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キーボードは本当に快適か? 「CLIE PEG-NR70V」(前編)
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広野忠敏 昭和37年新潟に生まれる。仕事はライターとプログラマの2足のわらじを履いている状態。どちらかといえばハードウェアよりはソフトウェアや技術的なものが得意である。ちなみに、2足はきこなしているかどうかはちょっと疑問。また、怪しげな小さいものと怪しげなプログラムと新しいものには目がないけど最近はちょっとパワーが落ちてきているかな。 (写真:若林直樹) |
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ソニーから発売された折りたたみ型の新しいCLIEは、ソニーファン、Palmファンじゃなくてもなんとも物欲をそそられる製品だ。実際のところ、ショップで手に取ってみて、買おうかどうしようかしばらく悩んでしまったというPocket PCユーザーも多いのではないだろうか。そんなわけで今回は新型CLIE PEG-NR70Vである。予約開始とともにソニースタイルでクリックし、発売日にゲットできたので2週に渡って詳しいレポートをお送りしよう。今回はNR70Vのハードウェアについてレビューしていきたい。
カッコ良いデザインと先進的なハードウェア
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CLIE PEG-NR70V
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ちまたで話題の新型CLIE(PEG-NR70/NR70V)だが、新型CLIEの特徴は3点に集約される。1つは独特の折りたたみデザインを採用しキーボードを搭載したこと。もう1つは大型液晶とソフトウェアGraffitiを搭載したこと。そして最後の1つはデジタルカメラを内蔵(NR70Vのみ)したことだろう。
CLIEをはじめてみた感想は「をー、なんかカッコいい。液晶が回転するし~」というものだった。実際にこの液晶が回転するギミックを見て、カッコいいと思った人も多いはずだ。閉じられているCLIEのディスプレイパネルを開いた状態はオープンスタイルと呼ばれ、ディスプレイパネルの下に、アプリケーションボタン、スクロールボタンとキーボードが配置されている。この状態でディスプレイパネルを回転させて閉じると、ターンスタイルと呼ばれるディスプレイパネルだけの状態(いわゆる普通のPalmスタイル)にすることができる。このように、開いてキーボードを使える、閉じたらディスプレイだけで使えるというスタイルは、PDAとしてもまったく新しいもので、使いやすいのかといったことや、強度は平気なのかといったことを考えずに、このギミックだけでNR70を購入してしまった人もかなり多いハズである。
ターンスタイル、オープンスタイルの2つのスタイルを採用したことで、従来のPalmデバイスのようにGraffitiエリアを固定で装備するということはできなくなった。2つのスタイルで、ディスプレイの天地が逆になるからだ。そのため、NR70では320×480ドットというPalmデバイスとしてはかなり広いサイズのディスプレイを搭載し、Graffitiエリアがディスプレイに表示(ソフトウェアGraffiti)されるようになっている。ソフトウェアGraffitiにすることによって、Grafittiエリアの機能も拡張されている点が新しい。1つはGraffitiエリアにペンの軌跡が表示されるようになったこと。もう1つは、Graffitiエリアの下部にホーム、メニュー、検索などのアイコンとバッテリー状態、時刻が表示されるようになったことだ。
Graffitiエリアに軌跡が表示されるのは、ソフトウェアGraffitiならではの機能。自分がスタイラスを走らせた軌跡がリアルタイムに表示されるので、Graffitiの入力に慣れていないPalmデバイス初心者にとってはありがたい機能の1つだ。
ソフトウェアGraffitiの隠れたメリット
実は、ソフトウェアGraffitiが採用された大きなメリットがもう1つある。それは、ソフトウェアがGraffitiのエリアを独自に使って全画面表示ができるということだ。すべてのアプリケーションの画面が全画面に表示できるわけではなく、アプリケーション側で対応している必要があるが、ソフトウェアGraffitiのエリアをアプリケーションが利用できるため、大きな画面を使って情報を一度に表示できるようになっている。
残念ながら内蔵のアプリケーションでは、「PhotoStand」のみが全画面表示に対応しているが、続々とNR70の全画面表示に対応したPalmwareもリリースされているのでチェックするのも面白いだろう。ただ、デフォルトアプリケーションがサードパーティやその他のPalmwareよりも低機能というのはPalmの伝統かもしれないが、せっかく全画面表示可能なデバイスなのだから、標準で搭載しているアプリケーションのすべてが対応するのは当然のことなのではないだろうか。ベンダー側のそういう配慮が欠けているから、いまだにPalmデバイスはマニアックなものとして見られているのではないだろうかと思ってしまうのだ。
PalmwareをバリバリにインストールしてPalmの流儀を十分に理解して使い込んでいる人のためだけではなく、パソコン持ってないけどPalmってなんかよさそうだし、って思っている初心者のためにも、ハードウェアに新しく搭載された機能は、標準のソフトウェアで使えるべきだろう。これでは、せっかくの良いハードも初心者にとって絵に描いた餅状態にしかならない。
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ソフトウェアGraffiti
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全画面表示
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また、NR70Vでは300度回転する10万画素CMOSデジタルカメラを内蔵している。記録形式はPictureGearPocket形式またはDCF形式(JPEG)で、320×320・160×120・88×88の3種類の画像サイズで記録することができる。カメラ付きモデル(NR70V)とカメラなしモデル(NR70)の価格差は約1万円。解像度は低いとはいえ、PDAを使っていつでも写真が撮影できるというのは思いのほか楽しい。カメラなしモデルを購入して後で後悔するよりは、さくっとカメラ付きモデルを買うのが精神的にも良いと思うわけだ。
本体にはCAPTUREボタンが装備され、NR70Vが完全に閉じている状態ではなければ、CAPUTUREボタンを押すだけで、CLIE Cameraアプリケーションが起動して、すぐに写真を撮影することができるのは便利。つまり、NR70Vを持っていれば、いつでも、どこでもメモ写真を取ることができるのである。
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カメラ
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CAPUTUREボタン
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オープンスタイル!
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ハードウェアキーボード
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さて、オープンスタイル、ターンスタイルの実際の使い心地はというと、帯に短したすきに長しと言わざるを得ない部分が目に付く。
まずはオープンスタイルの状態だが、オープンスタイルのメリットはハードウェアキーボードで入力ができるということに尽きる。搭載されているキーボードはPDAとしては比較的サイズが大きいため、CLIEを両手で持って親指でタイプするというスタイルでも問題なく文字の入力ができる。GraffitiはキライだけどPalmデバイスはスキ、という人にとっては福音ともいえるだろう。
また、文字を入力するというだけではなく、Ctrlキーとのコンビネーションでコマンドやショートカットの選択ができる。たとえば、[Ctrl]-[H]でホームの表示、[Ctrl]-[M]でメニューを開く、[Ctrl]-[↑][↓]でジョグダイヤルのエミュレートといった感じで、ある程度はキーボードだけでの操作もできるようになっているのは便利な機能だ。ただ、Graffitiで入力できるメニューコマンドやショートカットがハードウェアキーボードで使えるわけではないのが気になる。メニューコマンドがハードウェアキーボードから直接入力できれば、かなり便利だと思うのだが、いかがなものだろうか。
それから、キーボードの配列にもやや疑問が残る。まずは数字について。数字を入力するためにはNumキーを押して数字モードにするか、あるいはFnキーと英数字のコンビネーションで入力する必要がある。これが甚だ使いにくいのである。数字だけを入力するときは問題はないが、そういうことはまれだろう。キーボードを搭載するスペースには余裕があるので、配列を1列増やして数字キーを搭載したほうが良かったのではないだろうか。記号の入力もやりにくく、日本語を入力するときには「、」「。」「ー」などの記号の入力が必要になってくる。ところが「、」「。」はワンキーで入力できるのに対して「ー」はFnキーとNのコンビネーションで入力しなければいけないのはちょっと使いにくい。
気になるターンスタイルの使い心地
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ターンスタイル
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そして、ターンスタイル。このスタイルにするとディスプレイパネルだけの状態にできる。ちょっとデータをブラウズしたいときに便利……と誰もが考えるハズだし、そう使おうとしている人も多いだろう。ちょっとデータをブラウズするだけならキーボードもいらないし。
ただ、アプリケーションキーはキーボード面に装備されているのでターンスタイルにするとアプリケーションキーを押すことはできないのである。多くのPalmデバイスユーザは、ちょっとしたデータのブラウズにはスタイラスは使わないことと思う。アプリケーションキーとスクロールキーあるいはジョグダイヤルを使ってスケジュールやアドレスの確認ができるからだ。
こうした使い方をする人は、NR70をターンスタイルで使うときにちょっと苦労することになる。せっかくGraffiriエリアをソフトウェアでエミュレートしているのだから、ソフトウェアGraffitiエリアにアプリケーションボタンを配置するとか、ターンスタイルにしたときにハードウェアボタンを押せるようにしたほうが、もっと使いやすくなると思うのだがいかがだろう。
ちなみに、私はキーボードを使いたいとき以外は、ほとんどターンスタイルで使うことが多いので、スタイラスの使用頻度が増えてしまった。
・ ニュースリリース
http://www.sony.jp/CorporateCruise/Press/200203/02-0311B/
・ 製品情報
http://www.sony.co.jp/CLIE/
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スタイラス収納部
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スタイラスといえば、スタイラスの収納部分にも問題がある。PalmデバイスやPocket PCなどスタイラスを利用するPDAの多くは、PDAを持ったときにスタイラスを上から差し込むという方式を採用している。NR70では上部にヒンジやメモリースティックスロットがあり、場所的にスタイラスを収納するスペースがないためか、スタイラスは本体の下部から収納するスタイルになっている。これは、スタイラスを奥に差し込むと落ちてこないため問題はなかろう、ということだと思う。
しかし、スタイラスを引っ掛けたりすると、簡単に抜け落ちてしまうことになるのだ。ちなみに、私は購入1週間でスタイラスを紛失してしまった。その後ソニースタイルで予備のスタイラスを購入しようとしたのだが、なんと在庫切れ。きっと同じようにスタイラスを紛失しているNR70ユーザが多いんだろうなあ、と思わず邪推してしまった……。
とまあ、カッコ良い折りたたみスタイルを採用したおかげで、致命的な欠陥とは言わないまでも若干不便な点が目に付いてしまうのだが、こういうちょっとした使いにくい点に目をつぶることができれば、キーボードも付いているし、ディスプレイも大きいので使いやすく感じるのではないだろうか。なにより、オープンスタイル、ターンスタイルの2つのスタイルにスイッチできるのは、イバリ度がかなり高いし、どんどん人に自慢ができる要素のひとつだろう。
(広野忠敏)
2002/04/24 14:04
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