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超高速通信を安価で使える「Ubigi」のアメリカ向けプラン

 アップルの「WWDC 2023」を取材するため、米国カリフォルニア州のクパチーノに来ている。今回、iPhone用の回線として選んだのが、NTTグループの企業でフランスに拠点を構えるTransatelの「Ubigi」というサービス。ソフトバンクの「データ通信専用3GBプラン」で「アメリカ放題」にする手もあったが、SIMフリー端末用のSIMカードでiPhoneでの利用には制約があり、別途eSIMを調達することにした。

海外用のeSIMとして選んだのは、NTT傘下の仏Transatelが展開するUbigi。イベント会場の本社でも、これだけのスピードが出た

 Ubigiを選んだのはもともとアカウントがあり、歴代iPhoneにプロファイルを引き継いでいたことで簡単にチャージができたため。渡米時に利用する機会が多かったAiraloより、10GBプランの料金が安かったのも、Ubigiを選んだ理由のひとつだ。以前はドル建てで請求されていた料金は、いつの間にか円建てに。最終支払い額がいくらになるのか分かりやすくなった点も、評価できる。

 アカウントの作成やプロファイルのダウンロードは、専用アプリから行う。Ubigiは、プランを購入していない状態でもこのアプリを開くことが可能。データ容量を使い切っても、その端末だけで追加の購入ができるのは地味に便利だ。今回は、すでにアカウントの作成やプロファイルのインストールは済んでいたため、アプリでプランを選択するのみ。米国向けプランの料金は、30日間有効な10GBプランが2700円だった。滞在期間にもよるが、4、5日なら大手キャリアのローミングよりやや安い。

もともとeSIMのプロファイルはダウンロードしていたため、必要なプランを選ぶだけ。支払いもApple Payで簡単にできる

 日本にいる間にプランを購入し、準備は完了。支払いもApple Payが利用でき、クレジットカードの情報登録も不要だった。米国到着後にフライトモードをオフにしたところ、すぐにネットワークにつながり、通信ができるようになった。面白いのが、「データローミング」をオフにしたまま接続が可能だったこと。本来の国際ローミングならこの項目をオンにしなければならないはずだが、現地キャリアと同じような設定でつながってしまった。

 iPhoneは「設定」の「モバイル通信」→「プロファイルの名称(ここではUbigiに設定)」→「ネットワーク選択」を選ぶと接続するキャリアを選択できる。国際ローミングが複数のキャリアに対応している場合、ここで接続先を切り替えることも可能だ。たとえば、ドコモでローミングしている時なら、北米はVerizonやAT&Tを選んでもいいし、T-Mobileに接続してもいい。

米国では、ローミングなしで設定でき、接続先もUbigiになっていた

 ところが、Ubigiは、この接続先そのものが「Ubigi」になっていて、どこのキャリアの電波をつかんでいるのかが分からなかった。アンテナピクトに表示されている文字も「Ubigi」だ(通常はローミング先のキャリアが表示される)。データローミングの設定が不要で、かつ接続先がUbigiになっていたのは、ローミングではなく、米国で直接MVNOとしてサービスを提供していると考えれば辻褄があう。推測だが、単なるローミングサービスとは異なるようだ。

 実際にどのMNOをつかんでいるのかを確認するため、iPhoneのフィールドテストモードを立ち上げてみた。キャリアの識別番号であるPLMNは「310 260」。調べてみたところ、これはT-Mobileに割り当てられているPLMNだった。T-Mobileは比較的低い周波数で5Gのエリアを構築していたこともあり、エリアは広い。滞在中は、取材先とホテルをほぼ往復するような状態だったが、ほとんどの場所で5Gが利用できた。

フィールドテストモードを展開。PLMNから、T-Mobileの電波をつかんでいることが分かる

 しかも速度が速い。WWDCの会場に向かう間、速度を測ったら移動中にも関わらず700Mbps超を記録。遅い時でも300Mbps超と、安定して高い速度を記録していた。WWDCはアップル社内で開催されたが、イベントで混み合っていたにも関わらず、700Mbps超を叩き出した。パケ詰まりが起こることもなく、Webサイトの表示もサクサクだった。思わずスピードテストしすぎて単体でデータ容量を数GB使ってしまったほどだ(笑)。

移動中でも、混雑した場所でも700Mbpsを超えていた。さすがにどこでもこの速度とはいかないが、通信が遅いと感じることはほとんどなかった

 こうした体験と比べると、まだまだ日本の5Gは拡大の余地があるように思える。特に筆者がメイン回線にしているドコモは、一部都心部でのパケ詰まり現象が依然として解消されていない。ネットワークの速度は、ユーザーエクスペリエンスにも直結するだけに、今後の改善に期待したいところだ。