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第982回:YouTubeは見れるの? Androidアプリも使える? ファーウェイのスマホ・タブレットのHarmonyOSとは
2021年9月24日 06:00
「全てのデバイスを接続する」中国製OS
HarmonyOS(ハーモニーオーエス)は、中国のファーウェイとその子会社ハイシリコンによって開発が続けられているオペレーティングシステムです。
最初のバージョンは、2019年8月にHuawei Developer Conference(HDC) 2019で発表されました。当初、このOSの主なターゲットは、スマートウェア、スマートスクリーン、自動車、パソコン、スマートスピーカー、ヘッドセット、AR/VRグラスといったIoT(モノのインターネット)端末デバイスに対応するものであることが強調されていました。スマートフォンは「禁輸リスト」からファーウェイが除かれなかった場合の手段とされていました。
2019年5月に事実上の米国政府による禁輸リスト「エンティティリスト」にファーウェイとその関連会社が登録され、ファーウェイ製品への米国技術が関わる半導体やソフトウェアの搭載が禁止されたからです。これによってグーグルアプリやAPIがまとめられている「Googleモバイルサービス(GMS)」をこれ以降に開発する新機種では搭載できないこととなっていました。
結局、米国による制裁は解除されず、ファーウェイは2020年9月のHDC2020では、HarmonyOS 2からはスマートフォン、タブレット、スマートウォッチなど「全てのデバイスを接続」するOSとすることを発表しました。
そして2021年6月に発売されたスマートフォンの「Mate40 Pro」「Mate X2」「Mate40E」「nova8 Pro」、タブレットの「MatePad 11」、スマートウォッチでは「HUAWEI WATCH 3」以降、HarmonyOS 2がプリインストールされて発売されるようになりました。
また、スマートフォンに関しては、過去に販売された機種に関しても、いくつかの機種に関してはHarmonyOS 2を配信する、としています。
HarmonyOS 2.0搭載スマホは、Androidアプリと一部互換がある
2021年9月現在のHarmonyOS 2の特徴を見ていきましょう。HarmonyOS 2 のスマートフォン・タブレットに搭載されたバージョンは、Fuchsia(Nest Hub向けOS)を含めたAndroidファミリーと、いろいろな意味で似ています。
少なくとも、GMSを使用しないものであればAndroidスマートフォン・タブレット用のアプリケーションの多くが、HarmonyOS 2搭載スマートフォン上で動作するという意味では、よくできた互換OSです。
また、HarmonyOSは、Androidと同様にその一部がオープンソースとなっています。オープンソース版Harmony OSは“OpenHarmony 2.0 Canary”として中国のソースコードホスティングサービス「Gitee」上で公開されています。
このバージョンでは、カーネルとしてはLinux、HarmonyOSマイクロカーネル、Huawei LiteOSを利用できるマルチカーネルデザインを採用されていて、ターゲットとするハードウェア環境によって開発者がカーネルを選択できるようになっています。
ファーウェイは「HarmonyOSは、全てのモノがネットワークで接続された世界のための、分散型オペレーティングシステム」であるとして、開発ドキュメント中で下記の3つを特徴として挙げています。
・ハードウェアコラボレーションとリソース共有
このOSを搭載したデバイスは、システムレベルで統合されスーパーデバイスを形成します。これによって、機器間でのハードウェアの相互サポートやリソースの共有が可能になり、デバイスのハードウェア能力を柔軟にスケーリングすることができるようになります。
・マルチデバイス展開のためのワンタイム開発
HarmonyOSでは、一度開発したアプリケーションを、幅広いデバイスに展開することができます。HarmonyOSは、その分散技術により、様々なデバイス形態でのアプリケーション開発を可能にします。これにより、上位層のサービスロジックに集中することができ、より簡単で効率的な方法でアプリケーションを開発することができます。
なお、HarmonyOSのアプリケーション開発環境は、様々なプログラミング言語のAPIを提供しています。Java、XML、C/C++、JavaScript、CSSから選択可能です。
・統一されたOSによる柔軟な展開
HarmonyOSでは、異なる機能を持つデバイスのニーズに応えることが、単一のOSで統一しながら、かつ柔軟に展開することが可能です。デバイス開発者にとっては、HarmonyOSのコンポーネントベースのデザインソリューションは、リソース能力やビジネス特性に応じて、様々な形態の端末機器のOS要件に柔軟に対応できる大きな助力となるでしょう。
なお、HarmonyOSは、前述のように、様々なタイプ・メモリ容量・マシンパワーのデバイスに適応させる必要があります。そのため、HarmonyOSは、種類としては一つのOSですが、メモリ128KB以上の「Miniシステム」、1MB以上の「Smallシステム」、128MB以上の「Standardシステム」と、マシンパワーによって使用する構成を変えることが可能です。
HarmonyOS 2.0スマートフォン/タブレットでアプリを使用するには
HarmonyOS 2.0搭載機のHUAWEI Mate40、P40シリーズなどは、アプリ互換性に関して言うと、GMSの入っていないAndroid 10にHMS(HUAWEI Mobile Services)が代わりに入っているような状態と言っていいでしょう。つまりGoogle Playを利用してアプリをインストールすることができません。またGoogleの基本的なアプリの利用ができません。
逆に言えば、Androidの基本的な機能とHMSのAPIを使うアプリであれば、APK形式で配布されていればインストールして使えるという状態です。
と考えるとHarmonyOS 2.0搭載機のHuawei Mate40、P40シリーズなどでアプリを利用するにはまず、「App Gallery」からアプリを入手することができます。
それから、同じAndroid系デバイスのアプリストアということでAmazon アプリストアをインストールしてそこからアプリをインストールしてみる、というのもアリでしょう。本来はAmazon デバイス向けのアプリストアですが、KindleなどとHarmonyOS搭載機にも同様にアプリをインストールできます。
ファーウェイ端末には、アプリをインストールする前に体験できる“QuickApp”という機能があります。このQuickAppをアプリの代わりに使うのもひとつの方法です。
Quick Appは、「Quick App Center(高速アプリエンジン)」というアプリから利用できます。これを開いてみましょう。メルカリ、NAVITIMEなどの見たことのあるアプリから、見たことのないものまで大量にアイコンが並んでいるはずです。
また、YouTubeなどWebブラウザで使っても十分便利なサービスは、わざわざアプリでなく「Webブラウザでサービスを利用する」という選択肢も頭の中に入れておくといいでしょう。