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楽天モバイルの法人参入による市場への影響(1)

 楽天モバイルが1月より法人向けの新料金プラン「楽天モバイル法人プラン」の提供を開始した。今回は、楽天モバイルの法人参入による同市場への影響について2回に分けて考察していきたい。

 楽天モバイルの法人プランは、データ容量に応じて3つのプランがデータ容量3GBで月額2178円、5GBで月額2618円、30GBで月額3058円の3プランとなっている。楽天回線のエリア外ではパートナー回線の利用となるが、そのデータ容量は1GBと5GBのプランが2GB、30GBのプランでは5GBとなっている。また、海外での月間データ容量は、それぞれ1GB、1.5GB、2GBだ。

 音声に関しては、「Rakuten Link」の法人向けアプリ「Rakuten Link Office」が提供される。国内は固定電話を含む通話とSMSを、海外では国内への通話とSMSを無料で利用できる。「楽天モバイル法人プラン」は2022年7月から先行して約400社に提供されており、今後、楽天モバイルの法人電話窓口、申込み受付ページや楽天モバイルショップでの申し込みが行われるという。

 今回の楽天モバイルの法人プラン発表を受け、競合他社の法人プランと比較してみたのが、下の図である。

携帯各社の法人向け「標準プラン」
出典:各社公表資料をもとにMCA作成

 楽天モバイルの料金プランは、「Rakuten Link Office」による通話無料分も含まれているのに対し、他の携帯会社のプランはデータ通信のみのプランであり、別途、音声プランに加入する必要がある。

 先行して提供していた同社MVNOプラン(昨年11月に新規申し込みを終了)との比較では3GBと5GBではMVNOプランが安価な一方で、30GBではMNOが半額以上と大幅に安価となっている。単純な価格だけによる競合他社との比較では、格安SIMのUQ mobileとワイモバイルの安さが突き抜けているが、音声とのセットでは楽天モバイルも十分に対抗できるレベルとなっている。

 なお、同じ格安SIMということではNTTドコモのahamoがあるが、現時点で法人契約は受け付けていない。

 携帯大手3社の料金プランを見るとわかるが、いずれもコンシューマー向けに提供している料金プランを法人向けに提供している。この背景には、これまで携帯会社の主戦場はコンシューマ市場であり、あらゆる社内システムがコンシューマーをベースに構築されている点が大きいとされる。その意味で、今回楽天モバイルがコンシューマー向けの「UN-LIMIT VII」ではなく法人向けに専用プランを投入してきたことはひとつのトピックだろうし、法人に無制限に利用されたら回線がパンクするという懸念もあったからではないかと邪推する。

 いずれにしても、楽天モバイルの法人参入については、当初から噂されてきて、やっと発表されたわけだが、問題はどのくらい契約数増加に貢献できるかだろう。今回の法人プランは、楽天市場の出店者向けには一定の効果はあるかもしれないが、その内容から、それ以外の法人が他社の契約を解約してまで楽天に加入するのか、正直、踏み込みが甘いような印象も受ける。

 次回は、法人市場における携帯会社の「標準プラン」の位置付けから、「楽天モバイルの法人プラン」ついて考えていきたい。

IT専門の調査・コンサルティング会社として、1993年に設立。 主に「個別プロジェクトの受託」「調査レポート」「コンサルティング」サービスを展開。 所属アナリストとの意見交換も無償で随時受け付けている。 https://www.mca.co.jp/company/analyst/analystinfo/