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風も、ブレーキもあるぞ! 仮想サイクリング「indieVelo」をやってみた

 ほとんどZwift一強と言えるような状況だったバーチャルサイクリング界隈だけれども、最近は成長著しい新興勢力に注目している。以前当コーナーで紹介したMyWhooshもそうだが、今回は他にはない新要素が盛りだくさんの「indieVelo」を試してみた。

indieVeloのアバターカスタマイズ画面

 indieVeloは、他のバーチャルサイクリングソフトと同じように、スマートサイクルトレーナーと連動して、オンライン上の他のユーザーとともに3Dの仮想空間を走り回れる、というのが基本のトレーニングプラットフォームだ。

 Androidスマホの他、iPhone/iPad(iOS)、Windows、macOSと対応OSも幅広い(Apple TV版もユーザー限定でテストリリースしている)。無料で利用できるが、月額(12.99ドル)や年額(129.99ドル)の会員費を支払うことで最新の機能を使えたりする特典が付与される。

 中身はどうかというと、Zwiftと比べると走行できる地続きのワールド自体はあまり広くない1種類だけだし、風景のバリエーションも少ない。が、そういう賑やかし要素に振るのではなく、どちらかというと玄人というか、ガチな人たち向けの機能にフォーカスしている感じだ。

ワールドはこの画面で見えている1種類のみ
ただ、コースバリエーションは少ないわけではない

 自由気ままに走る以外に、ペースメーカーとの走行や他のユーザーとのカジュアルなグループライド、ワークアウト、レースイベントがあるのは当然として、ゲーム内ランキングを決めるための本気レースイベントもある。

 通常のスタートからゴールまでを争うスクラッチレースやタイムトライアル、周回ごとに下位が省かれていくレースのほか、500メートルトラックをひたすら周回するレースなども楽しめる。

本気のレースやグループライドなど豊富なイベントが開催
500メートルトラックを2周だけするスプリントレース

 グラフィックのクオリティはそこそこ。樹木などのオブジェが少なめで、コース沿いの建物はただポンと置いただけ感が否めないところもあったりするけれど、そうした若干チープな部分を帳消しにするくらい走行時のスピード感があって気持ちがいい。

テクスチャーは高品質だが、オブジェは少ないのでなんとなく寂しい

 で、さらに面白いのが、風やブレーキの要素もあること。これまで他のバーチャルサイクリングソフトだとドラフティング(前走者のすぐ後ろだと風の抵抗が減って楽になる)の要素は盛り込まれていたが、indieVeloでは向かい風やコーナーへの対処も鍵になってくる。

 同じ場所をぐるぐる周回する500メートルトラックだと風の影響がよりわかりやすい。向かい風になると、追い風のときと同じスピードを維持しようと思っても、かなり頑張らなければならなくなる。

風の向きと強さが表示されており、アバターの周りでも風の流れがわかる(指アイコンで示した箇所)

 また、少し急なコーナーでは、その手前でサイクルトレーナーの負荷を大きくすることでブレーキを仮想的に表現している。あえてペダルをガンガン踏み続けてもいいのだが、無駄に体力を減らすだけ。なので、コーナー直前は脚を休ませ、脱出時に踏み込んで加速する、というリアルの自転車だと当たり前のテクニックが有効だ。

ブレーキ時はテールランプが赤く光る。ここで脚を休ませて、ランプが消えたら全力加速

 それでもって、もう1つ面白いというか、スゲーと思ったのが、最大4画面のマルチディスプレイにアプリケーションレベルで対応していること。Pixel 8 Proでもマルチディスプレイにすることが可能だ。

 Type-Cケーブルを接続して外部モニターに映し出すと、標準ではミラーリングとなり、スマホ画面と外部モニターの映像が同じものになる。ただ大画面でプレーしたいだけならこれでOKだが、indieVelo側で設定変更すれば、外部モニター側の視野を左右もしくは後方の3パターンから選んで表示できるようになる。

Type-Cモニターに通常のミラーリングモードで表示したところ
設定で外部モニターの視野を選択
後方を表示するようにした

 メインの走行画面がスマホの小さい画面で、他の視野が大画面というアンバランスな感じにはなるものの、たとえばレース中に後方の様子をチェックしたりするのには都合がいい。

メインの前方視野
そのときの後方の視野はこんな感じ

 そもそも視点変更の機能はあるのでマルチモニターにしなくても後方確認はできるのだが、一生懸命走っているときに視点変更の操作をしている余裕なんてないので、マルチモニターはなかなか便利ではある。

グループライドやレースでは、ライダーたちが分岐して別のルートを走るパターンもある(パソコンの画面)
集団(プロトン)ごとのギャップをわかりやすく表示する機能も

 アプリとしては週一のペースでバージョンアップしており、最近だと筋酸素飽和度や体内・体表温度を計測するセンサーにも対応するなど、ますますガチ度が増してきている。イベントレースもそれなりに賑わっていて、ちゃんと競えるので楽しい(ユーザーレベルに応じたカテゴリ分けがないので圧倒的に負けることが多いが)。

 ただ、Stravaとの連携は可能だけれどGarmin Connectにはまだ対応していないとか、スマホのコンパニオンアプリがないのでパソコンでプレーするときは操作がちょっと面倒など、「あと一歩」感はあったりする。そのあたりがクリアされれば、Zwiftと双璧をなすようなトレーニングプラットフォームになりそうだ。