ケータイ用語の基礎知識
第942回:VoNRとは
2020年2月28日 06:00
5G NR(SA)で利用可能な音声・ビデオ通信技術
VoNRとは、5GのNR(New Radio)を使って音声・ビデオ通信を行うために作られた技術です。名称は英語のVoice over New Radioから来ており、読み方はそのまま「ヴィーオーエヌアール」と発音することが多いようです。LTEなどの規格を標準化を推進している団体「3GPP」の「Release 15」以降で仕様が定められています。
VoLTEとは名前が似ていますが、VoLTEが「Voice over LTE」LTE回線を使った音声通信技術であるように、VoNRは5G NR回線を使った音声/ビデオ通信技術です。VoLTEとVoNRは「IMSベースでの音声・映像通信サービスの異なるアクセスモード」という関係にあります。
VoNRは、5GのRAN(無線アクセスネットワーク)構成がスタンドアローン構成、つまり、正真正銘の5Gとなったときに使えるようになります。
コーデックとしては「HD Voice+」や国内では「VoLTE(HD+)」というブランドでVoLTE上でも使用されているEVS(Enhanced Voice Services)や3GPPが、新規に5GのRelease 16で定義したIVAS(immersive voice and audio services)などが利用可能です。また、ビデオ通信ではH.265の利用も可能です。音質の上では、「VoLTE(HD+)」やそれを超えるクリアな音声通信が可能になります。
VoNRが使えない場合は、VoLTEでの通話に
もう少し詳しく説明していくと、5Gの進化において「音声・ビデオ通話技術」の最終地点が、この「VoNR」ということになります。
携帯電話のネットワークが完全な5G(SA)に移行するには、いくつかの段階を踏むことが考えられます。「音声サービス」はその全ての段階でサポートされていなければなりません。
3GPPは、5Gネットワークの構築方法にいくつかの「オプション」を設定しています。たとえば、基地局から端末までが純粋に5Gの要素しかネットワークにない「オプション2」や、4Gのコアネットワーク上に5Gの基地局、5Gのノンスタンドアローン基地局を同居させる「オプション3」もあります。
VoNRは、5G NRに有効に接続できた場合に使われる手段であり、このNRが使えなくなる、たとえば5G圏外に出て4Gエリアに出てしまった場合など、どのような挙動を行うかがそれぞれのネットワークオプションに対して、定められています。
5Gネットワークがオプション2で構築されている場合、4Gネットワークは映像や音声などのメディアを提供する規格「IMS」から5Gコアとは別立てのEPCに接続している4G基地局(eNB)から成っていることが考えられます。この場合、VoNRから音声プロトコルはEPSフォールバックによってVoLTEに切り替わることが想定されています。
また、オプション3を使用した5Gエリア構築では、5G EPSにはRANにノンスタンドアローンのNR基地局が含まれますが、4G音声サービスの「VoLTE」およびその他のIMSサービスは、コアネットワークのアップグレードを必要とせずに引き続き使用されます。IMSは、更新されたRANを認識していません。4G VoLTEの原則がすべて残りますので、端末に「5Gで接続されている」表示がされる以外は、5Gになったといっても音声通話に関してなにも変わらないはずです。
この、VoNRですが、2020年2月現在では、メーカーによるテスト端末での実験が行われているという段階です。1月7日、VoNRを用いた音声通話をクアルコムとZTEが実施したと発表しました。
ZTEの5G基地局とクアルコムの5Gモデム搭載のスマートフォン型テスト端末で、2.5GHz帯(n41)を利用して実施されました。