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これぞまさしく小さな巨人? ソニー「VAIO U PCG-U1」
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広野忠敏 昭和37年新潟に生まれる。仕事はライターとプログラマの2足のわらじを履いている状態。どちらかといえばハードウェアよりはソフトウェアや技術的なものが得意である。ちなみに、2足はきこなしているかどうかはちょっと疑問。また、怪しげな小さいものと怪しげなプログラムと新しいものには目がないけど最近はちょっとパワーが落ちてきているかな。 (写真:若林直樹) |
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またしてもソニーからかなり物欲をそそられるノートパソコンがリリースされた。世界最小、最軽量のノートパソコン“VAIO U”こと「PCG-U1」だ。雑誌やWebなどに掲載されているレビューを見て、思わず欲しくなってしまった人は多いと思う。このサイズで本当に使い物になるのか、モバイルグリップスタイルって面白いのか、フォントが小さすぎて目に悪くないのか、などなど興味は尽きないが、実際のところはどうなのだろうか。
VAIO Uはホントに小さい
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「PCG-U1」。実売価格は15万円前後。Windows XP Home Editionを搭載する
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はじめてVAIO Uを見たときの感想は「おお、ホントに小さい」というものだ。Windows XP搭載のパソコンとしては最小、最軽量という謳い文句はダテじゃないのだ。この手のサイズのノートパソコンには、ソニーのVAIO GT、カシオのCASSIOPEIA FIVAなどがある(あった)が、それらのノートパソコンと比べてもかなりコンパクトになっているのが感じられる。
小さめのモバイル製品といえばWindows CE搭載のHandheld PCやPocket PC、Palmといったものがあるが、ノートパソコンに比べるとCPUが非力だったり、普段パソコンで使っているアプリケーションが利用できないなど汎用性という面ではノートパソコンには遠く及ばない。
一方のノートパソコンは、汎用性も高く応用範囲も広いが、気軽に持ち歩くにはやや重くて大きい、バッテリの持ちも昔から比べれば幾分長くなってきているとはいえまだまだという部分も多い。さらに、ノートパソコンは机において使うというスタイルなので、PDAなどに比べると外出先で気軽に使えないという大きな問題があった。
一口に言ってしまうと、VAIO Uはノートパソコンでありながら、PDA的なスタイルで使うことを想定したものだといえる。本体は女性のハンドバッグにも十分に入る大きさ。重さは820gとかなり軽い。さらに「モバイルグリップスタイル」と呼ばれる両手で持って操作するという独特の操作スタイルを取り入れ、立ったままでも使えるように配慮されている点がなんといっても新しい。
モバイルグリップスタイルとは
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こんな感じで両手で持つ「モバイルグリップスタイル」を採用している
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ノートパソコンを両手で持って、立った状態で使えるようにするという「モバイルグリップスタイル」だが、正確にはこれはソニーが始めてノートパソコンに採用したものではない。東芝の初代Librettoは、ディスプレイ表示の右横にポインティングデバイスを配置し、ボタンは背面にあるため、両手ではなく右手だけでマウスポインタの移動とボタンのクリックができるようになっていた。また、カシオの初代CASSIOPEIA FIVAもディスプレイ表示面の右側にポインティングデバイスがあり、キーボード上部左にボタンがあるので、右手でポインティング、左手でクリックと両手でパソコンをホールドした状態で立ったまま使えるようになっていたのである。
残念ながらLibrettoもCASSIOPEIA FIVAもそうした操作スタイルへの対応をやめてしまって久しいのだが、今回ソニーが「モバイルグリップスタイル」として、初代Librettoや初代CASSIOPEIA FIVAに似た「両手で持つ操作スタイル」を採用したのが非常に興味深い。
結論から言ってしまうと、初代Librettoや初代CASSIOPEIA FIVAのような操作スタイルは、当時は時代が早すぎた。さらには、ポインティングデバイスを使いながらのキーボード入力に問題があったのである。VAIO Uは、過去の同様の入力スタイルを研究した結果のものではないだろうかと思う。
では、初代LibrettoやCASSIOPEIA FIVAはなぜ早すぎたのか。それはインターネットと無線通信環境の普及によるところが大きい。今ではインターネットもこれだけ普及し、PHSカードや無線LAN、ホットスポットサービスなど、モバイルパソコンの主戦場となる外出先でもインターネットが利用できる環境が整いつつあるが、当時は今に比べるとインターネットもそれほど使っている人はいないし、ましてや無線LANなんて影も形もなかった。
たとえば、自宅でメールを受信して、通勤の電車の中で読むなんてことも、電車の中でPHSカードを使ってWebを見ることも、それほど一般的ではなかったのだ。両手でノートパソコンをホールドしながら、ポインティングデバイスを使うというスタイルは、その性質上、パソコンでメール作成や画像の編集など、ユーザー側が積極的に作業をするより、Webやメールの閲覧といった、文字入力が必要のない作業に向いているわけだ。したがって、インターネットや無線通信が普及しておらず、そうした“ブラウズ”の需要が今よりは少なかった時代においては、時期尚早だったのだろう。
使い勝手はどうだろうか
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ポインティングデバイスが上部にある。ソニーお得意のジョグダイヤルも
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サムフレーズ機能。ケータイのPOBoxとほば同じ感覚だ
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キーボードの入力については、LibrettoやCASSIOPEIA FIVAではポインティングデバイスがディスプレイ面にあったため、キーボードを使いたいときは、持ち替えて入力をする必要があった。だが、VAIO Uでは持ち替えることなく、そのまま親指を使ってキーをタイプできる。また、ジョグダイヤルやサムフレーズ機能など、パソコンを両手で持って使った時のユーザビリティに配慮されていることが、過去の同じようなスタイルを採用したノートパソコンと決定的に違う部分なのである。
VAIO Uではキーボードの上面右にポインティングデバイスが、左にボタンが配置されている。ボタンやポインティングデバイスは親指で操作することになる。そのため、両手でパソコンをホールドしながらマウスの操作ができる。また、(手の小さな人にはちょっとつらいけど)そのまま親指を使ってキーボードをタイプできるので、ポインティングデバイスとタイピングの操作を同時に行なえるわけだ。
さらには、ソニーのお家芸「ジョグダイヤル」や、文字入力方式「サムフレーズ」が操作をサポートしてくれるので、両手持ちをしたまま、けっこう快適にパソコンを使えるのだ。
さて、VAIO Uで新たに搭載されたサムフレーズだが、これは「ケータイの文字入力方法をそのままパソコンに持って来てしまった」という入力方法だ。サムフレーズの機能は、キーボードの左上部のマウスボタンの横にある「ThumbPhrase」ボタンを押すと有効になり、画面にサムフレーズのウィンドウが表示される。この状態でキーボードの「123QWEASDZXC」キーのみを使って、日本語を入力することができる。
入力方式はケータイのように1つのキーにいくつかの文字が割り当てられていて、何回かキーを押すことにより希望の文字を入力するというもの。たとえば「1」には「あ行」が割り当てられていて、1回押すと「あ」、2回で「い」というように入力ができる。つまり、フルキーを使わなくても、左手の親指だけで入力できるのである。
ちなみに、サムフレーズにはソニーのケータイなどにも採用されている予測変換機能「POBox」もサポートされているので、快適な文字入力が可能。さすがに長文をサムフレーズで入力するのは無茶だと思うが、長文はキーボードを使いつつ、メールに返事をするときなどちょっとした文章を入力したいときはサムフレーズを使う、と使い分けられるのがなかなか良いのである。
画面は広いが文字が小さい
VAIO Uに搭載されている液晶ディスプレイは6.4インチTFT液晶。表示される解像度は1024×768である。そのため、Windowsの初期設定を変更せずに使うと、文字が非常に小さく、読みにくい。たしかに、表示自体は高精細、かつ鮮明なのだが、さすがに6.4インチの液晶で1024×768の解像度となると、1文字あたりの大きさがかなり小さくなってしまうのである。
たしかに、解像度が大きいというのは、使いやすいことではあるが、ここまで文字が小さいと長時間使ったときに目にぐっと疲労がたまってしまうだろう。このあたりの事情は同じく小さい液晶ディスプレイを搭載していた「VAIO GT」についても同じだ。ただ、VAIO Uではディスプレイの横にある[ZOOM IN]ボタンで、文字の読みにくさを解消する機能が用意されている。
これは、1024×768の解像度で使っているときに[ZOOM IN]を押すと、即座に表示解像度を800×600に切り替えてくれるものだ。800×600では文字の大きさもそれなりになるため、使用感はいい。ちなみに、800×600表示のときにもう一度[ZOOM IN]を押すと、1024×768表示に戻る。たとえば、Webをブラウズ中に文字が小さすぎて読めないホームページがあったら、[ZOOM IN]を押して800×600にしてから読む。読み終わったらもう一度[ZOOM IN]を押して解像度を元に戻すといった使い方が想定される。
ただ、[ZOOM IN]が単に解像度の切り替えで、本当の意味での「ZOOM IN」ではないことが少々気になる。
アプリケーションの中には終了時にウィンドウのサイズを記憶するものが多いが、[ZOOM IN]で解像度を切り替えたときにウィンドウのサイズがリサイズされ、次にアプリケーションを起動したときに、リサイズされたウィンドウのサイズで表示されてしまう現象が発生する。これは[ZOOM IN]が解像度の切り替えを行なっているため、しょうがない問題ではある。だが、[ZOOM IN]が解像度の切り替えではなく、画面は800×600で表示するが、フルスクリーンのサイズは1024×768をエミュレートする、つまり本当の意味での「ズーム」にしたほうが使いやすくなったのではないかと思う。
性能はどうか
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本体背面。このサイズのパソコンとしては十分な拡張性だ
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VAIO Uのスペック面については、詳しいところはソニーのホームページなどで確認していただくとして、特徴的な部分を見ていくことにしよう。
まずは、CPUとメモリ、ハードディスクを見てみよう。CPUはTransmeta Crusoe TM5800 867MHzを搭載。クロックだけを見ると、十二分に高速な印象があるが、採用されているのがCrusoeなので額面どおりの速度ではないのに注意して欲しい。同クロックのPentium IIIに比べると、速度はやや落ちるのがCrusoeの特徴だ。具体的にいうと同クロックのCrusoeはPentium IIIの3割落ちくらいの性能だと言われているので、CPUの性能は昨年以前にリリースされていたPentium III 600MHz搭載のノートパソコンと同等と考えていいだろう。
最新のノートパソコンと比べると性能は落ちるが、Windows XPを利用する上で多大なストレスを感じるというほどではない。メモリは標準で256MB、最大で384MBまで拡張できる。プリインストールされているOSはWindows XP Home Editionなので、メモリ容量は十分だ。ハードディスクは20GB。最近のノートパソコンのハードディスク容量にくらべると若干少なめだが、それほど問題はないだろう。
気になるバッテリでの連続稼動時間についてだが、カタログスペックでは約3時間の連続稼動が可能とある。実際にフル充電の状態からバッテリが切れるまで、エディタを使って文章を書いて見たが3時間を切る程度だった。もちろん、実行するアプリケーションやネットワーク、外部インターフェースの利用の状況によっても変わってくるが、ほぼカタログスペック通りと思ってもよいだろう。
外部インターフェースはPCカードスロット、マジックゲート対応メモリスティックスロットを装備。さらには100Base-TX対応のネットワーク、USBポートを2基、i-Link(IEEE 1394)ポートなどを備える。本体のサイズを考えれば、非常に充実しているといえる。ただ、ネットワークに関しては、有線だけではなく無線のサポートがなかったのは残念だ。もちろん、PCカードスロットに無線LANカードを挿入すれば、解決はする。しかし、やはり無線LANやBluetoothなどの無線通信手段があらかじめ提供されていたほうがVAIO Uのスタイルに合っているのではないだろうか。
また、ノートパソコンでありながらモデムが搭載されていないのも気になる。スペース的な問題もあるだろうが、これは搭載して欲しかった。出張先や旅行先のホテルからネットワークにアクセスするためには、まだまだモデムが必要になるからだ。
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左側面にはPCカードスロットやイヤフォン端子など
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右側面にはマジックゲートメモリースティックスロット
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■ 評価(最高点は★5つ)
イバリ度 |
★★★★★ |
イバれます。VAIO GTの所有者は単なる珍しいパソコンオタクとして思われるケースが多かったですが、今回は公衆の面前で大手を振ってイバれると言ってもいいでしょう。
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実用性 |
★★★★★ |
かなり実用的。個人的に不満な点は[ZOOM IN]ボタンの機能とモデム非内蔵、それとCPUがCrusoeだってことくらい。ただ、普通に使うには十分すぎる仕様を持っているので問題はないでしょう。
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お値段 |
★★★★★ |
値段を見て購入を決めた人も多いかと思います。これは安いでしょう。ソニースタイルでサクッと購入した人も多いんじゃないでしょうか。
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価格 |
14万9800円 |
ノートパソコンは1年で買い換えるので、予想利用時間は1年にしようと思いました。だけど、ここまで小さいと1年経ってもあんまり古くならずに活用できそうな気がします。もちろん、1年後にはもっと性能の良いノートパソコンが色々とリリースされます。でも、とりあえずこのサイズなら、たとえ古くなってもWebブラウザオンリーとかメールクライアントオンリーでも気持ちよく使えそう。現役ノートパソコンじゃなくなったら、無線LANカードをさして、とりあえずトイレにでも置いておきましょうか。きっと、次のWindowsのメジャーバージョンアップまでは快適に使えることでしょう。
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利用期間 |
2年くらい
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1日あたり単価 |
205円
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・ ニュースリリース
http://www.vaio.sony.co.jp/Info/products_020417.html
・ 製品情報
http://www.sony.jp/products/Consumer/PCOM/PCG-U1/
・ ソニー、POBox風の入力インターフェイスを搭載した「バイオU」
(広野忠敏)
2002/05/15 15:16
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