ケータイ用語の基礎知識

第981回:なんかケータイ料金が1円増えた? 耳が聞こえなくても声が出なくても電話を使える「電話リレーサービス」とは

 携帯電話の請求書に「電話リレーサービス料」という見慣れない言葉が並んでいるのを疑問に思った人もいるかもしれません。

 「そんなサービス使ってないよ!」と思うかもしれませんが、これは耳が不自由な人などでも電話を安心して使える公的サービスのための料金なのです。

 では、それはどんなサービスなのでしょうか。詳細を本稿で詳しく解説していきます。

聴覚障害者と健常者・緊急通報をオペレータ通訳電話で結ぶサービス

 電話リレーサービスとは、聴覚や発話に困難のある人(以下「聴覚障害者」)と聴覚障害者以外の人との会話を、通訳オペレータが手話・文字と音声を通訳することにより電話で双方向につなぐサービスです。

電話リレーサービス(総務省資料より)

 聴覚障害者の人は手話やチャットでネット回線などを通じて「電話リレーサービス提供機関」の通訳オペレーターに意思を伝えます。通訳オペレーターは、それを耳が聞こえる人の一般の電話に、あるいは警察や消防といった緊急通報受理機関に、声で伝え、その逆も行い、聴覚障害者とそれ以外の人・緊急通報受理機関が双方向に電話でコミュニケーションが取れるように仲立ちを行います。

 このような電話リレーサービスは、国内でも過去、民間事業者によってサービス提供が行われました。が、そのほとんどがユーザー数の伸び悩みなどの理由により、数年で停止に追い込まれており、普及しているとは言えない状況が続いていました。

 しかし、2020年12月に「聴覚障害者等による電話の利用の円滑化に関する法律」施行、2021年7月から、公的サービスとして開始されました。

 日本の法律「障害者基本法」では、下記の項目について国、地方公共団体に義務を課すとともに、事業者等に対して努力義務を課しています。

1.雇用の促進等(第19条)
2.公共的施設のバリアフリー化(第21条)
3.情報の利用におけるバリアフリー化等(第22条)

 今回開始された、公的サービス「電話リレーサービス」は、上記の3に関して国が法制化の措置を講じたものだと言えるでしょう。

 なお、電話リレーサービス提供機関として「一般財団法人日本財団電話リレーサービス」が、総務大臣に指名され提供しています。

聴覚障害を持つ人へこんなサービスが提供されるようになりました

 このサービスでは、聴覚障害、音声・言語機能障害を有している人、または対象者が所属している法人がサービス利用者として登録できます。

 登録した障害者はスマートフォンの専用のアプリを使い、かけたい相手の電話番号を押して、それから出てきたオペレーターに手話やチャットで話したい内容を伝えます。

 登録者には専用の「050」で始まる電話番号が割り当てられるので、その番号にかければ一般の電話の利用者がリレーサービスの通訳オペレーターを介して、障害者と電話でコミュニケーションを取ることも可能です。

 このサービスのほかの特徴としては、健常者が電話をいつでも使えるのと同様に、24時間・365日利用が可能というところです。フリーダイヤル・緊急通報(110番や119番)もかけられます。

 また、利用料金も、耳の聞こえる人の電話料金と同等程度を課しています。

「月額料あり」プラン
月額料金1番号あたり 178.2円/月
対固定電話5.5円/分
対携帯電話33 円/分
「月額料なし」プラン
通話料金 固定電話  16.5円/分
対携帯電話着44円/分

 2021年7月現在では、上記のようになっています。なお、緊急通報やフリーダイヤルにかける場合は、通話料は無料です。

公的サービスとなり、交付金制度の創設などが制度化

 これまで民間サービスで行われてきた「電話リレーサービス」が公共サービスとして整備されることになったことで、変わったことがあります。

7月のある携帯電話の利用内訳。「電話リレーサービス料」として1円が計上されている。

 電話リレーサービスが民間で行われていた時代、費用は利用者(つまり聴覚障害者)が負担していたわけですが、公的制度となった際に「交付金」制度を創設し電話提供事業者に負担金の納付を義務付け、費用を広く電話の利用者から徴収することにしたことです。

 具体的には、固定電話・携帯電話といった電話サービスを提供する事業者が、支援機関である電気通信事業者協会へ負担金を納付し、支援機関が、それを交付金としてサービス提供機関である日本財団電話リレーサービスに納付する形でサービスを維持することになります。

 固定電話・携帯電話事業者は、この負担金を利用者に転嫁しており、電話番号数に応じて負担金を拠出し、2021年度は7月から2022年1月まで、電話利用者から各月1円(年度内で計7円)を「電話リレーサービス料」として徴収することになります。

 携帯電の利用料金に「電話リレーサービス料」として1円が計上されていたら、それは、このサービスを維持するための負担金なのだと、憶えておきましょう。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)