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白根雅彦の「au次世代サービス とことんレビュー」
eznavigation編

 2001年12月より、auのケータイに新シリーズが登場した。GPSケータイことC3xxxシリーズとムービーケータイことC5xxxシリーズだ。いずれもGPSを利用した新機能「eznavigation」に対応している。「GPS」といわれて「あぁ、カーナビに搭載されているヤツね」とわかる人も多いだろうが、それがどのようにケータイと結びつくのだろうか。今回はそんな「eznavigation」をレビューしたい。


eznavigationとは

eznavigation対応端末「C5001T」
 eznavigationとは、GPSと呼ばれるシステムで端末の位置情報を測定するという、auの携帯電話の新機能だ。GPSは衛星からの電波を元に位置を測定するシステムで、カーナビをはじめ、幅広く応用されている。

 eznavigationは、GPSとcdmaOneの通信機能を連携させた「gpsOne」と呼ばれる技術を利用している。詳細については本誌「ケータイ用語の基礎知識」の「eznavigation とは」を参照していただきたい。

 位置情報といえば、すでに基地局をもとに場所を割り出すサービスが各携帯電話・PHSキャリアで提供されているが、GPSを使ったeznavigationではそれよりもさらに細かい位置情報の測定が可能だ。基地局による位置情報では、せいぜい1km単位の測定しかできないが、GPSを利用したeznavigationでは100m以下の単位で測定が可能となる。衛星からの電波を十分に受信できる環境ならば、数m単位での測定も可能だ。これまでの基地局による位置情報では「どの街にいる」しかわからなかったが、eznavigationは「どの街のどの交差点にいる」までわかるというわけだ。

 「GPSを搭載すると、端末が大きくなったり価格が高くなったりするんじゃないの?」と心配する人もいるかもしれないが、実際にはそれほど従来の端末と変わらない。gpsOneの機能はcdmaOneの通信チップに組み込まれているので、特別に必要な部品はGPSアンテナくらいなものだ。すでにeznavigation対応機種としてはC3001H、C3002K、C5001Tの3機種が登場しているが、いずれも従来機種と同レベルの大きさ・価格となっている。

 auではこのeznavigationを、Java機能「ezplus」に並ぶ標準機能として、今後のミドルレンジ以上の機種に搭載していく考えだ。


所要時間は20秒弱

位置測定は通話圏内でしか行なえない
 eznavigationは、主にEZwebのサイト上かezplus上で機能する。たとえばEZwebの地図情報サイトでは「周辺地図を検索する」の一発クリックで位置情報を測定し、地図ページを表示できる。ezplusでも利用方法はだいたい同じ。地図表示アプリを実行し、現在位置の情報を測定すれば、周辺地図をダウンロードしてきてくれる。

 位置情報は地図情報サービスに限らず、タウンガイドやゲーム、セキュリティなど様々な分野で利用される。サービスについては次項で説明することにして、ここでは実際の使い勝手を紹介したい。

 eznavigationは、カーナビのように常時の位置情報を測定しているわけではない。eznavigationを実行するたびに衛星と基地局と交信が必要で、それにはおよそ20秒かかる。

 多くの場合は位置情報測定後、地図やレストランガイドなどのデータをダウンロードするので、その時間も必要だ。サービスの種類によるが、合計で30秒くらいかかると考えたほうが良いだろう。

 この待ち時間が意外とまどろっこしい。立ち止まって測定が終わるまで待っていればいいのだが、実際にはそんなヒマはない。だいたいeznavigationを実行しながら歩いて、測定が終わったころあいを見計って立ち止まり、画面を見つめるという少々不自然な利用スタイルにならざるを得ないだろう(歩きながらケータイを覗き込むのは危険)。その間に30mくらい移動してしまうかもしれない。最寄のレストランを検索したけど、気がつけば通り過ぎていた、なんて事もあるわけだ。eznavigationでは場合によっては数m誤差で位置測定ができるので、もっと早いレスポンスを望みたいところだ。


測定誤差は場所によりけり

 今回はeznavigation対応端末C5001Tを使い、東京渋谷周辺でテストを行なった。テストにはEZwebの地図情報サイト「NAVITIME」を使った。測定環境によっては、衛星からの電波を十分に受信できず、誤差の大きい測定結果が出ることがあるが、NAVITIMEでは誤差精度を3段階で表示してくれる。どのサービスでもeznavigationの精度に差はないが、サービスによっては測定時の精度が表示されない場合もあるので注意が必要だ。

 まず渋谷駅前にある待ち合わせスポット、ハチ公の銅像の目の前で測定してみたところ、実際の場所より40mほど離れた場所を表示した。NAVITIMEの表示では、測定誤差は最小となっている。ハチ公の銅像がある広場は比較的空が開けているので、GPSの測定には有利かと思われたが、南側にそびえ立つ東急デパートの影響を大きく受けたのかもしれない。


ハチ公広場。待ち合わせの人でごった返す日曜夕方 が測定結果。が実際の位置

センター街。幅10mほどの道
 次にセンター街で測定した。センター街はビルに囲まれた狭い道で、空が開けていないためGPSの測定環境としてはかなり条件が悪い。道の途中で測定したところ、70mほど離れた場所が表示された。測定誤差の表示は最小だったが、ビルに囲まれていることが悪影響を及ぼしたようだ。しかし5mほど歩いて今度はセンター街の交差点で測定すると、今度は10m程度の誤差で測定ができた。同じような場所でも、交差点のようなちょっとでも空が広いところに行けば、測定精度が向上することがあるようだ。


が測定結果。が実際の位置。だいぶ誤差が生じている 交差点で測定したところ、誤差がだいぶ減った

宮益坂。郵便局はこの坂の中腹にある
 さらに渋谷駅東の宮益坂にある渋谷郵便局前でも測定を行なった。ここは片道2車線でビルに囲まれた典型的な都内の道だ。GPSの測定環境としてはそれほど良い場所ではないが、ここでは地図上では誤差を判別できないレベルの測定が行なえた。GPSの測定には時間や天気など様々な条件がかかわるので一概には言えないが、それなりに大きな道であれば都心でも十分な精度が確保できるといえる。


が測定結果。誤差の判別ができないレベル ためしに通りを横断したところ、ちゃんと通り向こう側と認識された

 最後に渋谷駅前にあるQ-FRONTの4階で測定を行なった。Q-FRONTの4階には窓が南側にしかなく、しかもブラインドでシールドされているのでGPSの測定は事実上不可能に近い場所だが、それでも100m程度の誤差で測定を行なえた。大きな誤差であるが、それでも基地局だけによる位置情報よりも精度は圧倒的に高い。


駅前のQ-FRONT。TSUTAYA、スターバックスコーヒー、映画館などが入っている が測定結果。が実際の位置。さすがにだいぶずれている

 調査でも明らかになった通り、eznavigationは環境によって大きく精度が変わってくる。GPSに慣れている人は「空が開けていれば誤差ほとんどなし」と理解し、その精度のバラツキを感覚で補正できるだろうが、実際にはそういったことを考えるのが面倒だという人がほとんどだろう。そのことを踏まえると、最初から数十mの誤差が出ることを覚悟しておいたほうがいいかもしれない。


eznavigation、どんなときに役に立つ?

KDDIが提供する「EZ@NAVI」。ezplusを起動しワンクリックで周辺地図を取得。地図のスクロールもできる
 このeznavigationの登場によりいちばん進化するのは、地図情報サービスなどのナビゲーションサービスだろう。たとえばこれまでの地図情報サービスの場合、自分のいる場所の地図を得るときはその場所の住所や近隣のスポット名称などを入力する必要があった。つまり、自分のいる場所をそれなりに知っている必要があったのだ。

 そもそも「地図を見たい」と思ったときはその場所に詳しくない場合であって、そんなときに「住所を入力せよ」といわれてもわかるわけがない。これに対してeznavigation対応の地図情報サービスは、自分が今いる場所を知っている必要はない。サイト上の「現在の場所周辺地図を取得」ボタンをクリックすれば一発だ。迷子だろうがなんだろうがOK。「出先で気軽に使う」というケータイの利用スタイルにマッチする機能といえる。


駅前探検倶楽部のezplus「ekitan Navi」。地図だけでなくこのように文字による案内も可能
 こうして取り出せる情報は地図だけではない。東芝の乗換え案内サービス「駅前探検倶楽部」は、自分のいる場所から最寄駅までの道のりを表示してくれる。地図上の経路線として表示させる以外にも「○○銀行方向に進んでつきあたりを右に……」などといったテキスト表示もできるので、地図が苦手な人にもオススメな機能だ。

 eznavigationはレストラン情報などのタウンガイドにも利用される。eznavigationは「最寄のラーメン屋を検索」などもできるが、これはそれほど実用性が高くないかもしれない。いちばん近くにある適当なラーメン屋情報よりも、3分余分に歩くところにある激・美味いラーメン屋情報の方が多くの人にとって有益だろう。従来型のタウンガイドは、基地局による「街」単位の位置情報でも十分といえる。


みるくるナビで周辺のコンビニを検索。22mならば検索する前に気がつけという感じだが
 そういう意味で、eznavigationをうまく活用したユニークなタウンガイドサービスの1つが東芝の「みるくるナビ」だ。みるくるナビは、レストランなどの普通のタウンガイドサービスで提供している施設の情報に加え、銀行やコンビニの検索も行なえる。コンビニなどは出先でお世話になる施設だが、別にどこでも一緒なので「最寄の××」として検索できることは非常に意義があるだろう。

 ただ、こういったタウンガイドサービスはまだ充実していないのが現状だ。というのも、検索する施設の緯度経度データベースが必要になるからだ。全国規模のサービスが多数登場するにはまだまだ時間がかかるだろう。

 また、特殊な用途として、防犯というものもある。現在のところC3001Hしか対応していないが、セコムが提供する「ココセコムEZ」は端末の位置を他の人が参照できるというサービスだ。たとえば保護者が子どもに端末を持たせておいて、迷子になっていないかを確認できる。もちろん、彼氏に持たせておいて変な場所で遊んでいないかを確認するのにも使えるだろう(位置情報の偽造はそうそうできるものではないハズ)。

 このほか、ゲームやコミュニケーションサービスにもeznavigationは利用されている。eznavigationが開始されてからすでに1カ月以上が経過するが、こちらに関しても、まだまだサービスは数がそろっていない感がある。

 今度は、期待されるサービスを挙げてみよう。auのCMで見た人もいるかもしれないが、遊園地など屋外アミューズメント施設でのナビゲーションも有益なサービスだ。そういった施設はGPS衛星からの電波をさえぎる建物が少ないので、かなりきめ細かいナビゲーションが可能なはず。ディズニーランド級の施設だと、近くのトイレなどを探すのすら大変なので、来場者に対応端末ごと貸し出すアミューズメント施設があってもおかしくないだろう。

 街角出前サービスも登場するかもしれない。公園のベンチでケータイ片手にポチっと注文すれば、5分後にローラーブレードのお兄さんがドネルケバブ(トルコ料理)を配達してくれる、なんていうサービスだって可能になる。

 プロモーションへの活用も十分考えられる。「渋谷のTSUTAYAでeznavigationを使ったお客様にもれなくモー娘。の着メロプレゼント!」なんていう集客力強化のイベントなどはすぐにでも行なわれそうだ。


便利で面白いサービスにガンガン登場していただきたい!

 実際にeznavigationを使ってみた感想は「意外と精度が高い」だ。環境に大きく左右されるとはいえ、ちょっと大きな道ならばごく小さな誤差で位置を特定できるのは、ただ地図を表示させるだけでも面白い。精度の面ではジャイロなどを併用するカーナビには劣るが、ジャイロを持たないポータブルGPS専用機では測定不可能なビルの谷間でも動作するので、都心部でも実用になるだろう。また、室内などGPSの測位不可能な場所でも、基地局だけでもそれなりの精度で位置を特定できることも付記しておきたい。

 eznavigationを活用したユニークなサービスが今後、多数登場すると思われる。eznavigationはこれまでの「和音着メロ」や「Java」などコンテンツ系機能とは一味違う機能なので、その活用方法はこれまでにない方向に広がる可能性を秘めている。

 ここまで、様々な応用例を考えてみたわけだが、GPSを使ったサービスでは、端末(=個人)の位置情報を扱うということを意味する。それも数m単位となれば、それは最高級の個人情報なわけだ。悪用できるとなればストーカーは大喜びしてしまうので、様々なセキュリティ対策が施されているが、こういった問題をクリアしつつ、より利便性の高く、ユニークなサービスを期待したいところだ。


オモシロイほうの次世代のフラッグシップモデル「C5001T」
au、GPS対応の「C3001H」「C3002K」と動画再生の「C5001T」
au、GPS・動画配信・WAP2.0など新サービスを発表

・ au
  http://au.kddi.com/


(白根 雅彦)
2002/01/11 17:34

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