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携帯電話・PHSと無線LANの融合が目指す先とは
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― 前編 ―
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Windows XPは標準で無線LANの自動構成機能が付いているが、最近はPHSや携帯電話などのダイヤルアップ接続と無線LANとの切り替えツールが各社から提供されている。どのユーティリティも「シームレス」を謳っているが、実際の使い勝手はどうなのだろうか。前編ではKDDIと日本通信のツールをご紹介する。
■ KDDIのツールはシンプルで使い勝手抜群
KDDIが9月26日より無償で公開している「無線LAN切替えユーティリティ」は、シンプルで機能美を追求したユーティリティだ。
基本的には、あらかじめ無線LANの電波強度について、しきい値を設定しておき、それ以下になれば無線LANを切断してダイヤルアップを、逆にダイヤルアップ中に無線LANの電波を検知すると、ダイヤルアップから無線LANアクセスへと切り替わる。ユーザーは利用シーンに応じて接続を切り替えるのではなく、状況に応じて接続できる最適なネットワークへ自動で接続される仕組みだ。
PPPoEクライアントの機能や、公衆無線LANサービスなどで入力を求められるスタートページの指定、さらには外部プログラムの起動などを、ESS-IDごと個別に設定できるのも評価できる。しかも、利用しない場合はデスクトップの右下に格納され、目障りにならないようすっきりと実装されているのも好感が持てるところだ。
使い勝手も非常に洗練されていて、ESS-IDとWEPキーの設定さえクリアすればさほど敷居の高いものでもない。使い勝手という観点では、今回紹介するツールの中でも最も完成度が高いソフトウェアと言えるかもしれない。また、KDDIという通信事業者が提供しているツールにもかかわらず、ダイヤルアップに使うモデムなどをKDDIのサービスのみに制限しなかった英断にも拍手を送りたい。
一方で、このツールを使う上で注意したいのは、PHS通信中でも常に無線LANデバイスを監視しているため、バッテリの持ちが若干落ちてしまうということだ。極端に監視間隔を短くしないよう設定することをオススメしておこう。
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無線LAN切り替えユーティリティ
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設定画面。通常使用なら特に変更することもないだろう
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デバイス監視は数値入力での設定も可能
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ヘルプも充実しており、トータルな使いやすさが印象深い
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■ オールインワンの魅力、bアクセスWiFi
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bアクセスWiFi
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日本通信のPHSデータ通信サービス「bモバイル」は、日本のMVNOの先駆けで、DDIポケットから回線の卸売りを受けて開始してからはや3年目になる。当初、年間契約パッケージが「bモバイル」の代名詞だったが、今では6カ月更新パッケージをはじめオプションを追加。さらに、各社公衆無線LANサービスのローミングサービスなど、多様な展開を見せている。
今回はPHS通信と公衆無線LANサービスへの接続が1つのアプリケーションで可能な「bアクセスWiFi」を試用させていただいた。
まず、PHSと無線LANの切り替えについて触れておこう。bアクセスWiFiは、今回紹介する他のツールとは異なり、自動で回線をスイッチする機能は搭載していない。双方のデバイスを監視して、個別に接続可能かどうかをインターフェイス上に表示するだけだ。切り替えにはあくまでもユーザーの選択が必要となる。
だが、このツールの魅力はそこにあるのではない。bアクセスWiFiだけで、ダイヤルアップのプロファイルの作成から公衆無線LANスポットの検索、電波強度の測定、プロキシを使ったアクセラレータといったサービスが利用できるのだ。どれも単体を取れば、競合他社でもできることだが、オールインワンで提供されているのがこのツールのポイントだろう。ツールを一通り使うと「回線こそDDIポケットと同じだが、サービスとしては全く異なるものだな」という印象を受けるほどだ。
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公衆無線LANスポット検索。オフラインでも検索できる
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とくに公衆無線LANスポットの検索は、「これからインターネットにつなぎたいから無線LANスポットを探しているのに、なぜオフラインで簡単に検索できる仕組みが用意されていないのだろうか?」というユーザーの単純な悩みを解決している。インターネットに接続せずに、県名と地区を選択していくだけで公衆無線LANスポットが検索できるのはありがたい。
アクセラレータ機能も秀逸だ。日本通信側の専用プロキシを通すことにより、画像のサイズダウンを行ない、体感速度を高めることができる。圧縮度が低い段階から、「Marion」「Michelle」「Ian」と3種類用意されているため、個々の用途で使い分けられるのが特徴だ。この3種類は、bアクセスWiFiからボタン操作だけで変更可能で、Windowsの再起動も必要ない。
私自身、一昔前まではナビゲーション部分がテキストのサイトが多かったため、PHS接続の時は画像表示をオフにするなどして対応していた。が、近年のブロードバンド化に伴い、画像を表示しないと、そもそもサイトの構造自体がわからない、というケースも多い。だが、アクセラレータ機能を使用すれば、カラーの画像がモノクロになったり、細部の表現が省略される程度で、閲覧には問題ないことが多く、非常に重宝しそうだ。
全体的には非常によくまとまっているツールで、あえて日本通信を選ぶ理由に十分なりうるデキだと感じた。今後は切り替え機能の強化に期待したいところだ。
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充実の公衆無線LANローミングサービス
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無線LANアクセスポイントの管理画面
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無線LANアクセスポイントの管理画面
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このほか、ニフティも試験サービス「@niftyモバイルパック」で無線LANの切替えユーティリティを提供している。後編ではこのユーティリティがサポートする技術「モバイルIP」を踏まえながら、ユーティリティにおける各社の方向性について考えてみたい。
■ URL
無線LAN切替えユーティリティ
http://www.dion.ne.jp/service/bb/musenlan/mobile_soft/
bアクセスWiFi
http://www.j-com.co.jp/prepaid/baccess/index_wifi.html
■ 関連記事
・ KDDI、携帯電話やPHS、無線LANの自動切替えツールを無償提供
・ 日本通信、無線LANとPHSを切り替える「bアクセスWiFi」のベータ版
(伊藤 大地)
2003/10/15 19:40
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