DATAで見るケータイ業界

昨年もモバイル業界の台風の目となった楽天モバイル、今年の注目ポイントは

 2022年のモバイル業界において、楽天モバイルの「0円プラン撤廃」は最大級のトピックスと言っても過言ではないだろう。無料プランを享受してきた利用者の一部がサブブランドやMVNOへと流れたことは記憶に新しい。

新プランの発表以降続く契約数の減少、実質的な課金開始で反転なるか

 楽天モバイルの契約純増数の推移をみると、2022年3月までは、四半期単位で50万前後、多いときには100万超の契約数を順調に積み上げてきたことが分かる。

 ところが、新プラン「Rakuten UN-LIMIT VII」を発表した2022年5月以降、状況は一変する。4~6月期は14万、7~9月期は22万、それぞれ契約数が減少している。

 新プランの導入により、2022年9月からは既存の(月1GB以下の)利用者に対しても課金がはじまったが、10月末までの2カ月間は料金相当額のポイント還元が行われていた。そのため、実質的な課金開始は11月からとなる。

 無料期間をギリギリまで享受して、10月末に駆け込み解約した利用者も一定数いるとみられ、10~12月期に契約数がどこまで回復するかが1つの注目ポイントだ。

楽天モバイルの正式サービス開始は「楽天経済圏」に一定の効果も、膨らむ赤字額

 楽天側からは「楽天モバイルの利用者は、楽天市場や楽天カードなど、グループ各社のサービスを利用し楽天経済圏に大きく貢献している」との説明がよく行われているが、実際のところ、どのような状況なのだろうか。

 そこで、国内EC事業とフィンテック(金融)事業の営業利益の前年同期比増減を整理したのが下のグラフだ。

 楽天モバイルのサービス正式開始前、2019年の時点では、国内EC事業の営業利益は前年割れの状況だった。ところが、2020年以降はプラスに転じており、楽天モバイルが正式にサービスを開始した時期と重なっている。

 もちろん、日本国内における新型コロナウイルス感染症の流行を受け、巣ごもり需要が拡大したタイミングでもあり、その貢献度を推し量るのは困難だが、一定の効果があったように見受けられる。

 とはいえ、楽天モバイルに対する巨額投資を埋めるほどの効果かと言われると、力不足であることは間違いない。

 楽天グループ全体の営業利益を、「モバイル」と「その他」の2つに分けてみると、モバイルへの先行投資がかさみ赤字額が膨らんでいる状況が見て取れる。

 モバイルセグメントの赤字額は、2022年1~3月期をピークに減少しているものの、四半期単位で1000億円超の状況が続いている。

 同社は2023年中の黒字化を目標に掲げ、契約者数・ARPUの拡大とコスト削減のいずれもを追う計画だが、残り1年でどのような対策を打ち出すのだろうか。その動向が今年最大の注目ポイントと言えるだろう。

IT専門の調査・コンサルティング会社として、1993年に設立。 主に「個別プロジェクトの受託」「調査レポート」「コンサルティング」サービスを展開。 所属アナリストとの意見交換も無償で随時受け付けている。 https://www.mca.co.jp/company/analyst/analystinfo/