ケータイ用語の基礎知識
第756回:災害協定 とは
(2016/5/18 12:02)
国・自治体・インフラ企業の協定
大地震や、台風による水害などの災害はいつ起こるかわからず、その対策には事前からの準備や訓練などが重要です。そして国民や行政、公共機関も含めて体系化された災害対策を準備するためには、裏付けとなる法律が必要です。日本では1961年、「災害対策基本法」が制定され、中央防災会議を中心として、国や地方自治体などが防災関連のプランを作り、お互いに協力する、ということが定められています。
「災害対策基本法」では、警察、消防などのほか、日本各地にある総務省の機関である総合通信局などが“指定行政機関”とされています。また“指定公共機関”には、日本赤十字社のような組織のほか、NHK、JR、成田空港や関西空港、運送会社、ガス会社、電力会社が含まれます。こうした指定公共機関のひとつとして、実は携帯電話会社のNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクが含まれています。いわゆるインフラに関わるこれらの存在は、民間企業とはいえ、中央防災会議の定める防災基本計画に基づいて、防災業務計画を作り、実行する義務があります。
これらの組織がお互いに連携して活動できるよう、災害時を想定した取り決めがあります。その取り決めは「災害時相互協力協定」、「災害協定」と呼ばれています。
協定を結ぶ存在としては、地方自治体もあります。たとえば、都道府県レベルでは、愛媛県がNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクと衛星携帯電話や携帯電話を、県を通じて被災地の自治体に貸し出せる内容の災害協定を結んでいます。また東京の多摩市とKDDIとの間では、防災行政無線が利用できなくなった場合、KDDI多摩テクニカルセンターから衛星携帯電話の貸与協力を受ける、といった取り決めがあります。
携帯電話大手3社と自衛隊・海上保安庁の「災害協定」
実際に携帯電話事業者が、「災害対策基本法」の定める指定行政機関や指定地方行政機関と災害協定を結んだことについては、過去に本誌でも多く記事になっています。
たとえば防衛省との間では。2011年にNTTドコモが、2013年にKDDIが、2014年にソフトバンクがそれぞれ「災害時相互協力協定」「災害協定」を締結しました。災害時に最も活動する陸上自衛隊とは、日本全国をカバーする5つの方面隊ともそれぞれ防衛省との協定(中央協定)に準拠した「災害時相互協力協定」「災害協定」を締結しています。
こうした協定では、現地の状況などの条件が許す範囲で、自衛隊のヘリコプターを使って可搬型基地局を運べるようになっています。被災地でのサービスエリアの復旧をすばやく行えるようになるわけです。自衛隊側も大規模災害の発生時には、通信手段として各社の携帯電話や衛星携帯電話を優先的に借り受けられるようになっています。
防衛省や自衛隊だけでなく、海上保安庁とも携帯大手3社は災害協定を締結しています。窓口を設けてスムーズに協力できるようにするほか、各社からの携帯電話の貸出、あるいは被災地でスムーズにサービスエリアを復旧できるよう、海上保安庁が必要な物資・スタッフの輸送を行うといった取り決めになっています。