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5GBの大容量が魅力のアップル「iPod」
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広野忠敏 昭和37年新潟に生まれる。仕事はライターとプログラマの2足のわらじを履いている状態。どちらかといえばハードウェアよりはソフトウェアや技術的なものが得意である。ちなみに、2足はきこなしているかどうかはちょっと疑問。また、怪しげな小さいものと怪しげなプログラムと新しいものには目がないけど最近はちょっとパワーが落ちてきているかな。 (写真:若林直樹) |
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「ソリッドオーディオファンの皆さん、お待たせしました。これが究極の最終兵器です」と断言してもいいほどのアイテムがアップルからリリースされた。その名は「iPod」。大容量のハードディスクをストレージとして搭載したコンパクトでスタイリッシュなソリッドオーディオプレーヤーなのだ。
なんといっても大容量なのが魅力
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5GBのハードディスク、2インチ(160×128ドット)バックライト付き液晶ディスプレイを搭載。デフォルトで「英語、フランス語、ドイツ語、日本語」の4カ国語の設定ができる。プレーヤーの操作は前面のスクロールホイールとボタンで行なう
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携帯用のソリッドオーディオプレーヤーには、本体に音楽を記録するためのストレージを内蔵しているもの、メモリカードなどリムーバブルのストレージを使うものの2種類が主流だ。多くのプレーヤーは、音楽を記録するためのストレージとしてメモリを採用しているものがほとんどである。搭載されるメモリの容量も64MBから128MB程度のものが多く、MP3やWMAファイルに換算して60分から120分程度だ。
アップルの「iPod」は、携帯用のソリッドオーディオプレーヤーでありながら、5GBもの容量のハードディスクを搭載している点が新しい。この容量すべてを1曲4分程度、128kbpsのMP3ファイルで仮定すると、実に1000曲以上の音楽が記録できるのである。アルバム1枚に10曲程度の曲が入っているとすれば、100枚以上のアルバムをiPodに保存して、いつもそれらの音楽を持ち運ぶことができるというわけだ。
ハードディスクを搭載しているということで、連続再生時間が気になるところだが、カタログスペックによるとフル充電の状態で10時間程度の連続再生が可能。10時間という数字は、この手の携帯用ソリッドオーディオプレーヤーとしてはトップレベルの数字であり、どのような使い方をするにしても必要十分な仕様を満足しているといってもいいだろう。
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本体裏が鏡面仕上げになっているところがなんともアップルらしさを感じる。携帯にはソフトケースが必須かも
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ちなみに、iPodには5GBのハードディスクとは別に、バッファ用に32MBのメモリを搭載している。実際に使ってみると再生している曲を連続してスキップしたときなどでハードディスクへのアクセスが発生している。つまり、ハードディスクは連続で回っているわけではなく、ハードディスクからバッファメモリへデータを転送した後で、音楽が再生されているようなのである。ハードディスクを搭載しているのにもかかわらず、連続10時間もの再生ができるのは、このようにバッファメモリを有効に活用しているためだろう。
iPod本体のサイズは61.8×102×19.9mmで、タバコの箱と比較するとやや大きめ。重さは185gだ。185gという数字を見ると、「軽い」という印象を受けるかもしれないが、実際に手に持ってみると、本体の大きさがコンパクトなため、ずっしりした感じを受ける。ちなみに、最近のケータイは100~120g程度の重さのものが多いが、ケータイと比較してもかなり重いことがわかるはずだ。この大きさと形状からは、胸ポケットに入れて使うというシチュエーションが想定される。だが、ワイシャツの胸ポケットにiPodを入れて、かがんだ拍子に落下したときに、この重さのものがアスファルトに激突するとどのような悲しい影響が起きるのかはおよそ想定できない(ハードディスクも入っていることだし)。さらに、本体の裏面は鏡面仕上げのステンレス。ちょっと落としてしまってキズキズになっちゃったとか、バックの中で色々なものとシェイクしたらキズだらけになっちゃったという事態が容易に予測されるので、ソフトケースなどで保護した上で携帯するのが後々悲しい思いをしないためにも、精神衛生上よろしいといえる。
ターゲットはMacユーザーのみ!
iPodもそうだが、多くのソリッドオーディオプレーヤーは、本体だけでは何もできない。MP3などの音楽データをプレーヤーに転送するためにパソコンが必要になるのだ。iPodがターゲットとするのはFireWire(IEEE 1394)がポートが搭載されたMacintoshのみ。残念ながらWindowsで使うことはできない。iPod付属のソフトウェア、iTunes2をMacintoshにインストールすることで、CDからの音楽のリッピング、MP3ファイルへの変換、iPodへのデータ転送を簡単にできる。
iPodへのデータ転送も非常に簡単。iPodをMacintoshのFireWireポートに接続するだけで、iTunes2が自動的に起動され、保存されているライブラリをすべてiPodに簡単に転送できる。インターフェイスにFireWireが採用されているため、データの転送も非常に高速。ハードディスクにデータをコピーするのと変わらない時間で、iPodに音楽データを転送できるというわけ。もちろん、特定のプレイリストや特定の音楽だけを選んでiPodに転送することもできるし、さらに、Mac OSからはFireWireで接続されたiPodを普通の外付ハードディスクとして使えるというオマケもついている。大容量のデータを運びたいときに活用することができるだろう。また、FireWireでiPodを接続している間は、FireWire経由で電源が供給され、iPodのバッテリーに自動的に充電されるという仕組みになっている。
ところで、一度に大量の音楽データを扱うプレーヤーの場合、目的の音楽データにいかに素早くアクセスできるかどうかが使いやすさのキーポイントとなる。iPodではプレイリスト(iTunes2のプレイリストが引き継がれる)、アーティスト、曲名で一覧を表示可能。プレイリスト一覧から曲名一覧、アーティスト一覧、アルバム一覧から曲を検索できる。ただし、これらは曲名やアーティスト名、アルバム名などのデータが正しく登録されていなければならない。ちなみに、データ中に日本語が含まれていても、ちゃんと表示できる。
iPodの操作は、本体前面のスクロールホイールとスクロールホイールの中央と周囲に配置されたボタンで行なう。次の曲、前の曲の再生と再生、一時停止はスクロールホイールの周囲のボタンでダイレクトに行なうことができる。また、スクロールホイールはメニューなどの項目を選ぶときに、中央のボタンは決定の操作をするときに押す。再生はプレイリストやアーティストごとシーケンスにできるほか、リピート、シャッフルなどの指定もできる。たとえば、特定のアーティストのすべての曲をシャッフルリピートで再生するとか、特定のアーティストの特定のアルバムのみをリピート再生するといったことが可能だ。また、音楽の再生中にはスクロールホイールは音量のコントロールとなるが、スクロールホイールが非常に軽いためちょっと触れただけで、再生中の音楽のボリュームが変わってしまうということが起きる。本体上部のHOLDスイッチをオンにすれば、一切の操作を禁止できるが、音量がスクロールホイールに触れただけで変わってしまうのはいただけない。
また、操作系に関しては本体でしかコントロールできないというのはいまどきの携帯用プレーヤーとしてどうかと思う。一度でも携帯用のプレーヤーを使ったことがあるならわかると思うが、リモコンは必須アイテム。いつも本体に手が届くというシチュエーションで使えるのならば問題はない。しかし、携帯して使うということを想定している以上、さまざまなシチュエーションで使うことも考えたうえで、操作系のデザインをすべきだと思う。たとえば、身動きのとれない電車の中で快適に使えるだろうか? そうした、さまざまなスタイルで快適に使うことができるようにするという回答が、ヘッドフォンケーブルの途中に液晶表示があり、プレーヤーの操作ができるというスタイルなのだ。
あと、電源オフが再生ボタン長押しなのもイヤ。電源切れて欲しいときは、すぐにオフになって欲しいです。それと、ミュートやレベルが一定以上になったら音がそれ以上大きくならない、とかイコライザーなどMDなどの携帯用プレーヤーには普通についている機能がないものちょっとイヤかも。せっかくなのだからカセットテーププレーヤーやMDプレーヤーなどのそうした文化を研究して引き継いで欲しかったと思ったりするわけです。まあ、アップルだからしょうがないんだけどね。
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本体上部のコネクタ類。左からホールドスイッチ、ヘッドフォンコネクタ(ステレオミニプラグ)、FireWireコネクタ。FireWireでMacintoshと接続して、音楽データの転送ができる
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付属のACアダプタもなかなかスタイリッシュなのがなんともアップルらしい。ちなみに、ACアダプタを使わなくとも、FireWireでMacintoshに接続すれば充電ができる。ACアダプタのほかに、FireWireケーブル、ステレオインナーヘッドフォン、iTunes2が付属している
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■ 評価(最高点は★5つ)
イバリ度 |
★★★ |
アップル製品なのでとりあえずイバり度は高し。
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実用性 |
★★★★ |
大容量でバッテリの持ちもいいという意味ではとても実用的です。曲の検索などもかなり使いやすいしね。でも、やっぱリモコン欲しいなあ。
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お値段 |
★★★★ |
他の携帯用ソリッドオーディオプレーヤーと比べると若干高価な部類に入ります。ただし、スペックを考えてみるとかなり戦略的な価格付け。実は結構安いんじゃないかな。
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価格 |
4万7800円(アップルストアにて) |
半年後にはきっと他のオーディオメーカーからも同様のコンセプトの製品がリリースされると予測して、利用期間は半年。スペックもコンセプトもいいんだけど、「パソコンの周辺機器&Macの周辺機器」というところから脱却していない感じをうけます。パソコンの周辺機器として見ればとてもよくできている。だけど、音楽プレーヤーとして見るといま一歩って感じがしちゃうんですよねえ。
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利用期間 |
半年くらい
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1日あたり単価 |
265円
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・ iPod 製品情報
http://www.apple.co.jp/ipod/index.html
・ ニュースリリース
http://www.apple.co.jp/news/2001/oct/24ipod.html
・ アップルストア
http://store.apple.com/0120-APPLE-1/WebObjects/japanstore
・ アップル、5GBのHDDを内蔵したポータブルMP3プレーヤー「iPod」
(広野忠敏)
2001/11/28 11:34
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