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iPodキラーになるのか? 東芝「GIGABEAT」
広野忠敏 広野忠敏
昭和37年新潟に生まれる。仕事はライターとプログラマの2足のわらじを履いている状態。どちらかといえばハードウェアよりはソフトウェアや技術的なものが得意である。ちなみに、2足はきこなしているかどうかはちょっと疑問。また、怪しげな小さいものと怪しげなプログラムと新しいものには目がないけど最近はちょっとパワーが落ちてきているかな。
(写真:若林直樹)


 5GBのハードディスクとバックライト付き液晶ディスプレイを搭載、10時間以上の連続再生ができるポータブルオーディオプレーヤーというとAppleの「iPod」を思い浮かべるかもしれない。東芝から発売された「GIGABEAT」は、5GBのハードディスクを搭載し、iPodを凌駕する連続18時間の再生が可能なポータブルオーディオプレーヤーなのだ。はたしてこのGIGABEAT、本当にiPodキラーになるのだろうか。


大容量のハードディスクを搭載

「GIGABEAT」。5GBのハードディスクを内蔵し、MP3、WMA、WAVの再生に対応。実売価格は5万円程度
 東芝の「GIGABEAT」は記録メディアにハードディスクを採用したポータブルオーディオプレーヤーだ。いままで発売されてきた多くのポータブルオーディオプレーヤーは、記録メディアとして64MBから128MBの内蔵メモリ、あるいはメモリースティックやSDカードといった外部記録メディアを利用するものがほとんどだ。こうした、記録メディアにメモリを採用しているポータブルオーディオプレーヤーは、一度に持ち運べる曲が少ないというデメリットがある。たとえば、メモリ容量が128MBの場合、120分程度の曲しか記録できないわけである。

 GIGABEATは携帯用のオーディオプレーヤーながら、5GBの容量を持つハードディスクを搭載している。ちなみに、5GBというと、128kbpsのビットレートのMP3データ換算で、1曲4分程度と仮定すると、実に1000曲以上記録可能。アルバムに10曲程度が入っているとすれば、100枚以上のアルバムを一度に保存できるわけだ。

 詳しいレビューに入る前にGIGABEATのスペックを簡単に紹介してみよう。先にも書いたように、記録メディアは5GBのハードディスク。ちなみに、ハードディスクは本体に内蔵されているわけではなく、同社のPCカード型ハードディスク「モバイルディスク」が利用されているので、ハードディスクのみを取り外してノートパソコン等で使うこともできる。

 本体のサイズは72.5×22.3×112mm(幅×高×厚)とタバコの大きさよりも一回り大きなサイズ。3世代くらい前のMDプレーヤーと同じ程度の大きさだ。重さは、ハードディスクを装着した状態で約235gと比較的軽量。ブルーバックライト付液晶(160×120ドット、モノクロ)を搭載、バッテリはアドバンストリチウムイオン充電池を採用し、フル充電で連続18時間の長時間再生が可能。操作は、本体全面(液晶下部)に配置されているボタンで行なうようになっている。

 製品の写真とこのスペックを見て、なにか心の奥にひっかかるものを感じたのはわたしだけではないハズ。それもそのはず、このGIGABEAT、Appleから既にリリースされているiPodに非常に良く似たスタイルのポータブルオーディオプレーヤーなのである。


ボタン配置はシンプル。iPodによく似ている ACアダプタ、USB端子、イヤホンジャックはすべて本体上端

iPodに非常に良く似たユーザーインターフェイス

手に持つとけっこうずっしりくる
 実際にGIGABEATを使ってみると、外見や性能だけではなく、やや使いにくい部分まで含めて「iPod」に非常によく似ているのだ(もちろん良い部分もある)。プレーヤーの操作は、全面に配置されたボタンと液晶ディスプレイで行なう。液晶ディスプレイに表示されるメニューで再生モードや設定などのコントロールを行なうことができるが、このあたりのユーザーインターフェイスはiPodを参考にしたということがわかるくらいにiPodに酷似している。

 電源を投入して、メニューを表示すると「あれ?これってiPodだっけ?」と妙な錯覚に陥る。ちなみに、iPodではプレーヤーの電源をオフにするには「再生」ボタンを長押ししなければいけないのだが、これも一緒。GIGABEATでも「再生」ボタンの長押しをしなければ電源をオフにできない。長押しなんていう使いにくいユーザーインターフェイスは是非止めて欲しいものだと思うのは、わたしだけではないハズだ。

 ところで、ハードディスクを搭載したプレーヤーのように、一度に大量の音楽データを扱うプレーヤーの場合、目的の音楽データにいかに素早くアクセスできるかどうかが使いやすさのキーポイントとなるのは言うまでもあるまい。iPodでは、プレイリストを使った再生、ファイルに含まれた曲情報を使って、特定のアーティストやアルバムの一覧を表示して、聞きたい曲を選ぶということができた。そのため、アーティスト、アルバムなどの曲情報が入っているデータならば、何も考えずに「がーっと」音楽を転送するだけで、割と快適に使えるのだ。しかし、GIGABEATでは、プレイリストを使った再生はできるが、iPodのように、自動的にアーティストやアルバムで曲がカテゴライズされる機能はない。

 代わりに搭載されているのが、ハードディスクのフォルダをブラウズする機能。本体の「NAVI」ボタンを押すと、ハードディスクのフォルダ階層が表示され、そこから聞きたいフォルダやファイルを選ぶという形になっているのだ。つまり、ハードディスクに音楽を用意する際には、あらかじめフォルダの階層構造をしっかり決めておかないと、あとでわけがわからない状況に陥ってしまうわけ。

 まあ、このあたりは、人それぞれでどっちが使いやすいということは言えないのだが、後発のプレーヤーなのだから、他のプレーヤーの「良い」部分も参考にすべきではないのだろうかとも思ってしまうのだ。

 もちろん、GIGABEATがiPodよりも優れている点もある。たとえば、この手の携帯用のプレーヤーに必須なリモコンも備えている(※編集部注)ので、本体のスイッチではなくリモコンでコントロールすることもできる。この機能はiPodにはなかったものだ。また、モバイルディスクという大容量でありながらリムーバブルのメディアを採用している点もポイントが高い。もう一枚モバイルディスクを購入して、さらに大量の音楽を持ち歩くなんてこともできるし、モバイルディスクをノートパソコンなどの記録メディアとして使うことができるのも嬉しい限りだ。


OPENボタンでモバイルディスクを取り出せる ボリュームの調節は側面のボタンで行なう

※編集部注:アップルコンピュータ様のリモコン付属、Windows対応のiPod新モデルは、記事執筆時点では発表されておりませんでした。読者の皆様にはご了承頂きたく存じます。


曲の準備にはある程度のスキルが必要

 GIGABEATで再生できる音楽の形式はMP3、WMA、WAVの3つ。音楽を用意するにはWindowsパソコンが必要だ(Macintoshには非対応)。パソコンから音楽を転送するためには、GIGABEATを付属のUSBケーブルでパソコンに接続する。また、GIGABEATからモバイルディスクを取り出し、PCカードインターフェイスを備えたパソコンに挿入しても音楽の転送ができる。ちなみに、USBマスストレージクラスに対応しているため、Windows XP/2000を利用すると、ドライバなしで接続したGIGABEATを外付けハードディスクと同等に使うことができる。

 MP3やWMAを転送というと、直接エクスプローラなどを使ってGIGABEATのハードディスクにMP3やWMAなどの音楽データをコピーすれば使えそうな気がするが、そうではない。たとえ、パソコンのPCカードインターフェイスにモバイルディスクを挿入した状態であっても、音楽を転送するには専用のアプリケーション「TOSHIBA Audio Application」を使わなければいけないのである。

 GIGABEATが再生ができるのは、暗号化された独自の形式のデータのみで、普通のMP3やWMAなどの音楽データをモバイルディスクにコピーしても再生はできないのである。専用アプリケーションを使うことで、MP3データやWMAデータが、GIGABEATで再生できる形式(暗号化されている)に変換される仕組みになっているわけだ。逆に、専用アプリケーションでモバイルディスクに記録した音楽データを、パソコンなどで再生することもできない。

 セキュア(著作権保護された)データを扱うプレーヤーならば、専用アプリケーションを使わなければいけないのもわかるが、セキュアデータに対応していないのに、なぜに面倒な手続きを踏まなければいけないのか、やや疑問が残る。著作権保護されたMP3やWMAなどのデータは専用アプリケーションでも転送はできないが、こうしたガードをかけるのもプレーヤー本体でやったほうがずっと使いやすくなるはずだ。ひょっとしたら、将来的にセキュアデータの転送をサポートするのでこうした形になっているのかもしれないが、やはり現時点では手放しで使いやすいとは言えない。

 ちなみに、TOSHIBA Audio Applicationで出来るのは曲の転送のみ。CDのリッピングやMP3、WMAへのエンコードの機能は含まれていない。つまり、CDアルバムはたくさんもってるけど、どうやったらMP3やWMAに変換できるのかわからないという初心者は、ここで手詰まりになって、GIGABEATが宝の持ち腐れ状態になってしまうのである。

 Windows XPに搭載されている「Windows Media Player」を利用すれば、CDをリッピングして最終的にGIGABEATで再生できるWMAデータを作ることができるが、そうした方法などはマニュアルには記載されていない。あくまでもGIGABEATは、すでにMP3やWMAデータを持っているユーザーや、CDアルバムからMP3やWMAを作ることができるユーザーが購入すべきもので、決して初心者が買ってはいけないものだといえる。


■ 評価(最高点は★5つ)

イバリ度 ★★ 機能的には十分にイバれますが、デザインがいまいち。携帯用のプレーヤーって男のコよりもむしろ女のコに人気があるのに、どうしてこんなに無骨なデザインになるんでしょうね。
実用性 ★★★★ 先に書いた部分や、電源投入からアクティブになるのが遅い、曲間のスペースが長いなど、いくつか使いにくい点はあるけれど、アルバムを大量に持ち歩けて、連続再生時間も長いというのは魅力です。
お値段 ★★★★★  5GBのモバイルディスクがついて5万円程度というのは魅力的。5GBのモバイルディスクは、単体で購入しても実売4万円~4万5000円程度。つまり、プレーヤーの値段は5000円~1万円ということで、めっちゃオトク。モバイルディスクを買う予定があったら、思い切ってGIGABEATを買っちゃうというのはどうでしょう。もちろん、GIGABEATに飽きたらモバイルディスクを外付ハードディスクとしてノートパソコンで使ってしまいましょう。
価格 5万円前後  大量に音楽を携帯したいけれどMacintoshは持っていない……という人にはオススメ。やや敷居が高いながらも、大量の音楽をいつも持ち歩けるというのは便利です。旅行に行くときなんかでも、MDプレーヤーと大量のMDディスクを持っていかなくてもいいですからね。
 もしも、Machintoshを持っていたら、やっぱiPodを買っちゃうかなあ。でも、モバイルディスク単体とそれほど値段は変わらないのでGIGABEATの方がオトク。あと、モバイルディスクをすでに持っているユーザーのためにモバイルディスクなしGIGABEATを安価で売ってくれるとか、モバイルディスクだけじゃなく、その他のメディアも使えるようになると、手持ちの資産が有効に活用できるからもっと嬉しいですね。
利用期間 3日
(モバイルディスクとして考えると3年くらい)
1日あたり単価 1万6666円
(モバイルディスクとして考えると45円)


・ ニュースリリース
  http://www.toshiba.co.jp/about/press/2002_06/pr_j1701.htm
・ 製品情報
  http://www.toshiba.co.jp/mobileav/audio/meg50js/products.htm


(広野忠敏)
2002/07/24 16:15

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