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「Real×Tech LAWSON」1号店がオープン、テクノロジーで未来のコンビニを構築
2025年6月23日 20:39
KDDIとローソンは、高輪ゲートウェイシティに未来型コンビニ「Real×Tech LAWSON」1号店を開店した。少子高齢化社会における生活インフラ維持の危機に対し、テクノロジーを活用することで、コンビニを地域のマルチハブへと進化させ、さまざまな社会課題の解決に貢献することを目指している。
「TAKANAWA GATEWAY CITY」のTHE LINKPILLAR 1 NORTH 6階にオープンした「ローソン高輪ゲートウェイシティ店」は、ローソンが持つ店舗データや高輪のまちの情報を、KDDIの通信やテクノロジーの「つなぐ力」で連携・循環させ、ユーザーに新しい体験を提供する店舗。
新たな顧客体験の追求
「Real×Tech LAWSON」の挑戦のひとつは「新たな顧客体験の提供」。店内のサイネージでは、ユーザーの購買行動に合わせたレコメンド動画を表示し、ECのような訴求力と、商品を手に取れるリアル店舗の強みを融合。天気や交通、人流データなどリアルタイムのまちの情報を活用し、たとえば暑い日には熱中症対策商品を、イベント時には関連商品をレコメンドするなど、需要予測精度の向上と在庫最適化、フードロス削減に取り組む。「三方よし」の運営を掲げ、ユーザー体験と店舗運営の両立を図る。
さらに、リモート接客のコンサル相談では、従来の通信相談に加え、金融・保険の相談も可能に。日本初となる自宅以外でのオンライン診療・指導サービスも導入し、隙間時間での診察や処方箋の受け取りに対応。AIアバターによるナビゲートで、PC操作が苦手な人でも安心して利用できる。ローソンはこれを「町のよろず相談所」とし、日常の困りごとを解決する存在を目指している。
効率的な店舗運営の確立
もうひとつの挑戦は「効率的な運営の実現」。2030年度までに現行オペレーションの30%削減を目指し、店舗ではロボティクスを活用。ロボットが商品補充などを担い、従業員は接客や売り場づくりに注力する。これにより、業務負荷軽減と働きがいの向上を図るとともに、データ化された店舗運営の分析を通じ、在庫管理や商品補充の精度を向上させる。
店内の映像・センサーデータをもとに店舗状況を可視化し、AIエージェントが運営を支援。補充率や従業員・来店客の行動データをリアルタイムで把握し、課題抽出と改善提案を行う。これにより運営の難易度を下げ、サービス品質の均一化と従業員の心理的ハードル軽減を目指す。
未来に向けた「実験場」としての役割
KDDIとローソンは、日常生活の困りごとを解決し、暮らしに溶け込む拠点としての店舗づくりを進め、社会インフラとしての役割を担うコンビニを目指す。従業員が誇りをもって働ける場とし、国内外の社会課題解決に寄与する「Real×Tech LAWSON」を確立する計画。
ローソン代表取締役社長の竹増貞信氏は、同店舗に約10種の新技術が導入されたことに触れ、「店の前に立っただけでワクワクした」とコメント。「リアルの温かさ」と「テクノロジーの力」を掛け合わせ、購買体験の革新とオペレーション効率化の両立に挑む考えを示した。今後、ここで得られるデータや課題をもとに、KDDI・三菱商事と連携し、全国のローソン店舗への展開を目指すとした。
KDDI代表取締役社長 CEOの松田浩路氏も、ローソンとの協業に期待を寄せ、「未来に向けた実験場」と位置づけ。JR東日本の「都市OS」プラットフォームと連携し、顧客体験の創出を進めるとともに、AIドローン点検や次世代モビリティ、防災強化通信整備なども視野に入れている。店舗データのデジタル化を進め、国内での成功例を海外店舗にも展開し、「つなぐ力」を世界へ広げたいと語った。
質疑応答
――将来的に「Real×Tech LAWSON」を全国展開していく計画について、もう少し詳しく教えていただけますか?
松田氏
今回、店内でさまざまなデータをご紹介しました。冒頭でもお伝えしたように、ロボットで飲料などを補充するものの数や種類を、すべて正確に把握できるシステムがあります。
データには、このオフィスタイプの店舗ならではの種類と、一般的なローソンで全国共通で活用できる種類の2つがあると考えています。これらをしっかり分類することで、先ほど説明した陳列などの技術は全国展開も可能と見込んでいます。
私たちは、そうしたデータの種別を丁寧に整理し、今後全国のお客様、そしてローソンの店舗オーナーの皆さまにも、有効な技術として積極的に展開していきたいと考えています。
――「Real×Tech LAWSON」の展開について、全国拡大を目指しているとのことですが、すべての店舗にリアルテックな展開をするのでしょうか。また、大体いつ頃、どのエリアで展開予定なのか教えてください。
松田氏
どこまで広げるかについては、何がうまくいき、何がうまくいかないのかをしっかり見極める必要があります。うまくいかないものは、この店舗で検証し、うまくいったものは速やかに広げていきたいと考えています。
ただ現時点では、どこの拠点を何カ所まで、という具体的な計画はありません。このオフィスタイプの店舗での取り組みは展開しやすいため、まずはここを着実に進めていきたいと考えています。
竹増氏
今、松田氏から説明があった通りです。例えば、ドリンクを自動で補充するロボットなども、費用対効果を考慮し、全国展開できるレベルまでどう突き詰めるか検討が必要です。
また、からあげクンロボも、導入できる店舗にはハード面での要件が生じる可能性があります。さまざまなテクノロジーが導入されていますが、その一つ一つ、さらに組み合わせによって、どのような効果が得られるかを、この店舗で実験しながらデータを取得し、検証するつもりです。
例えば、ある技術と別の技術を組み合わせると生産性が上がり、経済的効果も期待できる、といったことが見えてくると思います。デジタルサイネージについても、T字型やライン型などを導入し、他社も試行している部分ですが、ここで得たデータから効果的な活用法が見つかれば、速やかに横展開が可能だと考えています。一つ一つの検証と、その掛け合わせも含め、展開が決まれば一気に進める方針です。今後の展開にご期待ください。
――2030年までに店舗の効率を30%向上させる、つまりオペレーション削減を図るとのことですが、この新店舗でロボティクスを導入することで、通常の改善店舗と比べて例えば何人分の人員削減が可能か、あるいはターゲット層の拡大など、具体的な違いはありますか?
竹増氏
店舗オペレーションの生産性については、今後、一般店舗とは異なる成果が出てこないと困ると思っていますが、確実に改善できると考えています。
実は、売上も30%上げ、オペレーションも30%減らすことで、合わせて60%の効果を2030年までに目指しています。そこで向上した生産性によって生まれる時間をどう活用するかも、実証実験を通じて検証していきます。
単にオペレーションを削減することも可能ですが、その分の時間をどのように付加価値創造に活かせるかにも挑戦し、お客様へ提案していきたいのです。この店舗では、そうした検証を丁寧に進めていきます。
これまで、からあげクンは揚げているときにくっつかないよう人が揺すっていましたが、ここでは基本的に機械が担当します。また、商品補充もこれまで30分ほどかかっていた作業が、プログラムを組めばロボティクスで行えるようになります。
ただ、「30分削減できました」と言っても、その時間が曖昧に消えてしまわないようにしたいと考えています。そのため、この店舗から得られるデータをしっかりと管理し、KDDIさんと共に分析し、その時間を本当に有効な削減時間とするのか、あるいは付加価値の高い活動に振り向けるのかも含めて取り組んでいきたいと思います。
――現在の適用範囲以外にも、技術の拡張余地はありますか? また、KDDIがこの店舗を直接運営することで、動きやすさや実験しやすさは感じますか?
松田氏
やはり私たちが直接運営することで、非常に動きやすいと感じています。その理由は大きく2つあります。
1つは、今日開店したこのローソンには、一般のお客様も社員もいらっしゃること。そして来月には、上の階の社員専用スペースにも開店予定です。
こちらも私たちが運営し、よりテクノロジーの適用範囲を広げて実験を行う計画です。どの数値を可視化し、何を試すかを含め、どんどん新しい取り組みに挑戦していきます。
そこで実験し、竹増氏もおっしゃったように、効果が確認できれば、本格展開するという段階を踏んでいきたいと考えています。今後の取り組みにぜひご期待ください。
――今回のようなデジタルサイネージの取り組みは他社も行っていますが、KDDIさんと組むことでの競合優位性はどのようにお考えですか? また、この店舗のような形態を横展開する場合、1店舗あたりの新規出店・改装コストは通常店舗と比べてどの程度上がるのか、具体的な数字があれば教えてください。
竹増氏
まずサイネージの使い方についてですが、一般的にはメーカーやクライアントへの広告メディアとして販売することが多いと思います。
もちろんその機能も備えていますが、KDDIさんと組む最大のメリットは「つなぐ力」です。そのつながりから得られるデータが非常に重要です。この店舗では、一人ひとりにパーソナライズされた情報提供がサイネージで可能になります。
さまざまな場所や個人のデータも含めてつながることで、加工したデータをもとに、多様な提案ができるツールになります。広告収入だけでなく、ローソンに来たお客様が「今日何にしようかな」と思ったときに、心地よい提案がされ、「いいね」と思って商品を手に取ってもらえる。そうした満足度の向上が、売上にもつながると考えています。
今後もKDDIさんの力とサポートを得ながら、実証実験を進めていきます。この取り組みによって、サイネージの有効性がより確認され、街とつながることで「困ったときはローソンへ行こう、いろいろな情報がある」という意識変化も期待できます。
さらに、よろず相談窓口も併設していますので、日常生活のさまざまなニーズも「ローソンに行けば大丈夫」と感じていただけるはずです。
費用面では、当然サイネージのない店舗と比べれば設置コストはかかります。ただし、それをカバーできるかどうかを、先ほど申し上げた効果と合わせて慎重に検討していく方針です。具体的な数字は、まだ精査中です。