法林岳之・石川温・石野純也・佐藤文彦のスマホ会議(仮)

値上げが続く中で登場した「JALモバイル powered by ahamo」のインパクト

 通信業界を中心に活躍するライター4人と編集長関口による「スマホ会議(仮)」。今回は通信キャリアの動向について話し合っていきます。

povoの攻勢と楽天モバイルのエリア問題

佐藤
 UQ mobileの「コミコミプランバリュー」にて、新規加入ユーザーを対象とした「UQコミコミおトク割」が提供開始されています。

佐藤

石川氏
 前回の料金改定は、ショップ側から「売りにくい」と不評だったらしいので、テコ入れをしてきた形でしょう。

石川氏

法林氏
 各社、メインブランドとサブブランドの差別化が相当難しくなってきている。腕の見せ所だね。

法林氏

石川氏
 使い放題か、そうじゃないプランかになっている。

法林氏
 だったら、段階制のプランは、もう少し考えたほうがいいんじゃないかな。

石野氏
 UQ mobileが中途半端に高くなっているんですよね。一律で値上げしてしまったので、不評なのもわかります。

石野氏

法林氏
 ワイモバイルも実は結構ひどいことをしている。PHSのサービス終了時、移行ユーザーに対し、「スーパーだれとでも定額の月額1000円を次回の機種変更まで、未来永劫無料」と言っていたのに、今回の新しい料金プランにすると使えなくなる。

石川氏
 ソフトバンクが言う「未来永劫」は、信じられないですよね。

法林氏
 そうかもしれないけど。当時は「永年割引」と書いていたから。

石川氏
 KDDIだと、povo 2.0の新トッピングも出てきています。KDDIが料金を細かくいじっていて、短期解約をする人は取りにいかないけど、料金で攻めてきている格好です。

 povo 2.0の新トッピングは、1.32GB/3万9240円(365日)。1.32GBが中途半端という意見もあったけど、1カ月あたりで考えると110GBで、ahamo大盛りの対抗になっているし、3270円で楽天モバイルの対抗になっています。

法林氏
 大容量トッピングもいいし、0.5GB/600円のサブスクトッピングもいいと思う。小容量トッピングは、MVNOにも対抗できる。ただ、説明会で通信品質の満足度、不満という形でA社、B社、C社と他キャリアと比べる必要はなかったんじゃないかな。

 しかも、アンケートは自社調べで、たかだか1000件ちょっと。1000件あれば、ある程度のデータになるとは言われているけど、自社調べだからね。

石野氏
 このデータは、あくまでpovoユーザーから取ったアンケートですしね。

法林氏
 そう。メイン回線はMNOで、サブ回線としてpovoを使っている人が対象なので、この部分を強調してしまうのは、KDDIとしてやるべきことなのかなと思った。

石野氏
 サブ回線でpovoを使っている人が、自分が使っているメイン回線のMNOについて、どう思っているかというアンケートということです。

法林氏
 このアンケート結果を見た人たちに想起させたいのは、他キャリアを使っているユーザーがメイン回線に不満を持っているから、povoをサブ回線に選ぶことが多いということなのはわかる。ただ、アンケートはあくまでpovoの利用者が対象で、母数も1000件しかないと、結構な偏りがあると思う。これを大々的にやるのは微妙だし、メディアが大々的に取り上げるのは、ちょっと違うかなと思った。

関口
 公平なアンケートかという疑問はごもっともですが、メッセージとしては明瞭ですよね。

法林氏
 それはわかるけどね。

石野氏
 あと、結果を見て、B社、C社に対する不満が多いのもわかる。

石川氏
 2強2弱になっていることがはっきりしている。povoの説明会の後日、濱田社長(KDDI Digital Life代表取締役社長 濱田達弥氏)に聞いたら、povoの申し込みが一気に来たし、サブ回線的な契約ではなく、MNPが想定以上に多かったとのことです。

関口
 キャンペーンが効いているということですかね。

石川氏
 キャンペーンでは、データ使い放題24時間を10回プレゼントしているけど、お試しで契約するのではなく、MNPをする人が多いらしいです。

石野氏
 早まる人が多いというか、判断が速い人が多いですよね。試してから変えていいのに。

法林氏
 もうちょっと、じっくり試していいのにね。ただ、キャンペーンの取り組み自体はいいこと。24時間使えるなら、旅行の時とかにいいよね。

石野氏
 単純に10日分タダになるということですからね。

石川氏
 SNSを見ていると、6月に入ってから、ローミングエリアが狭くなったことで、楽天モバイルユーザーが「繋がらない」と声を上げていますし。

石野氏
 本当に繋がらないですよね。

石川氏
 KDDIのページを見ると、6月1日以前、以後でのローミングエリアが比較できます。とはいえ、まだまだローミングエリアは残っているのに、これだけユーザーの声が上がっている現状を見ると、ローミングが完全に終了したときに、果たしてどうなってしまうのか。

法林氏
 我々の活動範囲は都市部が中心なので、なかなか実感できない部分があるけど、23区から出ると繋がらない場所は増えている。

石野氏
 あと、都市部でもビル内とかは厳しくなっています。

法林氏
 メインは4G LTEの1.7GHz帯だからね。以前、1.5GHzしかないボーダフォン、J-PHONEも、建物内は繋がらないと言われていた。いくら通信方式が変わっても、基本的な特性は変わらないから、やっぱり厳しいよね。

石野氏
 KDDIのページで確認できるローミングのエリアマップは、個別に貸しているビルなどが載っていないですよね。

石川氏
 あと、23区は載っていない。23区内も、ひどいことになっているんじゃないかな。

石野氏
 ローミングエリアの縮小と、ユーザーが増えたことによるトラフィック増加がさばき切れていない。2つの要素が重なって、ひどいことになっています。KDDIはその状況を一番わかっているはずなので、povoの新トッピングなどで、うまく刈り取りに来ているなと思います。

関口
 楽天モバイルのエリアマップを見ると、広い範囲がカバーできているように見えますけどね。

石野氏
 とはいえ、エリアマップは高さの情報がないですから。

法林氏
 エリアマップを見てもわかるけど、完全に抜けているエリアが結構ある。ローミングが始まった当初、場所によってはKDDIの電波が飛びすぎてしまうという話もあったので、実際はエリアマップ以上につながる可能性はあるけど、全般的に厳しくなっているのは事実。

 あと、日本独自の低軌道衛星通信を実現するために、総務省が楽天モバイルに最大1500億円を支援するという話も、ツッコミどころが多い。「これがあれば繋がるようになる」と言っている人もいるけど、それで全部をカバーするのは無理だと思う。

石川氏
 そもそも、都心部に700MHz帯を吹いて、本当にネットワークの制御ができるのか。つながりやすい衛星の700MHzと、地上基地局の1.7GHzのどっちを掴むのか、切り替えはどうするのか、バッテリーの消耗はどうなるのか。なかなか難しいことをしようとしている。

法林氏
 電波強度も含め、どうやってチューニングをしていくのか。楽天が通信事業に参入したのは偉いと思うけど、ソフトバンクは2Gから、ドコモとKDDIはアナログからやっていて、数十年の蓄積があるので、簡単には追いつけないよ。

 そもそも、これを「日本版Starlink」と評しているメディアが多いけど、24時間使えるわけでもない。

石野氏
 というか、日本版って言っていいのかという疑問はありますよね。アメリカ版ASTじゃないですか。

佐藤
 そのままじゃないですか(笑)。

法林氏
 これが許されるなら、「docomo Starlink」とか、「KDDI Starlink」みたいな会社を作ればいいことになってしまう。

石川氏
 基本、楽天モバイルユーザーしか使えないものに、1500億円も出す。1000万ユーザーに対して、1500億円。

佐藤
 しかも税金。

法林氏
 じゃあ、7000万ユーザーがいるキャリアには、いくら出せばいいのか。

石野氏
 これを国産衛星サービスと言うのは、さすがにどうなんでしょう。スカパーとかが怒りそう。

石川氏
 うがった見方をすると、楽天モバイルを助けるために、総務省がお金を出しているようにも見えてしまう。

法林氏
 うがった見方というか、リアルにそうだと思う。

石野氏
 総務省は「日本企業が運用する衛星通信基盤が必要」としていますが、ASTは日本企業じゃないですからね。ASTと合弁で会社を作って、日本で運営するという話ですが……。経済安全保障が口実みたいに使われてるのはどうなんだろう。

石川氏
 ソフトバンクやNECが設立したAIの会社にも、3000億円以上の出資をしている。

法林氏
 何でもかんでも、お金を出せばいいわけじゃない。

石川氏
 経済安全保障と言えば、なんでもよくなっている。

石野氏
 経済安全保障バブルですよ。

法林氏
 多少、楽天グループが早くからASTにお金を出していたという意味では、まったく関係ないとは言わないけど、さすがに無理があるよね。明らかにおかしい。

佐藤
 会社を作れば、1500億円もらえるキャンペーンが開催されている(笑)。

関口
 一応、合弁会社は昨年のうちからできていたみたいですね。あと、自前で衛星をやろうとしているのは、NTTグループぐらいですかね。

石川氏
 NTTグループは、いろいろなところにツバをつけすぎて、訳が分からなくなっている。アマゾンともやっているし、ドコモでStarlinkを始めているし、HAPSもまだ続けていると言っている。

石野氏
 そういえば、HAPSはどうなっているんですかね。

関口
 一応、2026年中に商用化すると言っています。ソフトバンクも、2026年内にプレ商用予定ですね。

法林氏
 HAPSの仕組みを持っておいたほうがいいとは思うけど、効率的には低軌道衛星のほうがいいから、Starlinkを優先しているということだろうね。

JALモバイル powered by ahamoが示すブランド切り売りのインパクト

佐藤
 JALモバイルでは、「JALモバイル powered by ahamo」が提供開始となり、かなり話題を呼んでいますね。

石川氏
 衝撃的だったな。

法林氏
 インパクトが大きかったね。

石川氏
 発表前は、単なるマイル連携かなと思っていましたが、蓋を開けたらahamoと手を組んだ。

石野氏
 マイレージとdポイントの交換倍率が上がるくらいだと思っていました。

石川氏
 そうだよね。JALモバイル powered by ahamoは、ユーザーにとってはほとんど得しかないので、これはすごいと思いましたが、そもそもahamoは料金プランです。それを切り出して、こういう組み方をするのにも驚いた。

 あと、金融との組み合わせが面白くなりそう。住信SBIネット銀行があって、d NEOBANKがJAL NEOBANKをやっているので、組み合わせるとさらに面白くなるかも。JALとしては、昨年IIJと組んだ後に、ドコモの銀行買収の話が出ている。先にそっちと組みたかったのかもしれないと思っていたら、JALモバイル powered by ahamoという形になった。

関口
 これが出てくると、MVNO各社は厳しいですよね。

石川氏
 本当ですよ。

法林氏
 今回はahamoだけど、KDDIにはpovo、ソフトバンクにはLINEMOと、3社に材料がある。切り売りができるブランドがあると、他社も組みやすくなる。

関口
 以前から、povoでも同じような取り組みをしたいというお話はありましたよね。

法林氏
 そうそう。それでいうと、こういう組み合わせは、本来povoが先にやるべき。

石川氏
 povoはもともと、JALマイレージアカウントユーザーに対して、使い放題のトッピングを配っていましたが、昨年末になくなっています。おやおやと思っていたら、JALはドコモと手を組んでいた。

 MVNO界隈は、JALモバイルが出てきたときに、第2のJALを見つける、経済圏と組んで生き残っていくと盛り上がっていたのに、見事に梯子を外されたような状態です。

法林氏
 しかも、それをドコモがやるかっていう。

石川氏
 なりふり構わない感じですよね。

法林氏
 ユーザー側からすると、理にかなっている。海外にちょこちょこ行く人には非常にいいし、JAL側からすると、ユーザーがJALかANAかで迷ったときに、優先順位を上げてもらえる。

石野氏
 ドコモとしては、ahamoを最初から別ブランドにしていれば、さらに動きやすかっただろうなとは思いましたね。

法林氏
 本当はそうなるはずだったんだけどね。キャリアを縛るのではなくて、キャリアをフレキシブルにしたほうが、動きは出てくる。

石野氏
 ahamoはサブブランドにしたかったでしょうね。

石川氏
 サブブランドにして、フットワークを軽くして、顧客管理システムも別にすると、dアカウントも軽くなって管理しやすくなる。それを料金プランにしてしまったので、dアカウントも使いにくい状態が続いている。あの判断は失敗だった。

石野氏
 判断したのか、させられたのかはわかりませんが。

石川氏
 ただ、ようやく表向きで動けるようになってきたので、これから面白いかも。

法林氏
 ただ、貯めるべきは各社のポイントなのか、マイルなのかという話はある。

石野氏
 マイレージを貯めているのは、年齢層が高い世代が多いらしいですね。

石川氏
 男性は40~50代、女性は30~40代が多いとのこと。そういう意味では、ahamoは当初、若年層を狙っているブランドだったので、相性はよくなるかも。ahamoのユーザーがJALを使うようになって、旅行好きになってくれればハッピー。

法林氏
 それはありだと思うけど、ユーザーが一生懸命貯めるべきなのは、マイルじゃなくて、ポイントなんじゃないかな。

石川氏
 それは生活圏によりますよ。僕はMWCに行くためのチケットが高すぎるので、マイレージを貯めまくって、特典航空券で行くという生活をしている。

関口
 次にMVNOのターゲットになりそうな経済圏は残っていますかね。Vポイントとかどうですか。

石川氏
 Vポイントはソフトバンクと組んでますね。

法林氏
 セブン-イレブンのnanacoもセブン-イレブンアプリの中にPayPayのショートカットができていたりする。セブン-イレブンとしては、そろそろnanacoを畳みたいのかもしれない。

石川氏
 nanacoは全然聞かなくなりましたね。

石野氏
 あと、JREポイントもJR東日本がやってるわりにはマイナーですよね。

法林氏
 JREポイントは、JR東日本圏内のみなのが辛い。ICOCAは西日本全域で、WESTERポイントがたまる施策を始めていて、勢力を増やしている。

石川氏
 ただ、JREはpovoと組む可能性もある。

佐藤
 JR東日本とKDDIは、仲がいいですよね。

石川氏
 それもそうだし、今は駅に行くと、povo Data Oasisで0.1GBがもらえるけど、訪日外国人向けのSIMカードではJR東日本の駅で提供している。今後、ほかにも両社の関係は深くなりそう。

法林氏
 そうなると、JR東日本の組み方が引っかかる。銀行は楽天銀行だからね。

石野氏
 ただ、auじぶん銀行は、BaaSをやっていませんからね。全部を抱えなくてもいいとは思いますが。

法林氏
 KDDIが楽天銀行も含めて買っちゃう?

石川氏
 楽天銀行は、みずほ銀行がいるので無理だと思います。KDDIとしても、すでに銀行は持っているので、金融以外の経済圏が欲しいはず。

 あと、ちょっと思ったのは、住信SBIネット銀行の公式サイトにNEOBANKの一覧が掲載されているので、それを見ると、次のpowered by ahamoが見つかるかもしれない。

関口
 今回のJALモバイル powered by ahamoは、ahamoからの乗り換えが非常にスムーズとのことで、ドコモ的には、囲い込みが効きますよね。

石野氏
 効きますね。JAL的にも効きます。

石川氏
 前田社長体制なら、Jリーグと組んだりしても面白い。

関口
 Jリーグ全体と組めたらすごいですね。チームごとにカスタマイズがあってもいいですし。

佐藤
 それいいですね。ロイヤリティは相当高いでしょうし。

石川氏
 本当は、ドコモ MAXで、DAZNも一緒に見てもらうのが理想ですけど、最近はDAZNもどうなのかって感じですし。

法林氏
 今回のワールドカップで、ちょっとつまずいた感じだよね。

石川氏
 下手すると、DAZNが日本から撤退したりしませんか。

法林氏
 そこまではないんじゃない。トラブルはあったけどね。

佐藤
 DAZNのトラブルなんて、ずっと起きているじゃないですか。

関口
 大きなイベントのたびに話題になりますね。

佐藤
 いまだにDAZNを信じていたのかと思ってしまいますよ。

法林氏
 Netflixのサーバーの配備とかを見ると、DAZNは全然足りていないのが事実。

石川氏
 コンテンツ調達にばかりお金をかけて、技術的な部分に投資していない感じはしますね。

法林氏
 ただ、コンテンツの買い方は、国と地域ごとにいろいろな事情がある。DAZNの日本法人が力を持って、東アジア、東南アジアあたりの市場は、まとめて面倒を見るみたいな可能性はあるかな。