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KDDIと自衛隊 中部方面隊が災害協定を締結

 KDDIと陸上自衛隊 中部方面隊は、災害発生時の通信インフラ復旧などで相互に連携する災害協定を締結した。10日には陸上自衛隊 中部方面隊の伊丹駐屯地で協定の締結式が行われた。

陸上自衛隊 中部方面総監部 防衛部長 1等陸佐の滝澤博文氏(中央右)と、KDDI 関西総支社長の長尾毅氏(中央左)

 KDDIと陸上自衛隊はすでに、東北を担当する東北方面隊、北海道を担当する北部方面隊と災害協定を締結しているほか、防衛省とも包括的な協定を結んでいる。今回は、北陸や中部、関西、中国、四国地方など2府19県を担当する中部方面隊との締結。KDDIによれば、2013年度中には九州を担当する西部方面隊、関東を担当する東部方面隊とも協定を締結する予定。

 中部方面隊との相互連携の対象になる地域では、南海トラフ巨大地震の発生が想定されており、首都圏で想定される直下型地震とは異なり、津波の影響や対策が大きな問題として設定されているのが特徴。そのほか、停電への対策や復旧の方策は概ね全国で共通しているが、自衛隊との連携により、KDDIによる通信手段の提供、自衛隊による物資搬送など、相互に支援を行う。具体的な協定を締結することで、窓口を明確化するほか、地域ごとにより具体的な連携方法を確立させていくことになる。なお、同様の協定は、NTTドコモと自衛隊の間でも締結されている。

 10日に開催された締結式では、陸上自衛隊 中部方面総監部 防衛部長 1等陸佐の滝澤博文氏と、KDDI 関西総支社長の長尾毅氏が締結書に署名。伊丹駐屯地では今後、KDDIと合同訓練などを実施していく予定。

締結書に署名する様子
締結後に握手

津波など南海トラフ地震を想定した対策、自衛隊連携は全国に拡大

 KDDIによれば、KDDIは三陸沖地震の発生を受けて、まず2010年に、東北地方を担当する東北方面隊と災害協定(地域協定)を締結。その後、防衛省と包括的な災害協定を中央協定として締結するなどして、協定を全国に拡大。2013年度中には全国の陸上自衛隊すべてと相互連携体制が確立する予定になっている。

 災害協定を締結したことで、地震などの大規模災害発生時、KDDIからは同社が情報提供や通信機材の貸し出しを迅速に行う。また、通信インフラの復旧の段階では物資輸送などを自衛隊が支援し、通信エリアの復旧を支援する。

 なお、陸上自衛隊 中部方面隊ではKDDI以外にもNTTドコモやNEXCO中日本など、複数の企業と災害協定を締結している。自衛隊の活動は、こうした協力企業から提供された情報を集約し、局面に応じて判断していくという体制になっている。

 KDDIでは2014年2月に、九州地方を担当する西部方面隊と合同訓練を実施し、双発の大型輸送ヘリに車両ごと機材を搬入したり、搬出して機材を展開したりするなどの、具体的な訓練も行っている。

 また、南海トラフ巨大地震の発生では和歌山県などを中心に、沿岸地域で集落が孤立する可能性が高いと指摘されており、こうした地域への対策として、海上保安庁の船舶に衛星通信対応の基地局を搭載する実証実験が行われている。こちらは法制度面からも整備が必要で、2014年度中に実用化を目指している。

 KDDIでは具体的な取り組みとして、東日本大震災の発生時には全国で55台だった発動発電機の保有を増やし、今年度中に250台を全国に配備する。現在は全国10カ所の地点に、移動基地局車(車載型基地局)が合計20台、可搬型基地局が合計全27台配備されている。移動基地局車は毎年1台ずつ増やし、可搬型基地局も増加させていく方針。大ゾーン基地局も災害対策の一環で、KDDIではLTE対応の大ゾーン基地局を構築しているのも特徴。

 加えて、東日本大震災のように停電が長期化したケースからの教訓として、発電機などを動かす燃料の備蓄や移動手段も拡充し、石油メーカーとの間で、災害発生時に優先して購入できる契約も締結している。災害発生時に各自の判断で行動を開始できるようにもなっており、実際に東日本大震災の発生翌日には、金沢で2万リットルの石油を契約し東北に向かって出発した事例もあったとのこと。被災地では物資の入手そのものが困難であることも多く、こうした各種の支援体制は、被災地の周辺で体制が整っていることが重要になるとしている。

太田 亮三