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最強のモバイルパソコンか? パナソニック「PRONOTE AirFG」
広野忠敏 広野忠敏
昭和37年新潟に生まれる。仕事はライターとプログラマの2足のわらじを履いている状態。どちらかといえばハードウェアよりはソフトウェアや技術的なものが得意である。ちなみに、2足はきこなしているかどうかはちょっと疑問。また、怪しげな小さいものと怪しげなプログラムと新しいものには目がないけど最近はちょっとパワーが落ちてきているかな。
(写真:若林直樹)


 パナソニックの「PRONOTE AirFG」は、パソコン本体と液晶ディスプレイ部分が分離可能な、まったく新しい形態のモバイルパソコンだ。AirFGの一般販売10月からの予定ではあるが、発売に先立ち評価機をお借りすることができたのでレビューしてみよう。


ディスプレイ分離型のモバイルパソコン

AirFGのセット。これだけでWindowsパソコンとして動作する
 AirFGの最大の特徴は、PC本体と液晶ディスプレイが完全に分離していることだろう。ノートパソコンに代表される多くのモバイルパソコンは、パソコン本体にキーボード、ポインティングデバイス、そして液晶ディスプレイやさまざまなインターフェイスがされているのが普通だ。

 ところが、AirFGは8.4インチで800×600ドット表示可能なタッチパネル式微透過液晶ディスプレイ「AirLC」と、ハードディスクやCPU、各種インターフェイスを搭載しAirFG本体の2つのユニットで構成される。AirLCでパソコン本体を操作するわけだが、その接続は有線ではなく電波を利用した完全なワイヤレス型となっている。

 無線通信方式は無線LANなどでも利用されているIEEE802.11bで、本体とディスプレイの間では見通し50mの通信が可能となっている。実際に50mも離れることは現実的ではないが、本体をバックの中などに入れておいて、パソコンの操作はAirLCのみできるのだ。

 ちなみに、本体のサイズは200×91.6×52mmで重さは920g。AirLCは222×162×12.5~29.5mmで重さは698gと非常にコンパクトで軽い。また、AirLCの背面にはストラップが装着され、ストラップと本体の間に手を通すことで、AirLCをホールドすることができる。実際に片手でAirLCを持った状態で使ってみたが、使用感はなかなかのものだ。

 パソコン本体の操作はほとんどAirLCを使うわけだが、AirLCにはタッチパネルが装着されているので、パソコンの操作はAirLCに付属するスタイラスで液晶面をタップして行なう。また、AirLCにはキーボードはないため、文字はソフトウェアキーボードを使って入力する。

 AirLCとパソコン本体間の通信は、Windowsの画面を転送するという方式だ。画面だけを転送するのだが、さらに表示に必要な部分だけにしぼって転送することで効率化を図っている。そのため、ワイヤレスではあるがそれほどストレスを感じることなく操作できる。普通のノートパソコンなどと比較すると若干レスポンスが悪いが、操作ができないほど遅いというわけではなく、十分に実用になるスピードだった。


AirFG本体。この大きさで、耐衝撃設計のハードディスクやバッテリ(2台)を内蔵 AirLCの8.4型液晶は800×600ドットのSVGA表示が可能。ちなみに右クリックは本体右側のボタンを押してから画面をタップする

耐衝撃、防滴性能もバッチリ

AirFGは簡単に「瓦割り」できそうな薄さだが、マグネシウム合金やスポンジ、インターナルダンパーにより耐衝撃性を確保している
 ところで、パナソニックのPRONOTEシリーズといえば、耐衝撃や防滴性能を持ち、劣悪な環境でも使える製品がラインナップされていることで有名だ。もちろんAirFGでも耐衝撃・防滴についてキチンと考えられていて、本体、液晶ディスプレイ部共に120cmからの落下試験や防滴試験にパスする性能を有している。従来のPRONOTE FGシリーズでは落下試験は90cmだったので、これまでにない非常に堅牢かつ頑丈な作りになっているわけだ。しかし実際に本体やAirLCを触ってみると、堅牢な割には非常にコンパクトにまとまっているという印象を受ける。

 さすがに、借りている製品なので本当に落下してもダメージがないかとか、水をかけても平気なのかなんていうテストはできないが、普通のノートパソコンが使えないような劣悪な環境でも利用できるのは確かだろう。

 ちなみに、搭載されているCPUは超低電圧版Pentium III(300MHz)、ハードディスクは5GB、メモリは64MBで本体にはType2のPCカードインターフェイスを備えている。また、バッテリはAirFG本体とAirLC共に同じ規格のリチウムイオンバッテリを利用している。AirLCはバッテリを1つ搭載でき、バックライト消灯時は連続5時間(バックライト点灯時は2.5時間)、本体にはバッテリを2つ搭載でき、連続4時間の稼動が可能だ。ちなみに、本体にはバッテリを2つ搭載するのだが、一方のバッテリを装着したまま他方のバッテリを交換するといったことも可能。稼動させながらバッテリを交換できるのだ。


で、使ってみた

AirLC側は、成人男子ならば片手で「グワシ」とつかめる
 AirFGについての製品情報はパナソニックのページにもあるので、細かいスペックについてはそちらをご覧になっていただくものとして、しばらく使ってみて感じたことを書いてみることにしよう。なお、使った製品は「評価機」であり、実際の製品とは異なる可能性もあることをあらかじめお断りしておく。

 まず、驚いたのがAirLCとAirFG本体共に、非常にコンパクトに作られていること。たしかに、無線でパソコンを使えるのは便利だが、操作部がコンパクトでも本体がヘビーでははっきり言って使い物にはならない。だが、AirFGは本体とAirLC共にとてもコンパクトで、たとえば本体をディバッグに入れてもじゃまにならないし、クルマのダッシュボードなどにも余裕で収まる。また、本体を腰にぶらさげて使うなんて使い方をすることもできるはず。


異常に分厚いゴムのフタがついているので、ホコリっぽい環境でも大丈夫。AirLC側にシリアルがついているのは、おそらくバーコードリーダなどを繋げるためだろう
 おまけに頑丈で、衝撃やチリ・ホコリ・水にも強いというメリットもある。本体やAirLCはコンパクトではあるけれど、たとえばPCカードスロットや各種コネクタなどはかなりゴツくて分厚いゴムのフタでばっちりカバーされている。このあたりの、スマートではないが質実剛健という姿勢が、安心感を気持ちよく加速させてくれたりするのだ。これならば、今まではパソコンを使うことを考えられなかったフィールドで使うことも十分に可能だろう。

 レスポンスに関しては、処理速度は最新のノートパソコンなどに比べるとやはり貧弱である。最新のノートパソコンはPentium III 600MHzなどを搭載しているのに比べ、AirFGではだいたい半分のクロックである300MHzで動作する。ワイヤレスで使うメリット、堅牢であるというメリットを十分に理解でき、スピードや処理能力に関してはある程度妥協できるという人が買うべきマシンであると言える。とても面白いパソコンではあるが、価格がやや高価なのもちょっと気になるところだ。

 AirFGを実際にワイヤレスで使うときは、まずAirFG本体の電源を投入し、Windowsが完全に起動した後で、AirLCの電源を入れると無線でのネゴシエーションが行なわれ、AirLCで本体を利用できるようになる。つまり、Windowsが正常に起動しないとAirLCで操作をすることはできないというわけ。

 たとえば、ブルーバックが表示されてWindowsが起動できないとか、あやしいソフトをインストールしたおかげでWindowsが正常に起動できなくなる、うっかりレジストリを壊してしまってWindowsが起動できないなんていう状態になってしまうと、外部インターフェイスとしてPCカードスロットとシリアルのみを搭載したAirFGだけでは、なにもできなくなってしまうのだ。まったくトラブルのないOSで、常にOSが起動して必ずAirLCでコントロールできるということならば何も問題はないが、不安定になってしまうと本体でリカバリすらできないというのはやはり気になる。


ポートリプリケータにはプリンタポートやPS/2ポートまでついている。たぶん企業では、複数台のAirFG+1個のポートリプリケータという体制で運用するんでしょう
 ただ、別売りのポートリプリケータを本体に装着すると、CD-ROM、外部ディスプレイ、マウス、キーボードなどを利用できる。つまり、普通のデスクトップパソコンと同じように利用できるため、ポートリプリケータを装着した状態でリカバリやOSの再インストールなどを行なうことが可能だ。そのため、もしAirFGを使おうと考えているのならば、オプションのポートリプリケータは必携だといえる。ちなみに、ポートリプリケータはAirFG発売の1カ月後にリリースされる予定だ。

 ところで、AirFGは元々は企業ユーザー向けの製品であるため、パソコンショップなどで市販されることはない。だが、個人でもパナソニックのショッピングサイト「パナセンス」で購入することができる。発売は10月を予定しているため、納品されるまではまだ時間がかかるが、「パナセンス」で予約を受け付けているので興味がある人や、イバりたい人は予約してみるのもいいかもしれない。



■評価(最高点は★5つ)
イバリ度 ★★★★★ いやー、久しぶりのイバれる製品ですね。個人でこれを購入したら、もうイバるしかないでしょうという感じ。
実用性 ★★★ 最新のノートパソコンと比べるとやや非力。だけど、ワイヤレスでかつ堅牢な作りなので、色々と使えるフィールドが広がるのが楽しいところ。たとえばバイク乗りの人でも、バッグに本体を入れて、ついでにPCカードのGPSユニットをつないで、GPSアンテナをヘルメットにつけて、バイクのタンクに装着したAirLCに地図を表示しつつツーリングするといったこともできます。
お値段 ★★ パナセンスの販売価格は34万5000円。ただ、この値段を出せば、もっと性能の良いノートパソコンを買うことができます。ワイヤレスによる快適な操作と堅牢性に価値を見出せるならば買いかもしれません。
価格 34万5000円 いやー、結構ハマりました。とても面白いしエキサイティングな製品です。ポートリプリケータが別売りで、ポートリプリケータがないとOSの再インストールすらできないというのがちょっと気になるところではあるけれど、とても面白いですね。実際にAirFGを使うよりも、むしろAirFGをどうやって使おうかって考えることの方が楽しいかもしれません。というわけで、とてもイマジネーションをかきたてられる、近未来SF的な製品です。もうちょっと値段が安かったらホントに買うんだけどねえ。あーでも、欲しいなあ。
利用期間 1年
1日あたり単価 945円


・ AirFG製品情報
  http://www.panasonic.co.jp/pc/prod/note/07/index.html
・ ニュースリリース
  http://www.matsushita.co.jp/corp/news/official.data/data.dir/jn010626-2/jn010626-2.html
・ AirFGの活用事例紹介
  http://info.nikkeibp.co.jp/pcpd/onlyone/cf07_j1.html
・ パナソニックのビジネス向けパソコン
  http://www.panasonic.co.jp/pc/bpc/
・ パナソニックの通販サイト「パナセンス」
  http://www.sense.panasonic.co.jp/


(広野忠敏)
2001/08/08 00:00

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