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KDDI、ハウステンボスでスマートドローンの実証実験

 KDDIは、長崎県のハウステンボスとパートナーシップを締結し、ドローンをはじめとする新技術を活用したサービスの開発を行っていくことを発表しているが、実際にどのような取り組みが行われているのかを報道関係者向けに公開した。

5Gでドローンレースをもっと面白く

 両社の取り組みの第1弾となるのが、2月17日~19日にかけてハウステンボス内で開催されたドローンレース。日本初の夜間ドローンレースとなり、LEDの光で彩られた庭園の中で開催された。

夜間ドローンレースの会場となった庭園

 レース用のFPV(First Person View)ドローンは、パイロットがヘッドマウントディスプレイを装着し、手元のプロポでコントロールする。ドローンに搭載されたカメラの映像は、5GHz帯を使用してヘッドマウントディスプレイに届けられる。この映像に遅延が発生すると、うまくコントロールできないため、現時点ではアナログ方式が主流となっているという。しかし、アナログ方式では帯域幅の問題から同時に使用できるのが3チャンネルで、結果的に1レースで飛ばせるドローンが3台になるという制約がある。

3台のドローンでレースをする
FPVカテゴリーでは、パイロットがヘッドマウントディスプレイを装着

 また、18日の夜に開催されたナイトレースでは、パイロットのヘッドマウントディスプレイに届けられる映像が会場内のモニターや観客に貸し出されたiPadでモニタリングできるように工夫されていたが、その映像はお世辞にもクリアなものとは言い難く、よくこの映像を見てドローンをコントロールできるものだと感心させられるほどだ。

選手がヘッドマウントディスプレイで見ている映像をiPadでモニタリングできた
FPVドローンレースで優勝した岡聖章選手

 KDDIの担当者によれば、ここに5Gの技術を導入し、高速、大容量、低遅延という特長を活かすことで、同時にレースできる台数を増やしたり、映像のデジタル化によってクリアな映像をパイロットや観客に提供したりできる可能性があるという。

【ドローンレースの模様】

ドローン撮影サービスをプラットフォーム化

 この夜、レースとは別にドローンを活用した撮影ビジネスの実証実験のデモも披露された。スマートフォンのアプリ内のボタンをタップすると、ドローンが飛んできて、周囲の風景とともに利用者を動画で撮影してくれるというサービスをイメージしたものとされる。

撮影サービスの利用イメージ
撮影用のドローン

 現時点ではドローンを人間が操縦しているが、将来的に自動化することを見据えて実証実験を行っていく。KDDIでは、こうしたドローン撮影サービスをプラットフォーム化し、BtoBtoCでの事業化を検討していく。

【ドローン撮影サービスのイメージ】

スマートドローンは人を幸せにできるのか

 ハウステンボス内では、これにあわせて2月18日~19日にかけてスマートドローンをテーマにしたアイデアソンも実施された。

 アイデアソンの冒頭の基調講演には、ハウステンボス 取締役CTOの富田直美氏が電動の立ち乗り二輪車で勢いよく登場。降りたかと思うと、いきなりドローンを飛ばし、参加者や関係者の度肝を抜いた。

講演後、囲み取材に応じるハウステンボス 取締役CTOの富田直美氏

 “ラジコンの神”を自称する同氏は、「ドローンで配達しようとしている人がたくさんいるが、特に東京はあり得ない。1~2kgの荷物を運ぶのにどれくらいのドローンを作らなければならないか分かりますか? 1メートルの大きさのドローンが街中を飛び回ることになってしまう。私は世界の最先端のドローンを全部買っているが、(200g以上のドローンを規制の対象にするような)世の中の法律を決める人たちは(どんなドローンが安全なのか)全く分かっていない」と指摘。その上で、アイデアソンの参加者に対して、「アイデアを出すならお金儲けではなく、人を幸せにすること、人の能力を引き出すことを一番に考えてほしい」と熱く呼びかけた。

 その後、行われた囲み取材で、ハウステンボスは私有地なので、やれることが多く、化学反応を起こす場所として最適と語る同氏。ドローンの理想的な使い方はまだ分からないが、課題が出てきて、それをどう解決していくかを考えていきたいとしている。