ケータイ用語の基礎知識

第757回:初期契約解除 とは

「電波の入りが悪い」で契約解除できる

 5月21日に施行された「電気通信事業法等の一部を改正する法律」と、それに伴う省令・告示・ガイドラインの改訂などで、電気通信事業法やガイドラインで定められた携帯電話に関するいくつかのルールが変わったり、新たに追加されたりしました。

 そのうちのひとつが携帯電話の販売に関するものです。携帯電話・スマートフォンや、宅内向けの光回線の営業では、これまで熾烈な競争を反映してか、業者の強引な勧誘や、説明不足、複雑すぎる解約の条件などなど、ユーザーが不利になるようなトラブルが発生しがちでした。

 今回の法改正・ガイドライン改訂では消費者保護の観点から、これらの法律やガイドラインにこれまでもあった事業者や代理店に向けの規定がさらに強化されています。たとえば契約後の書面交付の義務付け、そして初期契約解除制度です。

 今回紹介する「初期契約解除制度」とは、いわば通信サービスにおける“クーリング・オフ”です。たとえば携帯電話などの契約に関する書面を受け取ってから8日以内であれば、携帯電話会社の合意がなくても、回線契約を解除できるというものです。

 5月21日以降、「初期契約解除制度」または「確認措置」(認定を受けた事業者の代替的取り組み)の対象となる携帯電話やスマートフォン、モバイルルーターなどの契約では、書面にこれらの制度の対象と記載されるようになります。たとえば携帯電話を契約してから帰宅してみると、自宅ではその携帯電話会社の電波が届きにくいことがわかったり、販売時の説明が不十分だったりするなど、事業者側に一定の責任がある場合には、携帯電話の回線・端末ともに契約を解除することが可能になります。

 先述したように、クーリング・オフ制度と似た制度ですが、携帯電話の初期契約解除制度では、携帯電話ショップといった店舗での契約にも対応できるように販売形態によらず解除が可能になっていたり、一定範囲であれば事業者が契約解除に伴う支払いを請求できる点などが異なります。

 なお、初期契約解除の対象となるのは、プリペイド契約以外の大手携帯電話会社(MNO)の携帯電話サービス、格安SIMなどで知られるMVNOのモバイルデータ通信専用サービス(期間拘束あり)となっています。

解除方法

 初期契約解除制度によって、スマートフォンやタブレットといった端末を購入し、回線契約もしたものの、自宅では電波の入りが悪く正常にサービスを利用できないといった場合、端末を返品して回線を解除できるようになりました。では実際に利用する際には、どういう手続きになるのでしょうか。

 2016年5月21日現在、通信事業者からは初期契約解除制度での解約申し込み方法などはアナウンスされていません。一方、事業者の発行する契約書面には解除手続きの方法として「8日以内に購入時と同一の状態で端末を返品する」といった内容が記載されています。

 法律やガイドラインに規定された解除の方法としては、ハガキなどの書面で契約解除が可能で、解除の効力は書面を郵送したときに発生することとなっています。つまり、初期契約解除について記載された書面を受け取った日から8日以内に、氏名・住所、契約サービス内容と、初期契約解除を利用したいと記した書面を郵送すればよいわけです。

 なお、事業者がユーザーに請求できる料金としては、契約解除までに使用した通信料や事務手数料などが指定されていますので、これらは契約解除した場合でも支払うことになります。この具体的な額の算出方法も、契約書面への記載が義務付けられています。

 ただし、初期契約解除制度は、ガイドラインでは、「民事的規律であり、個別事例において事業者に違反があった場合は、業務改善命令など行政機関の介入はされない」とされています。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)