ケータイ用語の基礎知識

第610回:H.265 HEVCとは

 「H.265」とは、次世代の動画圧縮規格の1つで、「HEVC」とも呼ばれます。HEVCは、高効率ビデオコーディングを意味するHigh Efficiency Video Codingの略です。

 現在、よく利用される動画規格「H.264/MPEG-4 AVC」の後継規格として、国際標準化機構ISO/IECのMPEGと、国際電気通信連合の部門の1つで通信分野の標準策定を担当する電気通信標準化部門「ITU-T」のVCEGによるビデオコーディングの共同研究開発チーム(JCT-VC)によって提案され、2013年1月には、ITU-Tが標準「ISO/IEC 23008-2」として承認しました。ITUでは、この「H.265 HEVC」が“次の10年をサポートする規格”だとしています。

 H.265 HEVCは、MPEG-2と比べて約4倍、H.264/AVCと比較しても約2倍の圧縮性能を有するとされています。「H.265 HEVC」と「H.264/AVC」の2つの規格の間にある技術的な差異としては、

  • ブロックサイズの拡大
  • 画面内予測の改善
  • 動画画質のさらなる改善

の3つが挙げられます。

 簡単に言えば、映像内のある部分(ブロック)のサイズや、そのブロックが次のコマでどう動くかといったあたりで改善され、より最適な圧縮が可能になっているのです。

モバイル向けサービスがより便利に

 現在、YouTubeやHuluといった動画配信サイトを始めとして、さまざまな動画配信サービス、あるいは動画を撮影する機器で「H.264/MPEG-4 AVC」が使われています。今後、「H.265 HEVC」へ置き換わっていくことで、画質の向上、より高精細での配信など、さまざまなメリットが出てきます。

 また「H265 HEVC」は、フルHD、4K、8Kスーパーハイビジョンなど高解像度な映像だけでなく携帯端末向けの映像配信での利用も想定されています。NTTドコモでは「H265 HEVC」の復号ソフトウェアのライセンス提供を行っています。復号とは、圧縮された動画をモバイル機器やパソコン上で元に戻すという意味です。

 ドコモによれば「H.265 HEVC」を使用することで、解像度が800×480ドット、コマ数が毎秒30フレーム(30fps)という動画であれば、800kbpsという通信速度で提供できるとしています。またフルHDで30fpsの画像なら2000kbps、4K動画で30fpsでも10000kbpsで配信可能であるとしています。また、このH.265 HEVCはアニメに対する効果はさらに高く、200kbps程度でもWVGA、毎秒24フレームの画像が送信できるとしています。

 通信事業者にとっては、従来よりも伝送帯域の効率的な利用、急増する動画トラフィックの緩和につながります。一方、ユーザーにとっては、再生までの待ち時間短縮や、動画途切れの頻度軽減などより快適な動画視聴につながる技術規格であるといっていいでしょう。ドコモでは、復号ソフトを国内外のベンダーやソフトウェア開発会社にライセンス提供することで、HEVCの導入を促進させたい考えです。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)