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おとなのおもちゃタイトルGIF
最高に声が聞き取りやすい 三洋 骨伝導電話機「TEL-KU1」
広野忠敏 広野忠敏
昭和37年新潟に生まれる。仕事はライターとプログラマの2足のわらじを履いている状態。どちらかといえばハードウェアよりはソフトウェアや技術的なものが得意である。ちなみに、2足はきこなしているかどうかはちょっと疑問。また、怪しげな小さいものと怪しげなプログラムと新しいものには目がないけど最近はちょっとパワーが落ちてきているかな。
(写真:若林直樹)


 通常、電話の受話器には小さいスピーカーが入っていて、声は空気を伝わって耳に届く。骨伝導電話は音声の振動を直接骨に伝える電話だ。三洋電機の「TEL-KU1」は、骨伝導技術を搭載した電話機で、愛称は「聞きにくかった声が聞こえちゃう」。その名の通り、聞きにくい声を聞こえるようにするための機能が満載なのである。


骨伝導ってなに

骨伝導電話機「TEL-KU1 聞きにくかった声が聞こえちゃう」標準価格7万円
 TEL-KU1がターゲットとするのは、耳がちょっと不自由なユーザー層である。たとえば、孫が生まれたので、実家のじーちゃんやばーちゃんに孫の声を聞かせたいというシチュエーションがあったとしよう。じーちゃんばーちゃんは高齢のせいでちょっと耳が遠く、普通の電話機を使っていると会話に困ることがある。こんなケースではぜひ、ぜひTEL-KU1をじーちゃんばーちゃんにプレゼントして欲しい。なぜならTEL-KU1は、「音声の聞き取りやすさ」に特化した電話機だからだ。

 通常の電話の場合、受話器の穴から相手の声が聞こえる。これは、受話器に音声を再生するためのスピーカーが入っているから。要するに音声は空気を伝わることで耳に到達し、鼓膜で受け取った空気の振動を蝸牛と呼ばれる器官に伝えて、相手の声を聞き取るという仕組みなわけだ。耳に障害を持っている人の多くは、音声(空気の振動)をうまく蝸牛に伝えることができないので、音声が聞き取りにくくなる。また、大きい声は聞こえるけど、小さな声は聞き取れないという人も、鼓膜?蝸牛間のメカニズムに問題のあることが多いようだ。

 骨伝導は、このような耳のメカニズムに問題がある人を救いましょうという技術なのである。骨伝導の受話器では、音声を空気の振動として伝えるわけではない。音声の振動を、頭骨経由で(鼓膜を介さずに)直接蝸牛に伝えるのである。その結果、障害のある箇所を飛び越えて脳に音声信号が伝わるので、耳が不自由な人でも驚くほど明瞭に聞き取れるわけだ。ちなみに、音声信号が「骨」を通じて脳に伝わるようにするための技術なので「骨伝導」と呼ばれているらしい。補聴器などでもこの技術が使われていたようだ。


耳が不自由でなくても十分使える

ごらんの通り受話器には穴がない
 そんなわけでTEL-KU1だが、この電話の受話器にはスピーカーの穴が空いていない。これは、音声を空気ではなく、骨伝導で伝えるからにほかならない。穴が開いてないから音が聞き取りにくくなるんじゃないかという心配はご無用。前述のように、音声の振動は骨を伝わっていくので、しっかり聞き取れるのだ。

 ちなみに、私は耳がそんなに悪いわけではないので、「電話の声が聞き取りにくい」と感じたことはそれほどない。せいぜいが周囲の音がうるさすぎて相手の声が聞こえないと感じるくらいだ。TEL-KU1の受話器を耳にあてても、音声が骨伝導で伝わっているのか、それとも空気を伝わってくるのか、判別するのはかなり困難である。

 なにか方法はないかなと考えてみました。思いついたのが、耳栓をしてしまう方法。耳栓をすれば、音は遮断される。骨伝導の受話器ならば、たとえ耳栓をしていても、明瞭に聞き取れるハズ。実際に試してみると、これは驚き。耳栓をして、空気を伝わる音声が聞き取りにくい状況であるのにもかかわらず、クッキリと電話の音だけが聞こえるのである。

 と、ここでピンときたのが、実はこの電話、耳が不自由じゃなくても活用できるんじゃないかってこと。たとえば、周囲が非常にうるさい環境で電話をしなければいけないとき。普通の電話を使うと、当然のことながら受話器の音声はとても聞き取りにくい。でも、骨伝導の受話器なら、耳栓をしてしまえば「周囲の音を聞かずに、受話器の音だけを聞く」なんてことができるはず。相手に自分の声が伝わりにくいというデメリットはともかく、十分に利用価値はある。一般の家庭ではそうしたシチュエーションは少ないと思うが、職場がうるさい環境にあるとか、工場なんかで使う場合はかなりのメリットがあるのではないだろうか。


耳にやさしい機能も搭載

ボタンも大きく、機能がわかりやすい。数自体も少ない
 ところで、TEL-KU1は骨伝導で音声を伝えるだけではなく、耳にやさしいいくつかの機能も搭載している。ひとつめは、相手の声の大きさを調整する機能。通話中に、本体の「声の大きさ」ボタンを押すと、音量をリアルタイムに8段階で調整できる。デフォルトは1段階目になっていて、最も大きな8段階目に設定すると相当大きな音量になる。

 2つめは、音声のピッチを変更する機能。通話中に「声の高さ」ボタンを押すと、ピッチを「低」「中」「高」の3段階で変更できる。デフォルトの状態は「中」で、当然ながら、「低」に設定すれば相手の声が低く、「高」に設定すれば高くなる。相手の音声が聞き取りにくいときにピッチを変更すれば、聞きやすい音程に調整できるわけだ。たとえば、低い音が聞きとりにくい、高い音が聞き取りにくいと感じる人にはうれしい機能だろう。

 さいごは、リアルタイムに音声のテンポを変えられる「ゆっくり通話」機能。通話中に「ゆっくり」ボタンを押すと、相手の通話速度が75%にスピードダウンする。これまでは、音声の速度を変更すると声の高さも変わってしまうという問題があったが、この機能では音声の高さを変えずに、速度だけを変更するため、聞いていてまったく違和感がない。会話の状況によっては自分の声が反復して聞こえることもあるが、これは慣れてしまえばどうということもない。ゆっくり通話機能は、耳が不自由な人だけでなく、相手の話す速度が速すぎて聞き取りにくいときなどは効果絶大だろう。

 このようにTEL-KU1は、耳にやさしい機能満載の電話だが、電話機自体は非常にシンプルに作られているのも大きな特徴だ。留守番電話機能はないし、電話を受ける、電話をかけるといった基本的な機能のみだ。これは、高齢者をターゲットにした製品だからだろう。いたずらに機能を豊富にして、操作を複雑にしてしまうよりも、なるべく単純で必要な機能だけを搭載し、操作もなるべくシンプルにするというスタイルだ。ボタンも大きいし、使い方も簡単。たしかに使いやすい。いつも複雑な操作の機械に慣れた私としては、ある意味の潔さを感じ、非常に好感が持てたことを付け加えておく。

■ 評価(最高点は★5つ)

イバリ度 あまり人にイバれるような製品ではありません。「骨伝導」のウンチクを語る程度かな。
実用性 ★★★★★
(状況による)
声が聞き取りにくいから電話はイヤ、という人には十二分に実用的。
お値段 ★★ 単機能な電話にしてはやや高価ですけど、必要性を感じて購入するならしょうがないですねえ。
価格 7万円 耳がよく聞こえないと感じる高齢者の方などにプレゼントするときっと喜ばれるでしょう。声が聞こえやすいのはもちろん、なにより操作がシンプルなのがいい。電話線を接続するだけで本体のセットアップができてしまうのも高ポイント。
利用期間 不明
1日あたり単価 不明


・ ニュースリリース
  http://www.sanyo.co.jp/koho/hypertext4/0201news-j/0117-1.html


(広野忠敏)
2002/02/07 11:16

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