みんなのケータイ
「釣った魚に餌はやらぬ」の楽天モバイル（MVNO）からMNP転出を試みるも……
【AQUOS wish3】
2023年12月8日 00:00
楽天モバイルが600万回線突破したけど……
先日、楽天モバイルの契約数が600万回線に達したニュースが報じられた。11月9日の決算説明会では、2023年10月時点での契約数が542万回線だったので、1カ月半ほどで一気に50万回線以上を増やした計算。最近は楽天市場に出店する企業に法人プランを積極的に営業しているようで、それが契約者増に結び付いているんだとか。
ライター諸氏の間では、かつてのウィルコムやイー・モバイルの契約数がもっとも多かった時期を振り返り、「契約数は500～600万くらいに壁があるよね」などと話していたけど、どうやら、その壁も突き破ることができそう。ちなみに、両社がもっとも契約数が多かったときは、ウィルコムが約555万、イー・モバイルが約449万だった。
ただ、今回の楽天モバイルの600万契約は、MNOとしての契約数だけでなく、NTTドコモとauのネットワークを借りてサービスを提供する楽天モバイル（MVNO）の契約数も含まれる。11月9日の決算説明会では2023年第3四半期の時点で、MVNOの契約数が約40万であることが明らかになっている。楽天モバイル（MVNO）は最盛期に200万超の契約数があったので、この3年間でどれくらいのユーザーがMNOとしての楽天モバイルへの移行したのだろうか。
「釣った魚に餌はやらぬ」だった？
というのはニュース記事的な話で、「みんなのケータイ」的な目線で書くと、結局、楽天モバイルは「釣った魚に餌はやらぬ」だったのね、というのが率直な感想。
一般的に、通信サービスが終了するとき、携帯電話会社は対象ユーザー向けに移行施策を提案し、新しいサービスへの移行を促す。最近だと、筆者は数年前にauの3Gサービス終了に伴い、auのぷりペイド回線（端末はG'zOne Type-X）を4G LTE契約へ移行するよう求められたが、筆者が契約するauの回線数が上限に達していたため、結局、UQモバイルに切り替え、端末は「iPhone SE（第2世代）」を格安で入手できた。
古くはツーカーセルラー東京がKDDI傘下になり、PDC方式の携帯電話サービスを終了するとき、ダイレクトメールが届くだけでなく、自宅にまでKDDI（おそらく委託業者）が訪ねてくるほどの熱心さを見せ、結局、当時のau端末に無償で機種変更ができた。特に良番というわけでもないけど、今でのその電話番号は保持している。数年前にサービスが終了したワイモバイルのPHSも4G LTE契約に移行し、このときも「iPhone SE（第2世代）」を割安で入手できた。
ケータイ全盛の時代と違い、現在は各社共、それほど移行施策に熱心ではないようだけど、新規参入事業者である楽天モバイルとしては、契約数を伸ばすためにもせっかく獲得した楽天モバイル（MVNO）のユーザーを移行させたいはず。だから、楽天モバイル（MVNO）のユーザーに対しても何らかの移行策を提案してくるんじゃないかと予想（期待）し、契約は残しておいた。
ところが、この3年間、楽天モバイルからは具体的に移行を促す提案はなく、年に数回、メールが送られてきて、「Rakuten UN-LIMITを知ってますか？」といったニュアンスのアンケートを求められるのみ。他社のような契約移行のための熱心さは、まったく感じられなかった。楽天モバイルとしては設備投資でコストがかさんでいるため、楽天モバイル（MVNO）のユーザーの移行促進にまで手が回らなかったのかもしれないが、ちょっと肩すかしを食らった印象。うーん。ちょっと期待しすぎだったかな(笑)。
もちろん、余計なことを考えず、MNOとしての楽天モバイルに移行するのも手なんだけど、筆者はすでに楽天モバイルで複数の回線を契約しているので、これ以上、楽天モバイルの回線を増やす必要がないという事情もある。
60歳以上が対象のイオンモバイル「やさしいプラン」
そんなわけで、釣った魚にエサをやらない楽天モバイル（MVNO）に見切りを付け、筆者はMNPで他社に転出することにした。目安としては、楽天モバイル（MVNO）で支払っている月額料金が1763円、MNOの楽天モバイルの最低料金が1078円なので、これらを下回る料金プランが選べること。基本的にはテスト用なので、データ通信量は少なくてもかまわないけど、できれば、今まで契約したことがないMVNOを試してみたいところ。
そんな条件を考えながら、各社のWebページを見て選んだのがイオンモバイル。本誌でもよくニュースで取り上げられているけど、言わずとしれたイオン傘下のMVNOサービス。料金プランのデータ通信量の刻みが細かいのが他社にない特徴だけど、筆者が気になったのは60歳以上が対象の「やさしいプラン」という料金プラン。毎月3GBまで使えて、月額858円だけど、受信時の通信速度は500kbpsに制限されるというサービス仕様。要するに、まだスマートフォンにデビューしていないシニアユーザーをターゲットにした料金プランというわけだ。
筆者のようにすでにスマートフォンを存分に使っているユーザーにとっては、まったく物足りない内容なんだけど、イオンモバイルを一度、契約してみて、シニア向けのプランがどうなっているのかを知りたいという考えもあり、申し込んでみることにした。
今回は楽天モバイル（MVNO）からMNPで移行するが、移行先のイオンモバイルはMNPワンストップサービスには対応していないため、楽天モバイルのメンバーステーション（MNOの「my楽天モバイル」とは別）でMNP予約番号を取得。続いて、イオンモバイルのWebページで、MNP予約番号や有効期限を入力して、申し込みの手続きをする。今回は「イオンモバイルにお乗り換え（MNP）＆AQUOS wish3購入で合計18000WAONポイントプレゼント」という販売施策も提示されていたので、「AQUOS wish3」もいっしょに注文した。
MNPできない？
数日後、イオンモバイルから「AQUOS wish3」が送られてきたんだけど、これが意外に不親切な印象だった。
まず、送られてきた荷物は環境への配慮もあって、再生紙を丸めたものが緩衝材として使われ、その内側に「AQUOS wish3」のパッケージが置いてあった。最近のオンラインショッピングの配送ではごく普通のことなので、梱包はこれでいいんだけど、パッケージを取り出し、緩衝材や配送用の箱を片付けようとすると、一枚の赤い紙が床に落ちた。何だろうと思って、確認してみると、購入した「AQUOS wish3」のためのイオンモバイル発行の保証シールだった。オンラインショッピングでは保証書代わりのシールを使うことがあるけど、緩衝材の再生紙の間に紛れ込んでいたようだ。本来、こうしたシールは端末のパッケージに貼るなり、箱の隙間から入れておくなどの配慮が欲しいところ。「やさしいプラン」って、はじめてのスマートフォンのユーザーをターゲットにしているのに、こんな入れ方じゃ、見落として、そのまま捨ててしまいそうだ。
次に気になったのはSIMカード。送られてきた荷物には、SIMカードが同梱されていなかった。MNPによる申し込みといっしょに端末を購入したのに、端末が送られてきただけで、SIMカードに関する書面も入っていなければ、メールも届いていない。つまり、端末を買って、届いただけという状況。事業者によって、対応はさまざまだけど、通常、端末と回線をセットで購入（契約）すれば、端末とSIMカードはいっしょに送られてくることが多いのに、イオンモバイルはそうではないらしい。本誌読者や筆者のように、何度かMNPを利用したり、オンラインで契約したことがあるユーザーなら、「あとで送ってくるのかな？」と想像できそうだけど、「やさしいプラン」の対象ユーザーが説明文もなく、こんな対応で理解できるのかどうかは、かなり疑問が残る。
続いて、「AQUOS wish3」が届いた翌日。今度は「対象キャンペーン変更のお知らせ」というメールが届いた。メールには
「お申し込み内容に変更がありましたので、キャンペーンを変更させていただきました」
と書かれていて、前述のWAONポイントプレゼントなどのキャンペーンがすべて適用されなくなったとのこと。この時点では正直なところ、「は？なんで？」という印象しかなかったが、もしかすると、申し込み内容に何らかの不備があったのかなとも考えていた。
そして、さらに翌日。つまり、端末が届いてから2日後。ようやく申し込み内容に問題があったことを説明するメールが届く。そのメールには
「ご入力いただいたMNP予約が転入元の通信事業者で確認できなかったため、お申込み手続きが完了できませんでした。誠に恐れ入りますが、転入元の通信事業者の都合によりお乗換え（MNP）のお手続きが正常に完了しなかったため、お客さまのお申込みの一部をキャンセルさせていただきました。せっかくお申込みいただいたのに、申し訳ございません。」
と書かれていた。メールに書かれていたMNP予約番号は、転出元の楽天モバイル（MVNO）で取得した正しい番号だった、何か他の情報に間違いがあったのかもしれない。ただ、その間違いを確認する術はなく、申し込み内容を確認する「お客さまマイページ」もその時点で閲覧できなくなっており、一方的にキャンセルされたような状態。
「お乗換え（MNP）のお手続きが完了しなかったお申込みについては、改めてお申込みをお願いいたします。」
もし、イオンモバイルに申し込むのであれば、もう一度、オンラインなり、店頭で申し込まなければならないんだけど、じゃあ、「AQUOS wish3」をセットで購入した特典などはどうなるのか？ そういった説明はメールに何も書かれていなかった。
MNP予約番号の有効期間は10日以上ないと申し込めない
自分が入力した情報に何か間違いやミスがあったのかもしれないと気を取り直し、もう一度、イオンモバイルのWebページを開き、再び申し込み手続きをはじめた……のだけど、この時点ではすでに申し込みができなくなっていた。
MNPを利用した人なら、ご存知の通り、MNP予約番号には発行日を含め、15日間という有効期限がある。今回はイオンモバイルからのキャンセルを通知するメールが申し込みから4日後だったうえ、イオンモバイルはMNPでの申し込み時、MNP予約番号の有効期限が10日以上というルールがあるため、すでに申し込みができなくなっていたわけだ。
ちなみに、申し込み時にMNP予約番号の有効期限が10日間以上、残っていなければならないというルールは、NTTドコモやau、ソフトバンクなどの携帯電話会社、mineoなどのMVNOでも適用されているほか、BIGLOBE mobileでは12日とさらに厳しく、IIJmioは7日間となっている。事業者によっては有効期限の残りが明記されていないところもあった。
また、もうひとつの方法として、今年5月にスタートした「MNPワンストップ」で移行する手もあるが、対応している通信事業者はNTTドコモ、KDDI及び沖縄セルラー、ソフトバンク、楽天モバイルの各携帯電話会社、日本通信、オプテージ（mineo）のMVNO各社が対応しているのみで、まだまだ選択肢は少ない。
しかし、よく考えてみると、総務省は事業者間の乗り換え（MNP）を促進するため、端末販売の割引や料金プランにあれこれ口出ししてくるけど、そもそもの話として、MNP予約番号の有効期限を30日くらいまで延ばしたり、MNP予約番号の再取得しやすくしたり、MNPワンストップ制度を義務化するなど、もっと根本的なところに手を入れるべきなのでは？ > 総務省と有識者会議のみなさん
さて、どうしたものか
ということで、結局、イオンモバイルには再申し込みができなかったため、改めて今回の件について、イオンモバイルのサポート窓口に電話で確認をしてみた。
まず、なぜ、キャンセルされたのかという点については、「MNPの手続きが完了しなかったから」と答えるのみで、なかなか理由を教えてくれなかった。対応したオペレーターさんに何とか食い下がり(笑)、ようやく聞き出したのは、筆者が申し込んだ電話番号がタイプミスで、ひとつ間違っていたことが原因だった。ただ、それを修正する手続きは提供されず、自動的にキャンセルしたのは、イオンモバイルとして、通常の対応だったとのこと。ちなみに、MNP予約番号が間違っていた場合も同様の対応になるという。
また、端末購入と回線契約をセットで申し込んだのに、MNPによる移行ができず、端末だけを購入した形になった件については、再申し込みをすれば、セットで購入した形として処理され、WAONポイントなどのキャンペーンは適用されるという。ただし、これもメールではまったく説明がなく、サポート窓口で質問しなければ、得られなかった回答。イオンモバイルは「やさしいプラン」をシニアやシルバー向けに展開しているが、少なくとも最初のタッチポイントの段階で、これだけの説明不足や不親切さが垣間見えてしまうと、かなり不安が残る。これでシニアやシルバー層の人が安心して契約できるんでしょうか？できることなら、申し込み時のオペレーションや説明、案内などを見直していただき、本当の意味で「やさしいプラン」になることを期待したい。
そして、最終的に失敗した楽天モバイル（MVNO）からのMNPをどうするか。MNP予約番号の有効期限を延ばすため、番号を再取得するべく、楽天モバイル（MVNO）のメンバーズステーションからフォームで問い合わせたところ、「MNP予約番号の再取得はできません。有効期限が切れてから、もう一度、取得してください」という回答が返ってきた。しかもMNP予約番号が発行されている間は、楽天モバイルの「Rakuten最強プラン」への移行手続きもできないため、とにかく何をするにもMNP予約番号の有効期限が切れるのを待つしかない。あー、めんどくさ。
まあ、元はと言えば、自分が申し込み時に電話番号をタイプミスしたのがダメなんだけど、MNP開始から17年も経ってるのに、こんな不親切なシステムで、ユーザーがスムーズにMNPで事業者を移行できるんですかね？ > 総務省と有識者会議のみなさん
