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憧れのあのおもちゃがついに復刻!
学研「電子ブロック EX-150 復刻版」
広野忠敏 広野忠敏
昭和37年新潟に生まれる。仕事はライターとプログラマの2足のわらじを履いている状態。どちらかといえばハードウェアよりはソフトウェアや技術的なものが得意である。ちなみに、2足はきこなしているかどうかはちょっと疑問。また、怪しげな小さいものと怪しげなプログラムと新しいものには目がないけど最近はちょっとパワーが落ちてきているかな。
(写真:若林直樹)


 「電子ブロック」って知っていますか? 30代の方ならば子供の頃に聞いたことがある、あるいは遊んだことがある電子おもちゃだと思う。電子ブロックは、1976年に学研から発売された電子回路実験キットだ。このキットには抵抗やトランジスタ、コンデンサといったいろいろな素子が埋め込まれたブロックが含まれ、ブロックを回路図どおりに並べていくと、ラジオやワイヤレスマイクなど、さまざまな電子回路を作れる。先頃学研より、当時の電子ブロックとまったく同じ構成で、復刻版が発売された。そこで、今回は30代には懐かしい「電子ブロック EX-150復刻版」を取り上げてみるとしよう。


あの「電子ブロック」が復刻!

 1976年の発売当時、電子ブロックは子供向けの電子おもちゃではあるが、決して安いものではなかった。いくつかのラインナップがあったが、最も安い「EX-15」で4000円程度、最も高価な「EX-150」は1万3000円もしていたのである。たかがおもちゃに1万3000円もの大金を出せる家庭はそうそうなく、「めっちゃ欲しいけど、買ってもらえない。おこづかいを貯めても全然買えない」なんていう悔しい思いをした人は多かったのではないかと思う。

 さて、その電子ブロックだが、およそ20数余年の月日を経て今年の4月、ついに復刻版が発売された。復刻されたのは、当時発売されていた電子ブロックのフラッグシップモデルのEX-150だ。値段は9800円。昔はなけなしのおこづかいを貯めても買えなかった電子ブロックがちゅうちょなく今ハヤリの「大人買い」できる値段として発売されたのである。

 電子ブロックは、先程も述べたとおり、文字通りブロックを組み合わせることで、150種類の電子回路を実験できるというものだ。この復刻版、インターネットでの予約販売は完売、書店やおもちゃ屋さんの店頭でも発売数日で完売という状況で現在は非常に入手が困難になっている。欲しい人は8月に出荷されるまで待たなければいけない。ただ、一部の書店で在庫を抱えているところもあるらしいので、どうしても欲しい方は書店をマメにチェックすれば、入手できるかもしれない。

 全く電子ブロックを知らない人、つまり新規ユーザーがコレを買うとはとても思えないので、「欲しかったけど子供の頃に買えなかった大人」や「昔遊んだから懐かしくて」とか「自分も電子ブロックで育ったから、子供にも遊ばせたい」などの理由で購入している人がいかに多いのか、といったことを物語っているわけだ。


電子ブロックって何?

パッケージ内容はいたってシンプル
 電子ブロック本体に同梱されているのは、本体とブロック、そしてコードやテスター、アンテナ線といったパーツ類だ。ブロックは35種類46個があり、それぞれのブロックにはトランジスタ、ダイオード、コンデンサ、抵抗、コイルなどの電子部品がブロック1個に対して1つ組み込まれている。

 さらに、本体にはバリコンとコイルで構成されたアンテナ回路、メーター、ICアンプ、スピーカー、CDS(照度によって電気抵抗が変化する部品)とブロックを並べるスペースが用意されている。ブロックの4方向には接点があり、ブロックを本体のスペースに並べていくとブロックの中の電子部品同士が繋がり、それによって電子回路を構成させるという仕組み。つまり、ブロックの並べ方や組み合わせの方法を変えることで、いろいろな電子回路を組み立てるということができるというわけだ。

 付属のマニュアル「学研電子ブロック EX-150 150回路集」には150種類の回路の説明と作り方が紹介されている。ちなみに、このマニュアルの内容も当時のままで、昔遊んだ人は懐かしく感じるだろう。

 それぞれの回路ごと、回路図とブロックの並べ方が書かれているので、マニュアルの通りブロックを並べるだけで、さまざまな電子回路を作成できる。マニュアルに紹介されている150種類の回路の中には、トランジスタやダイオードといった電子部品の特性を実験するものもあれば、ラジオやアンプ、ワイヤレスマイクといった比較的複雑な電子回路まである。

 たとえばラジオひとつとっても、最も単純なダイオード検波ラジオ(ゲルマニウムラジオ)からトランジスタを1つ使った1石ラジオ、本体に内蔵されたICアンプを使ってスピーカーから音を出すようにしたラジオなどさまざまな方式のラジオを作ることができる。つまり、電子ブロックは単なる電子おもちゃではなく、これを使えば、電子回路の基礎や原理を理解できる素晴らしいアイテムなわけだ。

 実際のところ、電子ブロックのおかげで子供の頃に電子回路に目覚め、電子工学の道へ進み、各種研究機関で研究をしたり、企業の第一線で電子回路の設計をしているなんていう人も多いのではないだろうかと思う。


このおもちゃ、今遊んでも決して古くない!

さまざまな部品を駆使して回路を組み上げる。ちゃんと動いたときの快感といったらもう
 ところで、電子ブロック発売当時は、ラジオなどの電子キットも発売されていた。キットには基板やトランジスタ抵抗などの部品が含まれていて、説明書の通りに部品を基板にハンダ付けすればラジオなどが完成するというものだ。

 これ、電子ブロック世代には非常になじみがあるハズ。あるいは「初歩のラジオ」や「ラジオの製作」といったラジオ製作雑誌に掲載されていた回路図を元に、自分で部品を購入して色々なものを組み立てていたという人も多いだろう。もちろん、部品を買ってきたり、キットを買ったりして組み立てるのも楽しいことだ。しかし、ラジオのキットはラジオ以上のものは作れない。回路図を参考にして何かを作っても、その何か以上のものを作ることはできないのだ。電子ブロックは、部品のハンダ付けをしなくとも、ブロックを組み合わせるだけで色々な電子回路を構成できるという当時としては画期的、かつ創造的なおもちゃだったわけだ。

 復刻版というと古いのでは? といった考えが頭をよぎるかもしれない。しかし、電子回路の基礎技術なんて決して古くなることはない。電子ブロックで組み立てられるラジオやワイヤレスマイクといったものも、技術が進歩した今でも基本は同じなのである。つまり、当時のそのままの形で発売された電子ブロックでも十二分に新鮮だし、むしろ初めて触った人は新しいもののような錯覚を起こすのではないかと思う。

 実際に説明書のとおりにブロックを並べて遊んでみると、スイッチを入れる瞬間がとてつもなく楽しい。ちゃんと動くかなとわくわくしてしまうのだ。動かなかったときは、間違っていないかよく確かめてからもういちどスイッチを入れる。また、ここでわくわくしてしまうわけ。このように何かを作ったときに完成する瞬間の感動を手軽に楽しめるのは、電子ブロックが、ただのノスタルジーとしてだけではなく、今になっても十分に新しい素晴らしい製品だからだといえるだろう。


説明書も当時のまま。組み立て方のマニュアルは懇切丁寧 挿絵もノスタルジーを誘う


■ 評価(最高点は★5つ)

イバリ度 あまり人にイバって喜ぶような製品ではありません。いろいろな回路を作って自己満足に浸りましょう。
実用性 ★★ 実用性は皆無。ただ、子供の学習用としてみると、とても実用的ではないでしょうか。
お値段 ★★★★★ 電子ブロックを欲しくても高価で買えなかった世代にとっては、とても安く感じることでしょう。
価格 9800円 全部で150回路の実験ができるので、1日に2つの回路を組み立てて遊んだとして75日遊べる計算になります。当時、電子ブロックで遊んだ人は、ブロックを本体に差し込むたびに、当時の思い出が懐かしくよみがえることでしょう。でも、どちらかというと、今の子供に遊ばせて見たい感じもします。いまの子供に電子ブロックを与えると、どういう反応をするんでしょうね。
利用期間 75日
1日あたり単価 130円


・ 「EX-150 復刻版」製品情報
  http://kids.gakken.co.jp/kit/otona/7/index.html


(広野忠敏)
2002/06/13 13:54

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