメラなどを内蔵したノッチがある

 ディスプレイの上部には後述するインカメラをはじめとしたセンサーを内蔵したノッチが備えられている。最近は半円のノッチやパンチホールが増え、ノッチは減る傾向にあるが、3D被写界深度カメラやジェスチャーセンサー、環境光/近接センサーなど、いくつものセンサーが収められている割にはコンパクトなサイズと言えそうだ。

 ボディ周りでユニークなのは、ボタン類が右側面の電源キーしかない点が挙げられる。音量キーはディスプレイの左右両端の湾曲部分をダブルタップすると表示され、スライダーを上下に動かして調節ができる。表示位置はダブルタップした位置になるため、右側面でも左側面でも表示できる。ちなみに、カメラ起動時にはシャッターボタンが湾曲部に表示され、自由に位置を動かすことが可能だ。

 バッテリーは4500mAhの大容量バッテリーを搭載し、ファーウェイが想定する超ヘビーユーザーの利用プロファイルに基づくユースケースでも約9時間を超える稼働を可能にするという。ちなみに、充電については最大40Wの有線(USB Type-C外部接続端子)、最大27Wのワイヤレス充電に対応するほか、本体から他の機器に電力を融通できるワイヤレス給電も従来モデルに比べ、約3倍の給電速度を実現している。ファーウェイではHUAWEI FreeBuds 3などのワイヤレス充電対応のアクセサリーが増えているが、これらを充電するときにも役立つ。

顔認証は立体的に顔を捉える3D顔認証を採用。

 セキュリティはHUAWEI Mate20 ProやHUAWEI P30 Proに引き続き、画面内指紋認証に対応するほか、ノッチに内蔵されたインカメラや3D被写界深度カメラなどを組み合わせた3D顔認証も利用できる。

パッケージには背面に装着するカバーが同梱される。側面のエッジ部分はカバーしない形状を採用

国内主要3社の5GネットワークのIOTをクリア

 チップセットはKirin 990を採用する。世界初の7nmプロセスで製造された5G対応チップセットで、5GについてはNSA/SAの両対応となっているほか、画像や動画のノイズ低減プロセッサなども組み込まれる。メモリーとストレージは8GB RAMと256GB ROMで構成される。SIMカードはnanoSIMカードのデュアルSIMに対応し、2枚目のSIMカードの代わりに、ファーウェイが昨年からハイエンドモデルで採用するメモリーカード「NMカード」を装着することもできる。

本体下部にピンで取出すタイプのSIMカードトレイを備える。SIMカードトレイの表裏に2枚のnanoSIMカードを装着するか、片側にはNMカードを装着する

 デュアルSIMはいずれか片方のSIMカードが5Gネットワークでデータ通信をしている場合でももう片方のSIMカードでVoLTEによる通話をしたり、片方のSIMカードでVoLTE通話中に、もう片方のSIMカードでVoLTEの着信を受けられる仕様となっている。

 5Gネットワークの対応の詳細については、本誌速報記事を参照していただきたいが、日本の主要3社及び楽天モバイル(MNO)に割り当てられた「n77」「n78」「n79」を含む幅広いバンドに対応する。

出荷時に設定されてるNTTドコモ網のAPN。注意が必要なのは「OCNモバイルONE」で、登録されているAPNは旧料金プランのもの
出荷時に設定されてるau網のAPN。NTTドコモ網のAPNには楽天モバイル(MVNO)が登録されているのに、au網のAPNには登録されていない
出荷時に設定されてるソフトバンク網のAPN

 ちなみに、ファーウェイによれば、HUAWEI Mate30 Pro 5Gは日本のNTTドコモ、au、ソフトバンクの5GネットワークのIOT(相互接続性試験)をクリアしているとのことで、エリアなどの条件が整えば、利用できるとしている。

 ひと足早く5Gサービスを発表したソフトバンクによると、既存のAndroidスマートフォンの契約を5G対応の料金プランに変更し、「5G基本料」に加入することで、基本的には現在のSIMカードのまま(サイズは要適合)、5G対応SIMフリースマートフォンを利用できるという。

 5Gについては、今のところ、MVNOへの提供が明らかになっていないため、当面は国内の各携帯電話会社の5GネットワークにSIMフリースマートフォンとして接続しつつ、出張や旅行などで中国へ渡航するようなユーザーに適した設計と言えそうだ。現状は各地域への渡航が難しい状況にあるが、バンドが対応していれば、日本以外の国と地域の5Gサービスにも接続できるのは、ひとつのアドバンテージと言えるだろう。

最高峰クラスのカメラを搭載

 ファーウェイ製端末の魅力と言えば、やはり、Leicaとの協業によるカメラになるが、今回のHUAWEI Mate30 Pro 5Gも一段と進化を遂げている。ただ、基本的な仕様は昨年9月にグローバル向けに発表されたHUAWEI Mate30 Proと共通仕様のため、昨年の記事も合わせて、ご覧いただきたい。

カメラはLeicaクアッドカメラを搭載。左側にLEDフラッシュライトも備える

 まず、背面の中央上にはLeicaクアッドカメラが搭載される。背面側から見て、右上が40MP/F1.8の超広角シネマカメラ(18mm)、右下が40MP/F1.6のSuperSensing広角カメラ(27mm)、左下が8MP/F2.4の望遠カメラ(80mm)、左上が3D被写界深度カメラという構成になっている。広角カメラと望遠カメラは光学手ぶれ補正に対応し、各カメラともAIによる手ぶれ補正にも対応する。

いつもの薄暗いバーで撮影。明るさやボケ味はトップクラス。公開できないが、この暗さでもシェーカーを振るバーテンダーを動画で撮影できた

 HUAWEI Mate30 Proに搭載された2つの40MPのイメージセンサーは、それぞれに基本仕様が異なる。超広角シネマカメラは1/1.54インチのRGGB配列のイメージセンサーであるのに対し、SuperSensing広角カメラは1/1.7インチのRYYB配列のイメージセンサーが採用されている。iPhone 11 Pro Maxをはじめ、他のハイエンドスマートフォンの多くに搭載される1/2.55インチのイメージセンサーに比べ、ひと回りもふた回りも大きなイメージセンサーを採用していることになる。ちなみに、RYYB配列のイメージセンサーはすでにHUAWEI P30 Proなどにも採用された実績があり、低照度の環境でもより多くの光を取り込み、明るく撮影できるという特徴を持つ。

 また、4つのカメラの内、40MPのシネマカメラは60fpsの4K動画を撮影可能で、4K HDR+対応タイムラプスや7680fpsのウルトラスローモーションを撮影することもできる。今回は試用期間が限られていたため、あまりいろいろなシチュエーションで撮影することはできなかったが、既存の機種では暗くて動画が撮影できなかったような環境でも明るく動画が撮影できた。暗さへの対応という点については、人間の視覚に近いレベルの動画がはじめて撮影できたような印象すらある。

 ただ、屋外での歩行中の撮影については、昨年9月に試用したHUAWEI Mate30 Pro(グローバル版)と違い、思ったほどなめらかではなく、ややノイズがあったのは気になった。この点についてはもう一度、動画を撮影し、後日、「ケータイしようぜ!!」で取り上げたい。

 インカメラについては、32MP/F2.0という仕様で、3D被写界深度カメラを組み合わせることで、ボケ味の利いた高品質のセルフィーと簡単に撮ることができる。

ファーウェイ独自の「HMS(Huawei Mobile Service)」を搭載

 冒頭でも触れたように、今回のHUAWEI Mate30 Pro 5Gは、これまでのファーウェイ製端末と違い、GMS(Google Mobile Service)に代わり、「HMS(Huawei Mobile Service)」を搭載している。

 ファーウェイとGoogleの関係については、昨年5月の米商務省のエンティティリストに追加されて以来、数多くの報道がなされ、関連各社もさまざまな動きを示していたが、いよいよファーウェイ自ら新しい方向へ足を踏み出したことになる。本誌をご愛読いただいている読者のみなさんであれば、それぞれの関係性をすでに理解されているだろうが、一部に不正確な報道も多いので、ここで少し話を整理しておこう。

AppGalleryのアプリ画面。日本語対応のものも含め、徐々にアプリが増えてきている

 まず、今回のHUAWEI Mate30 Pro 5Gは、プラットフォームとして、Android 10ベースのEMUI10を搭載する。Androidそのものはオープンソースであるため、誰でも自由に無償で利用することができ、Androidを搭載したスマートフォンやタブレット以外にも数多く採用されている。たとえば、Amazonが販売するFireタブレットやFire TV StickはAndroidをベースにしたFire OSを搭載しているが、基本的にはGoogleが提供するGoogle Playで配信されているアプリなどは利用することができない。具体的には、GoogleマップやGmailなどのアプリをそのまま利用することはできないわけだ。

通知パネルのボタン類は既存のファーウェイ製端末のものを継承している
ジェスチャーによる操作にも対応
ホームアプリの仕様は既存のファーウェイ製端末のものを継承

 これらのAndroidプラットフォーム上で動作するGoogleマップやGmailなどのアプリ、Googleサービスを利用するためのAPIをまとめたものが「GMS」で、これまでのファーウェイ製端末をはじめ、ほとんどのAndroidスマートフォンにはこれらが搭載されていた。

 ところが、前述のように、ファーウェイが米商務省のエンティティリストに掲載され、米国企業との取引が制限された結果、昨年5月以降に販売される端末については、Googleが提供するソフトウェアやサービスを利用することができなくなってしまった。その代わりとして、HUAWEI Mate30 Pro 5Gでは、ファーウェイ自ら提供する「HMS」を搭載することになったわけだ。

 ちなみに、ファーウェイが米国及びその関連企業と取引がまったくできないというわけではなく、米マイクロソフトは米商務省の許可を得て、ファーウェイにWindowsのライセンスを提供している。その結果、HUAWEI MateBookシリーズなどのファーウェイ製パソコンは、最新のWindows 10を搭載した状態で、今まで通り、販売されている。

 こうした動きを受け、Googleも米商務省に何度も働きかけたことが伝えられているが、ファーウェイとしても方針転換を待つことができず、いよいよHMS搭載のスマートフォンを国内市場にも投入することになったわけだ。ちなみに、HMSを搭載したHUAWEI Mate30シリーズは、すでに欧州などで販売されており、国内市場向けもこれに倣ったという見方もできる。

 これまでのGMSに代わり、HMSに切り替えたことで、アプリなどはこれまでのファーウェイ製端末にも搭載されてきた「AppGallery」を通じて、配信されることになる。ファーウェイはAppGalleryをすでに170以上の国と地域に展開し、4億人を超えるユーザーが利用しているという。AppGalleryについてはすでに国内で販売されているSIMフリーのファーウェイ製端末に搭載され、国内のアプリも多く掲載されている。

 AppGalleryの環境にはGoogle Playと違ったユニークなアプリの環境も用意されている。そのひとつが「QuickApp」で、インストール不要で利用できるアプリを提供することで、端末のメモリーを節約できる。1GBのメモリーでは通常のアプリが20本程度、保存できるのに対し、QuickAppは2000本以上を保存でき、グローバル向けにはすでに1700本を超えるQuickApp対応アプリが提供されているという。

 では、実際にHMS搭載のHUAWEI Mate30 Pro 5Gは、既存のGMS搭載のAndroidスマートフォンと比較して、どれくらい使えるのだろうか。今回は試用期間が限られていたため、十分な検証ができていないが、筆者が試したいくつかの例を紹介しよう。

GmailはファーウェイのEmailアプリで送受信できた
Facebookも利用することができた

 たとえば、Gmailはファーウェイのメールアプリを使うことで、同じように送受信でき、Facebookもアプリをインストールして、使うことができた。

 Googleマップはブラウザ経由での利用になってしまうが、国内でもおなじみのナビタイムがすでにAppGalleryに「NAVITIME」や「乗換NAVITIME」、「ドライブサポーター」などを提供しており、これらを利用すれば、ナビゲーションや交通機関の乗り換えなどは対応できることがわかった。

Googleマップはブラウザ経由で表示可能
ゼンリンのいつもNAVIで乗換案内を検索
定番ナビゲーションアプリの「NAVITIME」はAppGalleryに登録されている

 LINEもlite版が利用でき、メルカリのアプリも利用することができる。ただ、やはり、AppGalleryに登録されているアプリは、まだ不足している感は否めず、GMS搭載のAndroidスマートフォンと同じように使うところには届かない印象だ。

 裏ワザとして、ファーウェイが機種変更時のデータ移行アプリとして提供している「PhoneClone」を使い、既存のAndroidスマートフォンからアプリを移行する手なども考えられるが、ライセンスを考えると、これはイリーガルな方法と言わざるを得ず、おすすめできない。

ファーウェイ製端末のデータ移行ツールの「PhoneClone」は便利だが、アプリの移行は権利関係の判断が難しい

 振り返って見れば、すでに多くのユーザーが10年近く、AndroidプラットフォームとGMSの環境で使い続けてきたわけで、今回のHMSの環境はまだ手探りで使っていくしかないというのが実状だ。

 ただ、ファーウェイも手をこまねいているわけではなく、昨年の段階でHMSのために10億ドルを投入する「Shining-Star Program」をスタートさせ、すでにグローバルの登録開発者数は130万を超えているという。セキュリティ面についても業界最高レベルの認証を提供するなど、Googleに縛られない本格的なアプリケーションプラットフォームへ育てようとしている。開発者の反響や今後の展開次第では、新しいプラットフォームとして、世界中に拡大していく可能性も十分あると言えそうだ。

SIMフリー&HMSで日本の5G市場に挑む一台

 今年、国内のモバイル市場はいよいよ5Gサービスがスタートし、新しい時代へ進むことになる。

 2019年10月の改正電気通信事業法の施行により、市場が大きく変化する中、米中貿易摩擦に翻弄されてきたファーウェイは今回発表した「HUAWEI Mate30 Pro 5G」によって、「HMS」を搭載した「SIMフリー」の「5Gスマートフォン」を国内市場に投入するという予想を超える一歩を踏み出すことになった。

 HMSの環境についてはまだまだ発展途上中であり、今後の展開をじっくりと見守る必要がありそうだが、当初は予想していなかった5G対応SIMフリースマートフォンという新しいアプローチは歓迎できるものであり、ハードウェアのスペックを中心とした内容も他製品を真正面から戦える魅力的な製品に仕上がっていると言えるだろう。おすすめできるユーザーはやや限られるかもしれないが、新しい時代を迎えた日本の5G市場に挑む一台として、ぜひ注目したい。