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コンパクトH/PC「HP jornada 720」
広野忠敏 広野忠敏
昭和37年新潟に生まれる。仕事はライターとプログラマの2足のわらじを履いている状態。どちらかといえばハードウェアよりはソフトウェアや技術的なものが得意である。ちなみに、2足はきこなしているかどうかはちょっと疑問。また、怪しげな小さいものと怪しげなプログラムと新しいものには目がないけど最近はちょっとパワーが落ちてきているかな。
(写真:若林直樹)


 Windows CEを搭載するH/PCには、フルピッチキーボードを採用したノートパソコンに近いサイズのものと、小さなキーボードを採用したよりコンパクトなモデルがある。NECのモバイルギアIIは前者にあたり、NTTドコモのシグマリオンは後者にあたる。私的にはフルピッチキーボードのH/PCよりは、よりコンパクトなサイズのH/PCの方が好きだ。そんなわけで、今回はヒューレットパッカードより発売されたコンパクトなH/PC「hp jornada 720」を見ていくことにしよう。


H/PCにはいろいろあるが

hp jornada 720。オープンプライス、12月9日発売。実売価格は10万円を切るていど。CPUにはStrongARM SA1110 206MHzを採用、56kbpsモデム内蔵。OSはマイクロソフトのWindows Powered Handheld PC 2000日本語版を搭載
 現在発売されているH/PCを分類すると、キーボードが小さくコンパクトでハーフVGA液晶が搭載されたモデル、フルピッチキーボードとハーフVGA液晶が搭載されたモデル、VGA以上の液晶が搭載されたモデルの3つに分けることができる。

 Windows CE市場で最も元気があるのが、フルピッチキーボードとハーフVGA搭載のモデル。たとえば、NECのモバイルギアIIなどがそれにあたる。フルピッチキーボードを搭載したモデルは、もちろん入力もしやすいのだが、なにせデカい。大きさだけを比べるとVAIO C1などのコンパクトなサブノートパソコンとあんまり違いがなかったりするわけ。おまけに最近のCrusoeを搭載したサブノートは標準バッテリで普通に使っても5時間くらいは使える。もちろんH/PCの方が軽くてバッテリの持ちもいいのだが、サブノートパソコンとフルピッチキーを搭載したH/PCとの差がなくなりつつあるのが現状なのだ。

 jornada 720はH/PCの3つの分類のうち、最もコンパクトなモデルの一つ。ちなみに、NTTドコモのシグマリオンなどもこのカテゴリに入る。本体のサイズはフルピッチキーボードを搭載したH/PCよりも二回りくらい小さく、キーボードの大きさもかなり小さいのが特徴だ。

 サイズがコンパクトなのは、持ち歩くときに真価を発揮する。フルピッチキーボードのH/PCやサブノートパソコンを持ち歩くときは「さあ、これから持って行くぞ」って心構えが必要だったりするのだが、jornada 720くらいのサイズになると、気軽にバッグの中やポケットに入れて持ち歩くことができるのだ。あんなに小さいキーボードなんて打ちにくそうって思う人もいるかもしれないが、大丈夫。慣れればブラインドタッチも出来るようになります。ちなみに、この原稿もjornada 720で書いています。

 H/PCを情報端末として使うときも、サイズがコンパクトなのは大きなメリットだ。jornada 720に用意されている通信手段は、内蔵のモデムのみだが、PCカードを使うことができるため、携帯電話用のPCカードアダプタやP-in comp@ctなどのPHS内蔵カードを使えば、いつでもインターネットに接続できる環境を作ることが可能。jornada 720程度のサイズなら歩きながら片手でなんとか使うこともできる。さらにWindowsのInternet Explorer 4相当のブラウザも内蔵されているため、大抵のページを見ることができるハズだ。



■ jornada 680/690との違いは?

jornada 720
本体裏側の右手にCFカード(Type I)スロットを、左手にはPCカード(Type II)スロットを搭載。jornada 680/690ではCF/PCカードスロットの強度に問題があったが、jornada 720では改善された。このサイズでCFカードとPCカードの両方を使えるのは嬉しい
jornada 720
jornada 680/690ではボイスレコーダのコントロールスイッチだった部分は、Windows Media Playerのコントローラに変更された。Windows Media Playerの起動や音量の変更は、本体を閉じたままの状態でコントロールできる。ステレオヘッドフォン端子も装備されているので、携帯用音楽プレーヤーとして使うこともできる

 ところで、jornada 720はjornada 680/690の後継機なのだが、どこがどのように変わったのだろうか。

 まずは、処理スピード。jornada 680/690ではSH3のCPUを採用していたが、jornada 720ではCPUがStrongARMに変更された。StrongARMって聞きなれないCPUだって思うかもしれないが、そのとおり。国内でリリースされているH/PCにはStrongARMを搭載しているものは存在しない。たいていはMIPSのRシリーズか日立のSHシリーズが搭載されているのだ。jornada 720では、このようにCPUが変わったため、jornada 680/690で使っていたソフトをそのまま使うことが出来ないので注意が必要となる。また、StrongARMは国内ではマイナーなCPUなのでjornada 720で動作する国産のオンラインソフトの数も非常に少ないのが現状だ。

 ハードウェア面でも多くの改良がされている。まず、ステレオヘッドフォン端子が追加された。本体にインストールされた、Windows Media Playerを利用して、WMA(Windows Media Audio)やMP3などの音楽をステレオで再生することも可能だ。Windows Media Playerの搭載により、外部のスイッチもWindows Media Playerをコントロールするスイッチに変更された。外部のスイッチを使えば、本体が閉じた状態でWindows Media Playerを起動することや、再生のコントロール、音量の変更が可能。つまり、ソリッドオーディオプレーヤーとしてjornada 720を使うことができるのだ。

 また、CFカード、PCカードのインターフェイスに改良が加えられた。jornada 680/690ではPCカードを挿入すると、本体下方向にCFカードスロットの部分がせり出すようになっていて、この部分のメカニズムは壊れやすかったのだが、jornada 720では改良が加えられ、CFカードもPCカードもスッキリと収まるようになった。

 大きな改良はこんなところだ。あとは、内蔵のアプリケーションが若干違ったり、HPC2000に対応したことによる違いなどがある。


シグマリオンとの違いは?

クレイドルにドッキングしたjornada 720。デスクにこの状態で置いてあるとなかなかカッコいい。Windowsパソコンとの接続はデフォルトではUSBだが、シリアルインターフェイスも内蔵している
 さて、このクラスのH/PCとなると、NTTドコモのシグマリオンと比較してみたいと思う人も多いだろう。もちろん、用途によってシグマリオンにするか、あるいはjornada 720にするのかは違ってくる。そこで、いくつかの項目でjornada 720とシグマリオンを簡単に比較してみることにしよう。

 まずは通信手段。シグマリオンはPDC、DoPa、PHSなどのインターフェイスを内蔵し、オプションのケーブルを用意すれば携帯電話やPHSで通信が可能だ。一方のjornada 720では、通信手段は内蔵のモデムのみ。本体のみでは携帯電話やPHSを使っての通信は出来ない。そのため、jornada 720を使った屋外通信手段はP-in comp@ctなどのカードを使うしか方法はない。

 次に拡張性。jornada 720はCFカードスロット(Type I)とPCカードスロット(TYPE II)、そしてスマートカードスロットを装備している。一方のシグマリオンはCFカードスロット(TYPE II)のみだ。jornada 720のCFカードスロットはType Iの規格であるため、P-in Comp@ctやCFのネットワークカードなどのハードウェアは利用できない(物理的に装着できないのだが..)、しかし、P-in comp@ctはPCカードアダプタで利用することができるし、なによりCFカードスロットにフラッシュメモリを、PCカードスロットにはネットワークカードやPHS内蔵のカードなどを装着することができるため、自由度が高いといっていいだろう。

 そして、搭載OSが違うのも見逃せない点。シグマリオンはMicrosoft Windows CE Handheld PC Professional Edition Ver.3.0規格のCEマシン。jornada 720はMicrosoft Windows Powered Handheld PC 2000(HPC2000)規格のCEマシンである。OSや内蔵のIEのバージョンもjornada 720の方が新しい。またjornada 720では、HPC2000に標準搭載されているWindows Media PlayerでMP3などの音楽を再生して、ステレオで楽しむことができるが(jornada 720にはステレオヘッドフォンジャック搭載)、シグマリオンはステレオで再生する手段はない。

 さらに、ActiveSyncでWindowsとシンクロをする際のインターフェイスは、シグマリオンはシリアル、赤外線だけなのに対して、jornada 720はUSB、シリアル、赤外線の3つがサポートされている(シリアルで使うにはケーブルが必要)。私のようにシリアルポートを搭載していないノートパソコンをメインに使うユーザにとっては、USBでパソコンとH/PCをシンクロ出来るのは非常に嬉しいことだ。

 というわけで、jornada 720とシグマリオンは本体のサイズは同等なのだが、色々な部分が微妙に異なっている。どちらを選ぶかは用途によるだろう。たとえば、ケータイを繋いでお外で通信したいって人がjornada 720を買ってしまうと困ったことになってしまうし、また、携帯用音楽プレーヤーとしても使いたいって人がシグマリオンを買ってしまうと、これまた困ったことになってしまうハズだ。結局のところ適材適所ってことだよね。



■評価(最高点は★5つ)
イバリ度 ★★★★  まずは、PHSカードなどを使って移動用インターネット接続環境を構築しよう。それから存分にイバってほしい。シグマリオンユーザにイバるときは、デスクトップの壁紙(Windows Powerd Handheld PC 2000のロゴ入り)を見せるだけでOK。ただし反撃されても当方は関知しません。
実用性 ★★★  jornada 680/690と比較すると処理速度はかなり高速。ただし、CPUがStrongARMなのでjornada 720で動作するオンラインソフトなどを探すのが少し大変。jornada 680/690の資産を活かすことができないのもツらい。さらに、標準での通信環境がやや貧弱なのも気になる点だ。
お値段 ★★  スペックを見るとこの値段でも決して高くはないと思う。だけど、やっぱりちょっと割高感は否めないかな。
実売価格 9万8000円程度 このサイズが最高。HP200LXから脈々と受け継がれているという、大きくもなく、小さくもないサイズがいい。これより大きくなってしまうと、ポケットに入らなくなる。そして、これより小さくなってしまうと使いにくくなるだろうという微妙なサイズ設定がいいのだ。もちろん、メインのマシンとしては使えない。だけど、ちょっとメモを取りたいとか、ちょっと原稿を書きたい(笑)、なんていうことにjornadaがあると、さっとバッグから取り出して、さくっとメモを取ったり原稿を書いたりできる。そういった気軽さと共に、小さいながらも打ちやすいフルキーを搭載していることによる安心感。それが、たまりません。とにかく色々な意味でバランスが取れたマシンだといえる。
利用期間 1年
1日あたり単価 268円




URL
  ニュースリリース
  http://www.jpn.hp.com/Corp/pressreleases/fy2001/cbo01jornada.htm
  hp jornadaシリーズのホームページ
  http://www.jpn.hp.com/hho/jornada/


(広野忠敏)
2000/12/14 00:00

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