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おとなのおもちゃタイトルGIF
自動的に星を追尾するカシコイ望遠鏡「Meade ETX-70AT」
広野忠敏 広野忠敏
昭和37年新潟に生まれる。仕事はライターとプログラマの2足のわらじを履いている状態。どちらかといえばハードウェアよりはソフトウェアや技術的なものが得意である。ちなみに、2足はきこなしているかどうかはちょっと疑問。また、怪しげな小さいものと怪しげなプログラムと新しいものには目がないけど最近はちょっとパワーが落ちてきているかな。
(写真:若林直樹)


 昔、科学大好き少年あこがれの3種の神器といえば、電子ブロック、顕微鏡、そして望遠鏡だった。当時のそうしたハイテクおもちゃをキッカケにして、自分の進む道を決めたり、研究の道に入ったりという人も多いと思う。そうした大人になっても少年のココロを忘れない人にとっては、いつまでも電子ブロックや望遠鏡は欲しいもののひとつなのではないだろうか。そんなわけで、今回のネタは望遠鏡。米国Meade社の「ETX-70AT」である。最近の望遠鏡は「天体を見る」ための性能が向上しているだけではなく、モーターで動いたり、パソコンに接続できたりと子供に遊ばせておくだけじゃもったいないものも多いのだ。


なんといってもオートスター

ETX-70AT
 望遠鏡を使って天体を観察する上で、なくてはならないのが望遠鏡の方角や仰角合わせだ。肉眼で確認できるような星ならば、見たい星を望遠鏡の視野に入れるのはそれほど難しくはない。ところが、肉眼で確認できないような星や星雲を高倍率で観察するのは、天文マニアならいざしらず、素人がやるのは非常に困難な作業。実際には天文ガイド、観察地の日付、時間、緯度や経度を考慮しつつ方角や仰角を計算して、望遠鏡の位置合わせをすることになる。そのため、「興味があって望遠鏡を買ったはいいけど、1等星や月といった明るい天体はともかく、見たかった木星や土星、肉眼では確認できない星雲は見えなかった。結局望遠鏡は2、3回使って押入れの中のコヤシになってしまった」といった経験をした人もいるのではないだろうか。

 ETX-70ATに搭載されているオートスターはこのような望遠鏡の位置合わせに対して明確な回答を与えてくれる素晴らしいギミックなのだ。オートスターにはあらかじめかなりの数の天体データが登録されていて、メニューから望遠鏡で見たい惑星や星雲、銀河などの名前を選ぶと、望遠鏡が自動的に選んだ天体の方向に向いてくれるのである。このギミックのおかげで、せっかく望遠鏡を買ったのはいいけど、見たい星を見ることはできないといったジレンマに陥ることはなくなる。

 望遠鏡のセットアップも非常に簡単。まずは、オートスターコントローラを使って、時刻や日付、観測地などのデータを入力する。次に、望遠鏡の位置合わせをするのだが、この望遠鏡の位置合わせが感動的。あらかじめ鏡筒を水平にして、北の方角に合わせておくだけで、望遠鏡が自動的に位置合わせをサポートしてくれるのだ。位置合わせは、入力された観測地や日付などの情報を考慮して、その地域や時刻に確認できる1等星クラスの明るい星(基準星)が観測できる位置に自動的に方向や仰角を合わせてくれる。実際にはセットアップをしたときに、オートスターのディスプレイに基準星の名前が表示され、内蔵モーターで望遠鏡が自動的に基準星の方向に向いてくれるというわけ。あとは、アイピースの中央にその星を捉えるよう方角や仰角を微調整すれば、正確な望遠鏡の位置合わせが完了する。


これが「オートスター」ここからすべての操作を行なう
 位置合わせをするときに選ばれる基準星は、デフォルトでは自動的に選択されるが、手動で選ぶこともできるようになっている。たとえば、障害物のせいで自動選択された基準星を見ることができないときでも、別の基準星を使って望遠鏡の位置を正確に調整できるのだ。

 こうして望遠鏡をセットアップしたら、あとはオートスターコントローラから見たい天体を選ぶだけで、望遠鏡はモーター音を唸らせつつ自動的に選んだ天体の方向を向いてくれる。天文ガイドなんてなくても、方角や仰角なんて計算しなくても、とってもイージーに天体観測ができるのである。いきなり土星が見たくなったとしても、突然オリオン座大星雲が見たくなったとしても、なーんも考えずに見ることができるのである。また、天体の検索だけではなく、追尾できるのも嬉しい。たとえば、木星の動きを観察したいとか、彗星を追いかけたいといった使い方も非常に簡単にできるのである。

 ちなみに、ETX-70ATのスペックはというと、口径は70mm、焦点距離は350mm、口径比F5のアクロマート屈折望遠鏡。重量は約3kgと非常にコンパクトだ。ETX-70ATは玩具市場とアマチュア天文家市場のちょうど中間にあたる初心者向け製品の位置付けだと考えればよいだろう。本体に付属するアイピースは9mmと25mmの2つで、それぞれ、14倍と39倍の倍率で天体を観察することができる。と、まあ、色々とスペックを書いても「じゃあ、なにがどのように見えるか」ってのはわかりにくいと思うが、実際のところ月面のクレーター、土星の輪、木星の縞模様、肉眼では確認しづらい星雲や星団などが観察できる。


本体付属のアイピース

パソコンと接続してさらにパワーアップ

 ETX-70ATのもうひとつスゴイ点は、オプションのパソコン接続キットにある。ETX-70ATとパソコンを接続すれば、さらにいろいろなことができるのだ。パソコン間とのインターフェイスはシリアルを採用。パソコンとETX-70ATをケーブルで接続し、専用ソフトをインストールすれば、パソコンからETX-70ATをコントロールできるようになっている。

 専用ソフト「ETX/LXナビゲーター」はWebブラウザー(Internet Explorer)ベースのアプリケーションで、今日観察できるオススメ天体のリストや、現在見ている星座のビジュアル表示、選んだ惑星や星雲などの解説を表示してくれるといった天文ガイド機能だけではなく、「ETX/LXナビゲーター」で選んだ天体へと自動的に望遠鏡の位置合わせをしてくれるという機能を持っているのだ。実際にパソコンとETX-70ATを接続して使ってみると、本当に気分はまるで天文台長。実はここは天文台だったのねという気分に浸りきってしまうのだ。

 天体の観測は、周囲の明るさなど環境に左右されることが大きい。現実問題、私が暮らす場所で満天の星を見るなんてことは夢のまた夢。だけど、ETX-70ATがあれば、そうした周囲が明るい星空だったとしても、それなりに天体マニア少年の気分に浸ることができる。それに、ETX-70ATは非常にコンパクトなので、持ち運びも簡単。ドライブに行ったついでに星を見てくるといったこともできるのだ。


今夜のおすすめの星座を教えてくれる。日の出、日の入りの時間もバッチリだ 星座から検索する機能もある

星座のグラフィック表示。ここからワンクリックで望遠鏡を遠隔操作できる
星座盤機能

■ 評価(最高点は★5つ)

イバリ度 ★★★★★ イバりまくり。たとえば、カノジョと高原にいきつつ二人でアンドロメダ大星雲を観察するなんて使い方はいかがでしょうか。「ほら、ここがメーテルの星」とかなんとか…。
実用性 ★★★ 趣味のアイテムなので、実用的ではありません。が、知的欲求を満足させるためのアイテムとしては極めて実用的。
お値段 ★★★★★ これだけできて5万円は、はっきり言って安い。めちゃめちゃ安い。とてもお手頃。
価格 5万円前後 口径が70mmなので、それなりに遊ぶことはできますが、本格的な天体観測には向きません。とりあえずATX-70ATを使ってるうちに、少年の頃の天体へのあこがれっつーかそういう気持ちを思い出しても、ETXシリーズには90mm、127mmといった大口径のラインナップがあるので、大きくなって目の肥えた元少年でも大丈夫。もっと大きくなったちょっとお金持ちの元少年なら、LX90やLX200シリーズがオススメ。200mm以上の口径で、本格的な天体観測を楽しむことができます。っていうか、私はマジでLX90とかLX200シリーズが欲しくなってしまいました。買えないけど。
利用期間 2年くらい
1日あたり単価 約68円


・ Meade Insturments(英語)
  http://www.meade.com/
・ ミック インターナショナル(日本代理店)
  http://www.micint.co.jp/
・ ETX-70AT 製品情報(ミック インターナショナル)
  http://www.micint.co.jp/70AT/home_2.html


(広野忠敏)
2001/09/06 11:22

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