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振り向けば画面も振り向くヘッドマウントディスプレイ ソニー「PUD-J5A」
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広野忠敏 昭和37年新潟に生まれる。仕事はライターとプログラマの2足のわらじを履いている状態。どちらかといえばハードウェアよりはソフトウェアや技術的なものが得意である。ちなみに、2足はきこなしているかどうかはちょっと疑問。また、怪しげな小さいものと怪しげなプログラムと新しいものには目がないけど最近はちょっとパワーが落ちてきているかな。 (写真:若林直樹) |
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ヘッドマウントディスプレイ(以下HMD)は、数ある製品の中でも最もサイエンス・フィクションの香りが高い製品で、筆者が最も好むジャンルの製品でもある。今回取り上げるソニーのHMD「PUD-J5A」は、今までのHMDとは一味違った製品。単にHMDで映像を見るというだけではなく、HMDにセンサーを内蔵。プレイステーション2の対応ゲームを利用すれば、ゲームで頭を向けた方向を検出して、それにあわせて画面を表示することが可能な画期的な製品なのである。
かなりサイバーな外観のHMD
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PUD-J5Aを装着した筆者
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はじめにHMDとは何かということを簡単に紹介してみよう。MHDとはその名前が示すように頭部(ヘッド)に装着(マウント)するディスプレイのこと。通常HMDには小さい液晶ディスプレイが搭載されていて、液晶ディスプレイに映像が投影される。実際に目で見る映像は、液晶ディスプレイを直接覗くわけではなく、レンズやプリズムで光学処理された映像になるため、小さい液晶を使っているのにもかかわらず、比較的大画面の映像を楽しむことができるようになっているのである。
ソニーの「PUD-J5A」はどのようなHMDなのだろうか? 最も特徴的なのはその外観だといえる。まずは製品を装着した写真をご覧になって欲しい。まさに、サイエンス・フィクションの世界。気分はまるでSF映画の主人公に見えるのではないだろうか。この状態をカッコ良く感じるかどうかは人それぞれだとは思うが、サイバーでサイエンス・フィクション的なものが好きならば、PUD-J5Aの形を見ただけでも買ってしまおうって気持ちになるかもしれない。
他社製の多くのHMDはディスプレイ部をメガネのように装着するというものが多いが、PUD-J5Aではディスプレイ部とヘッドフォン部が一体になった形状になっている。ヘッドフォンが一体になっているために、装着感はすこぶる良い。プレイステーション2と接続して、ゲームを楽しむことを前提に作られているため、激しく頭を振ってもびくともしないようになっているわけだ。また、ヘッドバンドの長さ調整、HMDユニットと顔までの距離なども調整できるので、どんな顔の大きさだろうとフィットできるようになっている。
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手元を見たいといったときには、外さなくてもちょっと上にずらせばよい
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PUD-J5AのHMDユニットは上に跳ね上げることができるようになっている。たとえば、PUD-J5Aを装着した状態で、ちょっと手元を見たいといったときも、PUD-J5Aを外すのではなく、HMDユニットだけをちょっと上にずらせばよい。HMDユニットを完全に跳ね上げると、ユニットはヘッドバンドの上にくるため、PUD-J5Aをヘッドフォンの代わりに使うこともできる。
なお、PUD-J5Aは0.44インチ18万画素の液晶を搭載。HMDで映像を見ると、約2m離れた場所で42インチ程度の映像を見ているような感覚だという。実際にHMDで映像を見てみるとたしかにそんな感じに見える。だだ、リアルな42インチ画像を見ているというよりは、なんとなく手を伸ばせば届きそうな感じの映像が投影される。液晶ディスプレイの解像度がそれほど高くないため、小さな文字などはやや見難いが、十分に実用になる程度のクオリティだといえるだろう。
アクショントラッカーでゲーム酔い!
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エナジーエアフォース
(タイトー)
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PUD-J5Aの最大の特徴は「ヘッドアクショントラッカー(HT)機能」を搭載していること。PUD-J5Aには、センサーが搭載され、ヨー、ピッチ、ロールの2つの頭の動きを検出することができるようになっているのだ。頭(ヘッド)の動き(アクション)を追う(トラック)ことができるため、ヘッドアクショントラッカーと言うらしい。ヨーは頭を回転させる方向の動きで360度。ピッチは頭を上下に動かす方向の動きで、上下に90度ずつ。ロールは頭を傾ける方向の動きで、左右に60度ずつの動作を検出することができるようになっている。
頭の動きを検出して一体何をするのかといえば「ゲーム」だ。PUD-J5Aをプレイステーション2とUSBで接続すれば、PUD-J5Aで検出した「動き」をプレイステーション2のゲームで利用することができるのである。ただ、どんなゲームでも良いかというと、そうではなく、HTに対応したゲームが必要になる(ただ映像を見てプレイするだけならHT対応ゲームでなくても可能)。たとえば、PUD-J5Aを装着して、後ろを振り向くとゲームの画面もそれに合わせて後方視点になるとか、上を見るとゲームの画面も上を見たものになる、なんてことがPUD-J5Aで可能になるのである。
現在発売されているプレイステーション2用のゲームで、HTに対応しているのはタイトーから発売されている「エナジーエアフォース」のみ。エナジーエアフォースは、戦闘機による空中戦を体験できるコンバットフライトシミュレータだ。普通、この手のコンバットフライトシミュレータの画面といえば、コクピットが中心。プレイヤーは戦闘機を操縦してゲームをプレイすることになる。
では、PUD-J5Aを接続して「エナジーエアフォース」をプレイするとどうなるか。プレイ画面はPUD-J5Aを接続していないときと同様だが、頭の動きにあわせてプレイヤーの視点がスムーズに変わるのである。通常の画面は、中央にコクピットのHUD(ヘッドアップディスプレイ)が配置された画面だが、ちょっと首を下に動かすと画面もそれに合わせて移動し、コクピット内の計器が見れるようになる。首を上に動かせばゲームの画面も上を見たときの画面に、左右に振れば戦闘機から左右の景色を見渡すことができる。つまり、頭の動きにあわせて、ゲーム画面の視点がリアルタイムに変わるというわけ。とても臨場感のあるプレイが可能になのだ。たとえば、視界の右上に敵戦闘機を発見したとしよう。頭を右上に向けると、それにあわせて画面がスクロールし、敵戦闘機は画面の中央にくるといった感じでのプレイが可能になるのである。
HMDに投影したゲームのプレイは、視界がゲームの画面だけになるため、臨場感はテレビ画面の比ではなくなる。それに加えて、頭の動きに連動してゲームの画面もリアルタイムに変わってしまうのだから臨場感はさらに加速する。コントローラを操作して、戦闘機を旋回させつつ、頭をぐるぐる回して回りを見渡すなんてことをやった日には、ゲーム酔いしてしまうこと必至なのである。
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PUD-J5Aを装着したときのイメージ
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外部機器の映像を投影可能
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インターフェイスボックスにはS-VIDEO入力端子とAV入力端子もある
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プレイステーション2の周辺機器としての機能がクローズアップされているPUD-J5Aだが、もちろんAV機器のディスプレイという用途で使うこともできる。PUD-J5AのインターフェイスボックスにはS-VIDEO入力端子とAV入力端子があるので、DVDプレーヤーやビデオデッキなどで再生した映像をPUD-J5Aで楽しむことができるようになっている。部屋が狭くて大画面TVを置けない人や、人に知られずに一人で映像を楽しみたい人は、PUD-J5Aをプレイステーション2以外でも活用することもできるハズ。また、HMDで映像を見るときは、その映像以外を見ることはできない。つまり、どっぷりと、その映像だけの世界に浸ることができるのである。
ただ、残念なのは電源が必要なこと。本体に付属したACアダプターで電源を供給しないと、PUD-J5Aを駆動することができないのである。つまり、AC電源が供給できる場所でしか使うことはできないというわけ。ポータブルDVDに接続して、電車の中で映画を見るといった使い方が出来ないのは少々残念な部分ではある。とはいっても、電車の中でHMDをつけて一人の世界に入り込んでしまうと、色々な意味で目立ってしまうので避けたほうがいいのかもしれないが。
■ 評価(最高点は★5つ)
イバリ度 |
★★★★★ |
気分は、「STARTREK The Next Generation」のジョーディ・ラフォージだったり、「X-Men」のサイクロップスだったり、ロボコップだったりというわけで、かなりサイバー。あんまり人に見せるようなものではありませんが、目撃した人は……きっとびっくりするでしょうね。 |
実用性 |
★★★★ |
ゲームの周辺機器だけにとどまっていないところが、ある意味実用的といえるのではないでしょうか。 |
お値段 |
★★ |
HMDとしては比較的妥当な価格帯だったりします。他社製のHMDも5万円くらいの価格帯です。PUD-J5AはHTという付加価値があるので、この値段は安い部類にはいるでしょう。でも、おもちゃとしてみると高価かな。 |
価格 |
5万9800円 |
HMDは光学機構上「そこには存在しないものを見ている」という状況を作り出しています。そのため、目に負担がかかり長時間利用すると疲れてしまいます。特に、投影されている映像がゲームだったりすると動きが激しいので、疲れは倍増。PUD-J5Aは視界も連動するので疲れは3倍。ただ、寝付けない夜などがあったときは、HMDでゲームをやるのは効果的。適度に疲れてぐっすり眠ることができます。ハマりすぎで眠れなくなってしまう恐れもありますが……。 |
利用期間 |
6カ月 |
1日あたり単価 |
332円 |
・ ニュースリリース
http://www.sony.co.jp/SonyInfo/News/Press/200209/02-042/
・ エナジーエアフォース
http://www.ea-web.com/
(広野忠敏)
2002/10/10 17:31
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