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2年縛りの無いプランの説明が不十分――総務省が大手3キャリアに改善要請

 総務省は、大手キャリア(MNO)3社に対し、販売時の説明改善など、消費者保護ルールの徹底を求める行政指導を実施した。特にNTTドコモに対しては、「確認措置制度」の実施が不十分として、追加の改善を求めている。

 総務省は、大手キャリアが消費者保護ルールを遵守しているかを定期的に監督(モニタリング)している。モニタリングはユーザーからの寄せられた苦情分析やアンケート調査や販売店への覆面調査、事業者からの報告を分析によって行われ、年度ごとに公表される。今回は平成28年度(2016年度)のモニタリング結果が報告された。

販売現場での「7つの問題点」を指摘

 説明書面や契約書面については、各社とも料金・解約条件といった法令で必要とされる説明事項を記載しており、明確な問題は認められなかった。

 一方で、販売現場(店舗)に覆面調査の結果、以下の7点の実施状況が不十分として、各キャリアに実施の徹底を求めている。なお、特定のキャリアや販売代理店によって結果の偏りはなかったとしている。

(1)料金プランについて、期間拘束・自動更新付き以外の選択肢の紹介が全くなかった。
 ・契約期間に縛りのないプランや、契約2年後から縛りがなくなるプランの紹介がまったくなかったケースが調査全体の68%にのぼった。

(2)期間拘束、自動更新の仕組みが適切に説明されなかった。
 ・解除料を払わずに解約できる期間についての説明や、2年契約が自動更新されるという説明がない事例。

(3)解約時の費用について個別の解約費用の説明がなかった。
 ・特に、解約月の基本料金が日割り計算されるかどうかの説明がなかった事例が不十分としている(調査では76%が説明なし)。

(4)確認措置についての説明が適切にされなかった。
 ・「確認措置」は、電波のつながり具合が不十分だったり、事業者による説明などが不足していた場合に、8日以内に申し出れば、端末費用を負担することなく契約を解除できる制度。全体の79%で説明がなかったか、あやまって説明されていた。

(5)端末の追加購入を勧められたケースで、通信料金が追加で発生することの説明がなかった。
 ・調査ではタブレット端末などの追加購入を進められたケースが24%あった。その際、通信料が無料などと誤認させるような例が29%あったという。

(6)データ通信容量の上限を超えた場合の制限について説明がなかった。
 ・調査では、速度制限がかかるか、料金がどう変わるかといった説明がなかったケースが46%あった。

(7)実際の使用者が契約者本人か確認されなかった。
 ・実際の使用者が未成年の場合にフィルタリングサービスが適用できないため確認が求めてられているが、調査では43%のケースで確認がなかった。

ドコモは「確認措置」の実施が不十分として追加の改善要請

 NTTドコモに対しては、クーリング・オフ制度に相当する「確認措置」制度の運用が不十分だったとして、追加の改善を求めている。

 総務省によると、新規契約者のうち確認措置適用の申し出があった比率が、ドコモのみ他の2社の100分の1~60分の1程度と、極端に少なかった。また、申出があったユーザーのうち契約解除に至った比率も他の2社の半分程度だった。そこで、確認措置制度の運用方法をドコモに確認したところ、不適切な運用がなされていたという。

 他の2社では「電波状況が不十分(繋がりづらい)」「説明が不十分だった」といった申出をしたユーザーに対し、8日以内なら確認措置制度の申し出として扱っている。一方、ドコモの場合、契約者が契約書面にある「確認措置」の項目を示して「確認措置制度を適用したい」と申し出ない限り、確認措置を適用しなかったという。

 また、ドコモは確認措置制度の適用による契約解除の判断を、店舗(代理店)が行う運用としていた。この店について総務省は、利用者の利益保護を目的とした制度の審査基準に照らして不適当ではないかという見解を示している。

ドコモ、確認措置制度の受付センター開設を表明

 NTTドコモは「お客さまにご迷惑、ご心配をおかけしたことを深くお詫びいたします。今回の指導を真摯に受け止め、法令順守に向け、抜本的な改善を早急に行っていきます」とコメント。

 同社はこれまでは契約書面への署名をもって契約者が理解したと判断して対応していたが、今後は署名の有無によらずに事実確認をした上で、これまでよりも柔軟に対応すると表明。具体的な対策として、イラストや動画を使った説明を7月から実施し、契約者が確実に理解できるような仕組みを作っていくという。

 確認措置制度の運用については、ドコモ直営の受付センターを準備が整い次第、開設すると明らかにした。

覆面調査員の半数弱は「応対がよかった」とコメント

 なお、覆面調査の調査員のうち4~5割は調査時の印象について「説明が分かりやすかった」「応対態度に好感が持てた」といった肯定的なコメントを残しており、総務省は「消費者の良好な印象を得るような説明・応対が多くされている」と評価している。

 オプションサービスについては、約70%の調査員が契約手続き時に薦められたものの、一度断った後に再度進めてくるケースは全体の14%にとどまった。

 また、契約内容を把握しやすくする取り組みとして、NTTドコモの動画による事前説明、ソフトバンクの簡易化した契約書の交付、販売員に対するテストといった事例を優良事例として紹介している。

MVNOも店舗での調査を実施へ

 モニタリングの報告では“格安SIM”などとしてユーザーの拡大が進みつつあるMVNOについても言及。今後、覆面調査や利用者アンケート、事業者へのヒアリングといった実地調査の対象に、MVNOも追加する方針を明らかにした。

 MVNOに対して寄せられた苦情は、前年度の1~3月に比べて70%増加している。総量では大手キャリア(MNO)の約4分の1にとなるものの、MVNOの契約数が大手キャリアの約10分の1にとどまることも考慮して、決して少ないとは言えないとしている。

 苦情の発生の原因として、「通信速度や端末の利用などでユーザーの認識と一致しなかった(苦情全体の12.8%)」や、「ユーザーのニーズとの不一致(11.1%)」など、サービス内容に対する理解が大手キャリアと比べて進んでいないことによる苦情が多かった。ついで、「解約条件の説明不足(11.9%)」、「手続きミスなどで事業者への信用が失われた(11.6%)」といった原因が続いた。

苦情分析「スマモバ」は除外

 なお、MVNOに対する苦情分析については、特定の1社の苦情を除外している。総務省の担当者によると、スマートモバイルコミュニケーションズが運営するMVNO「スマモバ」への苦情の割合が高く、全体の分析に影響を与える可能性があったためとのこと。総務省は6月21日、同社に対して消費者保護ルールの遵守を求める行政指導を実施している