DATAで見るケータイ業界

契約数とARPUのトレンドから、ドコモ・KDDI・ソフトバンク大手3社の状況を整理する

 当時の菅政権からの要請もあって、通信キャリア各社が安価なオンライン専用プランを投入したのは2021年春のことだ。消費者は値下げの恩恵を享受しているが、通信キャリアの通信料収入は大幅減に見舞われている。

料金値下げ影響は一巡?回線系ARPUの下げ止まりに期待感

 各社が開示するARPU(1契約あたりの収入)のうち、通信料収入が基準となっている「回線系ARPU」の直近の値(2022年度第2四半期)を見てみると、NTTドコモが4080円、KDDIが3980円(通信障害に対する返金影響60円を除く)、ソフトバンクが3880円だった。

 2020年度以降の状況をまとめたグラフから一目瞭然だが、各社とも直近は文字通り「右肩下がり」の状況が続いてきた。

 ところが、2022年度第2四半期は、NTTドコモとKDDIが、前期比でプラスに転じており、料金値下げ影響が一巡した可能性が出てきた。

契約数は堅調に推移

 ARPUは厳しい状況からようやく抜け出せるかどうか、という段階だが、一方で各社とも契約数は堅調に積み増している。

 各社の契約数のうち、機器に組み込まれる通信モジュールなどを除外し、スマホ向け契約などに絞り込んだ「モジュール等除外ベース」の動きをみると、NTTドコモとソフトバンクは四半期毎に安定的に純増を記録している。特にNTTドコモは、21年前半まで、四半期で20万程度の純減が定期的に繰り返されてきたが、直近はプラス圏を維持している。

 KDDIは、昨年3月の3G停波や、7月の大規模通信障害の影響で動きは鈍いものの、他2社同様、ゆるやかながら上昇基調を描いているように見受けられる。

2023年は「契約数も単価も、ともに増える」環境へと回復できるか?

 これまで、ARPUと契約数の直近の状況を整理してきたが、最後に2つの数値のトレンドを1つのグラフに整理してみたい。

 上のグラフは、各社の契約数と回線系ARPU、それぞれの前年同期比増減について、2021年度以降の推移をプロットしたものである。

 四象限で整理すると、直近の2022年度第2四半期(●印の部分)は「契約数増・ARPU減」というカテゴリーに全社揃って収まっており、またいずれも右上へと推移している。これは、契約数・ARPUともに回復していることを示している。

 とはいえ、各社の軌跡は大きく異なっている。NTTドコモとKDDIは、21年度第1四半期の時点では契約数が前年割れの厳しい状況だったが、そこから脱して増加に転じている。ソフトバンクは、純増の勢いが一時的に弱まったものの、直近では反転し復活しつつある。

 今年は、契約数の増加を維持しながら、ARPUも増加に転じ「契約数も単価も、ともに増える」環境を回復できるかが大きな焦点と言えそうだ。

IT専門の調査・コンサルティング会社として、1993年に設立。 主に「個別プロジェクトの受託」「調査レポート」「コンサルティング」サービスを展開。 所属アナリストとの意見交換も無償で随時受け付けている。 https://www.mca.co.jp/company/analyst/analystinfo/