ケータイ用語の基礎知識

第970回:オクタコアとは

 ここ何年かの間に発売されたスマートフォンでは、カタログに「オクタコアCPU」と書かれているものが非常に多くなっています。

 オクタコアとは、英語では「octa-core」と書きます。octa-は連結形で「8~」の意味です。つまり、オクタコアCPUとは、1つのCPUの中に8つのコアが搭載されているということです。

 コアとは、ここでは、正確には「プロセッサーコア」といい、CPUの内部で実際に機械語の命令を読んだり実行したりする演算装置のことです。「計算機」としての中核部分と言えるでしょう。

 ちなみに、2つならdual(デュアル)、4つならquad(クアッド)、10ならdeca(デカ)です。これら複数のCPUコアを持つモノを「マルチコアCPU」と言います。今時は、パソコンのCPUも、スマートフォンのCPUもみなマルチコアCPUですね。

こちらはHUAWEI P40 Proのスペック表から。「オクタコア」と記載がある
こちらはQualcomm Snapdragon 765Gのスペック表から。「Kryo475,Octa-Core CPU」を搭載
富士通コネクテッドテクノロジーズ、arrows 5G(F-51A)のスペック表では「8-Core」と表現されている

 CPUをマルチコア化することには、いくつかの意図があります。まず、計算機としての高性能化です。

 1つのコアのみのCPUを高性能化しようとする場合、それはクロックスピードの増加などで可能になります。しかしその場合、消費電力の問題や、発熱といった問題がでてきます。しかもそれは1~数GHzといったあたりで急激に問題が大きくなってくるのです。

 そこで、ある程度の周波数でひとつのコアの性能を抑えて、同時に2つ、4つと多くのコアを用意し同時に計算をさせることで性能を向上させることを狙うわけです。

 ひとつのCPUの中にコアが複数個あると、お互いに干渉し合うような命令を実行しない限り、コアそれぞれが違う動作ができます。つまり、ひとつのスマートフォンの中に複数のCPUが入って動作しているのと似たような状況になるわけですね。その分だけ、見た目の性能は向上するわけです。

 そしてもう1つは、役割分担を行うための多コア化です。

 スマートフォンのような機器は、常に全力でその計算能力を使用するわけではありません。たとえば、3Dオブジェクトを画面中に散りばめ、高FPSで動かすようなゲームをプレイするなどその性能を存分に発揮するときもあれば、ジッと電話やメールやメッセージが来るのを待ち受けている時もあるでしょう。

 スマートフォンのCPUでは、高速高性能なCPUコア群と低速低性能なCPUコア群の両方を搭載し、待ち受けの時には高速高性能なCPUコア群には電力節約のために眠っていてもらう……というような構成になっているものがあります。これをCPUの「big.LITTLE構成」などと呼ぶことがよくあります。

 オクタコア構成のSoCのCPUの場合、この「big.LITTLE構成」も高性能なコアと低電力なコアが、それぞれどちらにいくつ配分されているかは製品によってマチマチです。パフォーマンスコア、省電力コアの数が4+4であったり6+2など、あるいはクアルコムの「Snapdragon 855」のように特別に高性能な1つの「プライムコア」が搭載される「1+big3+LITTLE4」のようなものまでさまざまです。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)