ケータイ用語の基礎知識

第609回:フリーミアム とは

 フリーミアムとは、基本的なサービスや製品を無料で提供し、まず多くの顧客を集めておき、さらに高度な機能や特別な機能について料金を課金することで収益をあげるビジネスモデルのことです。

 英語では「Freemium」と書きます。無料を意味する「Free」と、割り増しを意味する「Premium」から作られた造語です。米国のベンチャーキャピタリスト、フレッド・ウィルソンが2006年に自身のブログを通じて提唱したのが、この用語の使われるようになった始まりです。その後、フリーミアムを解説する書籍が発行され、一時期、その書籍自体がネット上で無料公開され、ベストセラーにもなりました。

 フリーミアムとは、簡単に言えば無料ビジネスのひとつで、古くからあるマーケティング手法の一つですが、特にインターネット上などで展開されるデジタルデータに関して言及されることが多い用語です。従来の物質的な「モノ」での無料ビジネスとは根本的に異なる点は、デジタルなデータでは、インターネットを使えば配布するためのコストが非常に小さくて済むということが挙げられます。

 たとえば、古くからある無料ビジネスの例として、食品などを試供品で提供する場合、そのコストについて考えてみると、その食品を作るためのコストがかかるのは当然として、配布するためには物流や人員などのコストがかかります。しかし、インターネットでは、ユーザーがそのコンテンツの存在にさえ気づいてくれれば、コピーにかかる費用は基本的に回線費用だけですから、普段から定額でインターネットを利用しているユーザーにしてみても、また同様に提供者にとってもゼロに近いものになります。

 そのため無料サービスや無料製品の提供コストが非常に小さい、あるいは無視できるくらいであるため、Webサービスや、ソフトウェア、コンテンツのような無形のデジタル提供物と、フリーミアムとは親和性が非常に高いのです。

 また、フリーミアムとは、無料のサービスまたは商品で大量の集客を果たし、その上で、追加のサービスや商品の購入へ誘導することで、無料のサービスの経費を補完し、利益を確保する手法です。無料のサービス自体が魅力的で、利用や導入がしやすいことや、有料と無料の境目が明確で有料のサービスの優位性がはっきりしていることなどが必要条件であるといえます。

 そのため有料ユーザーの比率を高めることよりも、まずはユーザーの裾野を広げ、絶対数(母数)を多くすることが有効であるとされています。無料のサービス利用者を増やせば、有料サービスに移る絶対数も増えるから、というのがその理由です。

 提供された有料サービスに対する無料サービスの比率は、フリーミアム・レートと呼ばれます。インターネット上では、利用者の95%が無料ユーザーであっても5%の有料ユーザーがいればビジネスは成立する「5%ルール」として知られています。

ソーシャルゲームのビジネスモデルの根幹

 携帯電話を始めとした端末で遊べる「ソーシャルゲーム」の多くのビジネスモデルの根幹をなすのも、このフリーミアムという仕組みです。

 かつては月額料金を徴収するのが一般的でしたが、現在では「アイテム課金」のソーシャルゲームが主流となっています。

 多くのソーシャルゲームでは、基本料金を無料としてユーザーを集め、ゲームプレイが有利になるアイテムや、入手困難なレアアイテム、アバター用の特殊なコスチュームなどの特殊アイテムに対して課金を行う「アイテム課金」というシステムを採用しています。

 ゲームのプログラムやデータなどは、デジタルデータが複製にコストが非常に少ないことから、特にこのようなフリーミアムモデルに向いているといえるでしょう。

 なお、英語圏のオンラインゲームで、基本プレイ無料のコンテンツのことを「F2P」(Free to Play)といいます。これもフリーミアムの一種です。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)